戦車これくしょん~欠陥品の少女達~   作:トクサン

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果たしてその選択は、正しかったのか

 

「守備隊を基地に配置しろ、ホリは正面ゲートを、トクは裏で強襲に備えてくれ、守備隊の連中には決して無茶をするなと厳命しろ、通常兵器では陸上孅車に歯が立たん」

 

 達子基地が陥落したと知らせを受け、私の倦怠感は形(なり)を潜めた。

戦闘態勢になった瞬間、二人の表情はガラリと変わる。

ホリとトクに装備を整えさせ、それぞれの配置へと送り出す。

周囲には慌ただしく守備隊の兵士達が走り回り、ガシャガシャと装備品を鳴らして担当場所へと急いでいた。

その表情は一様に暗く、蒼褪めている。

 

 遂に、この時が来た。

 

 達子基地が墜ちた今、前線は神田基地が一つで支えている。

しかし、二つで支えていたモノを、一つで支えられる筈が無い。

 

 遅かれ早かれ、こうなる事は分かっていた。

敵の総攻撃、それに対処できるだけの戦力が無い。

分かっていたが、対処は出来なかった。

兵士は畑から取れないのだ。

このタイミングで仕掛けてきたと言う事は、そう言う事なのだろう。

敵の戦力が揃ったのだ。

 

 先程、中央から旧九州、旧四国でも敵の侵攻が確認されたと報が入った。

最寄りの基地が防衛線を構築し、何とか海岸沿いで食い止めているらしい。

だが敵の航空支援、艦砲撃によって被害は甚大、既に多くの死傷者が出ているとの事。

敵は空母も出してきた様だ。

そして続く、旧北海道の侵攻作戦。

この同時攻撃に中央は対応を迫られていた。

 

 仮に旧四国、旧九州、旧北海道の三つの防衛線を突破されれば、中央は三方向からの同時侵攻を受ける事となる。

如何に中央の第一戦車部隊が鉄壁を誇るとしても、長期戦になれば長くは持つまい。

故に、これは人類の生存を掛けた戦い、その大局と言っても過言では無かった。

 

 司令部で指示を飛ばす私に、一人の兵士が駆けよって来る。

 

「伝令、達子基地が完全に陥落しました、司令部崩壊、生き残りは脱出し現在南下、相楽基地を目指しているとの事です!」

 

「そうか、遠征部隊から何か連絡は?」

 

「それが、作戦遂行中に敵の攻撃に遭い作業を中断、撤退していた所を達子基地の生き残りと遭遇、救助しこちらに向かっていると」

 

「‥‥何?」

 

 それは何と言う偶然か。

運が良い、私は伝令に頼みハンディ機を用意して貰った。

その間に伝令に問う。

 

「敵性勢力は?」

 

「敵航空機が四、後続で達子基地を襲撃していた陸上孅車が来ていると、軽戦車一に重戦車が一です」

 

「二体か‥‥」

 

 恐らく基地外周で迎え撃つ事になるだろう。

たった二体と侮る事はしない、もし戦車が居ない基地ならば重戦車単体で墜とす事も出来よう。

それ程に陸上孅車と言うのは脅威なのだ。

 

 受け取ったハンディ機のスイッチを入れ、周波数を合わせて遠征部隊に繋いだ。

 

「こちら相楽基地、将臣少佐だ、応答を求む」

 

 僅かに混じるノイズ、少しして息を切らせたハクの声が無線機から聞こえて来る。

 

「ま、将臣さんですか!?」

 

 僅かに高揚した様な、少々場違いな声。

少し後ろから、「ハク、そこ退いて」とチハの声も聞こえてきた。

 

「ハク、チハ、二人は無事か、怪我は?」

 

「チハさんが少しだけドローンの機銃に被弾して‥‥それで」

 

「大丈夫、問題無いわ」

 

 割って入ってきた様なチハの声。

横からハクが何か文句を口にするが、チハは淡々と状況を口にした。

 

「敵のドローンに攻撃されてる、数は三機でさっき一機墜した、後ろから陸上孅車も来てるけど機動力で振り切った」

 

「け、けど、もう弾薬が無いんです! 撃てる分は残り九発で、火砲では中々当たらなくて、それで‥‥」

 

 ハクとチハの言葉に状況はかなり悪いと理解する。

弾薬無しに救助対象を輸送車に乗せての撤退、先程は運が良いと思ったが、これでは最悪ハクとチハ諸共失いかねない。

 

「現在位置は?」

 

「B-08区、相楽基地まで残り三キロ程です!」

 

「もし走行不能になったら五分で追い付かれる」

 

「何とかする」

 

 こちら側の兵器が相手ならば、通常兵器で対処できる。

私は近くに居た守備隊に救援を出すように手配した。

機動装甲車一台に歩兵を五名、各々にFIM-92スティンガーミサイルを携帯させる。

個人携帯式防空ミサイルシステムは、ドローン程度なら簡単に撃墜出来るだろう。

装備を整えさせると、さっそく救助に向かうよう急かした。

伝令より救援部隊が出撃した旨を聞き、無線を取る。

 

「こちら将臣少佐、今そちらに救助部隊を向かわせた、五分で合流できるだろう、すまないがあと少しだけ持ち堪えてくれ」

 

「は、はい、将臣さん!」

 

「大丈夫、任せて」

 

 何とも頼もしい返事を聞き、無線を切ろうとして。

 

「ねぇ」

 

 チハに止められた。

 

「どうした、チハ?」

 

「帰還したらご褒美が欲しい、約束」

 

 ご褒美?

私は首を捻るが、続いてハクからも「えっ、なっ、わ、私も欲しいですっ!」と叫ばれた。

何とも場違いな要求ではあるが、彼女達には遠征に続き救助までして貰ったのだ。

個人的な褒章を与えられるのであれば、応えてあげるべきだ。

余り深く考えず、その様な結論が出た。

 

 私は無線機に「分かった」と答える、すると向こう側から「やったぁー!」と歓声が上がった。

それ程にご褒美とやらを楽しみにしていたのか。

私は頭の片隅で「軍からの給与は、確か殆ど手つかずだよな‥」などと考える。

軍の給与の使い道など、娯楽位しか無いのだが、私は趣味を持っていない。

余り高価なモノでなければ良いが、なんて思った。

 

「ご褒美はやるから、早く帰ってこい」

 

「はい、直ぐに帰ります!」

 

「アンタは出迎えに待ってれば良いの‥‥」

 

「あぁ、待っている」

 

 そう言って無線を切る。

どうにか、救援さえ間に合えば切り抜けられるだろう。

後は‥‥。

 

「後続の陸上孅車を迎え撃つ、トクを正面ゲートに回してくれ、裏の部隊には悪いがもし陸上孅車が来たら足止めを頼むと」

 

「了解しました、守備隊の配置は‥」

 

「正面は今の半分‥‥いや、三分の一で良い、今の配置からそれぞれ引いてくれ、正面以外の強襲に備えて人員を割り振る」

 

「はっ」

 

 正直、人間の歩兵部隊が幾ら集まろうと陸上孅車には勝てない。

陸上孅車を撃破出来るのは、戦車だけだ。

居るだけ邪魔、と言う訳では無いが。

最悪突破された時、死傷者は少ない方が良い。

それに、防衛戦と言う事は基地の防衛兵器も稼働する、それなりに有利な戦闘条件だ。

私は立ち上がると、「前線で指揮を執る」と言い放ち司令部を後にした。

 

「少佐!」

 

 司令部を出ると同時、伝令らしき兵が私に向かって叫ぶ。

 

「先程、神田基地から救援要請がありました、どうも戦況は芳(かんば)しく無いと、達子基地の陸上孅車が神田基地へと流れている模様です、現在は何とか戦線を維持しているものの余り長くは維持出来ない

 

と」

 

 どうやら神田基地も戦況は押されている様だ。

達子基地が堕ちた今、前線に残っているのは神田基地のみ、敵が集中するのも必然。

達子基地をものの数時間で陥落させた部隊がこぞって一つの基地に集結する。

ぞっとしない。

中央からの命令は出て居ない、本来ならば救援を出すべきなのだろうが‥‥。

 

「無理だ、現在救援は出せない、相楽基地も襲撃を受け戦闘状態にある為、受け付けられないと返せ」

 

「‥了解しました」

 

 少々青白い顔になりながらも、任務を全うすべく背を向ける伝令。

ふとある事を思い出し、その背に声を掛けた。

 

「少し待て」

 

「‥? はい」

 

 先程の内容に付け加えておいて欲しいのだが、と前置きして。

自分が受けた言葉をそのまま、少しの皮肉も込めて口にした。

 

「それと、前線で戦ってきた精鋭に『欠陥品』では戦力不十分、足手まといになるでしょう‥‥とな」

 

「わ、分かりました」

 

 背を向け走り出す伝令。

それを見届け、胸に一抹の罪悪感を抱きながらも彼女達を死地に送り出さずに済んだと安堵した。

こんな状態で何を大人げない事をと思う。

だが、十中八九ここで救援を向かわせたとしたら、彼女達は確実に『死ぬ』だろう。

正規の部隊、前線で戦ってきた精鋭と文字通り欠損を抱えた欠陥品。

どちらが貴重で、戦力足り得るか。

それは戦場での役割にも反映される、現状の神田基地に送れば良くて固定砲台、最悪囮として使われるだろう。

 

 ならば、皮肉の一つでも込めて、自分を恨んで貰おう。

 

 宮田至剛少将、貴方に恨みは無いが。

 

「もう、自分の知る人を失う訳にはいかない‥‥」

 

 本来あるべき犠牲を救い、大局を悪化させる。

人類への反逆、裏切り、自分がする事はそういう事だろう。

だが。

 

 

 

 

 

 

 『考課表通りだな、君は』

 

『成績優秀・品行方正、だが………』

 

 

 

 

 

 

『情に厚い‥‥優しい人間は、指揮官には向いていない』

 

 

 

  ましてや、提督にもな。

 

 

 

 

 

 少将。

 

 貴方の選択は間違っていたかもしれない。

 

 

 

 

 

 自分はもう、中央に戻る為に彼女達を犠牲にする事など、出来なくなっていた。

 

 

 

 

 




 
 うぁあああああヤンデレ、ヤンデレが足りないよぉおおおお(´;ω;`)
うあぁぁぁぁっぁああああヤンデレぇええぇっぇぇぇぇえええええぉぉおヽ(`Д´)ノ
監禁、監禁されたいよぉおあおおあおあおあおおおぉおおあおあおあ
ち、違う、監禁じゃない、あれは愛だ、愛ゆえの行動なのぉおおおおあおあおあお
だから合意、合意なら監禁じゃない! つまり同棲! 同棲ぃあいあいいあいぃあ
ヤンデレと同棲!? 素晴らしい、すばらぁあああぁぁぁぁぃぁいああ
ヤンデレが居ない!? ヤンデレが無い!?
うあっぁあいあぁいあぁあいあああそんな嘘だあぁぁっぁああああぁぁぁあああ
ヤンデレ、ヤンデレがないなんて、そんな世界絶望しかあぁぁぁあああ

 ぁぁ?

 ぁ、そうだ、無いなら書けば良いんだ。
ヤンデレが無いなんてぇえ嘘だ、自分で書けば良いんだぁあああ!
やったぁ、世の中捨てたもんじゃないね!
ヤンデレの愛よ届けえええ、世のヤンデレ好きに届けっぇええええええええ

うぁああでもヤンデレ成分が足りないいぃいいい、足りないよぉおおおおおお愛いいい

 ‥‥ふぅ(´・ω・`)

 戦闘終わったらむちゃくちゃヤンデレ書こうね(´・ω・`)

 

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