ハイスクールD×D 赤腕のイッセー 作:nasigorenn
どうも最近話が上手く書けなくて悩み中ですよ。
スーパーで信じられない非日常を体験したアーシアだが、子供のように無邪気に喜ぶ一誠を見て、まぁいいかと思い気を取り直すことにした。
次に向かうのは商店街。ここはアーシアも頻繁に足を運んでいるところであり、商店街に並ぶ店にも顔見知りが多く居る。
初めは異国の人間と言うことで多少驚かれていたが、何度も通い言葉を交わすうちに親しくなった。それというのも、やはりアーシアの人柄が好かれるものだということもあったのだろう。今ではすっかり顔なじみであり、謂わば商店街のアイドルのように祭り上げられている。
だから特に不思議な感じはしないのだが、先程の乱戦を見せられた後では心配になってしまう。
故にアーシアは一誠に不安そうな顔で問いかけた。
「あの、イッセーさん、今度は大丈夫なんですか?」
「ん? なにがだよ」
アーシアの顔を見て一誠は少し不思議そうな感じに答えたが、その表情から何かを察したのかアーシアの頭を少し乱暴にくしゃくしゃと撫で始めた。
「イ、イッセーさん!?」
「お前が何考えてんのかは大体わかったけどよ、まぁ大丈夫だろ。商店街には俺だって良く行くけど、あんなババァはいねぇしよ。それに特売もしねぇからそんな殺気立ちはしねぇだろうさ」
一誠にすれば先程の光景から安心させようとしているだけなのだが、アーシアからすれば好きな男に頭を撫でられているということで一気に顔が真っ赤になっていた。
そして撫でられたことが嬉しいのか、少し笑顔になりつつもあうあうと慌てているアーシア。その様子は小動物じみていて、見ている者の心を和ませる。
そんなアーシアを見て一誠はもう大丈夫だと思い、存分に撫で回した後に手を離して二人は再び歩き始めた。
そしてやってきた商店街。
この町に住む者ならば誰もが足を運ぶ所であり、スーパーが持てはやされている昨今、その勢いに飲まれることなくバイタリティ溢れる精神で意気揚々に皆営業している。
そして商店街と言うからにはやはり、様々な店が集合しているだけあって活気に満ちあふれて浮いた。
そんな中をアーシアと一誠の二人は歩く。
「やっぱりここは賑やかですね」
「まぁ、変わらずに騒がしいところだよ、ここはな」
アーシアは周りの店を見ながら楽しそうに笑い、一誠はそんなアーシアに大げさだと言いながらも悪い気はしていないようだ。
「ここで野菜とかを買うんだよ。スーパーよりも安いからなぁ」
歩きながら商店街での買い物の予定を一誠は話し、アーシアはそれを聞きながら
微笑む。傍から見たらカップルの会話に聞こえるかも知れないと思い、顔を赤らめるも嬉しいアーシア。
そんなアーシアの胸中など知らず、一誠はこの商店街で買う物をアーシアに告げていく。
確かにスーパーで買えなくもない物が多いが、商店街ならもっと安くて済む。
ただでさえお金がない一誠にとって、これ程に良い条件はそうはない。だからこそ、彼はここに来た。
そしてそれ以上にも、ここに来る意味があるのだから。
「確かに商店街のお野菜とか、とても安いですよね。それにお魚もお肉もとても新鮮で、お店の人もとてもお優しいですし」
アーシアは目を輝かせながらそう言うと、その言葉に一誠は少しばかり顔を顰めた。
「え? 店の連中が優しいってマジかよ?」
「? そうですけど……」
不思議そうに首を傾げるアーシアに、一誠は少しばかり信じられない顔をした。
そんな顔をした一誠をアーシアはどうかしたのかと心配したが、一誠は何でもないと言う。
何せ、アーシアの性格なら一誠が日頃言われているようなことはないと思ったからだ。彼女には無意識で優しくしてしまうような雰囲気があるから、特に何も言われないだろうと。
そして二人が最初の目的地である八百屋に来た途端、一誠が考えていることが当たった。
「おや、これまた碌でなしが来たもんじゃねぇか」
「うっせーよ、ジジイ」
八百屋を覗き込んだ途端に店主からそんな声をかけられ、一誠は悪態を付く。
その様子を見たアーシアは八百屋の店主と一誠が知り合いであることを知ったが、よくよく考えれば一誠が幼い頃から暮らしている町で、アーシア自身孤児院の食事を作る際に紹介されたのがこの商店街なのだから、一誠が知っていても可笑しくない。
つまり一誠も又顔見知りだということ。
その事がより身近に感じられアーシアは喜ぶと、互いに文句を言い合っているのを割るかのように店主に話しかけた。
「こんにちわ、おじさん」
「ん? おぉ、アーシアちゃんじゃねぇか!」
それまで喧々としていた店主だが、アーシアを見た途端に顔を綻ばせた。
「どうしたんだい? 今日も野菜買いに来てくれたのか? だったら良いピーマンがあるぜ。アーシアちゃんだったらかなりサービスするよ」
「そんな、悪いですよ」
かなり喜ぶ店主にアーシアは申し訳なさそうな苦笑を浮かべる。
そんなアーシアの様子に予想通りだと思ったからなのか、言葉を発しない一誠。
そんな一誠を放置し、店主とアーシアの会話は続いていく。
「それに今日は、その……いつものみんなのお買い物とは違うんです」
「え? そいつは一体どういう……」
アーシアはそう言うと、一誠に顔を向けた。
その顔は若干ながら朱が入り、恋する少女の顔をしている。
「今日は、その……イッセーさんの御夕飯の材料を買いに来たんです」
「はぁ? 何でアーシアちゃんがこんな野郎の飯なんか……」
「わ、私は、その……イッセーさんの家族……ですから」
そう答えながら顔を真っ赤にするアーシア。
それを見た店主もやっと一誠との関係を察し、一誠にジト目を向ける。
「こんな可愛くて良く出来た子がお前みてぇな碌でなしと家族とは世の故だぜ」
「うっせージジイ。白夜園を俺が紹介しただけだっての」
ふてくされつつもそう答える一誠。
それでも家族という部分を否定しない一誠にアーシアは胸がときめいてしまう。あながち一誠も自分の事を意識してくれているのだと。
そんなアーシアに気付くことなく一誠と店主は再び文句を言い合う。
話の内容から察するに、どうやら一誠は何度もこの店でツケにしてもらったことがあったり、ショボイものしか買わないことからそんな文句を言われているのだとか。
そんな二人をさておいて、店主の奥さんであろう女性が店の奥から出て来るとアーシアを可愛がりお菓子やら何やらとアーシアに渡していた。
そしてアーシアも遠慮しつつも満更出なく、男は喧々と、女性陣は穏やかに会話を楽しんだ。
結局当初の目的よりも時間が掛かり、アーシアの御蔭で手に入った食材が多かったのは有り難いが、存分に罵られた一誠はふてくされていた。
そしてその情報はあっという間に商店街に流れ、アーシアが恋人を連れて来ただの、恋人に買い物をさせているヒモが来ただの、あまりにも酷い話が他の店に行く度に二人にされていく。
どうやら一誠は他の店でも似たようなことをしており、商店街の皆から色々と言われていた。
だが、どうやら疎まれてはいないらしく、皆何だかんだと言って一誠のことは気にかけてくれているらしい。
そのため、文句を言いつつも一誠にちゃんと身体を労る言葉をかけていた。
そしてアーシアと一緒にいることで、ほぼ恋人かとからかわれること。
「あれ、アーシアちゃん、今日は甲斐性無しの旦那と一緒なの!」
だの、
「甲斐性無しの碌でなしとアーシアちゃんが一緒だなんて心配だねぇ」
といった言葉がかけられ、その度にアーシアは顔を真っ赤にして俯いてしまう。
だが、満更ではなく幸せそうに笑ってしまい、そしてそれによってさらにからかわれるということに。
「そ、そんな………で、でも、将来はそうなれたらいいなっとは思ってますけど………」
アーシアは恥ずかしがったが、その言葉に充分幸せそうだった。
そんな帰り道、二人は夕陽に照らされながら歩いて行く。
「アーシア、助かったぜ。御蔭でしばらくは食いつなげる」
一誠はアーシアに感謝の言葉をかけながら頭に手を置いて撫でると、アーシアは顔を夕陽に照らされてもわかるくらい真っ赤にしつつも微笑んだ。
「わ、私がちゃんと作ってあげますから、しばらくじゃなくても大丈夫です」
「そうかい。なら……それはありがてぇな。何せ俺はお前にくっついてないと生きられない碌でなしの甲斐性無しだからな」
「もう、イッセーさん! いくら自分の事でも悪く言わないで下さい!」
「そう言っても事実だからな。今じゃお前いねぇと碌な食事にもありつけねぇし。だから……これからもよろしく頼むぜ、若奥様」
「っ~~~~~~~~! もう、イッセーさ~~~~ん!!」
夕陽の中、からかわれたアーシアは一誠にぷんぷんといった感じに怒りながら追いかける。一誠はそんなアーシアに笑いながら追いつかれない程度の速さで逃げていた。
そんな二人の追いかけっこ。傍から見たら恋人同士のじゃれあいに見えるのかも知れない。
アーシアは一誠を追いかけながら今日一日を振り返り、確かに恐い思いもしたが、楽しかったと心に刻む。
デートというにはあまりにも酷いが、何というか、一誠らしいお出かけであった。
(でも、私……イッセーさんの『家族』になること、頑張りますからね。皆さんが言っていたことが本当でも、それでも……イッセーさんは私のヒーローなんですから。だから……覚悟して下さい、イッセーさん!)
こうしてアーシアと一誠のデート? は終わった。
この日、やはり一番喜んだのはアーシアに違いない。