宇宙戦艦YAM@TO完結編(ディンギル・アクエリアス戦役)   作:Brahma

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伊織の初仕事は、春香率いる艦隊にアクエリアスのワープ阻止とディンギル討伐を、命じることだった。


第3話 ヤマト出撃!冥王星空域会戦前編

「あなたに例の水惑星のワープ阻止となぞの敵、通信内容から自称ディンギルというらしいけど、そのディンギル討伐を命じるわ。討伐艦隊を率いて出撃して。」

「天海春香、微力をつくします。」

 

「あ~ちっとも動かないよ。」

「明日出撃だというのに。」

「!!」

「春香。」「はるるん。」

「修理はすすんでる?」

「まあ、あちこち損傷はあるけど、ハイパー放射ミサイルをもろにくらったわけじゃないから...。」真の答えに聞きなれない兵器の名称が含まれていたため、春香は近くにいた律子のほうを向いてしまう。

「ハイパー放射ミサイル?」

「ああ、あらゆる装甲版を特殊な熱線で溶解し、爆発とともに宇宙放射線を巻き散らす特殊仕様の恐るべき兵器よ。実弾だから空間磁力メッキは全く役に立たなかった。地球防衛艦隊は7割沈んだわ。」

「大損害だったと聞いていたけど7割...。」

ピピ...

正常に機能していることを画面が示す。

「あ、まこちん、直ったよ。これでみんなとヤマトでひと暴れできるね。」

「うん。そうだね。一安心だ。」

 

「で、律子さん、そのハイパー放射ミサイルはどうすれば...。」

「いま対策を検討中よ。」

「舞さんは?」

「地球の医療技術はすすんでいるから、体内除染と対放射能透析の治療でかなり回復しているわ。しかし、完全な治療は無理ね。後遺症はどうしても残るから...。」

「そうですか...。」

「まあ、春香は明日の出撃にそなえて心の準備をしてもらえばいいから。」

「はい。」

 

「天海春香君だね。」

「武田司令。」

「もう、司令じゃないよ。予備役大将といえば聞こえがいいが、一介の庶民さ。ただ、日高舞君がああなってしまったから、またひっぱりだされるかもしれないが。」

武田は、すずやかな笑顔で春香に話しかける。

「?どうした?不安なのか。」

「はい。これからすべてを貫く矛を持つ敵と戦わなければなりません。」

「じつは赤羽根君と会うことになっている。」

「えつ...。」

「いきつけの店に行こう。」

 

そこはそこそこ上品なかんじの洋風居酒屋であったが、なぜか立派なステージがあった。

「赤羽根君、天海君をしゃんとさせてくれないか。」

「春香。」

「はい、プロ...じゃなくて、赤羽根提督。」

春香は顔をあからめる。

「春香、ガミラス、白色彗星、暗黒星団帝国、ボラーと戦い勝ってきたな。」

「はい。」

「特に暗黒星団帝国のゴルバとボラーの機動要塞は、波動砲が効かない恐ろしい敵だった。敵が砲撃するわずかなチャンスを狙うしかない、命がけの戦いだった。だが皆の心をひとつにして宇宙最強とも言ってもいい敵をたおすことができた。」

「はい。」

「今度の戦いも確かに苦しい。ハイパー放射ミサイルの対策もできていない。だが戦いようはあるはずだ。敵は、ゴルバやデザリアム、ボラーの機動要塞のようにとりたてて堅牢というわけではない。ハイパー放射ミサイルをなんとかすれば勝機はあるはずだ。」

「はい。」

「だから春香の仕事は、指揮をすることと...」

赤羽根は武田と顔を見合わせて微笑む。

「「空気をつくる」ことだ。」

「そう。「空気をつくる」んだ。これは春香しかできない。舞さんがいない今君しかできないことなんだ。自信をもて。春香はあの恐るべき敵を幾度となく倒して中将にまでなったんだぞ。」

「赤羽根提督、亡くなった斉藤さん、大西さんをはじめとする皆さんなしではできませんでした。」

「そうだ、春香一人じゃない。みんなあの苦しい戦いを覚えているだろう。大丈夫だ。」

「天海君。君は現役時代の舞君や土方君と同じ地位まで上り詰めた。町へでたら君はどこにでもいるただのかわいい女の子にしか見えないかもしれない。しかし、いったん命令を受けて防衛軍の艦艇に乗り組めば、歴戦の指揮官である中将なんだ。これは防衛軍司令部の君に対する客観的な評価であることをわすれないでほしい。」

「今度の航海ではささやかだが駆逐艦を数隻つけることになっている。」

「そうだ、天海君。歌ってくれないか。そうだな「強い女」、「乙女よ大志をいだけ」を」

「それから「I want」も。」

「えええ、恥ずかしいです。」

「えっと、ここにいる女の子が歌いま~す。」

「ええっつ////。」

赤羽根が勝手に決めてしまい、マスターがほほえむと曲を送信してしまう。

「あわわつつ。」

ステージに向かう春香はころびそうになる。

店は笑い声につつまれる。

曲がかけられる。

「わ・た・し芯の~強い女~どんな壁ものりこえてくぅ~」

「ねーえほんとに」合いの手がはいる。

春香は、「強い女」と「乙女よ大志を抱け」を熱唱した。

「これ着なきゃはじまらないだろ。」と渡されたのが黒い「閣下服」だ。

【推奨BGM:I want】

「ま・る・で荒れるはと~のようにィ~」

・・・

「いっしんされていくの~ 」

長い間奏がはじまり、ステージの後ろに赤いストール状のものが三つ現れる。

まんなかが白抜きされ、アイマスの天使マークが映し出される。

そして床から講壇のようなものが現れる。

皆「ヴァイ」「ヴァイ」と相槌を打つ。

「むねにたぎる黒い…」

・・・

「おしえるわ~」

すると雪歩が現れ、律子、真、千早、あずさ、亜美、真美、伊織まで現れる…

(みんな…)

「い・ま このれんあいかんじょうの…」

・・・

歌い終えるとドコマデ ドコマデ ドコマデ…とエコーが響いていた。

---

万雷の拍手。口笛ともつかないヒューヒューなどさまざまな歓声で満たされる。

半分やけっぱちだったが、春香は三曲歌ってすがすがしい顔になる。

「どうだ?「女王様にも負けない気分」になれたか。」

春香は苦笑する。

「なんかがんばれそうな気がしてきました。」

「それでいい。作戦を十分考えたらそれを予定通り遂行するだけだ。気に病んでも仕方ない。弱小プロ野球チームをなんども優勝させた監督が言っていたな。最後は「冷静な計算のうえに立った捨て身の精神」と。」

「はい。」

「じゃあ明日はいよいよ出撃だ。「空気をつくる」んだぞ。」

赤羽根は繰りかえす。武田は微笑むだけだった。

 

あくる朝、乗組員がそろったことを確認し、出撃準備をアナウンスする。

「ただいまより、ヤマトは出撃準備に入ります。総員部署についてください。」

「如月副長、北野航海副長、航海班を配置につけてください。」「はい。」

「菊池機関長、波動エンジンの充填回路開いてください。」「はい。」

「秋月技師長、艦内機構の最終チェックお願いします。」「はい。」

「萩原通信班長、全通信回路オープンお願いします。」「は、はい。」

「土門砲術長、射撃管制システム最終チェックお願いします。」「はい。」

「機関室、配置完了。」

「全天球レーダー室配置完了。」

「中央大コンピューター室配置完了。」

「艦内機構、損傷復旧率90%、出航には差し支えありません。」

「波動エンジン異常なし。補助エンジン動力接続スイッチオン。シリンダーへの閉鎖弁オープン、エネルギー充填95%」

「イカリあげて!」

「イカリ上げます」

「微速前進0.5」

「微速前進0.5」

「出航水路に入る。」

「補助エンジン、接続点火。」

「ヤマト発進。」

出航水路から出たヤマトの前方と真上には青空が広がっていた。

「ヤマト発進!。」

春香が力強く宣すると千早がレバーを引き、水音を立てながら上昇し始める。

「みんなよく聞いて。今回の目的は敵艦隊を撃破し、ディンギルがアクエリアスと呼んでいる例の水惑星に到達してそのワープを止めることです。アクエリアスは現在1050光年の位置にあってあと7日で地球に到達します。」

「大気圏脱出、主翼格納。波動エンジン大気圏外出力へ移行。自動操縦にきりかえます。」

千早がアナウンスすると、春香はうなずき、

「みんな、集まって。」

「たとえ艦の運命が、わたしたちがどうなろうとも地球到達をくいとめなければいけない。

みんなの奮闘を期待します。」

「みんな手をかさねて。」

一同は手を重ねる。

「ヤマトクルー、ファイト!」

「おおーつ。」

 

「月軌道より接近する艦影あり。」

「か、艦隊より通信がはいっていますぅ。地球連邦所属艦隊ですぅ。」

「地球連邦所属月艦隊司令の水谷です。これよりヤマトの出撃に同行いたします。」

「雪風、涼風、冬月…。合計9隻ですぅ。ヤマトと一緒に戦ってくださるそうですぅ。」

「うれしいことね。」

律子が春香の肩をつかむ。

「律子さん…。」

春香がむくと、律子はほほえんだ。

「!!」

「敵偵察衛星発見!」

「砲撃!」

ショックカノンがディンギル偵察衛星を一撃でほふって四散した。

「あまり地球近傍で長居しないほうがよさそうね。」

律子が話しかけると春香がうなずく

「現在、ハウメア、マケマケ、冥王星、エリス、セドナ基地ともに敵影なしとのことですぅ。」

「これより、全艦、冥王星空域までワープします。ワープ後気をゆるめないよう、第一種戦闘配備で。」

「「「了解。」」」

画面上の光点が横倒しの振り子のように上下に動いているが、5本の空間曲線が交わる交点に重なる。

「ワープ!」

千早が宣すると10隻は地球近傍空域より姿を消した。

 

「アンティパスは死んだか。」

「そのようです。」

「わが息子ながら情けないことだ。」

「兄はいささか性急なところがありましたから。」

「….では、アブシャロムよ。お前が行ってくるか….アプス星(太陽)系へ?」

「おまかせください。敵を倒してまいりましょう。」

「ひとつだけ言っておく。敵をあなどるでないぞ。」

「はつ。」

 

「出撃準備整ったか。」

「はつ。」

「テアマト(地球)艦隊の様子はどうだ?」

「キング(月)基地からの駆逐艦隊9隻と合流したあとは行方がつかめておりません。外惑星軌道を通過中か、一気にどこかへワープするものと思われます。」

「敵の情報網は、アー・プチ(冥王星)軌道上の空域まで張りめぐらされている。どこであってもわれわれを発見したらすぐにやってくるだろう。しかし、われわれの反応はアプス星系のエア(海王星)周辺までの空域まで確認されないことも敵は知っているだろうから、おそらくアー・プチ(冥王星)空域まで警戒しつつも一挙にワープしてくるにちがいない。それを発見し、先手をとって迎え撃つのだ。」

「御意。」

「アブシャロム様、敵艦隊発見しました。11時の方向、現在三万宇宙キロ。」

「予想通りですな。」

「面白い。兄の仇め。このアプス星(太陽)系からでられるものなら出てみればいい。

それっぽっちの艦隊ではとても不可能だろうがな。」

アブシャロムはほくそえんだ。

「水雷戦隊発進。機動部隊も発進準備だ。」

「御意。」

 

「敵艦隊発見。距離一万宇宙キロ。一万宇宙キロ先に敵艦隊発見。」

「全員戦闘配備。コスモファルコン隊発進してください。」

 

「ただいまより攻撃にはいります。」

「山本さん、加藤さん、ハイパー放射ミサイルを発射させないでください。その前にたたいてください。」

「了解。」

 

山本、加藤はちかづいてくる水雷艇を次々に火球と爆煙の塊に変えていく。

音はしないものの、爆発の衝撃波で機体がゆれる。

水雷艇をまもろうとする敵艦載機群も現れるが、コスモファルコン隊の技量にはかなわず、

つぎつぎに火球と爆発煙の塊に変わっていく。

 

しかし、爆発しながらも一隻の水雷艇がハイパー放射ミサイルを発射した。

「!!」

「しまった!浜風が...。」

ハイパー放射ミサイルは駆逐艦に接触すると熱線を発して、船体が赤くやけただれたようになり、ついには食い破るようにして船体の奥深くまで食い込んでいく。

そしてその数秒後にはついに船体を引き裂き、巨大な火球と爆煙を噴き出して、船体を四散させる。

 

コスモファルコン隊員たちは唇をかみしめて敬礼するしかなかった。

「くそ...なんて数だ。」

ヤマトのコスモファルコン隊や駆逐艦に搭載されたわずかな艦載機では対応できない敵機や水雷艇の数である。

「!!防御網を突破された。」

加藤、山本の背中に冷や汗が走る。

「敵を追え!」

水雷艇からハイパー放射ミサイルが次々と発射される。

「撃て!」

地球艦隊からは主砲と両舷のパルスレーザーが斉射される。

爆発を繰りかえして敵艦載機や水雷艇が撃墜はされるが数が多く対処しきれない。

ヤマトでは春香が土門に命じる。

「主砲、サーモバリックモードに!」

「了解!モード変更!発射!」

ヤマト主砲の光条が敵艦載機と水雷艇をつつみこみ、噴射口からあというまに百数十機を引き裂き、百数十個の爆煙と飛び散る金属片に変える。

 

「うぬ。あの戦艦を狙え!」

水雷艇と敵艦載機がヤマトヘ向かおうとする。

ハイパー放射ミサイルが発射される。

「!!ヤマトがやられる!!」

「ヤマトを守れ!」

駆逐艦はヤマトの盾となってハイパー放射ミサイル群の前に立ちはだかる。

次々にハイパー放射ミサイルが船体に食い込み、食い込んだ部分が赤く焼けただれて、つぎつぎと船体が引き裂かれ、巨大な火球と爆煙を噴き出して、四散していく。

「磯風撃沈」

「みんな...ヤマトを守って...。」

千早が唇をかみしめる。

「雪歩。」

「千早さん。」二人は顔を見合わせる。

「春香。交代時間だわ。」千早は春香に対してほほえむ。

「北野君たのむわよ。」

「はい。」

「考えたことがあるの。雪歩とアナライザーを連れてちょっと行ってくる。」

「危険...だと言っても行くよね。」

「ええ。」千早はほほえんでみせる。

千早と雪歩を乗せたコスモファルコンは飛び立っていく。

そうこうするうちに敵の攻撃がやんで撤退していく。

「!!」

「どうしたんだろう。」

「とにかく今のうちに生存者の救助にかかってください。」

 

「コスモファルコン帰還せよ。」春香は命じて律子に話しかける。

「律子さん、なにか敵にダメージを与えたんでしょうか...。」

「さあ、わからないわ。圧倒的に有利だったはずなのに。」

「救助の時間をあたえてくれてるのかな...。」

「...。」律子は顔をしかめ、無言であった。




地球艦隊の防衛線を突破し優位に戦ってたはずのディンギル艦載機は帰還していく。その意図は何なのか...

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