戦車これくしょん~欠陥品の少女達~   作:トクサン

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思惑

 

 

 初日は、あっという間に過ぎて行く。

基地の現状把握で殆どの時間が過ぎていた。

宿舎の大浴場で風呂を済まし、執務室に篭っては資料を読み漁った。

そして読めば読むほど、怒りがこみ上げてきた。

 

 特に酷かったのは、戦車達に関する資料だった。

 

 何故欠陥品となったのか、過去の経歴から、現在に至るまでの作戦行動、そしてその結末。

何処でどうやって、誰に欠陥品にされたのか。

唯一、ハクだけは戦力外通告で此処に五体満足で送られた様だが、他の三人は戦闘行為の果て、此処に送られた。

 

「………胸糞悪い話だ」

 

 彼女達、ハクを除いた三人は、最初の三ヶ月の時点で陸上懴車によって負傷していた。

そして、今日に至るまでの九ヶ月余りを、この基地で過ごして来たと言う事になる。

 

 その間に就任した将軍の数、凡そ八人。

 

 殆ど一ヶ月周期で変わっていたと言って良い程に、早いペースで頭がすり替わっていた。

通常では考えられない事だ。

そして、どれもが内陸中央、またはそれに近い場所からの左遷等。

つまりは、私の様な尉官では無く、正真正銘の将官、佐官の連中と言う訳だ。

 

 最初に着任した前任者の階級は中将。

だが、次に次にと進むにつれ、段々と階級が下がっていき、将官、佐官。

そして遂には私、尉官にまで及んだ、と言う事だろう。

私のひとつ前、前任者の階級は『少佐』。

彼は最短記録、僅か二十日余りでここを去った。

誰も彼もが、投げ、見捨てて来たのだ。

 

 彼女達を。

 

 決して、名誉の戦死などではない。

果たすべき責務の放棄。

その結果。

 

「……………」

 

 自分もこうなるのだろうかと。

何とも言えない予感が体を突き抜け、体を震わせる。

無能として処分され、惰性で日々を生きる恐怖。

 

 そして、同時に脳裏を過ぎったのは、見捨てられて悲しむハクの顔。

困ったような、泣き出しそうな、そんな表情で笑うホリ。

 

 なぜそんな光景が浮かんだかは分からない。

 

 どうすれば中央に戻れる。

どうすれば彼女達を上手く扱える。

 

 この状況を、打破出来る方法を、策を。

 

 考える。

 

 考えるが、しかし、答えなど見つけられるハズもない。

 

 結局、現状打破に関する答えは見つけられず、ただ目の前の資料をめくる事しか出来なくなった。

 

 資料の中には、注意事項と言う名の、『自重しろ』と言うサインがあった。

つまりは、功を焦って欠陥品で突撃するなと、そういう内容のモノ。

どうやら、過去の将軍達は色々とやらかしたらしい。

四人の戦車を使って敵陣に攻撃を仕掛け、逆に反撃にあって防衛網を崩しかけたとか。

最前線の部隊と連絡をとって、無理やり戦線にねじ込んだとか。

結局双方の作戦は失敗し、ソイツ等は、それが原因でここを去った。

その作戦で、四人が損傷を受けたらしい。

幸いにして欠損や重傷と言う訳では無く、今では完治したとの情報があった。

そして、そんな内容の作戦が、二、三存在した。

どれもこれもが、戦車の精神を疲弊させ、損害を被ったと言うものばかり。

将軍の言い訳と言う名の作戦報告書には、全てにこう綴られていた。

 

 

 戦力不足 と。

 

 

 彼女たちを見捨てた奴らが言うのだ。

 

 酷いとは思う。

 

 あんまりだと、思う。

 

 だが同時に、何故、私なのだと言う気持ちも、ある。

 

「………下手に動けば、戦線を崩しかねない、だが…だからと言って、一生此処に縛られると言うのは」

 

 あんまりだ。 

その言葉は、口にこそ出なかったものの、本心だった。

 

 戦闘行為は、どちらにしてもやらなければならない。

でなければ、ただ後衛で戦場を見ているだけの無能となる。

私には、果たすべき願望があるのだ。

こんな場所で一生を終えるのも、無能として処分されるのも、戦場でくたばるのも、嫌だ。

 

 戦果をあげなければならない。

 

 それも、戦車を失う事無く。

損害を被ることなく、そして欠陥品とされる彼女たちを使って。

 

 

 分かりきっていた事ではあるが。

 

 それは、途轍もなく困難な事だった。  

 




 おかしい……。
もっと、こう、ぽぽーんと話が進んで某ssの様に終わると思ったのに……。

 自分が書くの遅いだけなのか……(´・ω・`)

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