ハイスクールD×D 赤腕のイッセー   作:nasigorenn

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これで終わりです。


彼は異世界の彼と出会う その20

 一誠がイッセーの精神世界に行く方法。

それは一誠とイッセーの神器の宝玉の部分を接触させ眠るだけだ。殆どの作業はドライグが行う為、一誠自身がすることはない。そして彼自身、寝ようと思えば何処だって寝られるし直ぐに寝る事が出来る。何一つロクに自慢出来ない彼が持つ数少ない特技の一つだ。

だからこそ、一誠はベットで眠るイッセーの隣に逆方向で横になり、直ぐに眠り始めた。

 

「これで本当にイッセーの精神に語りかけられるの?」

 

傍目にはただ眠っているだけにしか見えないため、リアスは不安そうにそう呟く。それは彼女の眷属達も同じであり、皆不安そうだった。

そんなリアス達と違い、久遠は一誠とイッセーの神器を何故かガムテープで固定し、彼等を覆う結界を張り始める。その顔は何やらニヤニヤとしていてリアス達の不安を更に煽った。

ヴァーリは壁に背を預け目を瞑りながら静かにしており、アザゼルは目の前で行われる事を真剣ながら少し興味深そうな眼差しで見ていた。

そして一誠が眠り始めてから直ぐに、イッセーは苦しみ始めた。

 

 

 

 彼は悔やみ嘆く。

己の力が足りなかったことに。守ると誓ったはずなのに、守れなかったことに。

悔しくて苦しくて、己そのものの非力を絶望する。

 

「あぁ、アーシア………ごめん………ごめんよ……俺が弱いから、だから君を……」

 

そう洩らしながら脳裏に蘇るのは、彼女が逝く前に見せた笑顔。

心の底から幸せそうで、全てのものに感謝を捧げるその姿はそれこそ本物の聖女と言っても良いくらいに美しかった。

そんな彼女を自分は死なせてしまった。守れなかった。不意打ちとはいえ、それに気付けず彼女を殺されてしまった。

それはイッセーにとって許されないことだ。彼女が一回死に、そして悪魔として生き返った時に確かに誓ったのだ。

二度と彼女を傷付けさせない。彼女の『すべて』を守るのだと。

そう決めたのに…………出来なかった。

それにそれは彼女の事だけではない。

リアスの結婚騒動の時もそうだ。

当初の決め事であったレーティングゲームで負けてしまい、リアスに望まぬ結婚をさせかけた。その時のリアスの悲しそうな顔が今でも忘れられない。

思いを寄せつつある彼女を悲しませてしまった。それが今でも心に残る。あの後に殴り込みをかけなければ、そのままリアスはライザーとの不幸な結婚を迎えていたと思えば、それは良かったと言える。

だが、それは本質ではない。

その二つの事柄における本質。

それは……事が起こったときには無力に叩き潰されるということ。それがイッセーの精神を苛む。

いざというときに負け、そして泣きすがって後から手に入ったチャンスでどうにか解決する。そんな後手に回りチャンスがなければ何も出来ないなんて、とてもじゃないがイッセーが目指す守護者になり得ない。

 

「いつもそうだ……俺はいざというときに何も出来なくて、それで皆を……アーシアの時や部長の時もそうだった。その一番大切な時に何も出来なくて、そしていつも後悔するんだ。それが嫌だと分かって頑張ってるのに、なのに、なんで………くそ……クソォオオオオオ!!」

 

彼はそれまでの後悔を思い出し、更に絶望に暮れる。

もう自分には何も出来ない。守るべきものを失ってしまった自分はどうすることも出来ない。ただ、ひたすらに絶望するだけ。

殺した相手を憎み、そうなってしまった世界を怨み、それらに対し大切な者達を守れなかった自分を呪う。

己が無力さを嘆き、全てのものを憎悪する。

そうすること以外何も考えられない。

 

『そうだ……いつもそうだ……』

『世界は常に我等を拒絶する』

『望む望まずにかかわらず、その憎悪の念は膨れ上がる』

 

イッセーの耳には届かないが、彼の周りではそのような声が上がる。

姿はない。しかし、それは確かにしっかりとした声だった。それは全てを嘆き悲観する呪い。その正体は歴代の所有者達の思念だ。

と言ってもほぼ正気は失っており、絶望に狂うことでしか存在しない醜い残滓だが。それ故にそれは呪い。現在の使用者であるイッセーは勿論、過去の使い手も皆彼等によって『汚染』されてきた。

それは赤龍帝の籠手に宿りし確かな呪縛だ。使用者を呪い自らと同じ存在へと墜とす。

イッセーの耳に彼等の言葉は届かない。だが、その魂にはしっかりとその呪いが染みこみ始めていた。

きっとそう遠くない内に彼等と同じ様になるのだろう。

そのことに恐怖はない。既にアーシアを失った恐怖に飲み込まれて正気を失いつつあるのだから。

もう自分には何もない。ひたすらに全てを憎悪し嘆き呪うのみ。

故にイッセーは苦しむ。苦しくてしょうがない。だが、助けなど求めない。助かるわけもない。その方法もなにも、全ては失ってしまったのだから。

嗚咽を上げながら頭を抱えしゃがみ込むイッセー。その魂は既に消えかかっていた。

きっと後もう少しすれば、周りにいる思念達と同じ存在へと変わるだろう。

真っ暗な闇の中、後悔と憎悪の念に己を際限なく呪い続ける……そんな存在に。

そんなイッセーに対し、それはいきなり現れた。

 

「まったく、ずっとイジイジイジイジいじけやがって! とっとと起きろってんだ、このバカ!」

 

この真っ暗な闇の中、その雰囲気にまったくそぐわない声が辺りに響き渡る。

 

「え……………」

 

その声はイッセーにとって聞き覚えのある声。

それは当たり前だ。何せその声は『自分の声』なのだから。

自分と全く同じ声。似ているという程度ではない。全く同じ、遜色ない同位の声。

しかし、その声は自分が出したものではない。

なら何なのか? その答えは彼に纏わり付いている思念体から明かされる。

 

『同じ赤龍帝? なら我等と同じ……』

『この世を嘆き憎悪し…』

『共に絶望に身を委ね…』

 

それは聞く者の精神を狂わす呪いの祝福。

イッセーはその声に飲まれつつも、それの方に目を向けた。

それは………怒っていた。

激怒していると言った感じではない。まるで苛立っているような、そんな怒りだ。

そしてそれは苛立ちを顕わにするかのように、周りに纏わり付こうとする思念体に咆えた。

 

「さっきからゴチャゴチャと五月蠅せぇんだよ! 俺が用があるのはそこでいじけてるバカだけだ! テメェ等みてぇな死人が出しゃばるな! とっとと失せろッ!」

 

そしてそれから振るわれる拳。

その左腕にはイッセーと同じ赤龍帝の籠手が装着されている。

この距離から拳を振るった所でイッセーに届きはしない。

だが、その拳から放たれた拳圧は確かにイッセーに届いた。

まるで突風が吹きかけたかのようにイッセーに拳圧が当たる。それはこの場の闇を切り開くかのように吹き荒んだ。

それに纏わり付こうとした思念体はその拳圧によってかき消され、その呪いの囁きは途絶えた。

そしてそれはイッセーに向かって進んでくる。ゆっくりとした歩みではあるが、強いて擬音を付けるなら『ずんずんと』だ。

戸惑うことも躊躇することもなく、しっかりとした歩みでイッセーの元に向かうそれ。

それを見て、イッセーは声を漏らした。

 

「あんたは………」

 

それは彼が良く知る人物。

茶色い髪をした、同じ神器を使う平行世界の自分……そう、彼が知る最強の赤龍帝である兵藤 一誠だ。

一誠はしゃがみ込んでいるイッセーを見下しながらニヤリと笑い声をかける。

 

「よぉ、久しぶりだな、イジケ野郎」

 

大胆不敵に笑う一誠を見て、イッセーは苛立ちを感じた。

自分はこんなにも無力に打ち拉がれているというのに、何故同じ存在であるコイツはそんな笑みを浮かべるのか。それがイッセーを苛立たせる。

存在は同じハズなのに、何故こうも彼と自分は違うのかと。

呆然と一誠を見るイッセー。一誠はそんな彼に手を伸ばすと、胸ぐらを掴んで強引に持ち上げた。

 

「ぐがぁっ!?」

 

急に持ち上げられて首が絞まり呼吸が出来なくなるイッセーは苦しそうに声を上げ、持ち上げた一誠を睨み付ける。

その視線を受けて、一誠はふふんと鼻で笑うと一誠の顔を自分の目の前まで引き寄せた。

 

「テメェ………何時までそうしてるつもりだ?」

「いつまでって……」

 

急に問われイッセーは困惑する。一体彼が何を言っているのか分からなかったからだ。

そんなイッセーに対し、一誠は殺気が籠もった目で睨みながら苛立ちを込めながらイッセーに問う。

 

「何時までそういう風にいじけてるつもりかって聞いてるんだよ、この野郎」

 

いじけている。そう言われ、イッセーはそれまで絶望していた自分をその程度の言葉で片づけられた事が我慢出来なかった。

 

「いじけッ……巫山戯んな! 俺の気持ちがアンタに分かるのか! 目の前でアーシアを殺された俺の気持ちが! そのショックに対していじけてるだって? そんな生優しいもんじゃねぇ!!」

 

イッセーはそれまで絶望して時の表情と違い、顔を真っ赤にして心の底からの怒りを一誠に叫ぶ。

許せない。目の前でアーシアを殺されて悲しんでいることが『いじけている』と言われたことが許せない。

今、イッセーの心はその事だけで一杯になっていた。

そんな単純なことではないのだ。妹のように大切に思っていたアーシアが、家族が目の前で殺されたのだ。それを見て、いじけているなどと………到底許せたものではない。

憤怒を顕わにするイッセーは離せと言わんばかりに一誠に殴りかかる。

此方とて赤龍帝、その腕力は他の悪魔を凌駕する。破れかぶれで力は乗らないが、人間である彼相手なら致命傷になりかねない。しかも怒りで力加減など出来ないのだから、下手をすれば首から上がミンチへと早変わりする。

イッセーは躊躇無く殺人を行おうとした。意識はしていない。ただ、自分の悲劇を鼻で笑う同じ顔をした一誠が許せなかったのだ。

その殺意で満たされた拳は一誠に吸い込まれるように向かい、そして彼の頬にめり込んだ。

しかし、その首が爆ぜることはない。

一誠はその拳を受けても尚、僅かたりとも動かなかった。

自分の頬にめり込んだ拳を見て、そして軽く笑うやイッセーの顔面目がけて思いっきり頭を振りかぶり叩き着けた。所謂頭突きである。

 

「ごぷっ!?」

 

顔面に硬い頭部を叩き着けられ鼻が潰れたイッセーは、込み上げる鼻血で呼気を詰まらせながら仰け反る。しかし、一誠はその胸ぐらを掴んだ右手を離さない。

 

「八つ当たりするんじゃねぇよ、このアホ野郎。まんま言われたからって逆ギレすんな」

 

一誠は鼻血を噴き出しているイッセーを再びたぐり寄せ、彼に聞こえるようにしっかりと言う。

そう言われても、イッセーは納得など出来ない。

 

「八つ当たりだって? そんなことない! そんなこと………」

 

だが、何故か涙が出てきて溢れ出してしまう。

悔しいのだ。こうまで言われて、そうではないと言いたいはずなのに、言葉が出ない。

 

「だって……俺はアーシアと約束したんだ、絶対に守るって。なのに、俺はまた守れなかった。彼女が転生する前も、そして今回も。いつもそうだ。事が起こったときには遅くて、それでいつも大切なものを失うんだ。もう嫌なんだよ、そんな思いは」

 

やがて泣き言のように漏れ出していくイッセーの本音。

自分の無力を嘆き、その不幸を呪う。

 

「それなのに、今回も結局アーシアを失っちまった。もう俺は生きられないよ。どうしろって言うんだ? もうアーシアはいないんだ。なのに俺はどうしたら良いんだよ………」

 

そう言言うと、力なく頭を垂れるイッセー。その身体には先程殴りかかったような力など感じられない。

そんなイッセーに対し、一誠はニヤリと笑う。

 

「どうもこうもねぇだろ。生きてるんだったら生きろ。ただそれだけの話だろ」

 

はっきりと一誠はそう告げる。そこにイッセーを労ったり思いやるような感情は感じられない。彼が思ったことをまんま告げただけだ。

そう言われたところでイッセーは納得出来ない。

 

「無理だろ、そんなこと! アーシアが死んだんだぜ。目の前で……あんな幸せそうに笑ってたのに……その笑顔を守りたかったのに……なのに俺は守れなかった! 俺が彼女を殺しちまったんだ! それなのに平然と生きられるかよ……アーシアを失った悲しみを忘れて生きられるか……」

 

そう答えるイッセーを見て、一誠は掴んでいた胸ぐらを更に持ち上げる。

そしてイッセーと同じ目線になって彼に話しかけた。

 

「テメェが悲しんでるのは結構だ。だがなぁ、それで迷惑する奴だってかなり居るんだよ。そいつ等に迷惑かけてるってのを自覚しろ。さっきから聞いてりゃウジウジしやがって。テメェだってわかってんだろ? テメェが弱いのが悪いってよぉ」

 

イッセーはその言葉を聞いて、噴き出した感情を顕わに咆えた。

 

「そうだよ、分かってるよ! 俺が弱かったらアーシアは死んだんだ! でも、どうしろっていうんだよ! 禁手に至れるまで頑張った。タンニーンのおっさんに死ぬほど扱いて貰った! でも助けられなかったんだ。これ以上どうしろって言うんだよ!」

 

それはイッセーがずっと悔やんでいた事実。

自分は自分が出来る限界まで頑張って来た。その結果、以前と比べれば格段に強くなった。なのに守れなかったのだ。その先をどうすれば良いのかわからない。

だからイッセーは彼に叫んだ。自分よりも遙かに先にいる『最強』に。

そして一誠はゲラゲラと笑い出す。

精神を逆撫でるような、そんな笑い声をあげて。

 

「おいおい、笑わせるなよ。自分は精一杯頑張りました。でも、アーシアは助けられませんでした。だからどうしていいのかわかりませんってか?………ガキかよ、テメェは。精一杯? 巫山戯んな、そんなもんで精一杯な訳ネェだろ」

 

一誠はカラカラと笑いながらも殺気を放つ。

その殺気は意気消沈しているイッセーでさえ呼吸出来なくなるくらい凄まじい。

 

「甘ぇんだよ、テメェは。精一杯? それはただテメェが決めた限界じゃねぇか。本当に鍛える気がある奴なら、そいつは常に『限界を超える』んだよ。身体が千切れようが、精神が崩壊しかけようが、それでも止まらねぇんだ。それが本当の精一杯ってもんだ。テメェの身なんか返り見ない、目的のためならそれこそ我が身を挿しだしても成し遂げようとする。それが全力だ」

 

一誠はそう告げる。まだ甘いのだと。

 

「死ぬ気でやれなんてもんじゃねぇ。死んで殺れ! それぐらいの気概もなくて何がどうしたらいいだ。甘えるのもいい加減にしろよ?」

 

そして真っ直ぐに見据えた瞳にイッセーは自分の姿が見えた。

その表情は怯えていた。

 

「テメェはゴチャゴチャ考えすぎなんだよ。敵とあったら殺す、味方を守るってんなら死んでも守れ。その決意も決めてねぇくせに死んだのは自分の所為でいじけてますって? 自業自得で嘆く暇なんかあるわけねぇだろ」

 

一誠の言葉にイッセーの心はどんどん罅が入っていく。

それまでの絶望はただの逃避。それを認めたくないのに、その言葉はそれを認めさせようとする。

そして一誠はそんな彼に最後のトドメを叩き込んだ。

 

「自業自得で立ち止まるな! 嫌だってんならとっとと死ね! その所為でテメェの仲間が死のうとテメェに悲しむ資格なんてねぇ! ちゃんと悲しみたいってんなら、突き進め! 誰が来ようと関係ねぇ。神だろうが魔王だろうが何だろうが、テメェの邪魔をする奴は叩き潰せ! もう二度とそんな思いしたくねぇってんなら、目の前にある壁はどんなに固かろうがぶち破れ! そんでもって決めろ! テメェの決めたモンを貫き通せ! それでテメェが死のうが何だろうが、絶対にそれだけは貫き通せ。それが出来て始めて、テメェは悲しんでいいんだ。だから今はまだ止まるな! 止まるときは死ぬときだけにしろ」

 

そう言われ、イッセーの心は完璧に砕けた。

そう、そうなのだ。彼が言っていることは正しいのだと。自分の所為でアーシアが死んだ事実は変わらない。それはわかっているのに、自分はそのことをずっと悔やみ続けるだけ。それだけでは何もかわらないのだ。

一誠が言ったのは単純な二択。

何も出来ないのならとっとと死ぬか、アーシアの死を認めた上でその悲しみを背負いつつも激痛に堪えながら突き進むのみ。

そのどちらかしか選べないのなら、俺は………。

イッセーがそう思うと、共に、それまで真っ暗だった世界が真っ白に光り出す。

その光景とイッセーの目を見て、一誠は不敵に笑うとこう告げた。

 

「そうだよ、そいつが答えだ。テメェのルールを決めた以上、そいつは絶対に曲げるな。曲げた瞬間そいつは死ぬ。だから絶対に曲げるな。決めたんなら貫き通せ。それが生きるってことだ」

 

その言葉を聞いてイッセーは何となく納得した。

自分と彼の違い。それは思想でも力の親和性でもない。

確固たる思いがあるかどうか。イッセーは心の中でどこか悩んでいたのかも知れない。それが表に現れた結果が今回の原因なのだと。

一誠にはそれがある。その思いが何なのかは分からない。でも、確かにそれが在るからこそ、あのような暴威を自分の物に出来るのだと。

正直、羨ましく思った。

そして光が増していき一誠の姿が見えなくなってくる。

それを見て一誠は何となく察した。

 

あぁ、目覚めると。

 

そして一誠は消える前にイタズラをする子供の様な笑みを浮かべ最後にこう告げた。

 

「そうそう、目覚めた後に驚くもんがあるぜ。楽しみにしておくんだな」

 

そう告げて彼は完全に消えた。

 

 

 

「あれ、ここは………」

 

目を開けると、そこには見慣れた天井が広がっていた。

自分の部屋の天井。それを見て、イッセーは此処が自分の家であることをぼんやりとながら理解した。

そして霞がかった頭を働かせようと記憶を辿ろうとする。それまで冥界にいたはずなのにどうして自分は自宅にいるのかと。

そして思い出す。アーシアが目の前で………。

 

「イッセーさんッ!?」

「アーシア………なのか?」

 

最後の瞬間が頭を過ぎると共に扉が開き、そこから出てきたアーシアがイッセーを見て表情が固まった。

そしてえ一拍の間を置いて彼女の瞳からは涙が溢れ出す。

 

「イッセーさん!!」

 

アーシアは叫ぶと共にイッセーに飛びつき、その胸に顔を埋め起きた一誠に泣きつく。

目の前で泣いているアーシアを見て、イッセーは理解出来ない。何故彼女が生きているのか分からず、戸惑ってしまう。

そしてそんな二人の騒々しさを感じ、リアス達もイッセーの部屋に入ってきて皆してイッセーに抱きついてきた。

皆、その瞳には涙を流している。

そんな雰囲気で満たされている室内の外で、一誠と久遠、それにうヴァーリはアザゼルに話しかける。

 

「んじゃ、俺達はもういくわ」

 

それが帰るという意味だと分かり、アザゼルは一誠達に笑いながら話しかける。

 

「なんだ、もう行くのか?」

 

その言葉に一誠は笑う。

 

「あの雰囲気に水を差すほど野暮じゃねぇんでな」

「そう言いつつどうせアーシアちゃんが恋しくなったとか?」

「久遠、後で思いっきりぶん殴ってやろうか?」

 

そんな風に話し合う二人。それを見てヴァーリは歩くアザゼルに二人が世話になったことで礼を言うと、二人を連れて転送魔法陣を起動した。

そして二人とヴァーリの姿は消え、アザゼルはその姿を見送り呟く。

 

「本当、凄い奴等ばかりだったなぁ」

 

こうして平行世界の旅行は終わった。

 

 


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