3歳から始めるめざせポケモンマスター!   作:たっさそ

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第14話 3歳児はくりむを助ける

「ブイブイー?」

「んー? そうだね、じゃあ22番道路に行ってみようか」

 

 グリーンと別れた後、イーブイが次は何処に行くの? と聞いてきたので、一番近い新しいポケモンが居る場所に行くことにする

 

 22番道路は“マンキー”と“オニスズメ”が居たはずだ。捕まえることができれば………図鑑もい感じに埋まるね

 

 ウインディの上で地図を確認しながらトキワシティを出る。

 

 

「おや、キミ、強そうなポケモンを持ってるね、俺とバトルしようぜ!」

「ふに?」

 

 すると、バトルジャンキーが現れた

 

 そこに居たのは、レッドである。

 

 うわぁ、3歳児にバトルを申し込む人、3人目だぁ

 

 俺の初試合、全部主人公組だよ。

 レンジの戦績―1戦1勝

 オレンの戦績―1戦1敗

 

 総合戦績―――2戦1勝1敗

 

「いいよ。受けてあげる。ルールと賞金は?」

「“ありあり”のフルバトルで!」

 

 

 ごちになります。

 “ありあり”というのは賞金あり、アイテムありの略、らしい。

 これはグリーンから聞いた。

 

 追加で2勝1敗。レッドの分。

 確定試合です。ケチョンケチョンにしてやりませう。

 

「行け、ヒトカゲ!」

「カ………カゲェ………ゼェ、ゼェ………」

 

 

 と、思ったら、ヒトカゲはすでにボロボロであった。

 

「………。」←レンジ

「………。」←イーブイ

「………。」←ウインディ

 

 

 なんだこいつ。ふざけてんのか?

 さきほどグリーンがレッドと戦って敗れてきたが、それでも接戦だったはずだ。

 グリーンはポケモンセンターにすぐにポケモンを預けていた。

 

 だけど、こいつはヒトカゲの体調を無視して、ここでレベル上げかポケモンの捕獲をしているらしい。

 

「タツベイ、出てきて。」

「ベーイ!」

 

 俺はイーブイでもその場に居るウインディでもなく、手持ち最弱のタツベイを繰り出した

 

 

 タツベイのレベルは8。

 ヒトカゲのレベルは11

 

「よーし、やるぞ、“カゲどん”!」

「カ、ゲェ………」

 

 ヒトカゲはフルバトルと聞いてげんなりしつつ、タツベイの後ろに控えているイーブイと体の大きなウインディを今の状態で戦って、さらに勝てと。3タテしろと命令するレッドの無茶ぶりに、すでに涙目であった

 

 

「………。」

 

 そんな様子に、もはや俺は無表情。

 ゲームならばたしかに、ヒトカゲはそう言う扱いでボロボロになっても経験値集めをしていたさ。

 

 だが、ここはあくまで現実。ヒトカゲは生きているのだ。

 レベル差のおかげで先手を取って、さらに“もうか”の特性がある。その状態でも一撃で勝てる状態が続いていたのかもしれないが、ヒトカゲの体力はもはや限界だ

 

 すでにHPゲージは赤色でピコンピコンと言っていることだろう。

 

「よーし、カゲどん、“ひのこ”!」

 

 しかも、タツベイに対してひのこ攻撃。明らかなタイプ無視だ。

 これはしょうがない。俺だってゲーム初心者だった初代赤・緑の頃はどのポケモンにどの攻撃が有効かなどは手探りで探していたもんだ。

 

「カゲ………カゲァ――!!」

 

 特性“猛火”が発動しているのか、ヒュンヒュンと力強く飛んでくる火の粉に対し、タツベイは目を瞑って火の粉を受け切る構えを取り――

 

「“いかり”!!」

 

 すべての火の粉を受け切ると、タツベイは瞳に炎を灯す

 効果は今一つゆえ、ダメージは少ない。だが、タツベイの怒りのボルテージは上がる

 

「―――ッベイ!!」

「カギャ!」

 

 拳を握りしめたタツベイは、そのままヒトカゲをぶん殴った。

 タツベイの覚えている技は“ひのこ”“にらみつける”“いかり”のみ。

 一応体当たりや頭突きのような技も可能であるが、ポケモンの技特有のオーラのようなものは発生しない。

 

 

 レベル差はあるが、もともと体力が限界ギリギリであったため、威力20を倍増させられた“いかり”の一撃によってあえなく眼を回して気絶してしまったようだ

 

「ああっ! カゲどん!」

 

 心配そうにヒトカゲに駆け寄るレッド

 

 俺はそんな彼を無表情で見つめていた

 

 

「そんなぁ、さっきグリーンにも勝ったのに………こんな子供に、なんで負けたんだよぅ」

 

 戦ったのは俺ではないし、そんな状態のヒトカゲを使ったらコラッタだって勝てるわ。

 

「さっさとお金をよこしなさい。」

「うぅ………はい」

 

 70円。おいしくない。

 

「さっきなんで負けたんだって言ったけどさぁ………あんた、ポケモンバトル舐めてんの? そんな状態のヒトカゲを使ったら負けるのは当然じゃねえか! 馬鹿か!」

「な、なんだと!?」

「あたりまえだボケナス! 最初からヒトカゲはボロボロだったじゃねえか! ポケモンは道具じゃねェンだぞ! テメェ自分が全身を怪我してんのにボクシングするのか? ぁあ!? お前がヒトカゲにやらせたことはそう言うことなんだぞ! そんなのポケモンが可哀想だ! ちったぁポケモンの気持ちも考えろや!」

 

 俺が怒鳴るとレッドは驚いて口をつぐんだ

 先ほどレッドはポケモンのことを家族だと思っているはずだと思ったが、残念だ。

 ただの虫取りしているガキンチョと同じだ。

 初心者だから、ポケモンのことをよくわかってないのは仕方ないけどさぁ。

 もうちょっと大切にできるでしょ。生きてるんだから。

 

「ポケモンセンターには頻繁に連れ帰った方がいい。ポケモンをゲットするのも大事だけどさ、目の前の相棒をきちんと心配してやってよ。だから実力を出す前に負けるんだ」

 

「あ、あぁ」

「ほら、行って。そしてヒトカゲにちゃんと謝れ。ヒトカゲだって本当は全力で戦って勝ちたかったはずだから。」

 

 俺はレッドにそう言って、22番道路の草原に向かって歩みを進めた

 

 誰だって失敗はあるが、これはヒドイ。

 未来のチャンピオンならしっかりしろよな。

 

 

                  ☆

 

 

 レッドと別れ、22番道路でミニリュウやタツベイで戦いながらマンキーとオニスズメを捕まえ、レンジのスマホに収納した頃、遠くで女の子の声が聞こえてきた

 

「誰だ? こんなところで」

「みゅー?」

「ベイー?」

「ブイ?」

 

 声の方にどんどん進んでいくと

 

 

「ええーっ! ダメなんですかー!?」

 

 

 22番道路のポケモンリーグに続く関所のような場所で通せんぼを喰らっているくりむちゃんを見つけた。

 

「まぁ予想通りっちゃ予想通りなんだよねー。あ、ミニリュウはボールに戻ってて。レンジの姿でキミを連れているのはまずいから。」

「みゅー!」

 

 ミニリュウをボールに収納してから警備の人に止められるくりむちゃんを眺める。

 

「バッジ? バッジってなに? それが必要なの? それがなかったらどうしたらいいのー?」

 

 それがなかったら集めるんだよ。

 話の通じない女の子に、警備のおっちゃんも苦笑いだ。

 

「ええい、こうなったら色仕掛けしかもう残された手段がないわ!」

 

 は?

 

「ねえ、これで通して下さらない?」

 

 そう言ってくりむちゃんはスカートに手を掛け―――

 絶対領域の肌色の面積が少しだけ広がった

 

 白い布地(おパンツ)まであと少し。

 

「………。」←レンジ

「………。」←警備員

「………。」←くりむ

 

 

 アホか。さすがにガキに欲情する警備員じゃ―――

 

 

「それじゃ、キミ、ここを通してあげるかわりに、ちょっといっしょに向こうのしげみにいこうか」

「え? こんなんで本当に通してくれるの!? わあ! お兄ちゃんの持ってた漫画ってすごーい! うん、いくいくー!」

 

 

 アホー!!!!

 

 

「ジュンサーさぁああああん!!! 強姦魔! 強姦魔がおるで――――!!!」

「ッ!!?」

「え? なに?」

 

 

 うおおおおお!! 声に導かれてここに来てよかった!

 くりむちゃんがエライことになっていた可能性がある!

 

 あ、あぶなかった!

 

「こっちに!」

「きゃっ!」

 

 俺の叫び声にびっくりした警備員さんが慌てて詰所に逃げたのを尻目に、俺は草むらから飛びだしてくりむちゃんの手を引いてそこから走り出す

 

「ちょっちょっと! あなたなに!? せっかくポケモンリーグに入れそうだったのに!」

 

 状況を理解していないのかこのアンポンタンは!

 

「うるさい黙れみそでんがく!」

「みそでんがく!?」

「いいから来て!!」

 

 

 リーグの関所には、ジョウトに通じる道とシロガネ山に通じる道とチャンピオンロードに通じる道が存在している

 

 すべて許可証がなければ通ることは出来ないようになっている。

 

 それを色仕掛けでゴリ押ししようとするなんて、頭のねじがぶっ飛んだマヌケとしか言いようのない

 

 だいぶ関所から離れたところで、ようやくくりむちゃんの手を離す

 

「ちょっともう! なんなのよあなた。」

「なんなのよじゃないわよもう! お前今自分があの警備員になにされそうになってんのかわかってないだろ! 絶対に一生後悔することになってたぞ!」

「ちょっと言ってる意味がわからないんだけど、ねえ、どうしてじゃまするの?」

 

 ああー! もう! この子は性知識がほとんどなさそうだ!

 こういう場合なんて説明したらいいんだ!?

 あなたはあの警備員にレイプされそうになっていましたってか?

 ふざけんな、きっと伝わらねえ!

 

「えーと………」

 

 

 ガリガリと頭を掻き毟る

 ええい、ままよ!

 

「とにかく! 女の子がそんな気軽にスカートをたくし上げちゃダメ! そんなことしたら男は簡単に野獣に変身しちゃうの!」

 

 

 そんなことを言っても、所詮こちらは3歳児。

 くりむちゃんも「野獣?」と首を捻るばかりだ

 

「もう、そんなわけのわからないことをいってお姉さんを困らせたらダメだよ!」

 

 諭そうとするんじゃないくりむちゃん。

 精神年齢はおじさんのほうが上なんだぞ。

 

「あなた、お名前は?」

「レンジ。こっちは相棒のイーブイ。それとタツベイ」

「ブイ!」「ベーイ!」

 

 足元のイーブイとタツベイが片手をあげて返事をする。

 今回の件についてはイーブイも俺のふくらはぎをぺしぺしと叩いてよくやったと褒めてくれた。

 さすがに自分はエッチなおじさんだと自覚しているが、少女が襲われそうになっているのを見過ごせるほど腐っちゃないやい。

 

 

「レンジ君ね。なんか今日はオレンジ色の子供とイーブイに縁があるなぁ………」

 

 そりゃあ、主人公たちが珍しくて追っかけてきたからね。

 感心したようにため息を漏らすくりむちゃんに、俺はカバンから取り出したトレーナーカードを見せる。

 

「一応、僕は飛び級でトレーナーの資格を持ってるよ。コレがトレーナーカード。だからこそ言うけど、ポケモンリーグの門を潜るなら、各地のジムリーダーを倒してバッジを手に入れないとダメ! そんな色仕掛けでリーグに入ってもポケモンの実力じゃないでしょ!」

 

 その言葉にむっとするくりむちゃん

 

「でも入れるならいいじゃない。面倒な手順を踏まなくて済むのよ?」

「そんなことしたらキミの人生が終わっちゃうって言ってんでしょうが!」

「なんでそんなこと言うの? ぜんっぜん言ってることわかんない!」

 

 ぐぬぬぬ、とにらみ合う俺とくりむちゃん

 

 頑固な子だ。

 

 ええい、面倒だ。どうせこの子はバトルジャンキー。

 ならば!

 

「面倒事は!」

「バトルで決着をつける!」

 

 気は合いそうだ。だが、こちらはもはや手加減するつもりはナッシング。

 

「勝負よ! こっちが勝ったら、私はポケモンリーグに挑戦するわ!」

「それじゃ、こっちが勝ったら、おとなしくジムバッジを集めてからリーグに挑戦するってことでどうだ!」

「いいわ、それで行きましょう!」

 

 余計負けられねぇんだよこん畜生!

 

「ルールは“ありあり”の1対1! 手加減しないから覚悟しやがれ! GO! “イーブイ”!」

「ブイブーイ!」

 

「こっちだって負けないわ! 全戦全勝の私に死角は無い! お願い、“フッシー”!!」

「ダネフッシィ!」

 

 全戦全勝って、オレンちゃんだろ!

 あの子の色ミニリュウはまだ攻撃技を覚えていないってのに! 調子に乗りおって!

 

 

                 ☆

 

 

 勝ちました。

 

 イーブイにむかって体当たりを仕掛けてきたフシギダネに、イーブイは頭突きをかました。

 カウンター気味に入った頭突きに吹き飛ばされたフシギダネ。

 ふたたびくりむちゃんの指示で体当たりを繰り出すが、すかさずスピードスターで迎撃完了である。

 

「ふんっ。これに懲りたら、もう二度と色仕掛けなんてしないことだね」

 

「ああん! “フッシー”!」

 

 眼を回しているフシギダネを抱きかかえるくりむちゃん

 色仕掛けをするなら俺の眼の前だけにしなさい。

 

「ほら、はやくポケセンに行って回復させてもらいなさい!」

「きゃん! うぅ………わかった」

 

 俺はそんなくりむちゃんのおしりをひっぱたいて歩かせ、ポケセンまで付き添いました。

 ふぅ。これでくりむちゃんはあんなアホな方法でポケモンリーグに挑戦なんかしないだろう。

 きっと、将来の黒歴史だ。

 

 

「あれ? くりむ?」

「あ、お兄ちゃん」

 

 するとそこには、レッドがおりました

 

 ヒトカゲの治療中なのだろう

 

「なんでお兄ちゃんがこんなところに? お兄ちゃんならもっと先に進んでいるのかと思ってたよ」

「それは………そうしたいのはやまやまなんだけどね、ヒトカゲの治療が終わるのを待ってるんだ。ってくりむはなんでその子と一緒に?」

 

 レッドはくりむちゃんと一緒に現れた俺に一瞬だけビクリと反応する

 

 そりゃそうだ。

 先ほど彼を説教したばかりなのだから。

 

「さっきこの子とバトルして負けちゃったんだ」

「キミがおかしなことをしようとするから、僕はそれを止めようとしただけだよ」

「楽できるならいいじゃない!」

「ダメ! 人間楽を覚えたらダメになるんだよー! それに僕はキミとのバトルに勝ったんだ。約束は覚えているよね!」

「くぅ………」

 

 ぐぬぬ! と互いににらみ合う。

 どうもレンジとくりむちゃんは相性が悪いらしい

 ねえオレンちゃん。どう思う? え? 代われ? 嫌だ。

 

 状況を読み込めないレッドは首を捻るばかりだ

 

「ちなみに、なにをしようとしていたんだ?」

「ポケモンリーグの関所を色仕掛けで通り抜けようとしてスカートをたくし上げてた」

「お兄ちゃんの持ってる漫画のマネをしてみたの!」

 

 俺とくりむちゃんの言葉をじっくり吟味したレッドは

 

 

「これはくりむが悪い。」

「あいたー!」

 

 

 スパーン! と妹の頭を引っ叩いた。

 ざまーみろ!

 

 

 




 一方その頃のフゥとラン


フゥ「こんにちはー」
ラン「レンジはいますかー?」

おばあちゃん「おやまぁ、かわいいお客さんだこと。レンジから話は聞いているよ。上がって行きなさい」

二人「「 おじゃましまーす 」」


フゥ「あれ?」
ラン「レンジは?」

ばぁ「あの子はどこかに遊びに行ったよ。お夕飯までには戻ると思うわ」

フゥ「そうなんだ」
ラン「ちょっと退屈だね」
フゥ「レンジに」
ラン「飛び級のこと」
フゥ「聞きたかったのに」
ラン「ちょっと残念」


ピッピ「ピッピィ!」
ニドラン♀「きゃーう!」
ニャース「にゃーご!」

フゥ「この子達も」
ラン「少しさびしそうだね」


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