やはり俺の真・恋姫†無双はまちがっているฺฺ   作:丸城成年

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第2章 軍師に
新たな仕事


 俺の勤め先がブラック企業なんだが、どうすれば良いのだろう。

 

 朝早くから華琳に呼び出され、いきなり手渡された書類は、城壁内の街の治安維持についての草案が書かれたものだった。華琳は俺にこれを3日で完成させろと言う────────

 

 街の現状もまだ完全には把握していないうえに、初めてやる仕事である。その為、どの位時間を要するのか、検討もつかない。だが、それでも分かる事がある。これを3日で、というのは短過ぎだよな。だって華琳が3日と言った時に、春蘭以外全員が驚いた顔をしてたぞ。

 

 

「あー、ちょっと待ってくれ」

 

「なにかしら?」

 

 

 華琳、可愛らしく小首を傾げても誤魔化されないぞ。

 

 

「3日って少なくないか」

 

「貴方なら出来るでしょう?」

 

 

 華琳が事も無げに言う。期待が重い。しかも、厄介なのは単純に過大評価されているのでもなく、かと言って嫌がらせという訳でも無いという事だ。そう、華琳の言葉には、「貴方なら(ギリギリ)出来るでしょう?」というニュアンスが含まれていたのだ。

 

 部下の力量を把握し、その能力を余す事無く使い尽くそうとする、管理職の鑑。だが、俺も簡単には首を縦に振ったりはしない。NOと言える日本人になりたいが、華琳相手にNOとは言えないので苦し紛れの言い訳をしてみる。

 

 

「待ってくれ。街の現状や使える人材、資材もはっきりしないのに、安請け合いは出来ないぞ」

 

 

 言い訳ではあるが、一応正論なので華琳も少し考える素振りを見せる。

 

 

「……では、何日あれば出来ると言うの?」

 

「とりあえず、現状を確認する為に1日、2日欲しい。それで何日掛かるか、大まかな計画を出す」

 

「現状確認くらい1日でやりなさい」

 

「分かった。すぐに取り掛かる」

 

 

 出来るだけ簡単な仕事だったら良いな。そんな事を考えながら夏蘭を伴って街へと向かう。本当はこういう仕事も出来そうな冬蘭を連れて行きたかったが、他に急ぎの仕事を割り振られた為、連れて来れなかったのだ。夏蘭と冬蘭は、俺の護衛兼秘書みたいな扱いになっている。しかし、2人共一軍を率いる事が出来る程の人材でもある。その為、ちょくちょく今回の様に別の仕事を任せられている。

 

 

 

 

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「……うー」

 

 

 街へと向かっている間、何故か夏蘭が唸りながら、俺の方をチラチラと見て来る。なんか落ち着かないから、止めて欲しい。夏蘭に恨みを買うような事をした覚えは無いぞ。

 

 

「むー」

 

 

 まだ唸ってやがる。これは放っておいたら、いつまでも続けてそうだ。

 

 

「おい夏蘭、さっきから何なんだ?」

 

「ん、どうかしたか?」

 

 

 夏蘭は俺の問いにキョトンとしている。何を聞かれているのか、まるで分かっていないようだ。先程までのおかしな挙動に、自覚は無かったみたいだ。

 

 

「いや、どうかしたかじゃないだろ。さっきから唸りながら俺をチラチラ見て、何か言いたい事でもあるのか?」

 

「べ、別にお前の事なんか見ていない……」

 

「何だ、言い辛い話なのか。言い辛い位、面倒な話ならしなくて良いぞ。俺も聞きたくない……面倒だからな」

 

 

 夏蘭が呆れた表情で俺を見ている。しかし、俺の話はまだ終わっていない。

 

 

「だがな、今相談しなかったせいで状況が悪化して、より面倒くさい事になってから話を持って来られるのは、もっと面倒だ」

 

「……捻くれた言い方だな。もっと素直に言えないのか」

 

「よし、聞いて欲しくないし、何かあっても自分で何とかするんだな。俺の仕事を増やすなよ」

 

 

 そう言って足を速めると、夏蘭が慌てて俺の手を掴んで来た。俺に気安く触るんじゃない。勘違いしちゃうだろ。

 

 

「待て待て、聞いて欲しいと言うか、八幡に聞きたい事があって……ちょっとこっちに来い」

 

 

 夏蘭が掴んだ俺の手を引いて、人の少ない所へと移動した。中学時代の俺なら、「もしかして告白!?」などと勘違いしただろう。しかし、今の俺だと身の危険を1番に心配してしまう。とにかく逃走ルートを確認しておかないと。

 

 俺が周囲を見ていると、夏蘭が俺の両肩をガッチリと掴んできた。に、逃げられねえ。

 

 

「聞きたい事というのは……だな……」

 

 

 普段、空気も読まずに言いたい事を言う夏蘭が、言い難そうな様子を見せている。それだけで嫌な予感しかしない。そして、その予想は的中した。

 

 夏蘭が聞きたかったのは、俺が春蘭と闘うハメになり、華琳を人質に取った時の事らしい。より正確に言うと、華琳を解放した後のやり取りが聞きたいようだ。どうやら華琳本人から人質になったという話は聞いたらしい。それで興味を持ったようだ。

 

 絶対言いたくない。絶対にだ。あの時、華琳達へ怒鳴った内容は、俺の人生でも3本の指に入る黒歴史だ。言った内容を取り消すつもりは無いが、態々この話を広めようとも思わない。しかし、俺の両肩は夏蘭にガッチリと掴まれている。どうする?

 

 

「なあ、今は時間が無い。この仕事が終わってから話そう。そうしよう」

 

 

 都合が悪い時は、とりあえず仕事を理由に後回し。これが社畜にのみ許された特殊スキルである。あれ、俺って社畜だったっけ?

 

 

「分かった。後できっちり聞かせてもらうからな」

 

 

 夏蘭が渋々といった感じで引き下がる。効果はバツグンだ。しかし、問題を後回しにしただけで、何の解決にもなっていない。今回の仕事だけでも頭が痛いのに、どうすれば良いんだ。

 

 

 

 




更新が遅くなってしまい、申し訳ありません。

お読みいただきありがとうございます。



次の更新は2週間以内でなんとかしようと思っています。

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