振り向くと君がいた   作:ふたなり2

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先輩の秘密

 

「え~っ、お願いしていいんですか?」

 

 

「最初からその積もりじゃないの?」

 

 

「こんな事、お願いできるの直人さんだけだもん?」

 

 

亜紀ちゃんにお願いされて断る事はあり得ない。

直ちに調査任務に入った。

 

 

放課後、俺は2年の校舎に来栖先輩を訪ねた。

先輩のクラスにまだ帰らずに友達と話をする来栖先輩を遠巻きに

確認し少し様子をする事にした。

 

 

来栖先輩は滲み出る優しさのせいか大勢友達がいそうだ。

そういえば、俳優で言えば堺雅人に雰囲気が似ている気がする。

違う学年の生徒がウロチョロしてると、かなり怪しくヤバイが

動向を見守る事にした。

 

 

5~10分過ぎて1人減り2人減り友達が帰りだし最後に来栖先輩と

女の子が一緒に帰りだしたので俺は慌てて階段を降り見付からないよう

また観察を続けた。俺は前回自分のオオボケがある為、ここで断言が

出来ないが恐らく来栖先輩の彼女と思われる。何故かって?

 

 

それは…来栖先輩が女の子と手を繋いで歩いているから。

女の子が先輩にデレてるし先輩も鼻の下を伸ばしだらしの無い顔を

している。

過去、俺は先輩のあんなデレ顔見たことが無い。

先輩の彼女と思われる女の子はどうやらクラスメイトのようだ。

 

 

彼女はとてもスリムで割りと背が高く黒髪が良く似合う瓜実顔の

日本美人である。

例えるとブン殴られそうで怖いが亜紀ちゃんも美人だが美人度では

彼女には敵わないと思った。

でも、俺のスィート・マイ・エンジェル亜紀ちゃんが俺の中で1番なのは

言うまでも無い!しかし、俺の兄貴はヤッパ凄いわ!これが俺の感想である。

 

 

今回の任務はこれだけでは完了ではない。依頼人からの仕事に答える

べくやはり確証がないといけない、俺は偶然を装い先輩達の横に通り

かかり声をかけてみる事にした。

 

 

「先輩~っ、偶然ですね今帰りですか?」

 

 

「あぁ、なんだ直人かお前も帰りなの?」

 

 

「え~、そんな所です。」ニタァ

 

 

「なんだよ、その目は…。」

 

 

「いえ、何でもない…あの…そちらは来栖先輩の彼女ですか?」

 

 

「うっ、うん、まぁね。そんなところだ。」

 

 

お~お、先輩が赤くなってる!これは面白い!

 

 

「そうなんすか、スッゲエ仲よさそうでいいすっね!」ニタァ

 

 

慌てて手を離してる、もう遅いって。

 

 

「まだ内緒なんだ特に亜紀には内緒にしてくれ!」

 

 

「何で隠すんですか?悪いことしてないのに。」

 

 

「亜紀がうるさいんだよ。おいおい紹介していく積もりなんだ。」

 

 

間違いなく来栖先輩の妹はブラコンだ。バレたら相当うるさそうだ。

 

 

「どうしよっかなぁ~」

 

 

「てめぇ、裏切るのか直人!よし、お前が亜紀の事好きなの亜紀に言うぞ!」

 

 

「えっ、え~、まだ心の準備が…。それだけはお許し下さいませ旦那様。」

 

 

あぶねえ、亜紀ちゃんのブラコンが治るまでは殲滅に決まってる!

 

 

ここは先輩と一次休戦条約を結んだ方が得策と踏んだ。

来栖先輩の彼女さんを紹介してもらった。

 

 

彼女の名前は「藤森真理子」さんで本当に素敵な人だ、危うく俺が

惚れちまうところだ。剣道部の有段者だそうで、

県大会にも出場している凄い美人剣士なんだ!

 

 

しかし、何故俺が亜紀ちゃんを好きな事を先輩は知っているのか?

不思議に思い訪ねてみた。

 

 

「俺が亜紀ちゃん、好きなの何で知ってるんですか?」

 

 

「はん!そんなの見てりゃあ分かるって、お前分かりやすいから。」

 

 

「………。」絶句である。

 

 

「早いとこ、告ちゃえよ!アイツ、モテるからとられちゃうぞ!」

 

 

「亜紀ちゃんって、彼氏いないんですよね…。」

 

 

「あぁ、あんまし興味無いみたいだな。」

 

 

「だからお前に頑張って妹の事、頼みたいんだ。」

 

 

「えっ、もし亜紀ちゃんがOKなら俺、亜紀ちゃんと付き合っていいんすか?」

 

 

「あぁ、お前なら亜紀の彼氏として認める事ができるよ。色々付き合って見て

大丈夫と思ってる。お似合いだと思うよ。」

 

 

嘘だぁ~!涙が出る程、嬉しい言葉だ!信じられない!これ程の褒め言葉

あるのだろうか?

 

 

「ありがとうございます…。スゲー俺、嬉しいです。

しかし、肝心の彼女の気持ちがなくては話にならない訳でまだ、時間が掛りそうです。」

 

 

「そんな事ないと思うけどなあ?」

 

 

どうやら、この人は俺の事は分かっても自分の妹の事は分かってない様だ。

それは、ブラコンだからじゃないのかな?と俺は思う。

この人に追いつかない限り彼女の心を射止める事は難しいと思ってるし、

それは間違えないと思う。遥かな遠い俺の目標…ストイックで厳しい目標。

そう、今は頑張るしかない!

 

 

しかし、亜紀ちゃんに頼まれた事を本人にも話す訳にもいかず、かと言って

虚偽の報告をする訳にもいかず困った事になった。

う~む、そこで閃いた!いつかは暴露てしまう事なんだし早い方がいい場合もある。

そこで俺は来栖先輩に調整役を買って出た。

 

 

「どうでしょう、今度の日曜とかに例えば野球観戦を皆んなで行って

先輩の彼女さんを 亜紀ちゃんに紹介するのって?」

 

 

「う~ん、悪くないな…。」

 

 

「でしょ!俺もいる訳だから亜紀ちゃんもそんなにむくれる事もないですよ。」

 

 

「先輩も無理なく亜紀ちゃんに紹介出来る訳だから割と抵抗ないんじゃあないですか。」

 

 

「うん、そのダブルデート乗った!」

 

 

真理子さんは2人のやり取りを優しく微笑みながら見守っていた。

 

 

「真理ちゃん、いいかな?」

 

 

「私は、構わないわ。亜紀ちゃんに会いたいし、お話もしたいな。」

 

 

「じゃあ、決まりだな!」

 

 

「えぇ、ありがとうございます。」

 

 

稽古の帰り2人でMacに寄り道をして亜紀ちゃんと話をする事ができた。

2人とも練習帰りだから小腹が空いてる先ずは腹ごしらえだ。

バーガーをパク付きながらやり取り、ちょっとしたデート気分だ。

 

 

「それで、学校での様子はどうだった?」モグモグ

 

 

「あぁ、ハッキリとしないけど先輩、友達はスゲー多そう。」モッチャ モッチャ

 

 

「そっかぁ、だと良いんだけど。」

 

 

うぅ、罪悪感…、ゴメン、亜紀ちゃん…先輩との密約が…。

 

 

「仮に先輩に彼女さんがいたら、心配になっちゃう?」

 

 

「別にぃ…そんな事…ないけど。」

 

 

うわっ、不機嫌オーラ全開じゃねーか!仮の話しただけでこのご様子では、

先輩…覚悟して下さいね。

 

 

「だって、亜紀ちゃんに好きな人できて先輩とか家族に紹介したいと

思ってもお兄さんがあからさまに不貞腐れたらいい気分になれないし

気まずいでしょ?」

 

 

「分かってる!でも、気持ちの整理がつかないの!」

 

 

「先輩は何処にも行かないよ、いつも優しいお兄さんに変わりはないよ。

俺が、兄貴と思うただ1人の人だもの。」

 

 

「………。」

 

 

うわっ、俯いてしょげてる。完全に病気レベルだな、これは…。

兎に角、慰めるしかない…。可愛い亜紀ちゃんを見てて、つい本音が出た。

 

 

「お兄さんばかり見ないで欲しいな…その、亜紀ちゃんを見てる人も

ちゃんと居るんだから…。」

 

 

「えっ、それって…。」

 

 

「その人はある人を追いかけて一生懸命努力してるよ。そして自信がついた時に

気持ちを伝えるつもりでいるんだ。」

 

 

「…………。」

 

 

お互いに真っ赤になったよ。遅くならない内にコーラを平らげ亜紀ちゃんを

駅で見送った。

 

 

それから先輩と俺は日曜日に向け学校でデートを兼ねた紹介作戦を練った。

参加メンバーも1組増やしトリプルになってしまった。

その1組とは何と、あの「健太」だ!健太はあれから二科展に出展した絵が

入選して学校でもNEWSになり評判になった。

 

 

自信が付いたのか、活動も活発で数々の大作を仕上げ、近く個展の話が進んでいるらしい。

 

 

クラスの中にはマンガの同人誌を作り込む奴までいてコミケ出店に向けて打ち合わせを

進めていたが、いつのまにか健太も参加している様で内心驚いてる。

 

 

 

 

 


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