やはり俺の真・恋姫†無双はまちがっているฺฺ   作:丸城成年

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新たな仕事2

 街の治安維持に関する計画を任される事となった為、先ずは現状把握をしようと、夏蘭と共に街へと出たのだが───────────

 

 状況を詳しく知れば知るほど、頭が痛くなりそうだ。街を一通り巡回し、警備部隊の詰め所で色々情報収集したが、思ったより厳しい状況だ。

 

 元々、街の治安に関しては警備部隊が担当しているのだが、とにかく部隊の人数が少ない。広い街を管理するには、どう考えても人手が足りない。それも影響しているのか、小さな犯罪にはあまり介入しないようだ。じゃあ、大きな犯罪には全て対応出来ているのかと言えば、正直こちらも心許ない。

 

 役に立たないなどと言わないであげて、人手が足りないのが全部悪いんだ。いや、本当に。警備部隊もサボっている訳ではない。むしろ、サボる様な奴等なら華琳がとっくの昔に処分している。それでも手が回り切らないのが現状である。

 

 それと一部スラム化して治安が特に悪い区域も存在する。これも警備部隊はほぼ放置しているみたいだ。警備部隊の戦力が足りず、抑え付けても暴発するだけで、最終的に抑えきれなくなると考えているようだ。

 

 うん、これ必要なのは治安維持じゃないな。そもそも治安があまり良くないから、維持じゃなくて先に治安を良くする必要がある。つまり、当初の想定より大仕事という事だ。実はこれでも、他の街に比べると治安は良いとの事だ。

 

 

「どうするかなー……」

 

「流石の天の御使い様でも、これは難問ですか?」

 

 

 俺の呟きに夏蘭が笑顔で聞いてくる。急に丁寧な言葉遣いになりやがって、煽ってんのか。

 

 

「おい、なんでちょっと嬉しそうなんだよ。こっちは困ってんのに」

 

「天の御使いなんていうんだから、天の不思議な力か、道具で何とかすれば良いんじゃないか。むしろ、それが見たい。八幡は天の御使いらしさが足りないと思う」

 

 

 【天の御使いらしさ】ってなんだよ。不思議な力なんてないし、あればとっくの昔に使ってる。便利な道具なんて無いし、ナニえもんだよ。比企えもんは四次元的なポケットなんて持ってないぞ。それに天なんて周りが勝手言っているだけで、そもそも天じゃないし、特別な事なんて……。

 

 

「あっ……」

 

「ん? 何か良い道具があるのか」

 

 

 夏蘭、目を輝かせるな。そんな物ないからな。

 

 都合の良い力や道具なんか無くても、知識ならある。ここより治安の良い現代日本を手本にすれば良い。そのまま使えなくても応用すれば良いだけだ。一から考えなくて良いと分かると、途端に気持ちが軽くなった。

 

 

「道具は無いが、良い考えなら浮かんだぞ。ただ大掛かりな計画になるから、一度華琳と相談したい。一回帰るぞ」

 

「はあー、道具は無いのか」

 

 

 夏蘭が溜息を吐く。

 

 えっ、不思議な力や道具って冗談で言っていたんじゃないのかよ。やっぱり昔の中国だし、そういう物を信じていたりするのか。そういえば華琳達にも出会って直ぐの頃、妖術使いじゃないかと警戒されたな。10円玉の汚れを取ったくらいで凄い驚き方だったな、あいつ等。

 

 こいつにも何か小学生向けの理科や科学の実験的なものを見せてやろうか。それで大人しくなるなら、やる価値は十分ある。華琳を人質にした時の事を後で話すと約束したが、それを誤魔化すのに使えないか?

 

 俺はそんな事を考えながら、夏蘭を伴って華琳の所へ戻る為に歩き始めた。

 

 

 

 

 

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 執務室を覗いて見たが、華琳は既に今日の仕事を終えて、自室に戻っているようだ。かなり遅い時間なので仕方が無い。もう明日で良いんじゃないかとも思うが、【現状確認は一日で】と言われているので先延ばしには出来ない。この【一日】というのが、開始から24時間という意味とは限らない。こういう所をハッキリさせず、自己判断でやっていると痛い目を見る。そもそもきちんと最初から確認しておけば良かったのだ。

 

 うだうだと考えているうちに、華琳の部屋の前に着いた。扉をノックする。

 

 

「華琳、治安維持の件で少し話したいんだが、今大丈夫か?」

 

「……少し待ちなさい」

 

 

 俺の問い掛けに少しの間があり、華琳の少し不機嫌な声が返ってきた。俺は一緒について来た夏蘭へと顔を向け、小声で聞く。

 

 

(俺、なんかマズイ事したか?)

 

(うーん、朝会った時は普通だったし、何かしていたのでは……あっ!)

 

 

 夏蘭に何か思い当たる事があるらしい。

 

 

(八幡が何かしたとかじゃなくて、もしかしたら間が悪かったのかも)

 

(間? まだ寝るには早いし、趣味の最中だったとか?)

 

(いや、寝るというか……趣味でも間違いではないんだが)

 

 

 夏蘭が言いよどむ。何か言い辛い内容の様だ。今日は厄日だ。朝一番に厄介な仕事を与えられ、夜には何か地雷を踏んでしまうとは。俺に出来るのは、踏んでしまった地雷が少しでも小さい事を祈るだけである。

 

 俺が信じてもいない神様に祈っていると、華琳から部屋へ入って来るように言われた。入りがたいが、ぐずぐずしていると余計に華琳の機嫌を損ねそうだ。覚悟を決めて華琳の部屋へと入る。

 

 意外にも華琳の部屋は俺の部屋と同じ広さだった。置いている家具などは、俺の部屋の物より上等だと素人目でも分かる。そして、俺の部屋の物より一回り大きい寝台に華琳と秋蘭が腰掛けている。二人は普段より薄着で、ちょっと汗ばんで……。あっ、これはマズイ。

 

 

「あー……邪魔したか?」

 

「ええ」

 

 

 俺の質問に華琳が良い笑顔で答える。それが逆に怖い。

 

 華琳がソッチ系の趣味を持っているのは、なんとなく察していたが、まさかこんな形で()の当たりにするとは思わなかった。それにしても、凄まじく居た堪れない。直前まで行われていたであろう行為を想像してしまうと、落ち着かない。これで華琳の機嫌が悪くなければ、ある種のご褒美なんだが、そう甘くない。

 

 

「……それで貴方の用件は、私の楽しみを中断させるだけの価値がある話なのかしら?」

 

 

 ここで華琳の質問にNOと言えば首が飛ぶ。そう思わせる位の威圧感が、今の華琳からは発せられている。実際、本当に首を飛ばされる事はないだろうが、俺の話の内容次第で信用を失う可能性はある。

 

 信用や信頼というものは、一度得たらそれでOKというものではない。それは証明し続けないと直ぐに失われてしまう、あやふやなものである。そして、信用や信頼を失えば、立場も危うくなるだろう。

 

 かつての俺は、【ぼっち】だからといって、学校内に立位置などないと思っていた。だから、失うものなど最初からないと嘯いて、安易に嫌われ者を買って出た。そして、奉仕部とあいつらの側という立位置を、居場所を手放すはめになった。

 

 あの時の様な失敗を繰り返す訳にはいかない。取り敢えず華琳を納得させるだけの計画を示さなければならない。

 

 治安維持計画について、大体の方向性は俺の頭の中で出来上がっているが、未だ不確定な要素が多々ある。しかし、ここはその不安を見せても何も良い事は無いだろう。自信無さそうに話して、失敗した時の予防線を張るなんて華琳にはそもそも通用しない。

 

 俺の考えでは、今回の計画は相当大掛かりなものになる。金も人も、最初に出すのは華琳だ。ここで華琳を納得させなければ、スタート地点でこけることになる。笑え不敵に、俺の話には万金の価値があると思わせろ。

 

 

「価値? あるに決まっているだろう。用件はさっきも言ったが、治安維持に関することだ。華琳達が天と呼ぶ、俺の故郷のやり方を教えてやる」

 

「……それはなかなか興味深いわね」

 

 

 掴みは上々といった所だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございます。
次回更新は一週間前後を予定しています。

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