宇宙戦艦YAM@TO完結編(ディンギル・アクエリアス戦役)   作:Brahma

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なぞの水惑星がワープを繰り返し接近してくることは、やがて地球側も気づくこととなる。


第2話 土星空域会戦

「セドナ基地からの情報によりますと、先般発見された水惑星が24時間ごとに150光年のワープを繰り返している模様です。」

「地球に接近するのは6000年後じゃなかったのか。」

「なぜ星がワープしたりするんだ。」

 

「あと16日で地球はどうなるの?」

「水惑星の質量と地球の引力から計算しますと数百兆トンの水が降り注ぐことになります。地球の海面は、一兆二千億トンの水で海面は10m上昇しますから数百兆トンの水が降り注ぐと陸地はすべて水没することになります。」

「すぐに対策を講じなければならないわね。連邦政府に伝えて。」

「はっ。」

 

「全人類を一時的に太陽系内の植民星やコロニーに避難させなければならないわね。

防衛軍所属の全艦艇、民間の宇宙船も借用して避難船団を大至急組織して。」

「はっ。」

 

そのころディンギルの大艦隊は、冥王星空域まで進出していた。

アンティパス・ド・ザールが旗艦の艦橋で仁王立ちしていた。

「水雷母艦発進。アンシャル(土星)上空で待機せよ。」

「われわれもアンシャル上空までワープする。機動部隊は、爆撃機でアー・プチ(冥王星)にあるテアマト人どもの基地をたたけ。」

「御意。」

「第一次攻撃隊、発進。」

ディンギルの艦載機群が冥王星基地を襲った。

激しい空爆により冥王星基地の施設が次々に破壊される。

高射砲で応戦するがようやく十数機撃墜するのがやっとであった。数千機に及ぶディンギル攻撃機隊になすすべもなく破壊され、炎上する。

「冥王星基地、通信途絶。」

「なぞの大艦隊が侵入してきた模様。」

スクリーンに映し出される。

「すごい数ね。地球防衛艦隊出撃用意して。」

「海王星トリトン基地、ネレイド基地通信途絶。」

「天王星チタニア基地、オベロン基地、敵攻撃隊出現。なおも交戦中。」

「土星空域に向かっている避難船団には護衛艦がついていない。

直ちに全地球艦隊を発進させる。わたし自ら指揮を執るわ。」

「はつ。」

一同の顔が明るくなる。

しかし、舞の内心は、天才がそうであるようにこの敵には何かあるという事の重大さと深刻さを直感していたのである。

一方当人以外は、ガミラス、白色彗星、そして自動惑星ゴルバ、暗黒星団帝国のプレアデス級の大艦隊を葬り去った無敵の名将、日高舞が自ら指揮を執るのである。この艦隊戦で地球の無事は守られると誰もが信じて疑わなかった。

 

「もうすぐ土星空域だ。」

「すごい数の避難船団だな。」

避難船団の艦橋では艦長はじめ総舵手、通信手がのんきに話をして船の外をながめていた。

 

「全艦、土星空域にワープ。」

舞が命じると

「了解。土星空域にワープせよ。」

と副官が復唱し、全艦艇に伝えられ、地球防衛艦隊は地球近傍空域から姿を消した。

 

避難船団の船員が未知の艦隊を発見したのはそのときだった。

「レーダーに反応。5000ほどの物体、500宇宙キロ先の空域にワープアウト。」

「なんだ?あの宇宙船は?」

「船種確認。ガミラス、白色彗星、暗黒星団帝国、ボラー、いずれものでもありません。」

 

アンティパス・ド・ザールは旗艦の艦橋で仁王立ちになりながらほくそえんでいた。

「主砲、斉射。一隻残らず撃沈しろ。」

数千条もの橙色の光条がいっせいに放たれ、避難船団を襲う。

避難船団の艦船は貫かれ、次々に爆発を起こして四散する。

 

「ワープ完了。」

「!!」

地球防衛艦隊がワープアウトした宇宙空間で見たものは、避難船団が、閃光と爆発煙となって、打ち上げ花火のようにあちらこちらに現れては消えている姿だった。

「避難船団が攻撃を受けている模様。」

 

「避難船団が攻撃を受けている。敵がどんなわなを張っているか分からない。赤羽根中将、1500隻を率いて後方で待機し波動砲発射準備。敵艦隊の動きを見逃さないで。」

「了解。」

実は舞は、敵が波動砲斉射を小ワープで逃れて接近攻撃をしかけてくる場合の出撃宙点の分布を計算させ、波動砲の斉射を逃れても包囲殲滅可能な巧緻極める艦隊配置を行なっていたのである。しかも赤羽根分艦隊の波動砲を自分の分艦隊の空間磁力メッキの反射によって敵を誘爆させることまで狙った必勝の布陣のはずだった。

 

「長官、敵艦隊まで700宇宙キロです。」

「全艦、拡散波動砲発射準備。波動砲発射後、小ワープで避けられて砲撃される可能性があるから空間磁力メッキ展開準備して。」

「拡散波動砲、発射準備完了。」

「10,9,8,....3,2,1,発射!」

拡散波動砲が斉射される。

 

「敵、艦首砲エネルギー充填確認。」

アンティパス・ド・ザールはほくそえんで指示する。

「発射反応確認後、小ワープし、水雷艇からハイパー放射ミサイルを発射しろ。」

「御意。」

「発射反応確認。」

アンティパス・ド・ザールが指を鳴らしディンギル艦隊は姿を消す。

「!!」

「敵艦隊。消失。小ワープした模様。」

舞が指を鳴らし、地球艦隊はいっせいに空間磁力メッキを展開する。

 

「敵艦隊出現。至近です。」

ここまでは舞の計算どおりであったが、その後の敵の攻撃が予想の範囲を超えていた。

「魚雷様兵器発射されます。」

ディンギル水雷艇から後にハイパー放射ミサイルとして知られ、恐れられた兵器がはじめて地球艦隊へ向けて発射された。

 

ハイパー放射ミサイルは次々に地球艦隊の艦艇に接触する。光学兵器ならすべて反射する空間磁力メッキだが、実弾にはまったく役に立たない。ハイパー放射ミサイルは一種の熱線を放射しながら船体を溶かして食い込み、放射能ガスを撒き散らしながら爆発し、船体を引き裂いてつぎつぎに火球に変えていく。

「!!」

「エンタープライズ被弾!」

「ワスプ被弾!」

「アリゾナ被弾!」

「シャルンホルスト通信途絶!」

「ジェリコー被弾!」

「グナイゼナウ被弾!」

「テネシー轟沈!」

「トリッテンハイム被弾!」

被害報告が続き、ハイパー放射ミサイルがおびただしい数の艦艇の船体に食い込んでいく様子が船窓から見える。次の瞬間には爆煙を上げて次々に四散していくのだった。

「フッド撃沈!」

「エンタープライズ撃沈!」

「インヴィジブル被弾!」

「レパルス撃沈!」

「ワスプ撃沈!」

「アリゾナ撃沈!」

「トロンプ被弾!」

「本艦へ!直撃来ます!」

舞の乗る旗艦アンドロメダにも食い込んで爆発する。

爆煙とともに放射能ガスが艦内に広がる。アンドロメダ艦内で爆発音が続く。

舞も激しい振動で床に投げ出される。

「長官!。」

「うう...。」

「大丈夫ですか。」

「何をしているの。敵を包囲して攻撃。主砲斉射。敵が至近にいるのはチャンスなのよ。」

「はっ。」

「長官。アンドロメダは持ちません。他艦へ指揮座をお移しください。」

「旗艦をヤマトに移します。」

「はっ。」

舞は救命艇に乗り込む。

アンドロメダは大破してしばらくはかろうじて浮かんでいたが、やがて爆発して四散した。

 

そのとき、赤羽根中将は、ワープアウトしてくるディンギル艦隊を見逃さなかった。

「拡散波動砲発射。」

ワープアウトしてくるディンギル艦隊の半数は光の奔流につつまれて爆発四散する。ディンギル艦隊はハイパー放射ミサイルを発射して地球艦隊の艦艇を次々に沈めていくが9割を失いつつも必死に応戦する舞の部隊と半数を失いつつも攻撃を続ける赤羽根の部隊に挟撃される。

包囲網がディンギル艦隊を包んでいく。ハイパー放射ミサイルで優勢に戦いを進めていたはずのディンギル艦隊はいつのまにか包囲されて集中砲火を浴びていた。舞の築いた包囲陣がじわじわと威力を発揮してきたのである。

両艦隊の画面には、半円状からリング状に包囲しようとする地球艦隊と包囲からのがれようとするディンギル艦隊の艦列が図形のように表示されていた。

 

「ここまでだな。このままではこちらも全滅する。戦略的後退だ。」

「御意。」

包囲の隙間からディンギル艦隊は逃げ出そうとする。

「敵が船列を整えないうちに攻撃。旗艦を狙って。」

そう命じるも舞は第一艦橋の床面にどうと倒れて、口から血を吐いてしまう。

「長官。」

助け起こされて、笑顔で副官に答える。

「かなり強い放射線を食らったようね。体がだるくていうことをきかない。あとの指揮は赤羽根中将にまかせます。」

 

地球艦隊のおびただしい光条は、後退しようとするディンギル艦隊を引き裂くように攻撃、アンティパス・ド・ザールの旗艦も被弾する。

轟音とともに艦内に爆煙がたちこめる。

「くつ。とにかく逃げるのだ。」

アンティパス・ド・ザールは艦隊を再編しようとして果たせず、8割の戦力を喪って無秩序に逃げていく。

「赤羽根司令追撃しますか?」

「あの放射性物質放出ミサイルは危険だ。一隻たりとも残すわけには行かない。全艦拡散波動砲エネルギー充填。」

赤羽根が命じ、エネルギー充填が完了し、秒読みガ終わると、光と熱の奔流が残った2割の艦艇を追いかけて、呑み込み、引き裂いていく。

「ぎゃあああああ....。」

ディンギル艦隊は一隻残らず引き裂かれ、爆発光と煙をはいて四散した。

そして、光も煙もなくなった宇宙空間に、金属の残骸となって浮遊しているのみだった。しかし、地球連邦艦隊も損傷率7割という記録的な被害をだしていた。

 

「どうやら勝ったようね。」

舞は第一艦橋の艦長席で満足そうにつぶやくと今度はつっぷしてしまった。

「長官!長官!おい担架だ。」

舞は医務室に運び込まれた。

 

地球連邦議会は蜂をつついたような大騒ぎになった。

「日高舞元帥は、土星空域の会戦で敵艦隊に攻撃され、反撃して撃退したものの、旗艦アンドロメダは、放射能ガスをまきちらすハイパー放射能ミサイルに被弾し、撃沈しました。日高長官本人は、高濃度放射能ガスを浴びたため、治療のため入院いたしました。」

「後任はどうするのだ。」

「武田、日高と現役の軍人が続いたから文民がよいだろう。」

「では、こういう事態に軍事がわかる人材がいるのか。」

「高木大統領のご意見は?」

「地球連邦防衛軍任職規程では、防衛軍司令長官は、中将以上の現役の軍人またはそれ相当の見識を有すると認められる文民、若しくは佐官以上で退官し連邦議会に文民として議席を有するなど前二者と同等の見識を有すると認められる者、とある。

わたしは、連邦議会議員である水瀬伊織君を推したいと思う。彼女はnamugoプロで仲間たちと切磋琢磨し、元ヤマト乗組員で軍事にも明るい。彼女は現在は文民で軍事に明るいのだから、そういった人材は彼女をおいてほかにいないだろう。」

「異議なし。」

連邦議会では満場一致で伊織が選ばれた。

「こうなったらしょうがないわねえ。引き受けてあげるわ。」

隣の議員が苦笑して伊織の肩をたたく。

「水瀬伊織、地球防衛軍司令長官を謹んで拝命します。」

伊織が一礼し、拍手が起こる。

「就任式はどうする?。」

「ふだんどおりでいいわ。」

「そうか、せいぜい仲間うちでゴージャスセレブプリンで祝ってくれたまえ。」

「しゃちょ...じゃない、大統領なんでその話を...」

議場は爆笑の渦につつまれた。

 

いおりんのXXサイコーという声が議会であったのかはつまびらかではないがどにかく伊織が次代の防衛軍司令長官に選ばれて就任した。

 

「伊織。防衛軍司令長官就任おめでとう。」

「う~ん。事態が事態だからね。素直に喜べないわ。日高舞に代われるのはこの伊織ちゃんしかいないって認められたってことはうれしいけど....春香。」

「ん?」

 




舞に変わって防衛軍司令長官になった伊織の最初の仕事は...

タキオンPさんの動画に基づき記述を一部修正、その他加筆(2/22,18:17)

P経験のある連邦議会議員のこそこそ話
「『佐官以上で退官し連邦議会に文民として議席を有するなど前二者と同等の見識を有すると認められる者』だって?なんかとってつけたような規定だな。」
「いや、防衛軍司令部の役人にもPがいるってうわさだぞ。なにやらいおりんが連邦
議会に当選したときにあわてて条文を直したとか。」
「だから『いおりん規定』とか呼ばれるのかw。」
「まあ、たしかに彼女の公約には防衛軍の整備もあったけど主は貧困、格差対策だったはずだが...。」
「まあ、議員のなかには、大財閥の令嬢のくせに貧困、格差対策なんて主張しているのはうざいと思う者は多いからな。自分の会社はどうか問われちゃうから。」
「この機会は、ちょうどよかったというわけか。」
「議員を失職させられるし、この状態ではだれも文句言えないからな。ただ、地位と待遇は悪くないが、責任が大きくなるな。それから、また議員になりたいなら選挙の洗礼をあびざるを得ないが。」
「それはそうとしていおりんの親友が訓練学校にいるって話だぞ。」
「あと舞さんの娘もな。」

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