ハイスクールD×D 赤腕のイッセー   作:nasigorenn

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今回はあの総督も来てますよ。


彼は異世界の彼と出会う その9

 前回の話で此方の世界と平行世界の赤龍帝について改めてしったリアス達。

それは常に驚きの連続であった。

同じ姿形でありながら、その中身は極端に違う。

片や年相応に青春を謳歌し、自分の性欲に従順なリアス達の想い人。スケベな点は少しばかり悪目立ちすれど、仲間思いの熱血漢であり皆のことを守ろうと頑張っている少年。

もう片やその苛烈な環境に適応し、危険と隣り合わせに生きてきた修羅。目覚めた力を自らの物とし、常に死に瀕するような戦いで鍛え続け、目の前に立ち塞がる障害を全て打ち砕いてきた少年。

それはこの世界の『兵藤 一誠』を知るリアス達にとって信じられない程に違っていた。

そしてもう一つ同じ存在である『赤龍帝の籠手』に宿りしドライグもまた、少しばかり違っていた。いや、此方は性格などは一緒だ。しかし、宿主である一誠達の評価は丸っきり違っていた。

此方の世界のイッセーのドライグは今までに無い存在で愉快ではあるが、同時に下心が強すぎるが故にそれが覚醒のトリガーになったりと恥ずかしいとも思っていた。

対して平行世界の一誠のドライグは自分の宿主を誇らしげに語る。もっとも赤龍帝らしい振る舞いをし、その本能に忠実。己が力を持って全てを打ち砕く様はまさに爽快の一言に尽きるのだとか。

それは同じ神器でありながら、進化によって能力が違うことにも現れていた。

イッセーの赤龍帝の籠手は通常の倍化、そして倍化した魔力や力を他者へと譲渡する能力。または彼の下心が生み出した相手(女性限定)の衣服を破壊するドレスブレイク。

これらは主に、仲間を思い助けたいと思うことから進化した能力や彼の煩悩が生み出した特殊過ぎる技だ。その戦闘は主に仲間と共に戦うことを前提としている。

対して一誠の赤龍帝の籠手は同じく通常の倍化、そしてそこから繰り出されるのは全てを粉砕する凶悪な攻撃。ドラグブリットとドラグブリットバースト。この二つは一誠が今まで生きてきた中で磨き上げた一撃必滅の技。たった一人で全てと戦うべく鍛え抜かれた凶悪な武器だ。

そしてこの場にいる者達には明かさなかったが、最後の技である『ロンギヌスブリット』。それは至った先にある、極限の技。放てばそれは全てを灰燼に帰し、文字通り何もかも残さずに破壊する。それは物質的なものに限らず、『世界や次元』すら破壊出来うるものである。

それを言うには、まだイッセーは『未熟』過ぎるのだ。だからこそ伏せた。

それを語らなくてもこの『兵藤 一誠』の凄まじさは伝わるのだから。

 

 

 

 さて、そんな風に両者の違いを比べ合った所で、その後がどうなのかと言えば………。

 

「さて、では詳しく聞かせて貰もらうぜ。お前さんの『神すら滅ぼす力』って奴をよぉ」

「リアスから色々と話は窺っているよ。だからこそ、まだ聞いていない事について是非とも聞かせてもらいたい」

「私としても知りたいですからね」

 

現在、兵藤邸にてリアス達は額に冷や汗を掻いていた。

それというのも、目の前にいる人物達が原因だ。

リアスと同じ紅髪をした凜々しい青年……四大魔王の一人にしてリアスの兄、サーゼクス・ルシファー。

黄色の前髪と黒色に二色の髪色をした男……『神の子を見張る者(グリゴリ)』の総督を務めるアザゼル。

美しい金色の長髪をし、頭に輝く輪を浮かべる青年……天界の組織「熾天使」を率いる天使長、ミカエル。

そんな三大勢力のトップが人間界の普通というには少しアレだが、それでも普通の一宅に集まっているのだ。

それに緊張しない者は三大勢力内にいないだろう。

当然彼等が来た理由というのも、彼等の前でソファで気だるそうに寛いでる平行世界の『兵藤 一誠』が原因だ。

今までに無い前例、そして神を一方的に討ち滅ぼしたというのは、如何に報告で聞いていようと気になるもの。だからこそ、こうしてトップ達は会いに来たのだ。目の前にいる、破壊の化身に。

 

「ぶ、部長、まだアザゼル先生は分かりますけど、何でミカエル様まで来てるんですか!?」

 

緊張で固まっているリアス達の中、イッセーは周りに聞こえないように小声でリアスに問いかける。彼自身は何故こんなことになっているのかイマイチ分かっていないのだ。

それも仕方ない話。何せイッセーはあの力を見ていないのだから。

そんなイッセーにリアスは静かに答える。

 

「やはりと言うべきかしら。お兄様もそうだけど、三大勢力のトップは気になるみたいなの、彼の事が。それに私も気になることがあるしね」

 

そう答えるリアス。その言葉にイッセーは一誠に若干の嫉妬を燃やすが、リアスが気になっているのはそんなものではない。

ただ、その答えはこれから明かされるだろうと思うからこそ、ジッと待つことにした。

そんなリアス達に比べ、緊張感など微塵もさせずに寛いでいる一誠は3人の来訪者に対して普通に話しかけた。

 

「まぁ、あんたらは普通に来るとは思ってたよ。どうせ俺について色々と話せってんだろ」

「そう言うなよ、イッセー。向こうじゃお得意さんだったから多少知ってたけど、こっちはそんなことはねぇんだからよ」

 

飽きたと言わんばかりにグダっとしてる一誠に対し、久遠は苦笑しながらフォローを入れる。

そんな久遠に一誠はそれじゃお前がやってくれと言わんばかりの目を向け、久遠はしょうがないと言いながら3人に向き合った。

 

「それで、偉大なる三大勢力のトップの方々はいったい何を聞きたいのでしょうか? まぁ、ここは別の世界だから守秘義務もねぇし、知ってる範囲なら答えましょうか」

 

営業するときに相手に向ける作り笑顔を浮かべながら久遠はそう言うと、早速食い付いたのはアザゼルだった。この中で一番そういったことに興味を持つのは間違いなくこの男だ。

 

「んじゃ早速。話には聞いてたがよ……お前さんのその力…『赤龍帝の籠手』の力にしちゃ随分と変わってるって聞いたからよ。禁手の時の姿も違ってたからなぁ。ありゃ禁手の亜種か?」

 

アザゼルが聞きたかった最初のことはそこ。

神器は使用者によってその性能を変えていく。その中でも特に変わっているのは、禁手の亜種だ。それは本来の姿から変わった変化を起こし、使用者の使いやすいように姿を変えたもののこと。

神器を研究しているアザゼルからしたら気になって仕方ない話題だ。

それに対し、最初に答えたのは久遠だった。

 

「まぁ、聞くだけ無駄だと思いますけど……何で知ってるんですか? 更に聞けば、まるで直に見たようですけど」

 

それに対し、アザゼルはニヤリと笑った。

 

「まぁ、念のためにアイツ等には隠しカメラを付けておいたからなぁ。勿論、ウチで開発した特殊な人工神器の一つなんだぜ」

 

それを聞いた全員は一斉にアザゼルに白い目を向けた。世界が変われどこの変人は変わらないというのは、一誠と久遠共通の認識になった。

そしていつの間に仕掛けたんだとイッセーやリアス達は慌てるが、アザゼル曰く作戦当初で既に外しているということ。本当にそれが信用できるかは分からないが、それでも一誠のあの姿を見たと言うのは本当らしい。

そしてその問いはリアス達も気になっていた。何せ彼女達はその姿を直に見たのだ。

その異形を見て、その力の余波を感じて。

だからこそ気になるのだ。自分達が知るイッセーもあのようになるのかどうかというのも含めて。

それに対し、一誠は面倒臭そうしていた。

それというのも、彼が説明下手だからだ。元からそんなキャラでないことは、彼と話したことがある者達なら直ぐにわかるだろう。

 

「あ~、アレのことか。アレね~………」

 

彼自身、アレがどういう原理でなっているのかなど説明出来ない。

一誠なりに言わせて貰うのなら、ドライグの精神世界で絡んできた連中を全員ぶっ飛ばしたら出来る様になっていたとしか言いようが無いのだから。

そんなわけで困った様子を見せる一誠に替わり、彼に左腕からドライグが答えた。

 

『アレは亜種などと言う矮小なものではない。アレは至ったその先だ』

「至ったその先? おい、まさかそいつは…」

 

その言葉にアザゼルは何か思い当たったものがあるようだ。

そしてアザゼル以外は丸っきり分からない様子。特に赤龍帝であるイッセーはそれが何なのかまったくもって理解出来ない。彼からすれば、禁手よりも上があるのかと問いたいくらいだ。そんな宿主と違い、彼のドライグは言葉こそ発しないがその考えに至り内心驚いていた。

そしてアザゼルがその答えを口にする。

 

「そいつはまさか……『覇龍』か」

 

その答えにやっと理解したサーゼクスとミカエル。

それでもまだ分かっていない様子のリアス達に二人は簡潔に説明を入れた。

 

「リアス、『覇龍』というのは『赤龍帝の籠手』と『白龍皇の光翼』に備わっている最強の力のことだよ」

「その力というのは、今まで制御していた二天龍の力を解放すること。本来の能力を前面的に使えるという能力です」

 

それを聞いてイッセーは顔を驚愕に染める。

まさか禁手以上に上があるとは思わなかったのだから。

そして同時にそれを会得したいとも思ったが、それはアザゼルの言葉で止められた。

 

「だが、それにしたって可笑しいだろ。アレは本来、巨大化して龍の姿になる上に歴代所有者の残留思念で精神を汚染される暴走に近い代物だ。だが、お前さんのあの姿は全く違っていた」

 

誰だって危険すぎる力を身に付けたいとは思わないだろう。

そんな危険な代物なら、流石にもっと強くなりたいと思うイッセーでも御免だと思う程だ。

そんなアザゼルの言葉に対し、一誠のドライグは少し愉快そうに答えた。

 

『相棒はな、それすら乗り越えた超越者だ。寧ろその事については俺ですら驚きを通り越して呆れたくらいにな。アレはな……覇龍の更にその先の姿。相棒が自分の力を発揮するために生み出した、相棒だけの超絶的な力だ。他者を一切寄せ付けない、神すらも軽々と滅ぼす覇龍の進化。それがあの正体だ』

「覇龍を進化……だと?」

 

なまじ覇龍を知っているが故に驚くアザゼル。それは勿論サーゼクスやミカエルも一緒だ。

それが面白かったのか、ドライグは更に語り出す。

 

『確かに貴様の言う通り、覇龍とは我等の力をそのままに表せる物だ。だが、それは普通では耐えられない。何せこれでも天を冠した龍なのだ。矮小な存在に使いこなせる訳がなかろう。しかし、相棒は違う。寧ろ俺が引っ張られてしまうくらいに凶悪で凶暴だ。その精神は強靱過ぎて、歴代所有者の残留思念など全員精神世界で殴り飛ばしたくらいだからな。汚染するどころか全員相棒に負けて何も言えなくなったものだ。だからこそ、至ったのだ……その先に。聖書の神が作りし神器という枠を壊し、奴が想定したものを遙かに超えて相棒は進化した。実質これこそ最強の赤龍帝よ』

 

自信満々に語るドライグ。

そんなドライグに一誠はあまり面白そうな顔をしない。

 

「おい、ドライグ。そんな気色悪い話は止してくれ。別に大したもんじゃねぇだろ。お前の精神世界に行ったらいきなり絡んできやがったもんだから、思いっきりぶっ倒しただけじゃねぇか。確かに同じ神器を使う奴等との喧嘩ってのは悪くはなかったがよぉ……『アイツ』に比べればみみっちいもんだ」

『普通なら三大勢力が仰天するようなことだと言うのに、この相棒は……。まぁ、だからこそあのように最強になれると言ったところか』

 

そんな一誠にドライグは仕方ない奴だと笑う。

そして一誠の力の正体をドライグは改めて皆に告げた。

 

『アレは相棒が自身の力を100パーセント……いや、それこそ限界など超えて出すための形態だ。その名を…覇龍進化 赤龍暴帝の重鎧殻と言う』

 

その言葉に皆が理解した。

つまり、アレは本来の赤龍帝の籠手の禁手どころではない。

その先にある覇龍、それすら超えた先。神が作りし限界を超えた力。

ドライグの力を満遍なく発揮し、それ以上に一誠の力を発揮する姿なのだと。

その事実に驚愕するリアス達やサーゼクス達。

そんな光景を既に見た事がある久遠としては笑いを堪えるのが大変なようだ。

だが、それでも彼等はまだ分かっていない。

アレが………ロキを倒したのは、全くもって『全力』ではないということに。

 

「つまり、それがロキを倒した力の正体ということか」

「全くもって末恐ろしいものだな」

「神の作った限界を超えるとは……人間には驚かされるものですね」

「そんな凄いもんが俺にもあるのか……」

『相棒では無理だと先に言っておくぞ。向こうの相棒は既に人としての上限を超えている』

 

驚きに声を漏らす皆だが、そんな周りに久遠はにっしっしと笑いながら更に爆弾を落とした。

 

「驚いてるところ申し訳ないんですが……アレはコイツの全力なんかじゃないですよ」

 

「「「「「「「「「「えッ!?」」」」」」」」」」

 

皆が驚く顔を見て愉快そうに笑う久遠。一誠は実につまらなさそうだ。

 

「アレはコイツのほんの少しの力ですよ。少し前に派手にやり合った後、一週間程度寝込んでたもんだから鈍ってるって言うんでリハビリ代わりにやったんですよ」

『あの程度相棒の全力には程遠い。相棒の全力なら、それこそ世界が崩壊するだろう。それに比べればあの程度、漏れ出したほんの一滴に過ぎない』

「まぁ、リハビリがてらにゃ丁度良かったがよ。その程度だな。どうも『あの野郎』とやり合ったせいか、不満が残っちまう」

 

その言葉に今度こそ皆は言葉を失った。

神すら滅ぼす力を振るっておいて、それが全力ではなく全力の一割以下にしか過ぎないと言うのだから。これには流石のイッセーも彼の中のドライグも驚愕し打ち震えた。

そして次にアザゼルが気になったのは、彼が度々口にするもの。

 

「なぁ、つまりお前さんにとってロキは雑魚同然だったってことか?」

「あぁ、まったくだ。こっちに飛ばされていきなり喧嘩をふっかけられて、それでぶっ飛ばしたってだけ。悪くはねぇが、その程度って奴だ。『あの野郎』の1000倍以下って感じだったぜ」

「『あの野郎』ってのはいったい誰なんだ? そこまで強いお前さんが対等だと言ってるそいつは」

 

そう聞かれ、周りの視線が集まる中、一誠は周りが怖気るほどに殺気立った笑みを浮かべながら答えた。

 

「決まってんだろ……ヴァーリの野郎だよ。俺が一番ぶっ倒したくてたまらない、俺の喧嘩相手だ。あの野郎に勝つためだけにずっと磨いてきたんだからよぉ、この拳をなぁ」

 

 その言葉に周りは更に驚愕した。


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