『にじファン』で投稿していた短編です。
 同作者なので盗作ではないです。

 フランちゃんのお話。
 
 これを読んで、テンションが下がった方がいらっしゃると嬉しいです。

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地下牢の蝙蝠

 初めて外に出たときに

 

 見えるもの全てが新鮮で

 

 色んなものに手を伸ばした。

 

 そして

 

 力の加減がわからず全てを壊したわたしは

 

 お姉様に地下へと入れられた。

 

 今わたしは一人

 

 地下で膝を抱えて座ってる。

 

 たまに来るメイドが運んでくるご飯を食べて

 

 一人地下で座ってる。

 

 ある時ふと顔を上げてみると

 

 一匹の蝙蝠が飛んでいた。

 

 お姉様の使いではない

 

 野生の蝙蝠

 

 どこからか迷いこんだのだろうか

 

 蝙蝠はパタパタと飛び

 

 わたしのいる地下牢に入って来た。

 

 長く飛んで疲れたのか

 

 天井にぶら下がると動かなくなった。

 

 眠ったのだろうか

 

 わたしは気配を消して蝙蝠の真下へ移動した。

 

 予想通り蝙蝠は眠っていた。

 

 しばらくわたしは蝙蝠を見上げていた。

 

 それからの毎日は蝙蝠を眺めるのが日課になっていった。

 

 蝙蝠は地下から抜け出す道がわからないのか

 

 起きてわたしのいる所から出て行っても

 

 しばらくすると戻ってくる。

 

 地下で一人と一匹になった。

 

 何日か過ぎ

 

 今日もわたしのもとに戻ってきた蝙蝠は天井にぶら下がることなく落ちてしまった。

 

 近づいてみると

 

 蝙蝠は弱々しくキィと鳴いた。

 

 わたしが残していたご飯を目の前に置いてみると

 

 美味しそうに食べだした。

 

 それからさらに何日か過ぎて

 

 わたしと蝙蝠の仲は深まった。

 

 わたしは習慣となった餌やりをしていると

 

 ふとあることに思い至った。

 

 この子は外に出たいのではなかったか

 

 と。

 

 蝙蝠は未だに地下探索を続けている。

 

 この子の地下探索を手伝ってあげているのだ

 

 わたしも加減の仕方を手伝ってもらおう。

 

 そう決めた。

 

 蝙蝠を餌で掌に乗せ

 

 もう片方の手の指先を蝙蝠の毛先の前の空間にゆっくり持っていく。

 

 落ち着いてゆっくり爪をたてずに

 

 今日触れなくてもいい

 

 一日に少しずつ

 

 明日は毛先に

 

 次はその少し先へ

 

 毎日毎日少しずつ慎重に進めていった。

 

 

 

 

 ある日

 

 指先が暖かく柔らかい弾力に押し返された。

 

 ついに触れた

 

 初めて屋敷のみんな以外を壊さず触れた

 

 嬉しかった。

 

 しらず笑いがこぼれた。

 

 次の日からは撫でてあげたりくすぐってあげたり

 

 蝙蝠とたくさん遊んだ。

 

 遊べば遊ぶほど蝙蝠との仲は深まっていく。

 

 そして

 

 仲が深まれば深まるほど壊したくなり

 

 触れば触るほど潰したくなった。 

 

 わたしはその衝動を我慢し続けた。

 

 

 

 

 ふと目が覚めると

 

 わたしの手は紅く染まっていた。

 

 何かを握りしめ

 

 紅く染まっていた。

 

 手を開けると

 

 紅い肉のようなものが潰れていた。

 

 わたしはなんとなく、手の血を舐めて

 

 そして、呟いた。

 

 

 『不味い』

 

 

 わたしの心に吹けば飛ぶような何かがあった。

 

  ぽたり

 

 と紅く染まった手に液体が落ちた。

 

 透明だ

 

 血ではない

 

 上を見ても何もない

 

 何よりこれは

 

 わたしの目から出てきていた。

 

 唐突に理解する。

 

 わたしは今

 

 泣いているのだ

 

 と。

 

 わたしは今日も地下に一人で膝を抱えて座っている。

 

 

 

 

 

 




サクヤ(以下サ)「お嬢様!」

レミリア(以下レ)「どうしたの咲夜?そんなに慌てて。もっと落ち着きをもってカリスマ性を持ちなさい」

レミリア、紅茶を優雅に一口。

サ「妹様が泣いています!」

ブゥーー!(紅茶を吹く音)

レ「は?フランが?ウソ?エイプリルフールって幻想郷にあったかしら」

サ「いえ、ホントです」

レ「…………」

サ「…………」

レ「ちょっと長く閉じ込めすぎたかしら?」

サ「さぁ?」



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