3歳から始めるめざせポケモンマスター!   作:たっさそ

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第3話 3歳児はエリカ様に女装させられる

「おせわになります、おばーちゃん。でも迷惑はかけないからね。」

「子供は迷惑をかけてなんぼよ。好きなだけここに居なさい」

「ブイブイ!」

 

 というわけで、タマムシマンションです。

 

 なんやかんやいろいろあって、晴れて俺はタマムシシティのマンションで住むことになりました。

 

 身寄りのない俺を養子として引き取ってくれたのが、タマムシマンションの管理人でもあるおばあちゃんだ。

 

 本当にこのおばあちゃんには感謝してもし足りないよ

 

 あの後、結局ポケセンに泊まることは無く、身寄りのない俺をたまたま市役所に長話をしにきていたおばあちゃんが引き取ってくれて、そのままおばあちゃんのマンションで暮らすことになった。

 

 おばあちゃんは「あたしのことを本当のおばあちゃんだと思っていいんだからね?」

 

 と諭してくれたので、ありがたくおばあちゃんと呼ばせてもらっているよ

 

「にゃーご」

「きゃーう!」

「ぴっぴぃ!」

 

 ピッピたちも嬉しそうだ。

 

「この子達が居るからさみしくないけど、レンジとイーブイが増えてにぎやかになったねぇ」

 

 しわくちゃの顔をほころばせるおばあちゃん。

 そんなやさしいおばあちゃんのことが、俺は大好きだ。

 

「めっちゃいい子にするよ! なんなら今からイッシュ地方まで出稼ぎに行ってもいいよ!」

「おやおや、イッシュまで行かれちゃ、さすがのあたしも寂しいねぇ。いい子じゃなくてもいいよ。のんびりしていきなさい。子供は遊ぶことが仕事よ」

 

 そうする。

 だが、今は居場所を手放さないために必死になる必要がある。

 

「それじゃおばーちゃん。僕はなにをしたらいい? ニャースとピッピとニドラン♀を進化させたらいい?」

「いいや、この子達はこのままが一番いいよ」

「そっか。」

 

 せっかく拠点ができたんだ。

 おばあちゃんに孝行しつつ、トレーナーとして強くならねば。

 

 

 しかし、そのためには仲間が必要だ。

 イーブイだけでは足りないのだ。

 

「イーブイ」

「ブーイ?」

「仲間を買いに行こう」

「ブイ!?」

 

 

 買うって何!? って表情のイーブイ。

 僕は何もおかしなことは言っていないさ。

 この町には、ロケット団が経営するロケットゲームコーナーがある。

 

 そこで、コインを溜めて仲間を買うんだ。

 

 今は夕方だけど、ギリギリいっぱいまで粘れば7000枚くらいなら溜められそうだ。

 

 家族が増えるよ! やったねレンジ!

 おい、やめろ。

 

 とにかくだ。おばあちゃんに負担を掛けることはしたくない。

 俺の住民税やポケモン保険。食費や洋服代。人を一人養うというのはそれ相応のお金が掛かるのだ。

 

 3歳の子供ならば、自立するまでにかかるお金は少なく見積もっても一千万円だ。

 学校にも通わないといけないだろう。さらにイーブイもいるとなるとイーブイの維持費に相当のお金が掛かってしまうだろう。

 だというのに、俺はまだポケモンを増やそうとしている。

 

 おばあちゃんにとって、俺は悪魔の子かもしれない。

 

 

 だが、それでも俺はおばあちゃんに楽をさせたい。

 自分の問題は自分で解決させる。お金は、自分で稼ぐ。

 

「おばあちゃん、ちょっと出かけてくるね!」

「はい、いってらっしゃい」

「イーブイ。一緒に来て」

「ブイ!」

 

 俺の身元引受人となってくれたおばあちゃんだけど、迷惑を掛けるつもりは毛頭ない。

 こちとら一度は社会人を経験しているいい年こいた兄ちゃんだ。

 

 お金を稼ぐ手段は、自分で見つける!

 

 イーブイを引きつれて俺はマンションの出口に向かった

 

 

―――がちゃ

 

「ただいま戻りました、おばあさま」

「おや、おかえりエリカ」

 

 その時、エリカ様がタマムシマンションに帰ってきた!

 

 着物を着こなした和風美人。年齢は前世の俺より年下の17歳。

 清楚な印象を強く見せつける。ふと色気を滲み出させる白いうなじに、俺の視線は釘づけだ

 

「あら? このお子様はどちら様でしょうか?」

「あ、こ、こ、こんにちは………ぼ、僕は、その、レンジといいまひゅ!」

 

 な、なんだこれは! コミュ障じゃないのに、コミュ障じゃないのに!

 こんな可憐な女の子を目の前にして思考回路がショートしてしまった!

 

 こんなに美人が世界に存在してもいいものなのだろうか?

 いや、いけない。

 ここまで完成された美が存在してしまえば、それを独り占めしようとさまざまな害虫(おとこ)が現れてしまうに相違ない

 ならば、先手を打たねばなるまい

 

「ぼ僕とこけけっこんしてください!」

「こけけっこん………、ですか? それはどういったお遊びなのでしょう?」

 

 噛んだ

 大人の遊びさっと言おうと思ったけど、舌が痛くてしゃべれないでふ

 そんな俺のことを非難がましく見上げるイーブイ。おい、なんか俺の足を踏んでませんか? イーブイさんや。

 

 

「あら? そのイーブイ………」

 

 大事なところで噛んでしまい、消沈していると、エリカ様は俺の足元のイーブイに気が付いたみたいだ

 

「ブーイ!」

 

 イーブイはぴょいっと飛びあがって(最後に強く足を踏まれたのは気のせいだと思いたい)エリカ様の胸に飛び込んでエリカ様のほっぺをペロリ。

 

「あなたでしたか。イーブイを預かってくれるのは」

 

 イーブイを優しく抱き留めて微笑みながら俺を見下ろすエリカ様。

 すぐにしゃがんで俺に目線を合わせてくれた。

 

「うん。今からタマムシジムまでそれを伝えに行こうかと思ってたんだ。」

「ブイ!?」

 

 イーブイが『うそだろ!?』と言いたげな眼で見てきたが、一応俺の中ではそれも今日の予定には入っていたんだよ?

 

 本当だよ?

 

 エリカ様の胸から飛び降りたイーブイは俺の腰あたりに前足をかけて、たしたしと叩いてきた。

 3歳児体型だから、イーブイが大きい。

 

 そとまま身体を支えきれずにイーブイに押し倒されて、身体を踏まれながら顔をぺろぺろされてしまった

 まるで『おしおきだ!』と言いたげにぺろぺろと舐め回された。ベトベトだ。

 

 いやんダメよ、人が見ているわ。

 

「くすっ ずいぶんと仲がよろしいようで安心しました。あなたになら、そのイーブイを託しても大丈夫そうですね」

 

「大切にするよ。約束する。」

 

「ええ、お願いしますね♪」

 

 

 イーブイを抱っこして持ち上げると、イーブイはキョトンとした顔でこちらを見た。

 

 大丈夫。俺はポケモンの中でもブイズは一番好きなキャラだったから、キミが何になっても、俺は君のことが大好きだよ。

 

 なにせ、ブイズパーティを組んでレート戦に潜っていたくらいだからね。

 他にもねずみパーティとか、猫パーティとか、亀パーティとか。

 

 まぁ、好きと強いを考えたら、どうとも言えない戦績だったけどね

 ブイズは総じてかわいいから正義だ。

 

「あ、そうだ。レンジさん?」

「はい?」

 

 ポンと手を叩いたエリカ様に呼ばれて返事をすると

 

「せっかく()()()なんですから、もっとかわいい恰好をしてみましょうよ」

「………はい?」

 

 

 なんだかよくわからないことを言われた。

 

 女の子? どこが?

 

 あ、イーブイの事?

 確かに、このイーブイは珍しいことにメスだったもんね

 

「そのオレンジ色の髪も綺麗ですし、顔立ちも整ってますし、(わたくし)がかわいくコーディネートしてさしあげますよ」

 

 ではなく、俺の事らしい

 

 え? え?

 

 突然のエリカ様のセリフに俺の頭はショート寸前だった。

 

 

「では一度、私の部屋に参りましょう。おばあさま、レンジさんをお借りしますね?」

「ええ、いいわよ」

 

 ちょ、おばあちゃん! おばあちゃん俺の性別知ってるでしょ!?

 ついてるよ! 俺、ちゃんとついてるから!

 

 

「ちょ、ちょっと待って! 僕は」

「『僕』とか言ったらだめですよ。女の子なら、『わたし』って言わないといけません」

 

 ダメだ、エリカ様はなぜか俺のことを女の子だと思って接している!

 エリカ様は俺の言葉は耳には届いておらず、俺の手を取って自分のマンションの部屋へと俺を連れて行った

 

「だから! 話を聞いて!」

「うふふ、どんな服を着せましょうか………」

 

 

                  ☆

 

 

 エリカ様に汚されました。

 

 現在、わたくし………レンジは、絶賛女装され中です。

 

「うぅ………泣きたいよぅ………」

「ブイー………」

 

 鏡に映った俺の姿は、どこからどう見ても、女の子であった。

 

 元から、肩まであるオレンジ色の髪の毛。

 それに、長いまつげ。ややかわいい系の顔立ちであったこの世界の俺は、エリカ様の眼には女の子に映っていたらしい。

 

 それでも、俺のことを男だとわかってくれた人はスキンヘッドのおっちゃんとジョーイさんだ。

 おっちゃんは俺のことを『坊主』と呼んでくれたし、ジョーイさんは『男らしい』と俺を褒めてくれた。

 ジョーイさんはその後、一緒に住民登録をしに市役所まで来てくれたから、俺の戸籍さえ知っているはずだ。

 

 とはいえ、俺の顔が一目見て『男の子だ!』とわかるほど雄々しい顔つきではないのもまた事実。

 

 そう、俺の顔は中性的なのだ。

 

 それなりに整っているとは思う。

 だが、見ようによっては男にも女にも見えてしまうらしい。

 

 

 だからこそ、エリカ様は俺のことを女の子だと思ってしまったらしい。

 さらにいえば、このイーブイ。

 

 このイーブイは人見知りが激しい子らしく、今まで、女の子以外に懐いたことがないそうだ。

 そのことも、エリカ様が俺のことを女の子だと思ってしまった要因でもある。

 

 じゃあなんでイーブイは俺に懐いてくれたんだ?

 もしかしてイーブイも俺のことを最初は女の子だと思ったのかな?

 

 ぐわっ その可能性が大! イーブイが今! 俺から目を逸らした!!

 

「び、びっくりしました。まさかレンジさんが男の子だったなんて………。殿方の裸なんて、初めて見てしまいましたわ………(ぽっ)」

 

 死にたい。

 

 着替えさせられるときに、俺の姿が汚れていたからなのか、お風呂に入れられた。

 もちろんエリカ様にだ。俺とイーブイはエリカ様の手によって隅々まできれいに洗われてしまった。

 もうお嫁に行けない………

 

 あと、エリカ様は着やせするタイプだったとだけ言っておこう。それだけは眼福でした。

 

「だからやめてくださいっていったじゃないですか、エリカ様ぁ………」

 

「うふふ、でもその恰好の時は私のことを“エリカお姉さま”と呼んでくださるととてもうれしいですよ、『オレンちゃん』。」

 

 エリカ様はさすがに女の花園であるタマムシジムのジムリーダーをしているだけあって、若干百合っ気があった。

 とはいえ、男性に興味がないというわけでもないらしい。それは俺の身体を隅々まで洗った時の反応でわかった。

 

 だが、残念(?)なことにエリカ様はショタコンではないみたいなので、俺のことはアウトオブガンチューらしい。

 まぁ、3歳児だしね。

 

 ………責任とって俺をお婿さんにしてください。

 

 でもフリフリのドレスにカチューシャを付けて、がっくりとうなだれる今の俺は『レンジ』ではなく完全に『オレンちゃん』だった。

 ぐすん。

 

「ブーイ………」

「イーブイ、慰めてくれるの?」

「ブイ」

「………ありがとう」

 

 もはや俺のヒットポイントはレッドゾーンだ。

 俯く俺の背中をイーブイがポンポンと叩いてくれた。ありがとう。

 

 俺のオレンジ色の髪に水色のカチューシャがこれまた似合っているのが余計に腹立つ。

 

「私は幼い頃から和服ばかり着ていましたから、どうしてもこういうお洋服にあこがれておりましたの」

「だからって、僕を着せ替え人形にしなくても………」

「ダメ………でしたか?」

 

 ドレスの裾をギュッと握って反論しようとしたけど、反則的に可愛いエリカ様ご尊顔が切なげに揺らめいているのが見えてしまい

 

「………うぅ………僕でよかったら、協力するよ、エリカさ………エリカお姉さま。」

 

 俺のいくじなし………。

 でも卑怯じゃないか、エリカ様。

 俺はそんなエリカ様の涙なんか見たくないんだよ

 

 だから、エリカ様のタメなら俺は自分の身を犠牲にしても構わない………と、思い込みたい。

 だからと言って女装はしたくないけどさ

 

「うふふ、ありがとうございます♪」

「………。」

 

 でもまぁ、この笑顔が見れただけでも、儲けものかな。

 プライスレス。

 

                ☆

 

 

「オレンちゃんはマンションの管理人のおばあさまの養子になったのですよね?」

 

 いつのまにか、エリカ様は俺のことを『オレンちゃん』と呼ぶようになってしまった。

 女装している時に限ってのことかもしれないけど、さすがに女の子扱いは落ち着かない。

 

 

「うん。成り行きでね。おばあちゃんには迷惑を掛けないようにするつもりだよ。お金も自分で稼ぎたいんだ!」

「そうですか………」

 

 ふーむ、と考え込む仕草のエリカ様。

 

「でしたら明日、ジムに遊びに来ませんか? トレーナーになるための勉強にもなりますよ? もちろん、お手伝いをしてくれたら、お小遣いもあげちゃいます!」

「本当? ならいく! イーブイもね!」

「ブイ!」

 

 イーブイも「もっちろん!」と大きく頷いた

 それを確認したエリカ様はにんまりと微笑んで

 

「うふふ、それなら明日、楽しみにしてますね、『オレンちゃん』」

 

 

 あ、コレ女装してジムに行くパターンや

 

 

 

 




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レンジ「なんか増えてる!?」


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