「さて、どこにいこうか」
聖は街にくり出し、そうつぶやいた。
「まずは学校に行ってみては如何です? 道のりを覚えるためにも行ってみるべきです」
僕の首にぶら下がっている逆十字のアクセサリーからカメリアが答えた。
「そうだね まずは私立聖祥学園にいってみようか ところでカメリア」
「なんです? マスター」
「外にいるのだからあまり話さないでくれないかな 用があるときは僕から声をかけるから」
「すみません! マスター」
カメリアに注意を促し僕は聖祥学園に向かって歩き出した。
海鳴市 海に隣接した街で、海辺といっても山もあれば丘もあり、果てには温泉宿やスーパー銭湯も備えた、至れり尽くせりな街だ。自然も豊かで僕は早くもこの街を気に入り始めてきた。 そして歩くこと30分僕は聖祥学園にたどり着いた。
「ここまで30分か バス通学が推奨されているみたいだけど、走って登校すると丁度いいトレーニングになりそうだね」
私立聖祥学園 初等部から高等部までを備えた名門で明日から通う学校だ。
外から学校を眺めた後、病院の位置を確認し、八束神社にお参りに行ったり公園によったりと、この土地をのんびり探索しながら地理を頭に入れていった。数時間探索をして少し休憩を取りたくなったので、周囲に人がいないことを確認しカメリアに話しかけた。
「ねぇ カメリア 近くに休憩できるようなところってあるかな?」
「それでしたら近くに翠屋という喫茶店がありますよ」
カメリアの情報では最近流行っているシュークリームが絶品の喫茶店のようだ。聖はそこで一休みしようと思い翠屋を訪れた。
「いらっしゃいませ」
店主と思われる若い男性が挨拶してきた。聖は空いていたカウンター席に座り、男性に注文を頼んだ。
「シュークリームと紅茶をください」
注文を頼み数分してシュークリームと紅茶が置かれた。聖は「いただきます」といいシュークリームを食べた。
「このシュークリーム美味しいですね! 絶品と聞いて食べに来たのですが想像以上の美味しさですよ!」
聖は注文を持ってきてくれた男性に声をかけた。
「ありがとう そんなに喜んでくれると嬉しいよ ところで君は学校帰りなのかな?」
「違いますよ 僕は昨日この街に引っ越してきたばかりで今日は街を探索していたのですよ 学校は明日からです」
聖はそう答え、男性 高町士郎と会話をした。士郎さんはこの店の店主で家族で経営をしているそうだ。それにサッカーチームの監督もしているそうで暇なとき見に来るといいと誘われた。聖は明日から聖祥学園の3学年に転入するとの話をすると驚き、「娘もそこに通っている3年生なんだよ」と教えてくれた。士郎さんとしばらく話しているとお客が入ってきた。
「ただいまー!」
「「おじゃまします!」」
と、聖と同い年くらいの少女3人が入ってきた。
「おかえり なのは いらっしゃい すずかちゃん アリサちゃん」
先ほどの挨拶からしてあの茶髪ツインテールが士郎さんの言っていた娘か と士郎さんと3人娘が会話しているのを眺めていたら士郎さんがこちらに手招きしてきた。
「紹介するよ 聖君 娘のなのは その友達のすずかちゃんとアリサちゃんだ」
「十六夜聖です よろしく」
「聖君は昨日この街に引っ越してきて明日から聖祥学園の君たちと同じ3年生だそうだ」
「そうなんだぁー 私 高町なのは!」
「月村すずかです よろしくね!」
「なら同じクラスになるかもね! 私はアリサ・バニングスよ」
お互いに自己紹介をして学校のことやこの町のことなど会話をした後、僕は士郎さんに話しかけた。
「それでは士郎さん 僕はそろそろ帰りますね」
「もう 帰るのかい? まだ居ればいいのに」
「もう少し居たいのですが明日の準備もありますし、また来ますね」
「わかった また来るのを楽しみにしてるよ」
「それじゃ お先に 学校で会ったらよろしくね!」
3人娘に挨拶をし、会計を済ませ翠屋を後にした。
「さっそく友人ができましたね! マスター!」
「そうだね 3人とも面白い子達だったね 明日からの学校が楽しみになってきたよ!」
翠屋を後にした僕はスーパーで食材を調達し、家に戻ってきた。夕食の下ごしらえを済ませ、今度は自分の身長ほどある棒をもって家の近くの公園に来た。そして棒を槍に見立て、父から教わった槍術の型をひたすら練習する。あの戦争以来、もう何も失わないように、自分の手の届く範囲を守れるようにと槍の腕をひたすら上げできた。
「よし、体も温まってきたとこだしやるか」
そういって僕は体に魔力を同化させ身体能力を上げる技術 魔力魔術兵装(エインフェリア)をおこなった。精密な魔力操作を覚えるために、魔力魔術兵装(エインフェリア)で少しずつ身体能力を上げながら、槍をふるい続けた。
「さて、最後にあれをやるか」
そういって僕は周りに人がいないのを確認し、
「瞬間魔力換装(フリューゲルブリッツ)―ッ!!」
僕は一瞬にして100㎜程の距離を移動した。魔力魔術兵装(エインフェリア)の亜種ともいえるこの技術は直線にしか進めないものの、その速さは光速も越えた神速。
「ツッ! なかなかうまくいかないな」
「マスター 大丈夫ですか?」
「少し足が痛むけど・・・ このくらいなら問題ないよ」
瞬間魔力換装(フリューゲルブリッツ)はまだ未完成の技術なので使用すると体に負担が残る。最初のころは激痛がはしり、しばらく歩けないほどだった。マホウツカイの自己回復能力がなければ確実に病院送りだった。
「もっと魔力を精密に操れるように練習しないとね」
そういって一時間ほど槍と魔力の練習をした後、僕は帰宅した。
夕食をすませ、風呂から上がって、のんびりしていると一本の電話がかかってきた。こんな時間に誰からだろうと思い電話に出る。
「もしもし 十六夜です」
「はーい! ひークン! ミコトお姉さんだよ~! 新生活一日目はどう? ミコトお姉さんがいなくて寂しく・・・」
ガチャッ!
僕は瞬間的に電話を切った。
「あの・・・ マスター? 誰からだったのですか?」
「間違い電話だよ ミコト姉さんみたいな声が聞こえたけど」
しかし、直ぐにまた電話が鳴りだす。僕は仕方ないな~ と思いながら再び受話器をとる。
「ひどいよ! ひークン! せっかくお姉さんが心配してかけたのに切るなんて!!」
「うん、 そこはまぁ 反射的にとゆうか ノリで?」
「ノリで切らないでよ~ 」
電話をかけてきたのは教会でお世話になったシスターである姫・美琴(ひるめ・みこと) みんなのお姉さんで僕のことをなにかと気にかけてくれていた。
「で、そっちはどう? もう荷物の整理はついた? ちゃんとやっていけそう?」
「大丈夫だよ 今日は荷物を整理した後、町を探索したよ 自然が多くていい町だよ それに友達もできたしね」
僕はそういって今日の出来事を一通り話した。
「そっか~ もう友達ができたか いきなり一人暮らしするって言ったきはどうなるかと思ったけど、大丈夫そうだね じゃあそろそろ切るね 明日から学校でしょ? 転入初日から遅刻なんてしないように今日は早めに寝るんだよ~」
「うん、おやすみ ミコト姉さん」
僕は電話を切り、少し早めに就寝した。こうして海鳴での一日目は過ぎて行った。
さて 明日も投稿できるように頑張ろう