ハイスクールD×D 赤腕のイッセー   作:nasigorenn

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まだまだ長引くこのお話。そろそろ終わらせたいですね~。


彼は異世界の彼と出会う その8

 突如言葉を発し始めたドライグ達に周りは驚き、二人の兵藤 一誠は互いのドライグの声に反応を示す。

そして当のドライグ達は互いに己の使い手のことを話し始めた。

 

『其方の使い手はどうにも赤龍帝として緊張感に欠けるようだな。ドラゴンの気は確かに異性を惹き付ける。しかし、だからといって色欲丸出しというのは幾ら何でも酷いと思うぞ』

『そう言われてはぐうの音もでない。確かに其方の言う通りだ。相棒は今までに無い赤龍帝で楽しませてはくれるが、如何せん女にうつつを抜かしすぎるのがどうにもな。英雄色を好むというが、相棒はどうにも好みすぎでいけない。何せ禁手に至ったのも、女の乳首を押すなんて言う巫山戯た方法で至ったくらいだ。正直泣きたくなったよ、俺は』

 

一誠のドライグにそう言われ、イッセーのドライグは嘆くかのようにそう答える。

その話を聞いていた一誠はあまりの馬鹿らしさに笑ってしまった。

 

「おいおい、マジかよ! どんだけだよ、その執着心! 驚きを通り越して感心しちまいそうだ」

「まさかそんなことで禁手に至る奴が居るなんて初めて聞いたよ、俺は。こいつは良い土産話になりそうだ」

 

一誠に続いて久遠も笑う。

それはそうだろう。何せ本来禁手に至るというのは、その使い手がそれ相応の経験を積み、劇的な変化を起こさなければならないのだから。

それは通常、激戦を繰り広げて命の危機に晒される時などに起こったり、もしくは何かの覚悟を決め込んだりと、肉体的だったり精神的だったりといった要因で起こる。それがまさか、女の乳首を押すことで起こるなど、今までの歴史上有り得ない至り方だろう。

確かにそんな話を聞かされたのなら、笑わざる得ない。

そんな風に笑われ、イッセーは顔を赤くしつつも怒る。

 

「ウッセー、おっぱい嘗めんなよ! そういうそっちはどうなんだよ!」

 

イッセーの怒りの籠もった問いに対し、一誠は少し考え込む。

そう言えば、一体自分はいつ頃から禁手に至ったのだろうかと。

この男、あまりそういったことは覚えていない。使える事は分かっているが、それがいつ頃出来る様になったのかということは全く覚えていないのだ。

故に答えが出ない一誠に変わって彼のドライグが答える。

 

『相棒はそういうことにまったく感心がないのでな、俺が代わりに答えよう。相棒が禁手に至ったのは、四年以上前だ。確かアレは………』

 

そしてドライグから語られる一誠の禁手に至った経緯。

それは彼等からすれば何てことない思い出話。しかし、イッセーやリアスからしたらあまりにも常識外の話であった。

彼等はが口にしたのは、単純に仕事の話であった。

 

ただし……それが悪魔達による犯罪組織の殲滅という話。

 

ドライグが言うには、現体制を快く思っていないのは何も旧魔王派だけではないらしい。平和になれば、それを快く思わない者も必ず出て来るのだとか。

それの殲滅を依頼されたわけだが、何も一誠でなくても良いはずである。そこには単純に、悪魔同士の諍いを他の者達に見せないためと、そしてその組織の力が結構強いことから被害を出したくないということで一誠に依頼が来たのだ。

要は捨て駒である。これで達成出来れば被害はゼロで済み、そうでなくても一誠の強さはそれなりに知られ始めている頃なので、多少は組織の弱体化を図れると。

そしてその仕事の最中、一誠は禁手に至ったのだとドライグは語る。

 

『まぁ、あの時の仕事はそれなりに相棒には刺激的だったのだろう。何せ上級悪魔達が数多くいたからな。確か30人くらいだったか』

 

今から四年も前となると、一誠は大体13歳前後。そんな頃に上級悪魔達と戦うなど、正気の沙汰ではない。それも神器を持っているとは言え人間が30人もの上級悪魔を相手に戦うなど。

その話を聞いて当然イッセーやリアス達は顔を青くする。

そんな子供が勝てる訳が無いのだから、当然死にかけたのだろうと。

しかし、その考えは全く当たっていなかった。

当時の事を思いだしていたのか、ドライグは苦笑したような様子で語った。

 

『あの時の相棒ときたら、実に活き活きした様子でな。それはもう、実に赤龍帝の名に恥じない闘争であった。それでも凄いというのに、全身を血で真っ赤に染めながら獣のように笑ってなぁ、「もっとだ! もっと、もっと俺を満足させてくれよ、なぁっ!!」と言って上級悪魔達を拳で撲殺していったのだ。その時、相棒の願い…(よりもっと戦いたい)という思いを持って禁手へと至り、その組織を施設諸共全て消滅させた』

 

それを聞いて開いた口が塞がらなくなるイッセー達。

確かにもっともそれらしい禁手への至り方だが、だからといって、何で人間であるはずの彼がこの場に居る悪魔のイッセーよりも苛烈なのだろうかと。

そんな周りを気にせず、一誠は当時のこと思い出したようだ。

 

「あぁ、そういえばそんな事があったか。あん時の仕事は悪く無かったなぁ。まぁ、今にして思えばあの程度で喜んでたテメェが恥ずかしいもんだ。あんなもん、今じゃ退屈だろうによぉ」

 

そう言う一誠に久遠も思い出したようで、一誠に話しかける。

 

「あぁ、あの時の仕事か。あん時は大公が信用してなかったもんだから、随分とケチられたっけな。でも、あれでお前さんの名前が更に売れて仕事も来るようになったんだっけ」

「あぁ、そいつも思い出した。あのクソ大公、こっちがガキだからって下に見下しやがったんだっけか。そう思うとむかついてきたぜ。戻ったらサーゼクスに頼んで殴らせてもらうか?」

「やめとけやめとけ、今じゃ充分お得意様だ。やったら本当に俺等は干上がっちまうよ」

 

そんな話をしながら笑い合う一誠と久遠。二人の会話に依然としてイッセー達は驚いたまま動けないが、イッセーのドライグはそうではなかった。

 

『何と赤龍帝らしいことか! それに比べて此方の相棒は……はぁ。もう少し其方の相棒の爪の垢を煎じて飲ませたいくらいだ』

「ぐぅ……言い返したいのに言い返せない……」

 

その言葉にイッセーは文句を言いたかったが、確かに其方の世界の一誠が実に『赤龍帝』らしいというのは彼でも分かるだけに、何も言い返せない。おっぱいの偉大さを理解出来ない異常者にイッセーは言葉が通じるとは思えないのだ。

そんな宿主の様子を感じてなのか、更に呆れ返るドライグ。

そんなドライグを気にしてなのか、一誠のドライグが少し笑いの籠もった声で話しかける。

 

『だが、相棒もそこまでちゃんとした人間ではないぞ。せっかく手に入れた報酬の九割を孤児院に渡してしまって金欠だ。その上毎回特売の事ばかり気にしているし、今はアーシア・アルジェントの御蔭で食いつないでいるが、その前は常に生き倒れるか辛うじて食えているかといった瀬戸際ばかりだ。そういった点は直すべきだと言ってはいるが、相棒は自分の決めたことは絶対に曲げないのでな。そういった点は多少困っている。それにいくら空腹だからといっても、俺をスーパーの特売の一名様にしようなどと無理なことを考えてはへこんでいるのだからな』

 

そんな慰めの言葉にイッセーのドライグは感謝するも、それでもやはりへこんでしまう。

その程度なら、寧ろまだマシだ。

何せ此方は毎回懲りない覗きをしては捕まってリンチに遭い、教室内では卑猥なDVDなどを公然と交換し合う。挙げ句は毎回おっぱいおっぱいと連呼しまくるのだから、それに比べれば向こうの一誠は何と真人間なことかと。

そんな感じで妙に仲が良くなるドライグ達。同じ存在ということで、互いに共感するものがあるのだろう。

そして親しくなったことで、今度は互いの相棒の戦闘について話し始める。

 

『ところで、其方の相棒はどのような技を持っている。あの時、相棒は意識を失っていたが、俺はしっかりと見ている。あれほど強力な技だ。出来れば相棒に少しでも覚えさせたい』

 

イッセーのドライグがそう言うと、イッセーは余計なお世話だと言いたいようだが口を噤む。彼自身は詳しく知らないが、あのロキを滅ぼすほどの威力だ。聞いておいて損はないと思ったのだろう。

それに答えようとする一誠のドライグ。

だが、一誠はそんな向こうのドライグに対し此方のドライグにつまらなさそうな顔で話しかけた。

 

「おいおいドライグ、俺の技なんてそんな大層なもんじゃねぇだろ。それにだ、そう言うのならまずは向こうがどんな技もってんのか聞いてからが先だろ、普通」

『確かに相棒の言う通りだな。教えを請うということは、こちら側の相棒は同じ技を知らないということになる。なら、どのような技を持っているのかはこちらとしても知っておきたい』

 

一誠の言葉に賛同するドライグ。

それは教えること自体はやぶさかではないが、こちら側のイッセーがどんな技を持っているのかは興味があるのだ。

そんな一誠とドライグに対し、向こうのドライグはは実に気まずそうな雰囲気を醸し出し始めた。

 

『いや、えっと、そのだな……』

 

そんなドライグにイッセーは自信を持って答える。

 

「何気まずそうにしてんだよ、ドライグ。俺達には俺達の技があるってことを教えてやろうじゃねぇか」

『相棒…だが、アレは……』

 

尚も言い辛そうにしているドライグを無視してイッセーは一誠に堂々と言い放った。

 

「俺の技、それはドラゴン波とドレスブレイク、そして力の譲渡だぜ!」

 

それを聞いた一誠はわからないといった感じに首を傾げた。

勿論、この男が漫画などの娯楽品について知っているわけがない。その技が漫画のキャラから因んだ技ということも気付かないのだ。

だからこそ、一誠は問う。

 

「それってどんな技だ? とくにその『ドラゴン波』ってのと『ドレスブレイク』ってのは? 力の譲渡ってのは予想できるけどよ」

 

その反応に当然イッセーは驚いた。

ドレスブレイクはまだしも、ドラゴン波と言えば国民的アニメの有名な必殺技だ。それを知らないと言うことが彼には信じられなかった。

だからこそ、イッセーは一誠にそのことを教えようとするが、これ以上恥の上塗りは止めてくれと言わんばかりにドライグが答える。

 

『ドラゴン波というのは、相棒が好んでいる漫画のキャラクターが使っている技だ。実際は少ない魔力に倍化を何度かかけた砲撃だ。そしてドレスブレイクというのは……うぅ……』

 

何やら気の毒になりそうな雰囲気を出すドライグ。それでも何とか言葉を捻り出した。

 

『ドレスブレイクというのは、相棒が下心で作り出した相手の衣服を全て破壊する技だ。一回相手の身体に触れることで相棒の魔力を衣服に浸食させ、そして次に相棒が合図を送ることで衣服が弾ける。勿論、相手が女でなければ相棒は使わない』

 

その言葉にイッセーは自信満々に胸を張るが、リアスや朱乃からは仕方ないといった表情を向けられ、ゼノヴィアやアーシアからは少し不服といった感情を向けられる。小猫は白い目でイッセーを見て、祐斗は苦笑、ギャスパーはそれでも尊敬の視線を送る。

そしてそれを聞いた一誠と久遠は……まぁ、予想通りだろう。

久遠は爆笑し、一誠は実にくだらなさそうな目で一誠を見た。

 

「そんな役にたたねぇ技で胸張んなよ。そんなもんじゃ相手を倒せねぇだろ、アホ」

「なっ!? 俺の努力の結晶に何てことをいうんだ、このヤロー!」

 

自分の自慢の技を貶されたことで怒るイッセー。

そんなイッセーのことを実に恥ずかしいと思う彼のドライグ。

そしてそんな一誠に変わって今度は彼のドライグが一誠の技を明かした。

 

『相棒の技は単純に三つしかない。一つ、俺のオーラを拳に圧縮して威力を高めた拳を相手に叩き着けるドラグブリット。二つ、その圧縮したオーラを砲撃として放つドラグブリットバースト。この砲撃は其方のドラゴン波という物と変わらないだろう。ただし、これは籠手の展開部分の多さによって威力が変わってくるし、相棒の戦意によっては一撃で山一つ軽く消し飛ぶ。それも一回の倍化でだ。尚、これはただの砲撃というわけでなく、圧縮したオーラを拳で直に相手に叩き込むことで相手の内外ともに破壊する。それに禁手に至れば更に威力は上がり、背中の噴出口からオーラを噴出することによって途轍もない加速を得る。それにより以下の技はそれこそ一撃必滅の威力となるものだ。最後に……いや、これは止めておこう。どうやらまだ其方は『至って』いないようだしな』

 

その言葉を聞いてイッセーはその凄さの実感が湧かずに首を傾げるが、周りはそうではない。

あの超絶的な威力を見れば、誰だって理解するだろう。

複雑ではなく単純、なれどその威力はそれ故に度を超している。

 

『成る程、だからこそのあの威力か。いやはや、まったくもって感心させられるな、其方の相棒には。こっちの相棒がそれ程の力を持っていれば、ああも変なことには使わなかっただろうに……あぁ……」

 

イッセーのドライグは心底そう思いながら向こうの一誠に感嘆の声をかけると共に自分の宿主に嘆いた。

それに気付いた一誠のドライグは軽く慰めの言葉をかけるが、それでもやはり落ち込み具合は治りそうにない。

 こうしてドライグ達は互いの相棒のことを知った。

ただ、イッセーのドライグは本当に一誠のドライグのことが羨ましいと感じた。

 


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