3歳から始めるめざせポケモンマスター!   作:たっさそ

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第24話 3歳児はサファリパークへ行く

 さて、三輪車も大破したことで、サイクリングロードでサイクリングできなくなってしまった。

 

 

「レンジ!」

「大丈夫なの!?」

「無事なら無事って言いなさいよ! ズルイわよ!」

 

 ズルくないです、仕様です。

 

 子供たちに囲まれて心配されること早数分。

 

 ピクシーのサイコキネシスとニンフィアの触手のおかげで俺に怪我はない。

 あるのは心配をかけたニンフィアにぶっ叩かれた頬がはれ上がっているくらいだ。

 

「みんな、心配してくれてありがとう。もう大丈夫だよ」

 

「そう、よかった………」

 

 ホッと息をつくラン。

 

「ニンフィアも。進化しちゃうほど心配かけてごめんね」

「フィッ」

 

 

 もう知らない! とばかりにそっぽを向くニンフィア。

 しかし、その触手は俺の手首に巻き付いている。

 

 あとついでに俺のおなかの上からどいてもらえると助かるかな。

 イーブイの頃ならまだしも、3歳児の肉体だとニンフィアは流石に重いって………

 

「みんな、これからどうしよう。レンジの三輪車は壊れちゃったし」

「レンジに怪我はない? 歩くのも大変だったら、タマムシに戻ろうよ」

 

 

 ハヤトとフゥも心配そうにこちらを見下ろす。

 ねえ、早くニンフィアを僕からおろして

 

 

「せっかくここまで下ってきたんだし、セキチクまで行こうよ。僕はウインディの背中に乗るからさ」

「レンジがそういうなら、それでもいいけど、もう危ないことはしないでね?」

「懲りたよ。大丈夫。」

「フィ………」

 

 手を振りながらフゥとラン、そしてハヤトやサナエちゃんにもうしないことを誓う。

 だというのに、それでも疑わし気にニンフィアはこちらを見つめてきた。

 

 しょーがないなー。

 

「ンフィー!?」

 

 俺はニンフィアを抱きしめた

 驚いたように目を見開く。

 

「えい」

「フィア………」

 

 そのままコロンと転がってニンフィアを横倒しにして自分も転がる。

 潤んだ青い瞳と目が合った。

 

 怒気は収まっていないものの、それを補うほどの親愛がその瞳には込められている

 俺がニンフィアが大好きなのと同じように、ニンフィアも俺のことが大好きなのだ。

 そんなことは知ってる。イーブイが危険なことをしたら、俺は全力で止めただろう。

 相棒が居なくなる、それは自分の半身が居なくなるも同義。この子が泣いているのは、心配をかけた俺のせいだから。

 

 だから―――

 

 ぎゅっと、ぎゅっと、僕はニンフィアの頭を包み込んだ

 

「ありがとね」

「………フィア!」

 

 だから、これ以上の謝罪はいらない。ただ一言。感謝を述べるのみ。

 

 ぷいっとそっぽを向くニンフィア。

 そんな彼女の頭をなでてから、僕も起き上がる

 

 

「出てきて、ウインディ!」

 

「………ガウ」

「おふっ! 踏んでる! 踏んでるよウインディ!」

 

 

 起き上がったのにウインディに前足で踏み倒された

 

 なんてことをしやがるこのワンちゃんは!

 

 

 ボールから状況を見てやがったな。

 

 しかも、俺を踏みながら「何心配かけとんのじゃワレ」と言いたげに見下ろしてくる!

 

 

「これは他のポケモンたちからも甘んじて受けるべきだな」

 

 フゥが腕を組んでうなずく。よせやい。

 

「レンジが心配をかけたのは事実だもんね」

 

 ランまでそんなことを言い出した

 

 

「ピィ」

「ジョット………」

「ドードー!」「ドー………」

 

 

 じりじりとこちらに寄ってくる心配した組みのピクシーとピジョット

 

 しかもなんかドードーとか混ざってませんかねえ!

 あなた部外者だったよね!?

 

 

>わたしも、レンジにおしおきしたいんだけど

 

 な、なにを言い出すんやオレンちゃん。

 

>下手したら死んでたんだから、当たり前だよね

 

 せやかて工藤、あの三輪車じゃ止まり様がなかったねんねんで

 

>下手な関西弁使うなうんこたレンジ。お仕置き代わりに右手の使用権はわたしがもらうね

 

 な、なにをするだー!

 

 

「あれ、レンジ!?」

「なにをして………!?」

 

 オレンちゃんが俺の右手を勝手に動かし、左手で阻止する間もなくバッグからピカチュウ耳のカチューシャを取り出し、素早く装着した!!

 

「オレン………ちゃん?」

 

 フゥが驚いた顔でこちらを見つめる。

 カチューシャさえ装着してしまえばわたし(・・・)のターンよ!

 

>ぬがー! 入れ替わられたぁあああ!!

 

「みんな! レンジのアホを懲らしめてやって!」

 

>ばっ! ウチのポケモンたちはみんなレンジとオレンちゃんの入れ替わりを知っている! そんなことをすれば………!

 

 そんでもって、このカチューシャをぽいっとね。

 

>あああああああああ!!!

 

「あ、レンジに戻った」

 

 ランが冷静にこっちを見ながらつぶやく

 

「なんでレンジは自分のことを懲らしめろなんて言ってるんだ?」

「いまごろじぶんがシンパイをかけすぎたことにきづくなんて、ズルいわよ!」

 

 訳が分からず首をひねる子供たち。

 

 それをしり目にピジョットとピクシーとウインディが()の前に立ち、見下ろす

 ニンフィアは、先ほどまで自分が率先して俺をぶっ叩いていたからか、半歩引いて俺をほかの子たちに譲った

 

 そんな譲り合いの精神はいらない!!

 

「いたい、いたいって! つつかないで!」

「ピジョットー!」

 

「ピックシー!」

「おっふ!」

 

「………」

「なんか言ってよウインディ! 無言で見つめないで! 怖い!」

 

 

「ドー」「ドー!」

「てめぇはとりあえず混ざってくんなやドードー!」

 

 

 

 こうして、レンジはみんなにお仕置きをされたのであった。丸。

 

 

                 ☆

 

 

 し、しどい目にあった………

 

>わたし、痛覚も共有してるんだった………すごく痛い………

 

 バーカ

 

>レンジほどじゃないもん

 

 

 ピジョットにつつかれ、ピクシーにのしかかられ、ウインディに踏まれ、ドードーに励まされ、ニンフィアにそっぽを向かれながらも到着した、セキチクシティ

 

 あ、ドードーはゲットしました。

 

 セキチクにいた係員さんに途中で三輪車を大破させたことを報告し、三輪車は回収及び廃棄してもらうことになった。

 ゴミ持って帰っても仕方ないしね。

 

 リュックを背負ってピカチュウカチューシャを左手に握りながら、トボトボと歩く。

 

 

「フィア………」

 

 

 その間も、心配そうに俺の右手首にずっと触手を巻き付けているニンフィア。

 

 もう二度とおかしなことはさせないとでも言いたげだ。

 

 歩みの遅い俺に合わせてゆっくりと。

 やさしいなお前は。

 

「レンジー! はやくおいでよー!」

 

「あ、まってー!」

 

 

 フゥに呼ばれて駆け足でそちらに向かう。

 みんなはポケモンセンターの前で俺の到着を待っていてくれた

 

 なにもサイクリングだけの予定でセキチクシティにまで来たわけじゃない。

 

 セキチクシティには何がある?

 よく思い出してほしい。

 

 そう、入れ歯をなくしたサファリパークの園長が居る!!

 

 じゃなかった。

 

 大事なのはサファリパークの方ね。

 

 自転車はサイクリングロードの終点で預けてある。

 セキチクについてからは徒歩での移動だ。

 

 とはいえ、俺の肉体は3歳児。

 

 歩幅も短いし短足だし、体力もない。

 

 ちょこちょこポテポテと走るしかないのである

 段差が高くてポケモンセンターへの近道ができず、仕方なくジムやポケセンを遠回りして回り込み、海水浴場をチラリと一瞥してからサイクリングが終わって一時休憩のためにポケセンにやってきた次第だ。

 

 

 海水浴場か………。

 まだ春先で涼しいくらいだけど、もうちょっと気温が高くなって来たらセキチクシティで海水浴とかいいかもね。

 

 エリカ様の水着姿を拝めるかも

 

>レンジ! エリカお姉さまの肢体を衆目にさらすのはわたしは反対だよ!

 

 たしかに。お風呂場でエリカ様の裸体を正面から抱き着いて堪能できる身分としては、髪の毛一本すら渡したくないもんね。

 素肌をさらすなんてもってのほかだ。お父さん許しません。

 

>エリカお姉さまを誘うのは却下。行くならくりむちゃんとにしときな

 

 あの子がレンジの誘いに乗るわけないでしょ。その時はオレンちゃんが誘いな

 

>や、わたしも男なんだけど………。水着で気づかれるよ?

 

 アホ抜かせ。どうせ3歳児のミニマムサンだろ。レオタード着てたって気づかれねーよ

 10年後に皮剥いてからほざきやがれ

 

>それ、自分の肉体のことだよね。ブーメランしてるよ

 

 うっさい。いずれビッグサンになるんだよ。

 

 

「ふぃー、ポケセンは涼しい~。あ、ジョーイさん結婚してください」

「あら、かわいいお客様ね」

 

 

 心の中でオレンちゃんと言い合いをしながらポケセンに入る。

 

 ポケセンに入るや否やプロポーズするのも忘れない。

 そしてジョーイさんのスルースキルもとてつもない。

 

 どこに行っても同じあしらわれ方だ。マニュアルでもあるのだろうか

 

 

「おい、早くしてくれよ。こっちは急いでるんだ!」

 

 と思っていたら、どうやらジョーイさんは接客中だったようだ。

 そりゃあ僕なんかに構ってられないね。

 

 黒い服を来た男がジョーイさんに怒鳴りつける

 コツコツと靴を苛立たし気に鳴らしながらジョーイさんを急かす。

 

 行儀の悪いあんちゃんだね。

 

 しばらくして『チンチンチロリン♪』が聞こえてきた。

 奥からラッキーが台車を押してモンスターボールを運んでくる。

 

 奥には数人のジョーイさんとドクターさんが居た。そりゃそうだよね。

 

「はい、お預かりしたポケモンはみんな元気になりましたよ♪」

「ちっ! 早くしろよな。おいガキ! 邪魔だ!!」

「あ、すいませーん」

 

 さっと謝って道を譲る。

 あーいうのにはかかわらないのが一番!

 

>………

 

 何か言いたげだね、オレンちゃん

 

 

>今の人って

 

 ああ、ロケット団だったね。

 正面に赤いRの入った黒い服。

 

 

 ロケット団の下っ端の服だった。

 

 

>………どうするの?

 

 

 あん? どうするもこうするも………

 

 

 俺はスマホを取り出して110に電話を掛ける

 

 

「あ、もしもし。匿名希望の3歳児ですが。セキチクシティにロケット団の構成員らしき人物を見かけました。何もなければそれでいいのですが、何か起こったら怖いです。助けてください」

 

>………行動が早い

 

「はい。………はい、お願いします。では、失礼します」

 

 

 ぶちっと通話を切りました。

 

 すぐにセキチクシティの警察官たちが町の警戒を強化してくれるって。

 これで何も起こらないならそれが一番。情報ありがとうって言ってたよ

 

>いや、聴いてたよ。大丈夫

 

 それにしても、原作にセキチクシティでロケット団の構成員っていたっけ?

 

>いや、そんなことはなかったと思うけど………

 

 うーむ、何か起こりそうなトラブルの予感

 

>そういやまだわたしたちってそういうトラブルに巻き込まれたことってなかったよね

 

 大きなトラブルと言ったら、マサヨシがミニリュウのタマゴをたたき割ったくらいだもんな

 セキチクシティはサファリパークがあるし、ある程度レベルのある珍しいポケモンが見つかる場所でもある。

 ここにしかいないポケモン、例えばガルーラやラッキーなどは強力なポケモンだ。

 

 ん? そういえば、カイロス、ストライクはタマムシのコイン交換でも手に入る。

 

 生息地はサファリパークのみだ。

 

 

 珍しいポケモンの部類に入るだろう。

 ロケット団も、いい金になるポケモンだと思っているはずだ。

 

 

 そうか、定期的に不法侵入なりなんなりでサファリに入って乱獲している可能性がなきにしもあらず!

 

>妄想を膨らませただけだけど、ないわけではなさそうだね。実際ウチのピクシーはロケット団にオツキミ山で乱獲された子なのだし。

 

 といっても、3歳児の俺には何にもできないけどね。主人公じゃあるまいし、無尽蔵の体力も無敵の肉体も持っていない。

 

 警察に任せましょ

 

>そうだね

 

 

 ポケモンセンターに入ったら、パソコンを操作しなくてもスマホでポケモンの転送ができる。

 レンジのスマホを起動っとね

 

 

 ドードー、捕まえてそうそうなんだけど、仮想空間で遊んどけ。

 

 

「レンジ、何してたんだ?」

「ん? なんでもない。」

 

 スマホをポッケに仕舞う。

 ポケセンやおばあちゃんの家じゃないとポケモンの入れ替えはできない。

 

 神様は俺をこの世界に放り込んだだけで、何一つチートな能力はくださらないんだもの。

 まぁ、そんなもんあったらつまんないけど。

 

「あ、そこな美人のウエイトレスさん、シャンパン一つ」

「おだてても何も出ないですよ。あとシャンパンは早すぎです」

「あうち」

 

 喫茶スペースでバイトをしていたらしきバイトさんにシャンパンの注文をすると、ポンと頭を撫でられた

 残念、ナンパ失敗。

 

「フィア………」

 

 

 そっと足を踏まないで。その辺はイーブイのころから変わらないのね

 

 

 

                    ☆

 

 

 

 

「というわけで、やってきましたサファリパーク!」

「イエーイ!」

「エーイ」

「エーイ」

「みゅー♪」

 

 え? ロケット団? 警察が何とかしてくれるでしょ。

 電話したんだし。

 

 これで子供のいたずらとでも思ってたら警察なんか滅んでしまえ

 

 こちとらサイクリングロードを抜けてまでサファリパークまで来たんだよ。

 いまさら予定の変更とかありません。

 

 

 外の世界に興味津々のミニリュウも、さすがにカバンの中に入るようなサイズじゃなくなってきたから、モンスターボールから飛び出して、俺の首に巻き付いてきょろきょろと周囲を見渡しているよ

 

 桃色の身体だから、少々目立つし、さすがに重い。

 首に3キロ近いおもりをつけているのだ。重くて当然だ。

 

 

 んでもって………

 

『右手に見えますのが、ガルーラの親子連れです』

 

 ガイドさんの指示に右を向けば、ガルーラの親子が木の実を取って楽しそうに食べていた!

 

「この世界唯一の有袋類! しかも哺乳類のはずなのに卵から産まれるという摩訶不思議な存在筆頭! レンジのスマホカメラ起動! やひゃひゃひゃ!」

「レンジがまたおかしくなった!」

「ニンフィア! どうにかして!」

「フィア!」

「ぶぶっ!?」

 

 ニンフィアに触手でぶっ叩かれて正気に戻る

 ぐぬぬ、ニンフィアに進化してからというもの、レンジの奇行が鳴りを潜めている

 

 ああ、本来ならばあそこでポケモンを捕まえるために徒歩で歩いているはずなのに………

 

 

「それにしても、パークの専用バスがあってよかったねー」

「ここなら野生のポケモンたちに襲われる心配もないし」

「窓からポケモンたちの様子がよく見られるもの」

 

 

 そう、サファリパークの専用バスで園内を移動することになっているのだ

 

 

 本当なら来たかったよ。

 でもね、

 

 

 年齢制限がかかったんだよ………

 

 

 10歳なら大丈夫だったんだよ。

 さすがにポケモントレーナーとしての実力もあるし、ある程度は見逃してもらえる。

 

 でも、こっちは3歳児と5歳児と7歳児だよ。

 

 トレーナーの資格を持っていても何するかもわかんない子供が! 園内に入って迷子にならない保証がどこにある!

 

 保護者もついてきてないんだ! みんな俺が居るから大丈夫だと思いやがって!

 

 保護者同伴なら問題なかったのに………まぁ、バスから眺めているだけでも楽しいけどさ。

 

 

『左手に見えますのが、ニドリーノとニドリーナ。エサの時間のようですね』

 

 

 おお、向こうにはニドリーノとニドリーナの群れ! ニドランもいる!

 うさピョン! うさピョン!

 

 癒されるわぁ

 

>かぁわいいっ♪

 

 本当にな。あそこに混ざってモフモフしたい!

 

>でも毒針ポケモンだよ。抱いたら全身毒針だよ

 

 毒が何だってんだよ。モフ死できればケモナー冥利に尽きるだろ

 

>確かに!

 

「ニンフィア! レンジがバスから飛び降りようとしてる!」

「フィアー!!」

「ぶべらーっ!!!?」

 

 触手で引っ張られてカウンターの要領で触手でひっぱたかれる

 

 触手の扱いに慣れてきておるな………ニン、フィア………がく

 

 

『おっと、これはラッキーです! 右手奥の方にラッキーが見えます、望遠鏡は座席の下にあります。一目見ておいて損はないはずですよ』

 

 なに、それはラッキーだ! 一目見ておいてスマホで写真撮って図鑑登録しておかねば!

 

『あ、あれ? なんだか様子が………あ!!』

 

 

 双眼鏡で窓の外を覗いていると、ガイドさんが声を上げた

 

「ん?」

 

 と、同時に俺の方も異変を感じた

 

 

『黒服が、ラッキーを!?』

 

 

 その瞬間、レンジのボールホルダーから、バリンと音が聞こえて1匹のポケモンがバスの中に姿を現した

 

 

 俺は双眼鏡から目をそらさずに、その子に向かって声をかける

 

 

「ピクシー、行く気か?」

 

「ピックシー!」

 

 

 ピクシーは己の弱さゆえに、ロケット団につかまり、そして売られ、俺の元にやってきた。

 

 別にポケモンをとらえることが悪いことだとは言わない。

 それで生活をしている人だっているし、実際に俺たちはポケモンの肉を食って生きているんだ。

 

 普通の牛や豚はこの世界には生息していない。それに、人間よりも圧倒的に『ポケモン』のほうが数が多い。ここは、ポケモンの世界になんだ。

 

 良き隣人で、尊い友人で、時には食料。

 

 それがこの世界でのポケモンのあり方。

 捕らえるのが間違いだとか、殺すのが間違いだとか、そんなことを言うつもりはない。

 

 

 だけどさ、目の前で無実のポケモンが無理やり連れていかれるのを見て納得できると思うか。

 

 俺にはできない。

 

 ピクシーも、またしかり。

 

 

「フィ………」

 

 

 ニンフィアは、少し悩んだ末に俺の手首に巻き付けていた触手を、そっと放した

 

 危ないことをさせないためにずっと触手を巻き付けていたはずだ。

 

 だが、俺の行動を止めるどころか、話した触手を俺の手に搦め、自分も行くと主張してくるではないか

 

 

 

「しゃーねーな。ちょっくら悪者退治に行ってくらぁ!」

 

 ガラっと強化ガラスの窓を開けて飛び出した。

 

 

 

「ちょ、レンジ!?」

「わりいな、自習の時間だ!」

 

 

 フゥとラン、そしてバスガイドさんの制止を振り切り、宙に躍り出る。

 

 そして、俺の後に続くように、ピクシーとニンフィアがバスから飛び出した

 

「ウインディ! 僕をあっちに連れて行って! ピジョットはピクシーと一緒に空から援護を!」

「オン!」

「ピックシー!」

 

 着地地点に伏せたウインディを出現させ、ピクシーのサイコキネシスでゆっくり着地、さらにニンフィアの触手で滑ることもないように固定された。

 

 ニンフィアは鈍足だから、ウインディの背に乗って移動するらしい。

 

 ピクシーは自分を浮かせてピジョットの背に乗る。

 

 

>せっかく警察に連絡したのにね

 

 俺が動く必要もなかっただろうけど、目の前で見せられた光景を見過ごすわけにもいかないからな

 

>3歳児の肉体じゃ辛いんじゃない?

 

 

 辛いからで逃げ出すような精神はしてねぇよ。

 俺を誰だと思ってやがる

 

 

>レンジだよ

 

 おう、そうだ。俺はレンジ様だ。チートがなくとも俺には仲間がいる。いっちょガチバトルと行こうじゃないの、ロケット団の下っ端クン!!

 ここいらでちょいと主人公らしいところを見せてやりたい気分なんだよ!!

 

>強者ぶるのは、負けフラグじゃ………

 

 

 

 

 


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