振り向くと君がいた   作:ふたなり2

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亜紀ちゃん、ありがとう!( 最終話)

 

スゲー変わり様だ、こっちが戸惑っちまうよ…全く!

 

同じ美術部の可愛い彼女ができ最近はラブラブなんだ。

ホント、羨ましいぜ全く。

デートの件を話したら快く快諾してくれた。

 

そして数日が経ち、いよいよトリプルデートの日を迎えた。

 

来栖先輩が、仲がいい友人達グループで野球観戦を行くプランを

亜紀ちゃんに話してくれたお陰で本人にもスンナリと了承が取れた。

元々、巨人ファンらしく今日の東京ドームで行われる「巨人、阪神戦」は

楽しみにしているみたいだ。内野席が本来いいに決まってるけど

ワイワイ騒ぎながらなら外野席で十分だ!

 

駅で各自待ち合わせをして集合した。

お互いの挨拶になった時、俺と先輩は緊張を憶えた。

真理子さんはこの上ない笑顔で友好的に挨拶をしていた。

 

「藤森真理子です、来栖君と同じクラスなの。よろしくね!」

 

健太たちも冷やかされながらも笑って挨拶をしている。

亜紀ちゃんは…少し緊張してるのか硬くなってる気がした。

 

それと、来栖先輩が紹介した真理子さんを一目見て何かを

察したらしく両手に持ってたバックの把手をギュと握りしめている。

口数が少なくなった…。怒っているのだ。

それでも、皆んなの手前か持ち直し笑顔で挨拶を交わした。

 

「来栖亜紀です、えっと…よろしくです!」

 

レフト側に陣取り大応援団と一緒に盛り上がった!やはり生の迫力は

TV中継とは比べ物にならない!

試合中、巨人の選手がヒットを打つたび先輩、健太達は手を取り合い喜んだ。

 

試合は白熱した展開になった。巨人軍が最後坂本のサヨナラタイムリーで

劇的な勝利となった。皆んな大喜びの大満足である!

 

帰り道、亜紀ちゃんはやはり元気がなかった。ショックだったのかもしれない。

しかし、どうしても乗り越えなければならない壁だと思う。

最寄りの駅に到着してから真理子さんと亜紀ちゃんが2人きりでなりやら

話をし出した。何を話しているか分からないが亜紀ちゃんが頷いている。

 

先輩は少し心配なのか不安そうな顔をしている。そう言う俺も心許ない。

間もなく、2人が、ニコニコしながら皆の中に戻って来た。

 

「何を話していたんだい?」

 

真理子・亜紀 「秘密だよね~!」

 

「急に仲がよくなってない?」

 

全く、サッパリ分からない ?どんなマジックを使ったの?

先輩と俺は首を傾げるばかりであった。

 

 

翌日、学校でも健太達と昨日の件で盛り上がった。

取り止めもなく雑談が続き、帰り支度をしてる所を来栖先輩が、

教室を訪ねて来た。

 

「よう、直人と健太。昨日は楽しかったな!また機会があれば

一緒に行こう!」

 

「昨日はありがとうございました!ぜひまた、誘って下さいね。」

 

「お疲れ様でした!結構、盛り上がりましたね。」

 

「直人ちょっと話があるんだけどいいかな?」

 

健太は察して席を外した。何かあったのかな?

 

「先輩、何かあったんですか?」

 

「それが、あれから亜紀がヒス起こして大変だったんだぞ!」

 

「あんな、だまし討ちみたいな紹介の仕方が気に入らないとか言ってね。」

 

「それで、どうなったんですか?」

 

「お陰で今度、何かオゴらされるよ…それと、

直人もグルかって聞かれたけどシラを切ったよ。」

 

「うぅ、先輩…すみません…先輩だけを悪者に。」

 

「だけど真理子の事を亜紀は気に入ってくれたみたいで今度、家に遊びに

来る事になったんだ。」

 

「それじゃあ…、案外良かったのかも。」

 

「あぁ、そうかもな。帰りがけ2人で何か話してただろ?亜紀が真理子の事、

少しは理解してくれたのかもな。」

 

「ホント、良かったですね!」

 

「あぁ、ありがとう。だけど、まだやる事があるんじゃないのかな?」

 

「えっ、ありましたっけ?」

 

「トボけるなよ…。お前、亜紀に告らないのか?」ニッ

 

「えっ、え…えぇ、まあ。もう少し時間をかけてですね。」オロッ

 

「早くキメてくれよ~ビシっと!待ってるぜ!俺も真理子も。」

 

「ははっ、そう期待されても…亜紀ちゃんの気持ちもあるわけだし。

幾ら俺がよくても、その…ね。」

 

「俺、聞いてやろか? 結構いいと思うんだけど。」

 

「あわわ、それだけは自分でキメたいんで勘弁して下さいよ。」

 

「かぁ~、じれってぇなぁ~!兎に角、頑張れよ!」

 

「はい、ありがとうございます…。」

 

そう言うと自分の先輩は校舎の方へ戻って行った。

すげえ、俺の事応援してくれてメチャクチャ嬉しいけど何とかしなくちゃだ。

実は俺には目標がある、それは来栖先輩に少しでも追いつく事である。

遥かな遠い俺の目標、ストイックで厳しい目標。

その山の麓に俺はようやく辿り着こうとしている。

 

あの事件から半年が過ぎ、俺は合気道にとことんのめり込んだ。

特に腕前の方は来栖先輩からもカンが良く、短期間でこれだけレベルアップする

ケースは無いとお世辞にも褒めてもらってる。実力は既に有段者、

直ぐにでも有段試験を受けられると言ってくれていた。

 

亜紀ちゃんとの、乱取りは俺がリードできる迄にもなっていた。

あと少しで彼女に自分の思いを伝える事ができる資格が与えられると思っている。

 

 

次の日、稽古の前、亜紀ちゃんから話して来た。

 

「直人さん、帰りに少しだけお話しいい?」

 

「どうしたの? 改まって。全然いいよ!」

 

お兄さんの事かな?そうだよな…、一人考えながら稽古に励んだ。

最近は型の練習に余念がない、近く昇段試験を受ける事になっている。

絶対に受かる為にだ!

 

いつものMacで軽い食事を取りながら亜紀ちゃんの話を聞いてみた。

稽古上がりでほんのりと頬が赤い彼女はコーラを「コクっ」と喉を潤しながら

美味しそうにしてる、見てるだけで嬉しくなる。ようやく、暑さが引けたのか

可愛い唇で話し出した。

 

「あの時、真理子さんと話して言われたわ。(貴女が、お兄さんの事

好きなのよく分かるわ。だって、優しいし一緒にいて安心できる。

私が好きになった人だもの)って。」

 

「真理子さんは(私は貴女のお兄さんの事が好きよ…心の底から。

だけど、お兄さんを取ったりとか、そんな風に考えないでほしいの。)…と。」

 

「お兄さんは何処にも行かないし貴女のお兄さんは変わらないわ。…と。」

 

「私とも仲良くしたいとも言ってくれたわ。料理とか一緒に作らないかって。」

 

「ちょっと悔しいけど…、あっ、この人には敵わないって思ったの。」

 

「あんなに兄の事、好きなんだもん!認めない訳にはいかないよね。」

 

薄っすらと涙が滲んでる…。どうやら、亜紀ちゃんの初恋は終わりを遂げたようだ。

いい終わった亜紀ちゃんの顔は何かしら晴々として微笑んでる。

そんな事を俺に伝えたかったみたいだ。

 

「そっかぁ、うん…。亜紀ちゃん、頑張ったね!」

 

「ううん、ありがとう…。」

 

そう言って優しく亜紀ちゃんに微笑みかける事しか俺には出来なかった。

駅で、彼女を見送る時俺はゆっくりと話した。

 

「半月後に俺、昇段試験を受けるよ。もし、合格したら亜紀ちゃんに聞いて

ほしい事があるんだ…。いいかな?」

 

「うん、分かったわ。待ってる…。」

 

「えっ?」

 

そう言うと手を振り小走りに掛けて行った。

 

それからの二週間はあっという間だった。自分でもやれる事はやり尽くしたと思う程、

稽古に励んだ。先輩も2年の後半でそろそろ、受験準備があるのに付き合ってくれた。

感謝感激だ!

 

遂に昇段試験当日を迎えた。

 

当日は演武会もあり会場は人が結構入っている。

メチャクチャ緊張しまくりである!!ズッコケたらどうしよう?

そんな事ばかり頭によぎる。気持ちを落ち着かせる様、体操してみたり…ダァ~!

無理!無理!落ち着かないよぅ。焦っちゃう!おぼえた事、瞬間全部忘れそう。

先輩が来た…アドバイスかと思ったら…?

 

「直人!決めろよ!その後、告っちゃえよ!」

 

「でぇっ~? 何でそれ知ってんすか?」

 

「お前の行動パターンはお見通しだよ!頑張ってこいよ!」ニッ

 

背中を「パーン!」と思いっきり叩かれた!が、何かさっき迄の緊張が

薄らいだ感じがする。

来栖先輩、ありがとう!やっぱり俺の兄貴だぜ!

来栖先輩は会場に戻って行った。あっ、真理子さんと一緒なんだ…、

こつち見て笑ってら。

いい気なもんである。

 

定刻になり試験は始まった…。規定の投げ技、型…、筆記試験。

 

全てを出し切った。自分自身が結果はどうあれ満足出来る物となった。

1時間後、結果が発表される。俺の運命が左右れる…少しオーバーか?

嫌そんな事はない!結果次第だ…!

 

そんな時、何気に送られた視線が気になり振り向くと君がいた…。

そう、亜紀ちゃんが心配そうに俺を見ている。

 

俺は、手を振り和やかに微笑んでいた。

そう、掲示板に発表があり俺の番号を確認したからだ。

 

感無量であった…手をギュッと握り小さくガッツポーズ!周りを気にしながら…あつ、

先輩に見られた。くそっ、笑ってら。

 

そして、笑顔で亜紀ちゃんの元に。

 

亜紀ちゃんは笑顔でタオルを俺に渡しながら言った。

 

「直人さん、お疲れ様でした!」

 

「亜紀ちゃん、ありがとう!」

 

2人で先輩達が待ってる会場へと向かったのだった。

 

 

E N D

 

 

 


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