振り向くと君がいた   作:ふたなり2

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フルボッコ

 

それは突然の衝撃だった。ガツンと顔に奴らの拳が当たったのだ。

 

 

不意打ちみたいに受けたからボクシングで言うカウンターと同じ、

クラクラと地べたにペタンとへたり込んだ。

 

 

次の瞬間、鈍痛と共に鼻の奥がツンとし口の中に生臭い血の味が広がった…。

校庭の裏側、殆ど人が通らない物置の影で俺はクラスメイト数人から

イジメと言う仕打ちをうけている。

 

 

それはイジメられてる奴をかばった事から初まった…。

 

 

俺は高校1年で名前は「直人」、スポーツは特にしていないが学校の成績はそれぼど

悪くはないと思っている。そりゃあ、人並みに塾には通わせて貰っているが

将来何か目的があるのかと言われれば、特に無く自信がまるで無い。

カラオケにもよく行くし、友達とも連んで遊びに行く普通の高校生だ。

 

 

残念な事に彼女は今の所いない。今年の春先、中学卒業時片想いの相手に

告って見事に振られている。さんざ、仲間に冷やかされたがいい想い出だと

思っている。しかし、今密かに、また心に思う人がいるが、その話はまたの機会に…。

今はそれどころではないのだ。

 

 

もんどり打っている所へ後ろから背中に強烈な蹴りを入れられた…。

「ぐはぁ…っ。」一瞬で息が出来なくなった。更に連続で蹴りの嵐、フルボッコ!

ダメだ!やられる!もはや、腕でアームブロックする隙も与えてくれない。

立つ事も出来ないところに、助けが入った!

 

 

「何やってんだ!!」

 

 

凄まじい怒鳴り声のおかげでリンチを加えてる連中は蜘蛛の子を散らす感しで

素早く逃げて行った。

動けなかった…。全身が痛い、ってか誰が助けてくれたんだ?

這いつくばっていると、その人は声を掛けてくれた。

 

 

どうやら、2年の先輩のようだ。スラリと背が高くクールそうに見えても

何処と無く優しい感じがする人だった。両手をズボンのポケットに入れ

覗き込む様な感じで俺の様子を伺っている。

 

 

「大丈夫かぁ~? あいつら、メチャクチャするなぁ。」

 

 

こっちはフラフラなのに他人事なのか呑気なもんである。

助けて貰って文句は言えないが、もうちょっと心配しろってぇ~の。

心の底でブツっと文句を言いながら何とか起き上がり、先輩に

お礼を言った。

 

 

「あっ、ありがとうございます。先輩に入ってもらわなかったら俺

ヤバかったです。」

 

 

「あ~イイって、俺何もしてないし。」

 

 

ん、確かに…声を掛けてくれたたげで今もポッケに手突っ込んだままだ。

しかし、あの状況で興奮している人間を一喝で蹴散らす事は普通中々出来ない。

やはり、何か心得のある人なんだろう。

 

「あ~ぁ、鼻血拭いて、歩けるか?」

 

 

「何とか、大丈夫だと思います。痛みますが…。」

 

 

鼻をハンカチで拭いみた、血はどうやらそれ程出なかったようだ。

 

 

「そうかい、後で腫れたり熱が出るかもしれないから湿布して

医者に見てもらうんだな。」

 

 

「じゃあ、気を付けて帰れよ。あいつ等に捕まんなよ。」

 

 

「はい、ありがとうございます…。」

 

 

「イイって」

 

 

そう言って教室の方に戻って行った。

俺はというと重い身体を休めながら放課後の事でもありトボトボと

帰路に着いたのだった。

 

 

学校から帰り自室の篭りアザだらけの身体に湿布を貼りグッタリとしていた。

奴らは絶対に許せない!腹わたが煮え繰りかえる程、腹が立つ!!

いつか地獄に落としてやる!しかし、チクる様な事はしたくない。

 

 

何故こんな事に巻きこもれたと言うとクラスでいつも苛められている

「松井 健太」を助けたからだ。一緒の中学からの同級生で中学時代からちょくちょくと

苛められてはいたが高校に入ってからエスカレートしていた…。

 

 

コイツはハタから見ていても鈍臭い奴だ。ついつい、生来の性格かノンビリしていて

何事にもマイペースで物事にかかる。しかし、コツコツタイプのエキスパートなのか

絵画の腕前はプロ級のレベルだと誰もが認める、一目置かれるところだ。

 

 

しかし、そんな事は新しいクラスの奴らは知られて無く只の鈍臭い奴ウジウジした奴と

見えていた様だ。イジメは陰湿な物だった。教科書の落書きから始まり隠し物、

本人はさほど気にはしていない様子だが、ガン無視、はてはパシリまでフルオプションてある。

 

 

俺は健太とはさほど、ひたしくはないがよく知ってる旧友なのでエピソードを

交えて間を取り持って何度か話してやったが受け入れられなかった。

 

 

俺がキレたのは放課後、忘れ物を取りに教室に戻ると驚くような惨劇が行われていた。

下半身丸裸の健太が両手両足を6人がかりで取り押さえられ、2人の女生徒達に

物差しで生器を弄られていたのだ。皆、それを見てあざ笑っている。

屈辱と苦痛に健太の顔が真っ赤になり歪んでいる、見るのも堪え難い状態だった。

余りの酷さに耐えかね、俺は怒鳴って仲裁に入った。

 

 

直人 「おまえら、やり過ぎだぞ!! 止めろよ!シャレにもなってねえよ!」

 

 

A「なんだ、おめぇよぉ~ウンタの肩もつじゃね~か。」

 

 

B「こいつよぉ~、ウンタと中学一緒らしいぞ。」

 

 

A「うわっ、マジキメえっ!」

 

 

「何言ってんの、お前らの方がキモいって!」

 

 

A「何、説教タレちゃってんの?」

 

 

C「なんか、シラけちゃったな。どうすんのコレ?」

 

 

辱めを受けてた健太は押さえてた奴らが手を緩めたとたん、手で股を隠しすすり泣いている。こんな事されれば誰だってこうなる!

 

 

「最低だな、お前ら…。」

 

 

A「うっせい!」

 

 

「健太!速くズホン履けよ!」俺はすすり泣いている健太に怒鳴っていた。

 

 

泣きながら健太は下着とズボンを履きだした。俺とクズどもはそこで睨み合っていた。

 

 

「履いたらとっとと出ていけ!

 

健太は俺の怒鳴り声に「ビクっ」としながらトボトボと教室を出て行ったのだ。

 

 

A「直人、オメぇ、ちよっと付き合えよ!」

 

 

俺はぶち切れていたが、今度は俺をターゲットにしているのに直ぐ気が付いた!

ヤバイ!ヤラレる!!

 

 

ソッコーで教室を飛び出し逃げて最初の場面となったのだ!

畜生!!、俺にもう少し力があったならあんな奴ら潰してやるのに!!

腹が立ちっぱなしである!しかし、腹は減るもんで晩飯を食べたら

多少は怒りが収まった気がする…。俺はアホなのかもしれん…。

 

 

痛みと疲れでそのまま、寝てしまったようだ。

 

 

次の朝、正直学校に行きたくなかったが奴等の思う壷になるのが

気に入らない。また、奴等は次の獲物を俺に切り替えた可能性が

十分にあるし多勢に無勢だ、今後も陰湿な嫌がらせをしてくる違いないから

気を付けてないとだ。

 

 

電車通学だが今日は座る事ができてラッキーだ、まだ身体が随分と痛む為、

少し休めるのは助かる。しかし、俺の睡眠を妨げる人がいた。

 

 

「お~すぅ。何だ、お前この電車で通ってんの?」

 

 

「あっ、チィース!先輩もナンスか?昨日は有りがどうございました!」

 

 

「いいって、もう。それより、お前身体、いいの?」

 

 

「はい、大丈夫です。休むと奴等に負けたみたいで…。」

 

 

「意外とタフだなお前。」ニッ

 

 

少し緊張しながら先輩と話が弾んだ。意外と気さくなその先輩の名前は

「来栖 守」と教えてくれた。家の方角は一緒で隣街に住んでいるとの事だ。

道中、楽しく話をして学校に着き、先輩とは笑って別れた。

 

 

教室に着いてその予感は当たった。昨日までの友人の態度がまるで違うのだ。

変によそよそしいか、シカト…まぁ、予想してたがかなりキツイものだ。

健太は毎日、こんな仕打ちに耐えているんだと思うと何だか涙が出てくる。

もっと早く庇ってやれなかった事に自分を責め悔んだ。

 

 

周りが、敵だらけに見えて孤立する。主導しているのは奴等に決まっている!

此方を見ながらニヤニヤしてる…くそっ!負けるか!

案の定、健太は学校を休んでいる。あんな事の後だ…いつ、出てくるか分からん。

 

 

その日からシカトが続いて3日目の帰りに健太の家を訪ねてみた。

彼は俺の家から15分程の所に住んでいて兄弟はいない。

 

 

彼の母親は快く俺を迎えてくれた。お茶を頂きながら、あの日学校から

帰って来てから籠城を決めているらしく理由が分からず健太ママも

心細いのだろう、俺に根掘り葉掘り聞いてくる。

 

 

 


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