振り向くと君がいた   作:ふたなり2

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シカト組の2人

調子に乗って健太の背中をひとつ、「パーン」と軽く叩いてみせた。

 

 

咳払いをしながら健太がここへ来て初めて笑顔を見せてくれたのだった。

スケッチブックの他のページをペラペラとめくって見て、また驚いた!

見たくない絵だった。それは来栖先輩と彼女の仲睦まじい様子のデッサンだった。

 

 

目が点になる、健太も気付いていたのだ。

 

 

「あの2人、恋人同士だよな?俺もガッカリしたぜ…。」

 

 

「えっ?そうなの?違うような気がするけど…。」

 

 

「な訳ないだろ、電車の中でデレデレだったしぃ。」

 

 

「そんな感じじゃないと思うけど。」

 

 

観察力が鋭くても恋愛事はどうやら、まだまだお子様の様だ。

 

 

そんなこんなで、絵の書き方やらを健太に教えてもらう約束をして

その日は引き上げたのだった。

 

 

日曜日、また健太の家に遊びに行った。健太は俺が来るのを多少は

喜んでくれてるみたいで、もう、筆を離さない様な事はない。

 

 

この前の話で健太に絵の描き方を教えてもらう事にした。

前々からアニメとか漫画に少し興味があったし、どうやったら上手くなるか

素朴な疑問があったから健太に聞いて見る事にした。

健太はそんな素人の疑問を馬鹿にせず丁寧に教えてくれた。

 

 

「基本になるのは何でもデッサン力だから興味を持った物を

デッサンして数をこなして慣れる事だよ。」

 

 

「簡単に言うなよ、だけどやってみるよ。」

 

 

2人で果物のデッサンとか健太の家にある石膏のダビデ像を描いて

教えてもらいその日を過ごした。お互い余り話をするでもないが結構楽しめかな、

夕方、帰りがけに健太はこう言った。

 

 

「僕は・・・学校に行ってもいいのかな?」

 

 

「あぁ、行こうぜ!無理しなくてもいいから、待ってるよ。」

 

 

「心配すんな、俺も一緒に闘ってやる!」

 

 

「ありがとう…。」

 

 

「何言ってんの、お前とはもう、ダチじゃん!」

 

 

「………。」

 

 

「じゃあな、また教えてくれよ。」

 

 

「分かった。じゃあね。」

 

 

健太ママが妙に嬉しそうに見送ってくれた。きっと奴は学校に来てくれるだろう!

 

 

 

そして次の月曜日、奴は現れた。

 

 

そう、健太は久しぶりに学校に登校したのだ。

 

「よぉ~、健太。ウィースッ!

 

「おっ、オッス…。」

 

 

俺は、「ニタ~っ」としながら健太の首に腕を絡めながら健太を迎えた。

どうせ、シカト組だから気にせずつるめるし、当分2人でいた方が安全だろう。

なるべく行動を共にする事にした。

 

 

まあ、教室でダベったりしてたが健太も久々の学校だ、なるべく緊張させないように

してやらなきゃあと思い、健太が持ち歩いているスケッチブックの紙を分けてもらい

絵を書く事にした。その方が健太も気が紛れるだろう。

 

 

あれこれ健太に教えてもらいながら俺はアニメや漫画の主人公を描きまくった。

元々嫌いじゃあないから夢中になった。健太は健太で相変わらず凄え豪快な

デッサンやクラスメイトのクロッキーを仕上げる。見事なもんだ、

横で見ていても惚れ惚れとする…。

 

 

そんな感じで2~3日過ごしているとある変化が起こり出した。

 

 

1人、2人と俺たちが描いてる絵を気にしたり覗きに来たりしだしたのだ。

皆、健太の絵に驚きを隠せない、兎に角凄いのだ!

 

 

絵の好きな奴が俺も俺もと一緒に描きだしたのだ。こうなったら日に日に

ギャラリーが増えだす。あれだけ健太の事を嫌っていた女生徒達からはモデルとして

描いてくれと健太に頼む奴までいる、ビックリだ。

 

 

俺たちの周りでは漫画を描いてる俺を筆頭に健太を師匠として弟子が

かなりできてしまった。健太も俺もクラスの奴等からようやく仲間に

戻れた事を本当に喜んだ。もう俺達をシカトする奴はいなくなった…

 

 

そう、一部の奴等を除いて。

 

 

「健太の才能のお陰だよ!良かった…。」

 

 

「ううん、直人のお陰だよ。僕を助けてくれたのも直人だし 、

友達も沢山できた…。ありがとう。」グス

 

 

「泣くなよ、ダチだろ」

 

 

「…うん」

 

 

それから学校ではノンビリしたものだった。健太も余裕ができたのか

笑顔がでて明るくなって俺達の周りでは笑いが絶えなくなっていた。

健太も評判を聞きつけた隣のクラスの女生徒から絵を描いて欲しいと

頼まれたりして結構忙しく満更でもない様子だ。

 

 

最近、朝の電車通学で来栖先輩に会わなかったが久々に

鉢合わせになった。

 

 

「よぉ~、どうだい最近は?」

 

 

「あっ、先輩!チィース! 何とか頑張ってやってます!」

 

 

「元気じゃん、良かったなぁ。」ニッ

 

 

この人は笑顔が可愛いのである。あんな可愛い彼女ができるのも

当たり前の気がする。まあ、羨ましい限りだよ全く。

とりとめもない話をして楽しく学校に着き、お互いの校舎に別れた。

 

 

だがこの日、事件が遂に起きた…。

 

 

それは放課後、掃除時間に起こったのだ。

ゴミ捨てに健太が1人で行ったのだが帰りが遅い…何となく虫の知らせか

嫌な予感がする…耐えかね俺はゴミ捨て場に走って向かった。

 

 

予感は当たった!奴等が健太を取り囲こみ蹴りを入れ袋にしてる真っ最中だ!

俺はその中に飛び込んだ!その中の2人を健太から引き剥がし

夢中で怒鳴った!

 

 

「止めろ!!」

 

 

A「ようまた、直人か。最近調子乗ってんじゃん。」

 

 

「乗ってね~しぃ!お前らもう、関係ないから俺達に絡むなよ!」

 

 

A「うわ、ウゼー!」

 

 

「健太、逃げろ!!」

 

 

「嫌だ、直人はどうするの?」

 

 

「馬鹿野郎!そんなんどうでもいいから、あっち行け!!!」

 

 

健太はこっちを気にしながら走って行った、取り敢えず良かったが…しかしどうするか?

こいつ等とは二度目だが袋にされてる。

逃げようにも取り囲まれちまったか…ヤベェ、この前と同じ。

誰ともなく睨んでいると、後ろからいきなり蹴りを入れられた!

 

 

それをきっかけに袋叩きが始まった。「畜生!少しでも抵抗してやる!」

足に噛み付いた!足を取って1人を倒したまではよかったが…。

見る見るやられてしまった。もう駄目だと思った時また、あの人の声が轟いた!

 

 

「お前らまたかよ!」

 

 

奴等の動きが一瞬止まったが先輩の方を見て毒づく。

 

 

ゴミ捨てに来たのか来栖先輩が立っていた。

 

 

A「あ~っ、あんた関係ないっしょ?邪魔しないでくんね?」

 

 

「あ?ジョーダンだよね?」

 

 

A「あんたも一緒に袋にするよ、いいの?」

 

 

「やってみ?俺、強えよ」ニッ

 

 

クズ達が一斉に動いた、その中の1人が来栖先輩を捕まえようとしたその時、

「バタンッ!」地ベタに1人叩き付けた。

何があったの?分からない?

 

 

また1人、先輩が飛び付く相手の手を前方に引っ張ったと思ったら

勢いよく逆に戻す、弾みで身体が宙に浮き後頭部を叩き落とし転がしている。

3人目も腕を極められた状態で横に勢いよく投げつけていた!

 

 

4人目はバランスを崩した相手の顔を腕で押す様な感じで勢いよく倒し

地ベタと後頭部をキスさせている。もう声も出ない状態だった。

 

 

「あ~あ、だから言ったろ俺は強えって。おめえ等、シッカリしろよ。」

 

 

倒された奴等はフラフラになりながら逃げて行った。

「スゲーぇ!!!! カッケぇ~!!!」

 

 

この人最高だ!!本当に惚れちまった!!こんな事が本当にあるのか?

何?拳法? 何か訳分からん!だけど最高にカッコいい。

 

 

立ち上がって直ぐに先輩にお礼を言った。

 

 

 


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