宇宙戦艦YAM@TO完結編(ディンギル・アクエリアス戦役)   作:Brahma

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敵の猛攻ではやばやピンチのヤマトがとった「懐かしい」秘策とは...


第5話 都市要塞ウルク攻防戦

「!!」

そのとき、上空の敵にみだれがみられる。

ひとりでに撃墜し、火球に変わり、爆煙を噴出して敵艦載機と水雷艇が四散するようにみえる。

「加藤隊、アクエリアス上空の敵戦闘機隊を撃破し、ただいま帰還しました。」

「山本隊、同じく敵部隊を撃破。ヤマトの救援に帰還しました。」

第一艦橋のクルーの顔が明るくなる。

敵部隊をたたいて帰還してきたコスモファルコン隊が帰ってきたのだ。ヤマト上空の敵機を撃墜しはじめる。

 

「アブシャロム様、ヤマトを射程圏内にとらえました。」

「よし、主砲斉射!」

 

「敵艦隊射程圏内!」

「ショックカノン、発射!」

しかし、圧倒的に数の多いデインギル艦隊に被害報告が繰り返される。

「千早ちゃん、3時の方向20宇宙キロ先に小惑星帯がある。」

「左舷パルスレーザー斉射!、左舷ミサイル発射!」

土門がとっさに横腹を狙われないよう弾幕をはる。

「面舵いっぱい、90°回頭!」

「反重力反応機発射!」

律子が命じて、いっせいに発射された無数の反重力反応機が小惑星に吸着する。

「岩盤装着!」

岩盤が装着し、ヤマトの姿をかくす。

「エンジン停止!」

 

「ヤマト、小惑星帯で反応消失!」

「なに、どこかにいるはずだ。」

「おなじような岩塊が吸着したような小惑星もどきが多数。」

「どれかがヤマトに違いない。かまわん。小惑星ごと吹き飛ばせ。」

 

「敵が砲撃してきます。」

「小惑星帯の軌道からヤマト艦首方向へ敵艦隊がくるまでどのくらい時間がかかる?」

「あと1時間ほどです。」

「それまでなんとか耐えるのよ。」

岩塊は吹き飛ばされても再び吸着し、どれがヤマトかわからないようにしている。

「律子さん、反重力反応機を改良したんですね。」

「こんなこともあろうかと、デコイがつくれるようにしたのよ。」

 

「アブシャロム様、岩塊をいくら撃ってもふたたび吸着します。きりがありません。」

「そうか。じゃあ、ハイパー放射ミサイルを放ってやれ。岩盤を貼り付けた状態ではあのビーム兵器は使えないはずだから反応せざるをえないだろう。」

「はつ。」

「ハイパー放射ミサイル発射!」

 

すると岩塊が動き出してハイパー放射ミサイルに反応したように「攻撃」してくる。

「なんだ?何が起こっているのだ??」

岩塊はハイパー放射ミサイルに「襲いかかって」圧迫し、次々に射線を狂わせ、爆発四散するものもある。堅牢なはずのハイパー放射ミサイルが岩盤の圧力に耐え切れずにつぶされて爆発しているのだ。

 

「反重力反応機をハイパー放射ミサイルが放出している特殊なエネルギーを感知して反応するよう改造したのよ。」

 

「砲撃を続けろ!」

デインギル艦隊は砲撃を続ける。

「あと5分で敵艦隊正面にきます。」

「岩盤回転!」

律子が命じると岩盤がヤマトの船体からはがれて周囲で回転し始める。

 

「ヤマト発見、11時半の方向15宇宙キロ。」

「全艦、ヤマトに集中攻撃だ。」

ディンギル艦隊のオレンジ色の数百、数千にも及ぶ光条がヤマトヘむかって横殴りの雨のようにふりそそぐ。ヤマトは岩盤回転でそれを必死に防ぐ。

 

「仰角80°ヤマト艦載機が接近!」

「何!」

ディンギル艦隊が次々に貫かれて四散し、砲撃が衰えていく。

「いまだ、波動砲発射用意。」

「波動砲への回路開け!」

「タキオン粒子出力上昇。」

「エネルギー充填100%」

「土門君、まかせたよ。」

「はい、艦長。」

「ターゲットスコープオープン電影クロスゲージ明度20!」

「エネルギー充填120%!発射準備完了。」

「発射10秒前、9,8,7,...3,2,1,発射!」

すさまじい光と熱の激流がヤマト艦首から放射され、真昼のように宇宙空間を照らし、光り輝いてディンギル艦隊を包み込み、溶かし、押し流し、打ち砕き、引き裂き、四散させる。

「ぎゃあああああ。」

デインギルの将兵たちが悲鳴を発するのを赦されるのはかれらが気化するまでのわずかの間であった。アブシャロムはやけどを負いながらも脱出艇に乗り込み奇跡的に脱出する。

「敵、脱出艇一機発見。当艦を離れ、敵都市要塞方向へ逃走していきます。」

「ほうっておいて問題ないと思う。」

「そうね。敗軍の将だから逃げたところで...。」

 

「コ・ヤース大神官大総統閣下。」

「何だ。」

「アブシャロム将軍からの通信です。」

「偉大なるご尊父、大神官大総統閣下。我が艦隊は全力でヤマトを撃滅したは...。」

コ・ヤースはしばらく通信を聞いていたが、それも数秒のことだった。

プツン...平然と通信を切る。

「ニュートリノビーム防御幕照射用意。」

「大神官大総統閣下?」

「かまわぬ。ニュートリノビーム防御幕照射!」

「ははっ。」

都市要塞に二箇所あるニュートリノビーム防御幕照射装置からピンク色の光が渦を巻くように放射されていく。

 

「あ、あれは...父上!」

アブシャロムは青ざめる。

「反転!」

しかし、アブシャロムの脱出艇は、薄赤色の光の渦においつかれ、吞み込まれて引き裂かれる。

 

「あ、あれは....。」

「律子さん??」

「ニュートリノビームだわ。あれをまともに受けたらあの敵機のように溶かされて引き裂かれてしまう。」

「千早ちゃん...。」

千早はうなづき

「反転180°!波動エンジンフルパワー。ワープ突入速度!」

 

「ふふふ...ヤマトめ。逃げても無駄だ。」

コ・ヤースは不敵な笑みを浮かべてつぶやく。

「ニュートリノビーム砲、目標ヤマト!撃て!」

ニュートリノビーム砲のうす赤い光の奔流がヤマトにおいすがってくる。

「機関室!ワープ突入速度へあげて!」

真が叫ぶが太助と亜美、真美の返事は悲鳴のようだった。

「まこちん、さっきの波動砲発射で波動エネルギーがもれてるよ><。出力あがらないよ。」

「フルパワー噴射困難です><!」

「!! 壊れてもいいから出力最大にして!ここでニュートリノビームに吞み込まれたら一巻の終わりだよ!」

「やってみます。」

「ニュートリノビーム、艦尾まで20m!間に合いません><」

「!!」

「ニュートリノビームが??ヤマトを避けている??」

「そうか!ニュートリノビームは波動エネルギーと相反する性質。磁石のN極とS極がはじきあうようにお互いをはじきあっているんだわ。」

「千早ちゃん、反転180°!波動砲口から波動エネルギーをリークしながら敵都市要塞中央部へ降ります。」

「春香!」

「艦長!」

春香の顔には、ふだんのころんで照れ笑いをする少女の面影はない。女性であるからこそのかすかなやわらかさはあるものの、りりしさと歴戦の指揮官だけがもつプロの気迫がみなぎっていた。

「復唱は?」

「反転180°!」

「波動エネルギー逆噴射!敵要塞中央部へ強硬着陸用意!」

「加藤さん、山本さん、コスモファルコン発進。波動エネルギー内を飛行して。」

「了解!」

 

「閣下!ヤマトがつっこんできます。」

「かまわん。アクエリアスのワープを急ぐのだ。」

「はつ。」

 

「敵要塞表面まであと500、400、...」

「着陸!」

ガガガガガ...キイイイイイイイイイイ...ガクガクガク

激しい振動がして第一艦橋のクルー、艦内のクルーのなかには投げ出される者もいる。

 

「閣下!ヤマトが...強行着陸しました。」

「戦闘機隊発進!たたきつぶせ!それから司令部と次元空間質量移送機にバリアをはれ!」

「次元空間質量移送光線の照射準備完了!」

「よし、照射だ」

 

「艦長!あれは?」

「ワープ光線の照射装置ね。」

代わりに律子が答える。

「あの建物がワープ光線の照射装置のコントロールセンターってわけか。」

「土門君。あの建物に砲撃を集中させて。」

「はい。」

 

「敵、艦載機隊接近。」

「加藤さん、山本さん、応戦お願いします。ヤマトに接近したものはパルスレーザーで砲撃!」

「了解。」

 

「艦長!バリアを張っているようです。」

「ショックカノンを超収束モードにして!一点に集中砲火!」

「了解!超収束モード!第一、第二主砲、第一副砲、座標N76538、R87693 に照準!発射!」

 

「ワープ光線照射急げ!出力最大だ!バリアがもたん。」

「機甲騎兵隊を出撃させろ。直接ヤマトをたたく。わたしが直接指揮する。」

 

空中戦でコスモファルコン隊は善戦しているもののなにしろ敵の本拠地で戦っている。

戦闘機が次々に現れる。コスモファルコン隊の網の目を抜けてヤマトヘやってくる。

 

「サーモバリックモード!発射!」

数百機もの戦闘機隊をほうむるが、水雷艇もあらわれて、主砲塔にむけてハイパー放射ミサイルを放つ。

「第一主砲塔大破!」

「第一副砲大破!いずれも砲撃不能!」

そのときコスモファルコン隊の一部が水雷艇を見つけて撃墜する。

 

「春香!あれを見て!なにか白い馬のようなものに乗った大軍よ。」

それはコ・ヤース大神官大総統自ら率いるロボットホースの機甲騎兵隊であった。

「ディンギルの戦士たちよ!ヤマトヘ総攻撃だ!。」

「戦闘班出撃!白兵戦だ!」

土門が指揮してコスモ手榴弾とコスモガン、機関銃、多弾頭砲が用意される。

多弾頭砲が撃たれ、数百騎のロボットホースとディンギル兵が倒されて、無数の爆煙に変わる。しかし、それは半数ほどでしかなく、コスモガンと機関銃、コスモ手榴弾で応戦する。

「アクエリアスの色が変わったわ。」

「もう時間がないね。」

「千早ちゃん、ヤマトを持ち上げよう。また水雷艇が来たら...。」

「ええ、わかったわ。」

「補助エンジン点火!圧縮空気口オープン!」

ヤマトが上昇し、ヤマトの甲板にいた騎兵のうち数騎が要塞へふるい落とされる。二十数騎の機甲騎兵が甲板の上に残ったがヤマトクルーが陰に隠れてコスモガンやコスモ手榴弾を放ち、巧みな攻撃ですべて倒す。

コスモファルコン隊がもどってきてヤマト上空をまもり、多弾頭砲とコスモ手榴弾で倒しきれないロボットホースを掃討する。

「ひきかえせ!」

コ・ヤースはわずか十数騎になった機甲騎兵に撤退を命じる。

 

そのとき山本がめざとく発見する。

「敵司令部コントロールセンターのバリアが機能していないぞ!いまだ爆撃しろ!」

コスモファルコン隊は、いっせいに敵司令部を爆撃し、ワープ光線がとまる。

「加藤隊長!山本隊長!やりましたよ。これで敵はワープ光線を照射できない。」

 

「大総統閣下!次元空間質量移送機のコントロールセンターが破壊されました。」

「ふ...。」

コ・ヤースは含み笑いのような笑みを浮かべて指をならす。

 

「!!」

「またワープ光線の照射が開始された?ということはサブコントロールセンターがあるってことね。やつらが古代地球文明の先駆者だとしたら...。」

「神殿ね。」千早がつぶやく。

春香がうなずく。l

「コスモファルコン隊!全機神殿に向かってください!」

「あと30分くらいね。土門君わたしもいくわ。」

「技師長!」

「サブコントロールセンターの位置を知るにはわたしが行ったほうがいいと思う。」

「はい。わかりました。戦闘班!技師長をまもりつつ、敵のコントロールセンターをたたくぞ。」

「おおつ。」

コスモファルコンが再び敵の神殿に向かう。

第一艦橋では春香たちがそれを見送っていた。

「土門君、すっかり戦闘班長が板についてきたわね。」

千早がつぶやく。

「だね。わたしたちも昔、ああだったのかなあ。」

「春香と伊織が戦闘班だったからにぎやかだったよ。」

「春香ちゃんはころんでおおさわぎするし、伊織ちゃんはあんな調子だから、通信機に声が入るんじゃないかってはらはらしっぱなしだったですぅ。」

「えへへ...。」

春香にいつもの照れ笑いがもどる。

「でももうあまり時間がないんだよね...。間に合えばいいけど...。」

コスモファルコンは神殿の入り口に着陸する。

戦闘班と律子は神殿に駆け込むやいなや銃撃にさらされる。

ダダダダダ...バキューン、バキューン、バキューン、ダダダダダ...

「技師長!班長!ここは任せてください。」

「わかった、おねがい。」「頼んだぞ。」

 

「こっちね。」

土門と律子は橋のような通路を渡る。

通路をわたるとインジケーターランプが無数点滅する部屋に入る。広さは10畳ほどであろうか、奥に一段小高い場所があり一脚反対向きの椅子があった。その椅子に何者かが座って画面に向かっている。

 

「あなたはディンギルの支配者でいらっしゃいますか。」

「いかにも。ディンギルの大神官大総統ディンギル・コ・ヤース・ド・ザール・クロイだ。」

「わたしは、地球の宇宙戦艦ヤマト技師長の秋月律子です。ディンギル星の水没については深く同情します。生存者が地球に移民したいのならわたしたちは受け入れる用意があります。どうか無益な戦闘はやめてアクエリアスのワープを中止してくださるよう要望します。」

「ふ...テアマトに人なしと見えるな。19回目のワープまで後1分だ。ばかな女よ。死ね!」

「技師長、あぶない。」

銃声がひびく。

「土門君!」

土門は負傷した。土門の銃はコ・ヤースに当たらず、コ・ヤースはレバーを引き椅子の下は穴となってコ・ヤースは「地下」へ消える。

「土門君!」

律子は土門を抱えて叫ぶが冷静さをとりもどす。

「技師長。都市要塞が震動しています。危険ですから脱出しましょう。」

「土門くんが....。」

「土門、しっかりしろ。」

「山本さん...。」

「ヤマトにもどるぞ。あずさ先生に診てもらおう。」

「テキーラの痛み止めは勘弁してほしいんだけど..。」

一瞬爆笑が起こるが山本と律子とファルコン隊員が土門をかついでファルコンに乗せて都市要塞から離れていく。

 

「都市要塞ウルク都市部を分離して爆破だ。スイッチオン!」

「了解。スイッチオン!」

「ヤマトめ。よく戦った。しかし、ここでウルクとともに宇宙の塵となるがよい。」

アクエリアスがワープし、ウルクの半分が切り離されるとひび割れ、爆発を繰り返す。もう半分がアクエリアスを追うように姿を消した。

 

 




敵に打撃を与えたものの、アクエリアスのワープを阻止できなかった。
ヤマトはどうしたらいいのか....

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