紺碧の艦これ-因果戦線-   作:くりむぞー

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仮想戦記モノで面白いのないかなと調べていたら、「女子高生山本五十六」なんていうのを見つけました。まあ、アバターを使ってバーチャルな第二次世界大戦をやるってものでしたので求めていたもの少し違いましたが。

同作者のでは、大和撫子紫電改というのが設定的に面白そうでした。
空母扶桑とか設計図使って実現したら素敵やん(


第14話 巡り合う星々

 

 

 ……月虹艦隊とリーガンの米国内での再会から三日後。

 建御雷率いる派遣部隊はトラック島へと無事帰投を果たし、船旅の疲れを丸一日を費やして癒すと共にこの先起こるであろう戦いの方針をもう一度よく見直し合っていた。

 確定でないとはいえ、第2次世界大戦が最悪のシナリオで再現される可能性が濃厚であるというのならば、かつての世界でそれを阻止するために戦っていた彼女達にとっては是が非でも対処しなければならないことであり、再現に付き合わされてしまうことになる海軍所属の艦娘の強化が急ぎ求められた。また、先の装甲空母を思わせる深海棲艦を始めとする突然の急接近を今後許さないよう、月虹艦隊自体の索敵能力向上も必要とされた。

 そうした懸案事項もあり、建御雷は会談結果の報告も兼ねて硫黄島を中継し、蒼莱を配備している土浦へと秘密裏に入港した。そこで手配していた車に乗り込み、待ち合わせをしている神楽坂の料亭へと変装をした上で訪れると、目的の部屋の横の空き部屋の襖近くに立ち、そっと聞き耳を立てた。

 室内には彼女よりも先に到着していた高野と富嶽が座っており、情報交換の真っ只中であった。

 

 

「――戦略を状況に合わせて高度なものへと切り替えていかねばならんな」

 

「発見を極力避けるためではありますが、艦娘6隻による攻略が通用するのは今のうちだけかと思われます。……特に激戦が想定される南方海域へと進出することとなった時などでは、支援なくして強力な深海棲艦の個体を撃破することは敵わないでしょう」

 

「月虹艦隊の支援攻撃とは別に、此方は此方で独自の支援体制を確立する必要があるな。友軍が自軍を支援するのとは違い、自軍が自軍を支援するというのならば制限を設けなくとも済む」

 

 基本的に月虹艦隊は潜水艦隊の魚雷による支援雷撃を行っているわけであるが、それ以外の支援などの方法は姿を見られてしまう危険があるため双方の合意の下厳禁とされていた。

 しかし、月虹艦隊に頼らない自軍の艦娘によって編成された支援艦隊であるのならば、雷撃以外にも航空支援や砲撃支援などが可能であり、戦略の幅が一層広まることになる。

 具体的に、どの程度離れていれば気付かれずに支援が行えるかについては要検証ではあるが、時間をかけて確かなものとして成立させれば、必ずや主力部隊が何度も苦戦を強いられることも少なくなるだろうと言えた。

 

「……慣熟訓練を徹底させ、夏には実戦にて用いることが出来るよう指示致します」

 

「上陸後の泊地仮設についても手解きをせねばな。揚陸部隊が引き継ぎを行いやすくなる」

 

「友人に暇を持て余した腕の良いのがいますので、今度引っ張ってくるとしましょう」

 

 戦場における正確な距離感や、判断力を養う訓練もまた戦いの中では必要不可欠である。

 富嶽は自身の判断が行き届かない事態が作戦中に起こることを想定し、もしもの時に備えて座学として全員に学ばせることを考えた。基本的な応急処置の仕方についても同様に行うこととした。

 

「ところで、『水切作戦』の件だが―――我々が背負う責任は重くなってしまったぞ?」

 

「――! ……ということは、上手く行ったのですか交渉は!?」

 

「……ああ、思いの外スムーズに進んだと聞いている。作戦成功後には積極的に物資の支援を行うつもりだそうだ」

 

 逆に言えば作戦が失敗してしまえば折角成立した交渉も白紙となり、日本は引き続いて苦しい状況の中で戦わなければならなくなるということであった。

 何としてでもチャンスをモノにしなければならない重圧が襲うが、二人はその反面で良い方向へと傾いていることに嬉しく思っていた。

 

「あとは別件だが……北方方面の防衛に目処が立った。これで南西方面の攻略に専念できるだろう」

 

(……北方方面? 私はそんな指示を出した覚えはないが――――)

 

「責任者も時期に此処に来る。月虹艦隊の代表を務める建御雷君にも同席してもらい、詳しい内容を話そう。……ああ、すまないが少し用を足してくる」

 

 高野が席を立つ音が聞こえ、襖から耳を話す建御雷であったがその顔色は優れていなかった。

 ……それもそのはず、月虹艦隊は北方方面の守りが薄いことは懸念していたが、対策については今日この場を持って話し合うつもりであったのである。だが、伝えるよりも早く事態は先行しており、あろうことか解決まで話は進んでいた。

 ならば、一体誰が関与しているのかということになるが、建御雷に思い当たる節はなかった。あるとすれば、一回接触したきりである信長と尊氏だけであるが繋がるようなものは何もない。

 

(連れがいるようなことを行っていたが、誰とは言っていない―――もしかすると、その人物が来るのか?)

 

 信頼に値する人物でなければ、話したいと思っていることも迂闊には話せない。

 彼女は警戒のあまり抱いてしまった不安から逃れようと自らの胸の前に手を置いて、深呼吸をするように息をゆっくりと吐いた。……そんな彼女の肩に、背後から男の手が伸びて刺激が加えられる。

 

「――!?」

 

 反射的に振り返った建御雷は音も気にせずに豪快に後退ってみせ防御の姿勢へと移行するが、そこに居たのは先程トイレに向かうと言って席を立った高野磯八であった。

 

「誰かの気配を感じると思ったら君だったか……一体何をしているんだ?」

 

「……いえ、お取り込み中な様子でしたから、入室するタイミングを窺っていました」

 

 一先ずその場を何とか取り繕い小声で会話する彼女であったが、思い切って疑問に思っていたことを口にした。

 

「それよりも、北方方面の防衛責任者とは何です? 初めて聞いた話なのですが……」

 

「……何? 君はてっきり知っていると思っていたのだが………どういうことだ?」

 

 こっちの台詞だと言わんばかりに建御雷は高野に対し詰め寄るが、聞くところによると件の責任者なる人物は月虹艦隊の関係者であると語っているそうで、艦娘であることは確かだという。また、室蘭に拠点をおいているそうで、規模的には月虹艦隊と同等の人数が在籍しているようであった。

 

「……まあ、君も聞いていた通りもうすぐこの場に到着する。少なくとも信頼できる人物であることは確かだ」

 

「本当ですか? 酷くいい加減なようにも感じられますが……閣下がそう仰るのでしたら一応は信じましょう」

 

 渋々納得してみせた彼女は、高野に付き添われて入室し、待っていた富嶽に対して会釈を行った上で自身が月虹艦隊の代表であることを述べ、米国に行き着きトラック島へと帰ってくるまでの一連の流れについて解説を行った。

 道中襲撃を受けたこと、ミズーリなる新たな平行世界の艦娘によって窮地を脱したこと、米国内に艦娘は存在していなかったことなどが順に語られ、耳を傾けていた二人は自分達を取り巻く現在の状況について理解する。

 

「――では、この世界は外部的な要因によってある種の舞台装置として機能しているかもしれないと?」

 

「可能性としては濃厚かと思われます。……現に追加調査として早期攻略を目的とした偵察をMI諸島に対して実行しましたが、結果は最悪の一言でした」

 

 空と海から二重で偵察を行い、確かに無人であると確認したのにも関わらず、深海棲艦は突如として現れ上陸をさせまいとしていたのである。

 さらにあろうことか、出撃した部隊の誰もが体調不良を訴え、殲滅どころではない状況へと陥っていた。

 

「体調不良とは、具体的にどのような感じだったのだ?」

 

「……何というか、悪夢を見させられているような感じでした。近づいたら二度と戻れなくなると、踏み入れてしまったら帰って来れなくなると皆感じたようでした」

 

「ということは……奴らの思惑に反する行動は制限されるわけか」

 

 すべての行動が、というわけではないだろうが、少なくとも根本的に戦いの行方を左右する事象への干渉は簡単にはいかないようである。

 だとしても決して抗えないわけではない。例えば、ミズーリのような予想を一歩上回るような事象が起こり得れば、敗北するという因果は書き換えられる可能性があった。……問題は、どうやって自発的にそれを行うかである。

 

「要するにだ、単に戦闘データを反映し改修や改装を繰り返すだけでは歴史をなぞりかねんということだ。……回避するには、劇的な変化を与えなければならん」

 

「奴らはこちらの情報……艦娘になるまでの過去が知られていると見ていいでしょう。ならば、やることはただ一つ――」

 

「通常の改装を第一次改装と位置付けた先にある、未知の改装……第二次改装か」

 

 高野らはそれを『改二実装計画』と名付け、艦娘達が持つそれぞれの長所や特徴を特化させる方向性で実行することを決定し、参考になりそうな例を挙げてプランを模索していった。

 

「――例えば、軽巡洋艦の北上ですが、いずれの世界でも重雷装巡洋艦として改装されたようです」

 

「だが、一方はその特化した兵装を活かせぬまま工作艦へと改装されてしまったか……君の世界ではどうだったのだ?」

 

「私が知る限りでは期待通りの戦果は残していたはずです。……ただ、こちらでそのスタイルを再現しようとすると……全40門以上の酸素魚雷発射管の増設に加えて、五連装の方式をとる必要があるでしょう」

 

「五連装の発射管か……確か、雪風辺りが前にそんな装備を持った駆逐艦がいたと言っていたな……」

 

「その兵装データさえ得る事が出来れば、もしかすると実現可能かもしれません」

 

 他にもその艦娘が全盛期であった頃の、ポテンシャルの高い姿を技術を総動員して再現してみてはどうかという案も練られ、改装の構想は段々と煮詰まりつつあった。

 

「……うむ、良いぞ! この調子ならば奴らの思惑に打ち勝つことが出来るかもしれん!」

 

「装備を単純に渡すだけでは、赤子に拳銃を渡すようなものですからね。……この方向性ならば、より密接な技術提供が行えそうです」

 

 後は誰から優先して改装を進めて行くかであるが、一度実際に艦娘達の様子を窺ってみないことには判断はしにくい。したがって、建御雷は艦娘であることを隠して鎮守府に潜入することを彼らに持ちかけた。

 ――そして、ちょうどその時……高野が遅れてやってくると話していた人物が到着したことが女将より告げられ、髪が整えられていない様子が障子越しでもよく分かる影が映る。

 

 

「――フン、面白そうなことになってんじゃねえか」

 

「――お、お前は……!?」

 

 

 返事よりも先に勢いに任せて開かれた障子の扉の前に立っていたのは、破天荒と武人という言葉が体現されたかのような女性だった。

 その正体を知る高野は早速、何処の誰かも知らないであろう二人に対して紹介しようとするが、その前に直感的に誰であるかを感づいた建御雷が立ち上がり女性の名を叫んだ。

 

「……ヤマト、タケル!!! ――やはり、お前だったか!!!」

 

「うおおっ!? 何だよ建御雷ィ、苦しいじゃねーか!!」

 

 飛び上がった彼女は女性の頭を腕で抱え込み、渾身の力を込めて圧迫を行った。女性は逃れようとして体を捻ってみせるも、それが行けなかったのか今度は首に手を回され絞め上げられる。

 

「尊氏達が連れがいるって言っていた時点で、薄々お前がこの世界にいるんじゃないかと思っていたが……いるならいるで連絡の一つぐらい寄越せこの変態戦艦ッ!」

 

「いやだって、こっちもこっちでお前達を探していたし……仲間をかき集めるのに時間が必要だったんだよっ!」

 

「――言い訳するなこのヤロウ!」

 

「――野郎じゃないわ、これでも乙女だってんだ!」

 

 女同士の取っ組み合いが目の前で繰り広げられるのを見て、高野と富嶽は先程までの会話を忘れて苦笑いを浮かべるしかなかった。というより、あからさまに顔が引き攣っており、何も言えない状態になっていた。

 また、気づけば頬の引っ張り合いや子供みたいな罵り合いまでもが行われていて、とてもではないが旧知の仲というより永遠のライバルであるかのように周りからは見えた。

 

「ぜぇー…ぜぇー…、今日のところは……この程度にしておいてやる……」

 

「――ほざけ、夜にでも決着を付けてやるよ。……静かに寝れると思うなよ?」

 

 額と額を合わせた至近距離で両者はそのようなことを宣うと、乱れた衣服を整えた後に何事もなかったかのように席へと着いた。

 そこで、ようやくヤマトタケルと呼ばれた艦娘の紹介がなされ、建御雷と同郷の艦娘であることが明らかにされた。

 

「――旭日艦隊旗艦、超戦艦『日本武尊』。ある時は51cm45口径3連装主砲を構え、またある時は換装したR砲(レールガン)を放ち、またある時は戦艦を辞めて潜水艦になる……そんな奴です、以上」

 

「端折り過ぎだよテメェ!」

 

「……事実だろうに、だから周りから変態戦艦なんて言われるんだ」

 

「海・中・戦・艦だっての! つーか、お前はそんなにオレのことが嫌いか!? ええ!?」

 

「……本当に嫌いだったら口すら利いていないな」

 

「それもそうか!――あっははははは!」

 

「あっははははは!」

 

「……勝手に盛り上がらないでくれるか?」

 

「「あっ、すみません……」」

 

 高野に咎められ、二人は同時に謝罪すると中断していた第二次改装の件へと強制的に話題を戻した。

 ちょうど奇抜な発想で造られた戦艦の艦娘である日本武尊もいることから、彼らは気持ちを新たに検討を始める。

 

「候補としては『水切作戦』発動の前提条件である、マリアナ方面から沖ノ島にかけて迫ってきている深海棲艦の掃討作戦に参加予定である艦娘を優先して欲しいのだが……」

 

「確かにセオリーには妥当な判断かと思われますね。……ところで、その作戦に参加予定の艦娘の選出は既にお済みで?」

 

「ああ、完了している。……予定では、想定される敵の編成から戦艦を4隻、空母を2隻向かわせようと考えている。……リストで示すと、この6人だ」

 

 最新版の海軍所属の艦娘のリストが開示され、富嶽は人差し指で対象の艦娘を示した。

 次々と指される候補の少女達の中には、現在主力を担う中でも練度が高い鎮守府初の戦艦である比叡も含まれており、建御雷の心を大きく揺るがした。

 

「――建御雷、わかっちゃいるとは思うが彼女は……」

 

「わかっている……彼女が私の知っている比叡さんじゃないってことぐらいは重々承知だ……だから、贔屓もしなければ邪険に扱うこともない。他の艦娘と対等に接する」

 

「………」

 

 呟かれた内容から、比叡と建御雷の間には深い繋がりがあることを悟った富嶽は何かしてやれないかと思考するが、所詮は部外者……掛ける言葉は一つも思いつかず、時間だけが無意味にも過ぎていった。

 

「とりあえずは、この6名を対象に査察を行いましょう。……総長、お手数をおかけしますが何か適当に役職をお与えください」

 

「わかった。技術顧問として鎮守府に行き来できるよう手配しよう。後日、必要な物を部下を通して渡す。……国内には何時頃まで滞在するつもりかな?」

 

「1週間ほどは最低でも彷徨いているつもりです。何かあればまた連絡致しますのでよろしくお願いします」

 

 以前高野と会談した時に用いた偽名を使い身分証を発行する事が取り決められ、建御雷は艦娘ではない軍人としての別の顔を持つこととなった。

 そうして、話は打って変わって、日本武尊とその一派が潜伏する室蘭の港の件へと移り、月虹艦隊が把握していなかった話が語られる。

 

「……そもそもオレが海軍に接触を図ったのは、お前と尊氏達がコンタクトを取った直後の話さ。勝手に月虹艦隊の別働隊を名乗ったことは悪かったと思うが、これも双方の保険の為だ」

 

「――保険?」

 

「この先大規模作戦が続けば、それだけ主力部隊は重要拠点を離れることになる。特に、オレ達と違って表立って成果を残さねばならない鎮守府の艦娘は戦力の大半を割くことになる。そんな時に、手薄となった場所へ大規模部隊が接近すれば防衛ラインの突破は避けられない。お前の部隊もサポートに回る関係で戦力は大方作戦に回されるだろう? ……その際の保険ってわけさ」

 

「なるほど、最後の防波堤……ストッパーの役割をそちらが担うわけか。存在を知らなかったからトラック島の何人かを向かわせる算段だったが、そちらの提案の方が好ましい」

 

「じゃあ決まりだな。――あとは、艤装の組み立てなんかも此方がやった方が何かと楽だろう」

 

 日本武尊の言う通り、鎮守府で直々に造り上げたり、トラック島に発注を行うよりもかなり安全であるとの認識で他の3人の認識は一致した。

 その他、通常生産予定の装備を専門に製造し研究する施設を呉に置く見解で合意し、艦娘2名はそのまま宿泊する形で集まりは解散した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……で? オレにしか話せないってことはなんだよ」

 

「………」

 

 高野総長と富嶽提督が帰った後、私と日本武尊は他に泊まる場所がないということからその場に留まる形をとっていた。――というのは建前であり、実際には初めて顔を合わせた際の取っ組み合い時に、話し合いが終わっても帰らないように内密な話があるとして引き止めておいたのだった。

 入浴も早めに済ませ布団も先に敷き、後は寝るばかりの状態で私は話し合いの場を設けた。だが、風呂から上がってきた奴は無言で電灯を暗くし、何をしていると注意した私の手首を掴んで体重をかけ、無理矢理押し倒してきたのである。

 当然抵抗したのであるが、有無を言わせず日本武尊はもう一方の手首を押さえ込んでくると、息と息がかかる距離でニンマリと笑いながら引き止めた理由を問うてきた。反射的に顔を背けるが奴の息が耳に入り、逆効果になってしまう。

 仕方なくそのまま質問に対する回答を私は率直に述べる。

 

「―――リーガン大統領は、リーガン提督だった」

 

「へぇ、なるほどなぁ……そいつは思わぬ収穫だ」

 

 更にあくどい笑みを浮かべて日本武尊は押さえる力を強め、私の反応を楽しんでいる様子を見せつけてきた。嫌悪感を感じ唾を吐きかけるが、奴は意に返すこともなく問いかけを続行した。

 

「他にわかったことは?」

 

「……ッ、世界的に見ても……トリガーになるような出来事は……起こっていないそうだ」

 

「だが、深海棲艦はやってきた……内側から扉が開けられたのではないのなら、つまり外側から抉じ開けられたというわけだ。……お誂え向きの出来事ならあるだろ?」

 

「仮に、原爆がトリガーになったのだとしても……私達は使用される前に破壊しただろうがッ……!! とてもじゃないが原因としては不十分だ……」

 

「まあ、そうだが……」

 

 共通する出来事があったからこそ巻き込まれ、この世界にやってきたのだと考える私は感情的になって言い返した。それは重々理解しているようで日本武尊は少々押し黙った。

 

「ちなみに、リーガン大統領に私達の世界の記憶が流れ込んだのは……約60年ほど前。……そこに、謎を解く鍵があると思う」

 

「……そうか」

 

「……確認しておくが、我々があちら側の後世から来たことは誰にも話していないだろうな……日本武尊!?」

 

 もしも話してしまっていたのであれば、私はこれまで進めていた計画を一から練り直さなければならなかった。

 

「んなことはわかってるよ。……けど、時が来ればいつかは話さなきゃならねえことだ。その辺はお前こそ覚悟できてんだよな?」

 

「わかっているさ……だから、その時は私の口から話す……責任も全部私が背負う」

 

 後世での出来事に対してとやかく言われるだろうが、そうなれば線引きを強め私だけに非難が集中すれば良いと考えた。正直辛いが、それで皆を守れるのなら構わなかった。

 しかし、日本武尊はそれだけは許さないとでも言うように一言耳元で呟いた。

 

「――バカヤロウ、一人だけカッコつけてんじゃねえよ」

 

「んんっ……!!」

 

 顎に手を添えられ、背けていた顔を正面に向けさせられた私は言い返す間もなく口元を優しく塞がれていた。同時に、拘束のためにかかっていた体重が緩められたが衝撃のあまり思うように力が入らず、ただ小さく振動するだけであった。

 舌と舌が妖しく絡み合い、言葉に出来ない痺れが電流のように流れる。頭もクラクラしてしまい、自分が何をやっているのかもわからず意識が混濁してしまう。

 やっとのことで息が出来るようになったものの、味わったことのない感覚の余韻がフラッシュバックをし続けて震えが止めようと思っても一向に止まらなかった。

 

「この、変態戦艦……」

 

 顔が炎上しているように火照り、両手で覆おうとするも熱くてかなわなかった。

 

「――なんとでも言ってろ。オレは何を言われようが、ずっと建御雷の傍にいてやるよ」

 

「……勝手にしろ」

 

「じゃあ、もう一回勝手にさせてもらうぜ?」

 

 

 ……再び肌がそっと重なり合い、静かな夜が訪れる。

 そしてその翌朝、用意された朝食を摂取した私達は料亭を後にし、その足で電車を乗り継ぎ懐かしき顔ぶれが待つ室蘭へと向かっていった。

 




昨夜はお楽しみだったっぽい?
昨夜はお楽しみだったかも?
昨夜はお楽しみだったであります、たぶん!

次回もお楽しみに

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