紺碧の艦これ-因果戦線-   作:くりむぞー

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第4話 トラック島攻略作戦

 ……まだ年端もゆかぬ少女のなりに篠懸(すずかけ)に似た服を着せ、金属の白い羽根を生やさせた、まるで天狗のような姿を持つ空中戦艦『富士』。

 彼女が迅速に行なった高高度での偵察により、トラック島には機動部隊や水上打撃部隊など強力な敵艦隊が展開していないことが判明した。また、その周辺についても大型艦艇クラスと思わしき深海棲艦の姿は一つもなかったという。

 ただしその代わりに、潜水艦部隊が水雷戦隊と共に多数見受けられるとの言葉が続き、懸念していた通りの結果になっていることが判明した。

 その後、再び富士に偵察範囲を拡大して周辺の深海棲艦の布陣の調査を行ってもらうと、パラオ周辺では水上打撃部隊が、ラバウル・マリアナ周辺では機動部隊が主に展開しており、各所共にエリート個体以上が万遍なく配置されているとの事だった。

 報告を受け、比較的トラック島は南方海域の強力な布陣の影響を受けていないと月虹艦隊では認識され、2月下旬の攻略を目標とする作戦会議が行われた。

 会議には米利蘭土や手音使以外に、新たに建造され月虹艦隊に配属となった、銀髪に黒を基本色とした水兵服に灰色のスカート、それに白の薄手のマフラー姿で小柄な容姿の駆逐艦『雪嵐』や、赤みがかった腰まで届く茶髪と眼鏡に、白のブレザーとタイトスカート、それに胸元の朱色のネクタイという出で立ちの航空巡洋艦『東光』も加わっており、本格的に対潜に特化した水雷戦隊を編成すべく意見を交わし合っていた。

 

 

 

「―――では、主に雪嵐級駆逐艦を作戦決行までに追加配備し、東光の指揮下で水雷戦隊を編成……ということになるわけだが、何か意見はあるか」

 

 軸となる編成は航空巡洋艦1隻に駆逐艦5隻がセオリーではあるが、そうなると雪嵐を除いてあと4隻の建造による追加が求められることになる。だが――――

 

「位置的に、マリアナの敵機動部隊が手出しをしてくる可能性も否めないと思います。私では対空警戒は行えませんし……」

 

「確かに、ただ普通に水雷センタァイを編成するのはヒジョーに危険デスネー……」

 

 東光とメリーの指摘はもっともであった。

 いざ対潜装備をしっかりして出撃してみれば、マリアナ方向から来た敵機動部隊の艦載機による奇襲によって対潜掃討が阻まれるだけでなく、部隊が壊滅に陥るということが十分あり得るかもしれないのである。 序盤から敗北していては今後の艦隊の士気にも関わるため、備えは徹底して行わなければならなかった。

 

「……秋月型の子達を編成に組み込むのはダメなのですか?」

 

「いや、駄目というわけではないが……対空射撃の練度がまだまだ不十分だろう。私と合同訓練をした時には撃ち漏らしが無視できないレベルで存在していた」

 

 教え子である秋月型を推す手音使に、少々厳し目な返答を私はした。第一、秋月型駆逐艦を水雷戦隊の軸として組み込めないのは、彼女達が防空に得意としている反面、雷撃戦を不得意としているからであった。

 代案ということで米利蘭土か彼女を編成に入れることを提案しかけたが、どちらかと言えば二人は対空戦闘が特別得意というわけではない事を思い出し直前で言い留まる。

 航空戦艦と言えども彼女達は「航空爆撃戦艦」であり、本領を発揮するのは対地上攻撃なのである。「航空制空戦艦」であった『筆汁芭斤』や『根婆汰』のように艦載機を用いての艦隊直衛、即ち航空戦は行えないのだった。

 

「………くっ」

 

 ―――ならば、『筆汁芭斤』と『根婆汰』を建造によって呼び寄せるか? しかしそれでは、計算からして貯蓄している資源が予定の基準値を下回り、出撃だけでなく訓練、装備開発も一定期間自粛する羽目になる。

 ただでさえ、大型艦艇を呼び寄せるとなると妖精さん曰くコストがかかるというのだから、攻略作戦を控えた今は駆逐艦や巡洋艦を必要数揃え、練度を高めるので精一杯。

 ……逆に、攻略作戦の時期自体をずらすべきか。それも一つの手ではある……が、戦況は刻一刻と変化していくものだ。あまり悠長にしていては想定の範囲外、それこそマリアナの敵戦力が丸ごと南下してくることもあるだろう。

 

  

「どうするのですか、建御雷さん……」

 

「タケミー……」

 

 判断を仰ぐ視線がこんなにも痛いと感じるのは、私が焦っているからであろうか。

 深く息を吸い、冷静さを取り戻すべく水を一杯あおるように飲んでみせる。すると、段々と頭に昇っていた熱がひいていき、思考をするのに僅かだが余裕が出来たような気がした。単なる気のせいかもしれないが、今はそれでいい。

 ―――改めて、状況を整理してみることにする。

 トラック島攻略の為には、対潜能力と突破力のある水雷戦隊を編成する必要があるが、敵機動部隊による増援があり得るため、水雷戦隊内に航空戦力を組み込むことが不可欠。だが、現状適任者はおらず―――待て、本当にいないのであろうか。―――否、いるではないか此処に……この会議の場に。

 

 

 

 

「私が水雷戦隊に随伴しよう」

 

 

 

 

 いつの間にやら私は、全体を指揮する立場にあることから迂闊に出撃してはならないと勝手に思い込んでしまっていたようである。なまじ人の体を得てしまったことによる弊害か。時と場合によっては、それが正解であることもあるだろうが、今という時は不正解であった。

 

「……旗艦は東光のまま、私は作戦開始と同時に敵水雷戦隊の殲滅を請け負う。敵艦載機が確認された場合は、その迎撃に即座に切り替える」

 

「……よろしいのですか?」

 

「状況を鑑みた上での判断だ。これが最良だの最善などと言える保証はできんがな」

 

 代替案がある場合はいくらでも私の案をコテンパンにしてくれと言葉を続けたが、見まわしてみても皆は黙りこくったまま何も言うことはなく、眼の力だけで肯定の意を示していた。

 

「出撃中は紺碧島周辺の警戒をメリーに任せる。……くれぐれも、油断せず警戒を怠るなよ」

 

「OK! ノー・プロブレム、デスよー!」

 

「それから、富士には数はまだ少ないが『蒼莱』と『桜花』を預けている。万が一の時は彼女と連携して事に当ってくれ」

 

 『蒼莱』と『桜花』はどちらも、戦闘機としてはかなり上を行く性能を誇っている高性能迎撃機である。

 しかし、艦上戦闘機ではないため、専用の離着陸場での運用が求められるわけであるが、それは爆龍のために設けていた簡単な飛行場を拡張し、カタパルトを追加増設することで対処し解決されていた。

 問題は口に出していった通り、量産が滞っていることが挙げられるが、秋月型の子達と上手くカバーを行いあえば、不安は多少なりとも残っているが一先ずは大丈夫だろうと思われる。

 

「今回の作戦が成功すれば、我々月虹艦隊は硫黄島を含め、3つの拠点を持つことになる」

 

「……ちょうど、三角形になる配置となりますね。直線が図形にようやくなるわけですか」

 

「―――まあ、しっかりとした線を『清書』するにはまだ暫く時間を要するだろうが、これも次作戦をやりやすくする為だ。総員、奮起して取り掛かってほしい」

 

 

 作戦決行については、一時的に硫黄島より帰還した伊601、伊701を交えて話し合いが行われ、具体的な日時は次回の紺碧島への帰投予定日である2月22日に合わせて開始することが決定した。

 かくして、トラック島攻略作戦……通称『三角作戦』は予定通り実行に移されることとなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――作戦当日。天候は絶好の作戦日和といえばよいのか、雨雲の気配はまったくない快晴の空であった。

 

 航空巡洋艦『東光』は、随伴に雪嵐級駆逐艦である雪嵐・稲妻・雨風・潮風の4隻と、月虹艦隊の指揮を執る航空母艦建御雷を連れ、紺碧島を〇八〇〇に出発。進路を南西へと設定し、距離にして約2000kmの航海を行っていた。

 途中、建御雷が電子偵察機『金鳶』を発進させ、進路上周辺に深海棲艦が確認されないか注意深く確認を行うが、偵察機は損傷せず無事全機帰投した。その後も一定間隔ごとに索敵が行われたが、まるで嵐の前の静けさであるように敵は見つからずじまいであった。

 

「―――仙狩(せんしゅう)を飛ばします。各艦、対潜掃討及び砲雷撃戦の用意をお願い致します」

 

『ヨーソロ!』

 

 旗艦である東光は、作戦海域を目前にし飛行甲板から対潜哨戒機『仙狩』を2機出撃させた。

 仙狩には『航跡測定式潜水艦赤外線探知機 KMX-Ⅲ』と呼ばれる対潜用の探知機が備わっており、敵潜水艦の移動の反応を読み取ることが可能であった。そして、出撃させてから3分後、1号機が北西の方向にて潜水艦タイプの深海棲艦の微弱な反応を捉え、機体をうねりのある波の上に着水させ水中聴音機を海中に投下した。

 念の為に、味方である紺碧艦隊ではないか確認をする……だが、反応は間違いなく敵のものであった。また、2号機も北東の方角にて敵潜水艦を発見したことが伝えられると、東光は仙狩に搭乗している妖精さんとのリンクをより強め指示を飛ばした。

 

「1、2号機……『小判鮫魚雷』の使用を許可します」

 

 機体のハッチが開き、ワイヤーに繋がれた魚雷が海中に突き刺さるように放たれた。

 すると、今まで水揚げされていた魚が海へと解き放たれ息を吹き返したように魚雷は自発的に動き始め、獲物である深海棲艦を捕捉する。即座に妖精さんは魚雷と機体を繋いでいたワイヤーを切り離し、海面から浮上して飛び去っていった。

 

「―――1号機付近より、浮き袋を確認です!」

 

「雪嵐級各艦、爆雷投射準備!」

 

「……ヨーソロ、準備よーし!」

 

「投射開始!」

 

 深海棲艦に曳行ワイヤーが上手く絡みついた合図である浮き輪が浮上したということは、その真下に潜水艦が潜んでいることをそのまま示していた。また、深海棲艦は他の深海棲艦と基本群れていることが多いことから、1隻が確認されれば何隻かが近くに固まって潜んでいるのである。

 そうとなれば次に行動すべきことを考えるのは容易かった。東光と雪嵐達は、集中的に浮き輪付近へ爆雷を投射し海中の様子を静かに窺った。――――途端、水柱が水飛沫と共に6回ほど上がると、その場所における深海棲艦が消滅したことが確認された。

 

「―――偵察機より入電。右舷より、敵水雷戦隊を確認……軽巡ヘ級1、輸送ワ級1、駆逐イ級3! いずれもフラグシップだ」

 

「建御雷さんは、第一次攻撃隊の発艦をお願いします。雪嵐級各艦は魚雷発射準備! 仙狩1号機は潜水艦が紛れていないか確認を!」

 

「了解。―――第一次攻撃隊、敵旗艦と輸送ワ級を優先して攻撃開始!」

 

 建御雷の持つ弓から放たれた矢は、一瞬にして艦上攻撃機『蒼山』へと変貌を遂げる。

 蒼山は、同時に発艦された艦上戦闘機『閃電改』の護衛を受けつつ、ヘ級とワ級へ向けて突撃を行い、衝突するかしないかの瀬戸際まで迫ってから魚雷を放った。回避不能のギリギリの距離から投下された一撃は、真っ直ぐに深海棲艦を射抜いて爆発を引き起こさせた。

 

「4連装九九式酸素魚雷調整よーし、発射!」

 

「発射了解!当たってしまいなさい!」

 

 また、紺碧艦隊が普段用いている六二式酸素魚雷を水上艦用に改良した九九(はく)式酸素魚雷が雪嵐級4隻からそれぞれ8本……数にして計32本も発射されると、イ級だけでなく大破状態に陥り航行不能となっていたヘ級とワ級にも雷撃の魔の手が伸び、敵水雷戦隊は無残にも壊滅した。

 しかし、それだけでことが終わるわけでもなく、仙狩2号機が発見していた潜水艦部隊からの雷撃が月虹艦隊へと急速に迫る。更には、別方向からも彼女達を挟むようにして魚雷が接近した。

 

「―――東光っ!」

 

「わかっています! マ式豆爆雷機関砲、用意ッ!」

 

 背中合わせに立った建御雷と東光の艤装に備わった、敵による魚雷攻撃を能動的に防御する為の機関砲が稼働し、その砲身を迫り来る魚雷へと合わせる。なおも接近する魚雷は、その距離を50m近くまで縮めていた。

 

「マ式豆爆雷……撃てッ!!」

 

「てぇ―――!!」

 

 2隻から水中へ向けてマ式豆爆雷が発射される。

 爆雷は砲身内のライフリングの推進力を得て加速し、海底に沈んでいくどころか5m以上を悠々と直進してみせ、その距離をどんどん更新していく。

 そして、10mを過ぎようかと思われたその時、内蔵された時限信管によって爆雷は深海棲艦から放たれた魚雷の前面で炸裂し、水圧の衝撃で防御壁を形成……魚雷は回避できずにそこへ衝突した。

 

「今度はこちらからお返しです!」

 

 畳み掛けるように東光は仙狩の3・4号機を発艦させ、自らは20.5cm連装砲を片手に姿を現さない敵潜水艦の位置を隈なく探った。やがて、仙狩は先程と同様の手口で位置を捕捉すると、エラブと呼ばれる磁気音響併用誘導魚雷を投下して見せ、また1つ水柱を作り上げた。

 

「……そこですかっ!」

 

 構えた連装砲から爆音と一緒に、先端部分がドリルのように螺旋を描いている対潜攻撃弾が何発も飛び出して行く。海流の影響を受けることなく海底に目掛けて突進するように調整された砲弾は、発射されてからの勢いを保持し、東光の揺るぎない堅い意志を表すかの如く、目標に衝突するまで止まることはなかった。

 リズミカルな破裂音が彼女の背景で鳴り響き、飛沫が雨のように降り注ぐ。

 

「―――稲妻、雨風、潮風ッ! 一気に決めるよ!」

 

「わかりました!」

 

「了解よ!」

 

「ええ!」

 

 惚れ惚れするような東光の姿に、負けじと雪嵐達も残存する敵を排除すべく水面を滑走し、通り過ぎ様に爆雷をばら撒いていく。

 派手にやらかしてはいるが効果はしっかりと現れており、黒く濁るように染まっていた海は本来の蒼さを取り戻しつつあった。

 

「……付近にまだ残存する敵は?」

 

「反応ありませんが、増援が来ることもあり得ます。引き続き、仙狩には哨戒に当たらせておきましょう」

 

「そうか……では、先に上陸して島内の安全確認に入るぞ」

 

 島内には廃墟と化した施設が残っているとの話を富士から聞いていた建御雷は、深海棲艦が内部に潜んで待ち構えていることも考え、臨戦態勢を維持したまま上陸をするよう各艦に促す。

 また、陸では海のように自由に動け回れないことを念入りに言い聞かせ、彼女達は特殊部隊さながら隠れては前に進み、進んでは隠れてを繰り返していった。そうして一行は、短いはずの距離を長い時間をかけて歩き、朽ち果てた軍事施設らしき構造物を揃って目にする。

 

「大きい……ですね」

 

「そうだな」

 

 深海棲艦によって攻撃にさらされなければ今頃、ホテルのように賑わっていたに違いない施設がそこには存在していた。彼女らの見立てでは一応、修復工事さえ行えば使えそうではあると判断されたが、一番の問題は内部の損傷具合であった。

 建御雷は深海棲艦の存在の有無を調べると共に、内部の様子を調べるべく『金鳶』を5機ほど発艦させ、それぞれから送られてくる建造物の全体構造についてのビジョンを記憶に焼き付けていく。目は大きく開かれており、傍から見れば虚ろなようにも見えた。

 

「建御雷さん、今にも口から写真を印刷しそうな勢いだね……」

 

「こら、滅多なこと言わないのっ!」

 

『ピピー、ガガガー……キュインキュイン! 用紙ヲセットシテクダサイ』

 

「それらしい機械音を口から出すのはやめてくださいよ!?」

 

 ちょっとした騒ぎはありはしたが調査は順調に進められ、結果的に内部には深海棲艦は確認されないことが明らかとなった。また、室内は一部攻撃によって破壊されていたようだが、そこを除けば埃が被って散らかってしまっている程度であることもわかった。つまりは、拠点として十分使えるということである。

 

「……作戦成功、ですか?」

 

 紺碧島に帰還する途中であった伊601、伊701も気づけば上陸を果たしており、トラック島には計8隻の月虹艦隊に属する艦娘がいる形となった。

 

「ああ、多分な……そちらの首尾はどうだ」

 

「マリアナ方面から軽母ヌ級2、輸送ワ級4がこちらに向かいかけていましたが、各個撃破しておきましたので問題はありません」

 

 予想していたものよりも敵艦隊の編成は軽いものであったが、それでもトラック島に南下する兆しはあったようだった。今回は紺碧艦隊の一部帰投に合わせることで難を逃れた結果となったが、もし日を違えていたら、そもそも建御雷が編成に加わっていなければどうなっていたかは神のみぞ知ることである。

 何はともあれ、トラック島は月虹艦隊によって攻略され、反攻作戦の為の重要な一手である『三角作戦』は此処に成功する運びとなった。

 




次は海軍サイドの艦娘の話書こうと思ってます。

あれですよ、海軍と艦娘との友好条約とかやっぱしっかりと書いたほうが良いんじゃないかなって。

それと、用語としてTIPSを前書きか後書きに追加するべきか否か。
まあ、今回の「紺碧の艦娘!」って感じに紹介するのもアリですね。


次回もよろしくお願いします。

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