3歳から始めるめざせポケモンマスター!   作:たっさそ

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第2話 3歳児はスロットでお金を稼ぐ

「へへっ、というわけで、イーブイゲットだぜ!」

 

 

 人に見つかることなくタマムシマンションの裏口に侵入し、最上階でイーブイをゲットしました。

 

 泥棒? いいえ、もらってもいいらしいよ。

 マンションの最上階で『からておう』みたいな人に聞いても、そのイーブイに預かり手はいなかったみたいだ。

 

 このイーブイって誰のイーブイなんだろう。

 勇者のポケモンか? タマムシジムのジムリーダー。エリカ様か?

 それともマサキの?

 

 なんだっていいや。

 

「よろしくな、イーブイ」

「ブイブイ!」

 

 

 まずはイーブイのステータスレベルを確認する

 

 基本通り、レベルは25だ。

 タマムシシティの隣の草むらでニャース狩りでもしていたらレベルも上がりそうだが、イーブイは進化させてなんぼの『しんかポケモン』だ。

 はたしてどのブイズに進化させればいいだろうか。

 

 個人的にはシャワーズが一番好きなんだが………スピードと一撃の威力があるサンダースも捨てがたい。

 

 特殊耐久の高いブースターも攻撃力の種族値が130族だったからオボンの実かいのちのたまを持たせて『おんがえし』『フレアドライブ』『あくび』『ねがいごと』でかなり優位に戦えたはずだ

 

 ん? いや、スターは無理だ。

 遺伝技が存在しているじゃないか。

 

 というか、フレアドライブとか、ファイアーレッドの時代じゃなくね?

 

 それに、この世界はゲームじゃない。現実だ。

 ターン制であるバトルなわけがないだろう。

 バトルはアニメ基準であると考えよう。

 

 ならば、ここは鈍足のワーズよりもスピードを生かしたダースにするべきなのではなかろうか

 

 

 いや、そもそも………

 

 

「進化の石、持ってねえよ………」

 

 

 タマムシシティのデパートで進化の石って確か買えたよな。

 

「でもお金もねぇよ………」

 

 というか、お金があっても

 

「この年齢じゃ、買えねぇよ………」

 

 うがー! どうしたらいい!?

 そもそも、どうやって生きて行こう!

 

 くぅ………こうなったら………

 

 

「パチンコに行こう。」

 

 

                  ☆

 

 

 というわけで、タマムシの食堂にてギャンブルでやらかしてしまったらしいイライラしたオヤジさんに話しかけて「じゃあコインケースは僕がもらってもいい?」と、うるうるした目で言ってみたところ、「そうでもしないと俺はいつまでもギャンブルをやめないだろうしな。あげるよ」と空っぽのコインケースをいただいた。

 

 なんでも入る魔法のバッグがほしいと思ったが、一応スマホの中に収納することが可能だったため、コインケースはスマホの中に閉じ込めた

 

 よし、あとはタマムシのゲーセンに行けば………コインくらい、いくらでも落ちているだろう。

 

 とりあえず落ちているコインを集めたら260枚手に入った。

 これでよし。というか、よくこんなに集まったな。びっくりだ

 

「おっちゃん、隣いい?」

「ん? かまわねーぞ」

 

 こわもてスキンヘッドのおっちゃんの隣。ここがベストポジション。

 なぜって? はたから見たら親子にでも見えるだろう。3歳児がここに居ても自然ですよー。不自然なんてありませんよー

 

 

 1時間後。

 

 

「すげーなちびっこ! お前才能あるんじゃねーか?」

「基本目押しだからね。タイミングさえ合えばおっちゃんでもイケるよ。はい、この300枚はおすそわけ。」

「おう、わりーな坊主」

 

 『777』『RRR』を量産。元手260枚が9122枚になりました。

 ゲーム時代によく当たると評判の台に座ること早一時間でコレだ。いい感じにコインが増えている

 

 よし、コレで行けるぞ。

 

 コイン交換所へと向かって『わざマシン13・アイアンテール』と交換だ。

 

 『わざマシン13・アイアンテール』を3つ交換し、一つの値段がコイン3000枚。

 コレで俺のコインケースの中は122枚となる。

 アイアンテールの売値は1500円。

 一時間当たり4500円の儲けだ。しかし、こんなものでは一拍の宿屋すら取れない。

 

 せっかくタマムシシティには旅館があるというのに。

 タマムシシティは都会なんだ。カプセルホテルくらいあってほしいものだが………

 

 ビジネスホテルならば泊まれるだろう。

 いや、そもそもタマムシシティの旅館の料金を知らないぞ。

 どんなポケモンも復活させる元気の欠片よりも高いのか?

 

 むむ? ポケモンセンターに泊まったりできないのかな?

 

 いろいろ調べてみる必要がありそうだ。

 

 

「おっちゃん、換金と交換を手伝ってくれてありがと」

「いいってことよ。」

「あと聞きたいことがあるんだけど、いい?」

 

 というわけで、子供の俺がコインを景品に交換などできるわけがなく、さらにわざマシンを売るなどもってのほかなので、スキンヘッドのおっちゃんが俺の代わりにいろいろやってくれたのだ!

 コイン300枚で手伝ってくれたよ。安い出費だ。

 

 

「ポケモンセンターに泊まることってできるの?」

「できるぜ。ただし、一拍食事つきで4500円だがな。」

「………食事つきで泊まれるだけましか。ありがとう。タマムシの旅館の宿泊料金は?」

「たしか、一泊二日の朝晩食事とお風呂がついて12,000円だったはずだ」

 

 しかたがない。旅館はあきらめよう。

 今の俺には敷居が高すぎる

 

 きっと、主人公たちが旅をするとき、ATMで引き落とした親から仕送りがあるのだろう。

 だから旅なんかできるんだよ。

 

「ありがとう。参考になったよ」

「ああ………だが、お前まさか一人で泊まる気か?」

「そうだけど?」

 

 あっけらかんと答えると、おっちゃんは目を丸くした

 

「親は? まだお前2,3歳くらいなのに。ゲームコーナーに来ているのか?」

「あはは、いないよそんなの。僕は今、家出中なの」

 

 いい言い訳が思いつかない俺は、適当に設定をねつ造することにした。

 そう、今の俺はママと喧嘩した勢いで家を飛び出していった哀れな子供なのさ

 おっちゃんはガリガリとスキンヘッドを掻くと

 

「それなら、お前はもう自分の家に帰れ。」

「………え?」

 

 なんでそうなるの? 家出中って言ったじゃん。

 って、俺は普通に3歳児じゃん!

 

「絶対にお前の母ちゃんは心配しているぞ。帰ったらすぐにお母さんにごめんなさいって言うんだ。わかったか?」

 

「………。」

 

「お前がどんな気持ちで家出をしたのかは知らないが、オレの娘が家出した時、オレぁ心臓が張り裂けそうなほど不安で不安で仕方がなかった。ちゃんと飯を食っているのか。ちゃんと歯ぁ磨いたのか。まだ怒っているのか。泣いていないか。一人の親として言わせてもらうが、子供がいなくなれば親は心配するもんなんだ。あまり、親に心配かけさせないでやってくれ。それが今のお前にできる最大限の親孝行だ。」

 

 ぽんと俺の背中を撫でて、こわもてだけど身長の低い俺の目線に合わせてから優しく言い聞かせるように家出を止めるように促すおっちゃん

 

 

 え、なに。なんかやっちゃった? さすがにこんな展開は予想していなかった。

 どうしよう。なんかおっちゃんがすごくいいことを言ってる!

 

「………わかった。おっちゃんの言うとおりにする、勝手にフエンせんべいを食べたこと、ママ許してくれるかな」

 

 うん。こういうときはさらに被せてしまうに限るね。

 この世界に親はいないんだけどね!!

 

「ちゃんと謝れば許してくれるさ。オレが保証する。はやくママを安心させてやれ」

 

 なんのこっちゃ。おっちゃんに保障されてもなぁ。

 というか、こわもてのおっちゃんなのに、子供にものすごくやさしいおっちゃんだ。

 

 俺に優しくしてなかったら、どう見ても暴走族かヤク丸さんとこの鉄砲玉だよ。

 

 

 とりあえず、今日のところはスロットで稼げるのはこの時間までだな。

 続きは明日だ。

 

 親がいないから今日はポケモンセンターで寝泊まりするよ。一応イーブイもいるしね。

 明日は、わざマシンの換金での捻出と、コインを溜めて『ケーシー』と『ピッピ』と『ストライク』と『カイロス』と『ミニリュウ』と『ポリゴン』をゲットしてやる

 

「ありがとう、おっちゃん!」

「おう。気をつけて帰れよ」

 

 そうして、俺はポケモンセンターに向かって走り出した。

 帰り道なんて、どこにもないんだもの。地球はどこよ。

 

               ☆

 

 

「あら、小さいお客さんね。こんにちは」

「こんにちはジョーイさん。ポケセンで宿泊っていくらですか?」

 

 というわけでポケセンに到着。ジョーイさんなんだけど、めちゃくちゃかわいいの!

 年齢は25歳くらいのおねーさんだよ、美人だ美人! ひゃっほーう!

 

「あれ? 一人で泊まるのかな?」

「うん。問題ある?」

「えっとね、お父さんかお母さんは一緒にいないのかな?」

 

 むむ!? まさか、ここでも問題発生か!?

 

「いないよ! 捨て子だからね! 僕一人で旅をしている最中だよ!」

 

 自信満々にどんと胸をたたいて、さらにテキトーな設定を作って乗り切ろう!

 

「そう………。大変だったのね………お金はいいから、ゆっくりやすんでいきなさいね」

 

 やや悲しそうな顔をしながら、同情した声を出すジョーイさん。

 ………え、いいの? いいならそのまま泊まっちゃうしお金も払わないよ?

 だって本当に切羽詰まってるんだもん。

 

 

「そうだジョーイさん。この子の様子も見てあげて?」

 

 そう言って俺はモンスターボールを取り出すと、ジョーイさんに預ける。

 

「この子は?」

「タマムシマンションの屋上で放置されてたモンスターボールの中に入っていたんだよ」

「ああ、マサキさんのイーブイね」

 

 やっぱりこのイーブイはマサキのポケモンだったのね。というか、ジョーイさん知ってたんだ。

 

「この子はね、タマムシジムのジムリーダー。エリカさんがマサキさんから預かっていたポケモンなんですが、エリカさんの出身はジョウト地方のエンジュシティですし、エリカさんの実家は良家なので、ポケモンを飼育することが許されていないらしいの。だからタマムシマンションの最上階のトレーナーズスクールで飼育していたみたいなんだけど………。エリカさんはジムリーダーとしてのお仕事も忙しそうですしね………。イーブイの健康状態はよさそうだけどやっぱりポケモンは外で遊ばないとね。」

 

 

 エリカ様の実家はエンジュシティだったのか!

 実はジョウト出身だったというエリカ様にびっくりだ

 

 ああ、でも名残があるかも。着物だし。のんびりした性格だし。

 そして、新事実! エリカ様の住まいはタマムシマンションだったのか!

 

 それに、このイーブイ………マサキがエリカ様に預けたイーブイだったのか

 マサキがジョウト地方のコガネシティ出身っていうことは知ってたけど、幼馴染なのかな?

 おや、アカネちゃんとみかんちゃんもか?

 

 イーブイが最上階のトレーナーズスクールで飼われているのは、イーブイが『しんかポケモン』であるため、ポケモンの進化についての説明を教えやすいからだろう。

 

「じゃあ、このイーブイ………。エリカ様に返した方がいいのかな………?」

 

 俺がそう呟いた時、ジョーイさんに渡したモンスターボールが勝手に作動して、イーブイがボールから出てきた

 

「ブーイ」

 

 かと思ったら、俺の足元に体を擦りつけてくる。

 まるでいなくならないでと言うようなさびしそうな目で俺を見上げるイーブイを3歳児の体力でなんとか抱き上げると、俺のほっぺにうれしそうに顔を擦りつけてくる

 もふもふして気持ちいい

 

「いいえ、そうじゃないわ。エリカさんもね、イーブイのお世話するのが大変だって言ってたみたいなの。よかったら貰ってもらえるかしら。エリカさんは貰い手を探していたみたいだし、エリカさんには私から伝えておくわ。その子もあなたに懐いているみたいだしね♪」

 

 ジョーイさんがそう言ってくれたけれど、やっぱりそう言うことはエリカ様に直接俺が言うべきことだと思うんだよな

 

 

「それは僕が直接エリカ様に言うよ。スジを通さないと男じゃないからね」

 

 ドンと胸を叩くと、ジョーイさんは「まあ、男らしい」と微笑んでくれた

 惚れてもええんやで?

 

 イーブイはエリカ様に育ててくれたことを感謝しているだろうが、エリカ様はジムリーダーとして忙しい身だ。

 イーブイも寂しい思いをしただろう。

 

「もうさびしくないからな、イーブイ。」

「ブーイ!」

「そいじゃ、イーブイを預かって診察()てもらってもいい? その間に僕はチェックインの方を済ませるよ」

 

 イーブイを抱き上げてジョーイさんに預けると

 

「ええ、わかったわ。身分証や保険証は持ってる?」

 

「え?」

「え?」

 

 

 身分証………だと?

 なんだそれ?

 

「身分証や保険証がないと、もしかしてポケモンを治療するのに料金が発生したり?」

「………するわね」

 

 

 なんてこった! ポケモンセンターで無料の治療ができたのは保険が適用されていたからなのか!

 こりゃまた新事実!

 

 しかし、ジョーイさんだって慈善事業でこんなことをしているはずがない

 お給料をもらってポケモンを治療しているんだ。

 

 お国からの保証で給料をもらっていて当然だ。

 

 

 

 

「あー………。今から一緒に市役所に行って住民登録しましょうか」

「………はい」

 

 

 こうして、俺は晴れてこの世界の住人として生きることになりました

 やったね!

 

 

 


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