ハイスクールD×D 赤腕のイッセー   作:nasigorenn

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初めて書くハイスクールD☓Dなので上手く書けるか心配ですけど、頑張れたらいいなと思います。



プロローグ 彼の名は

 辺りを夜の闇が埋め尽くし、森の木々が風に揺られてざわめく。

空は曇り、静寂の世界であったであろうそこはこの時に限り不気味な雰囲気を醸し出していた。

そこに今、二人の人影が立っていた。

二人ともブレザーを着ていることから男だと伺えるだろう。

その制服はここ最近この町で共学化した高校『駒王学園』の物である。

その内の一人、茶髪をした青年が視線の先にある物を指しながらもう一人に問いかける。

 

「なぁ、久遠。あそこで間違いないのか?」

「あぁ、間違いねぇよ。調べた情報通りだ」

 

茶髪の青年の問いに久遠と呼ばれた黒髪の青年は自信満々に答える。

軽い感じだが、その信憑性は高いのだろう。茶髪の青年は特に何か言う様子はない。

その様子を見た久遠はにこやかに笑いながら茶髪の青年に話しかける。

 

「んじゃ最終確認といきますか~」

「ああ、まったく話を聞かされてないからな」

 

この二人、ただ森に来ているわけではない。

実はとある用事で来ているのだが、その用事の内容を茶髪の青年は知らされていない。

 

「今回の仕事はさらわれた娘の救出、依頼人はその娘の父親で報酬は100万だ」

「おい、随分と安い金額だよなぁ、本当。それで俺を呼ぶんだから、お前も相当だけどよ」

 

茶髪の青年は不機嫌そうな顔で久遠を睨みつける。

本来であれば、そんな『安い』仕事など引き受けるわけがないのだ、彼は。

だが、睨まれた久遠はそれでも余裕の笑みを浮かべる。

 

「まぁ、それだけだったら俺だってお前を呼ばねぇよ。ただなぁ、今回はもう一つ美味しい話が入って来てんだよ」

「美味しい話?」

「あぁ、そうさ。悪魔の大公から直々のご依頼でな、何とはぐれ悪魔の討伐依頼が来てるんだよ!」

 

嬉しさを全開に語る久遠に茶髪の青年が首をかしげる。

 

「それとこの仕事とどういう関係があるんだよ?」

「お前、バッカだなぁ~。よく考えてみろよ。親の依頼はさらわれた娘の救出。それと大公の依頼は俺らの目の前にある廃墟を住み家にしてるはぐれ悪魔の討伐。娘がさらわれて連れて行かれた先もここ。それだけ言えばわかるだろ」

 

久遠にそう言われ馬鹿にされたことに怒りつつも彼は気づいた。

 

「あぁ、そういうことか。つまりその女をさらった奴ってのがそのはぐれってことか」

「ビンゴ! 正解だ。大公からもはぐれについての情報は貰ってるしな。なんでもとんでもない強姦野郎らしい。犯した後に食べるのが大好きな変態なんだとよ」

「そいつはイカれてるなぁ。まぁ、だから何だって話だけどよ。でも、これで俺が呼ばれた理由って奴が分かったよ」

 

茶髪の青年は納得した顔でうなずくと、久遠に向かってにやりと笑う。

 

「んじゃ急がねぇと娘の方が無事じゃすまねぇからなぁ」

 

その言葉に久遠も笑う。それは確信の笑み。

これから人外の化け物と戦うが、絶対に彼が勝つと確信している笑みである。

 

「ああ、その通りだ。だから……行って来い、『イッセ―』!」

「おうっ!」

 

茶髪の青年……兵藤 一誠は雄叫びをあげるかのように返事を返すと、左手を胸の前に構える。

そして『何か』を展開し終えると共に、その左拳を地面に向けて叩きつけた。

次の瞬間、地面は打ち砕かれ吹き飛び、盛大なクレーターが一誠が先程までいた場所に刻みつけられた。

だが、そこに一誠の姿はない。

久遠が次に一誠の姿を見た時は、廃墟の外壁を殴り砕き、破壊しながら中へと侵入していくところであった。

 

 

 

 どうしてこんな目に遭っているいるのだろう?

彼女はそう考えられずにはいられなかった。

少し裕福な家に生まれ育ち、思春期なりに青春を謳歌していた。

反抗期に入って親と仲が良くなかったが、そんなことは誰にでもあることだろう。

ただひたすら親が気に食わなかった。

そんな理由で家に帰りたくなく、夜遅くまで遊ぶ日々。

そこでたまたま運が良かったのか、格好良い男と会った。

今まで幾多の男を見てきた彼女だが、その男には妙な魅力を感じそれまでとは違うと思った。そして男と遊ぶことになり、カラオケボックスで二人っきり。

そこで男に渡された飲み物を飲んだところで彼女の意識はぷつりと切れた。

眼が醒めれば先程までいたカラオケボックスの部屋とまったく違う光景、もう何年も人が入った気配のない鉄骨とコンクリートの廃墟。

その事に混乱する彼女であったが、それは廃墟の奥から現れた男によって少し沈静する。

泣きつくように男に飛びつく彼女。

そのまま優しく抱きしめて自分を安心させてくれると、そう思っていた。

だが、現実は違う。

男は力の限り彼女を押し倒すと、馬乗りになって彼女の服を破り捨て始めたのだ。

いきなりの事に思考が停止しかける彼女だが、自分のブラジャーを剥がれたところで正気に戻った。

そのまま喚くが、男の力に彼女はかなわない。

このままいけば自分の貞操が奪われることはすぐに分かった。初めてが強姦だなんて、そんなのは絶対に嫌だ。

それが彼女の心を占める。怖くて怖くて仕方ないが、それ以上に初めてをこんなところでこんな急に人を襲う男に奪われることが何よりも許せなかった。

心の底からそう思ったからこそ、奇跡が起こったのかもしれない。

彼女はいつもからは考えられないほどの力を発揮し、男を撥ね退けた。

そのまま胸を隠すようにして急いでその場から彼女は逃げ出した。すぐにでもこの場から、あの男から逃げなくてはと本能が命令を出す。

その命令に従って彼女は動く。

だが、そこで男の姿を確認してしまったのは失敗だった。

彼女が見た男は、あり得ない変形をしていた。

まるで袋に閉じ込められていた中身があふれ出るように男の肉体が膨れ上がり巨大な人型へとなっていく。肌は薄暗く穢れた紫色へと変わり、それまでなかった生臭い香りを辺りに漂わせる。

まさに人外の化身となった男を見て、彼女は悲鳴を上げてしまう。

そしてそこからはその化け物に追いかけられるという状況に陥った彼女。

 

「喰わせろぉぉぉぉおおおぉぉぉおぉぉおおおおおおおおお! 犯させろぉぉぉぉぉおおおおおおおおぉおぉぉおぉぉぉお!」

「いやぁああぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁあああああああ!!」

 

必死に逃げるが化け物は見た目以上の速さで彼女を追いつめていく。

そして彼女はついに部屋の隅に追いつめられた。

背中を壁にぶつけ、彼女は自分のすべてが終わったとその時思った。

そしてこの後自分がどうなるのかを考え絶望し、せめて最後ぐらいは親に謝りたいと、そう思った。

それが彼女の最後の願い。

だが、それは叶うことはないだろう。彼女はこのまま目の前の化け物に犯され尽くされ、そして食べられるのだから。

 

「がぁあぁああぁあああああああああああああああぁああああああ!!」

 

歓喜の咆哮を上げながら彼女に向かって飛びかかる化け物。

その姿に彼女はぎゅっと眼を瞑る。

せめてもの抵抗であった。

その瞬間、硬い壁が破砕される轟音がこの廃墟に轟いた。

その音に彼女は驚き眼を開くと、その視線の先には…………。

 

部屋の中央に巨大なクレーターが出来あがっており、そこでゆっくりと左手を引き抜きながら立ち上がる青年がいた。

 

その青年……一誠は辺りを軽く見回すと彼女に気がつき声をかけた。

 

「なぁ、あんた」

「な、何!?」

 

いきなり現れた一誠に警戒し怯えながら反応する彼女。

そんな彼女に一誠は名前を聞き始めた。

何故こんな時に名前を聞かれるのかまったく意味がわからない。

彼女はそのせいで混乱しつつも、何とか一誠に名前を答えた。

その名前を聞いて一誠は頷く。

とりあえず目標を発見したことを彼なりに喜んだ。

だが、そんなことなど気にせずに化け物は一誠に襲いかかる。

 

「邪魔だ、人間! 俺は女以外喰う気はねぇんだよぉおおおおおお!! おとなしく死ねぇええぇえぇえええぇええええええええええええええ!!」

 

振るわれる浅黒い色をした巨腕。

一誠のような男が受ければ間違いなく死んでしまうであろう必殺の一撃。

その攻撃がもたらすであろう悲劇に彼女が悲鳴を上げる。

だが……………。

 

「人が話してる最中に邪魔してるんじゃねぇよ、このクソ悪魔!」

 

放たれた拳は一誠の前で止まっていた。

何故か? 簡単だ、一誠が左手でその拳を止めたからである。

 

「何ぃ!? ぐぅうぅううううぅううううううぅうううううううううううう!!」

 

その事態に驚愕した化け物であったが、受け止められた拳から発した痛みに呻き苦しむ。それは受け止めた左手で一誠が化け物の拳を握り潰そうとしたために起きている。

 

「手前が大公とやらが言ってたはぐれだろ。探す手間が省けてちょうどいい。おとなしくぶっ倒れろ!!」

 

一誠は化け物に負けないほどの大きな咆哮を上げながら化け物の腕を床にたたきつける。その瞬間に床は砕け散り、化け物の腕も骨肉ごと潰れる。

その激痛に化け物は叫びを上げそうになるが、それを上げる前に一誠は一気に間合いを詰めて左拳を振りかぶっていた。

そして声が喉から出かかった瞬間、化け物の視点は暗転し真っ暗となった。それから先は何もなく、化け物は何も感じられなくなった……永遠に。

一方、化け物の顔を打ち砕いた一誠は汚れた左腕を振りはらうと、彼女に向かって歩き始めた。

そこで彼女は何かを言うが、彼女自身何を言っているのかわからないまま意識が薄れていく。

ただ、最後に彼女が目にしたのは、真っ赤な左腕であった。

 

 

 

 これが彼の日常。

久遠という仲介人に仕事を仲介してもらい、それをこなす。

悪魔、天使、堕天使とその他の人外が犇めく世界で彼はこう呼ばれている。

 

 

『赤腕のイッセー』と。


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