U-D戦、決着です。
「がっ…ぁ……」
U-Dの神話魔術を喰らい地面に倒れ込む聖。書き換える我が世界(リライト)を使っていながら、U-Dの槍は聖を貫ぬいた。
「なるほど。紫天の盟約(ダーインスレイブ)を使い創りだした攻撃。つまり君自身の魔力ならば傷つけることが可能か」
「はぁ、はぁっ……。書き換える我が世界(リライト)っ!」
痛みで意識を失いそうになるが必死で能力を使い先の攻撃による傷を消す。しかし、書き換える我が世界は膨大な魔力を消費する。あの神話魔術でも魔力を奪われてもう聖の魔力はほとんど残っていない。
「どうして」
「?」
「どうして君はそこまでして私を助けようとする!私は誰も傷つけたくない!これ以上破壊を繰り返したくないんだ!」
「もう、私を殺してくれ。私を殺せるのは同じマホウツカイである君だけなんだ。これ以上何も壊したくない」
U-Dは泣きながらそう言う。
殺してくれだと?
何故助けを求めない?
何故足掻こうとせずに諦められる?
「ふざけるなっ!」
「っ!?」
「そんなもの弱者の言い訳に過ぎない!君はどんなにあがこうとそれが無理だと思い込み、諦めてるだけだ!」
「あがいたさ!だが、私がどんなに拒もうとこの力は周りのものを壊さずにはいられない!」
再びU-Dの姿が消え、巨腕で殴りかかる。
聖は咄嗟に魔術障壁を張りそれを受け止めるが、障壁に少しずつ罅が入る。
「本当にそうなのか!お前はその力を恐れて向き合おうとしなかった!こんな強大な力を自分が制御できないと思い込み、自分を封じ込めた!」
「うるさい、うるさい、うるさいっ!!」
U-Dが障壁を砕き、もう片方の巨腕を振り上げたので後方に飛ぶ。巨腕が地面を砕き、砂埃が舞う。
次の瞬間、視界が悪い中U-Dが飛び足してきて聖の腹部に向かって抜き手を放つ。
「この力を制御しようと、手に入れようとしたものがいた。だが無理だった!私の力は人の手に負えるものではない!こんな破壊しか生み出さないものはこの世にあってはいけないんだ!」
「ぐっ!」
U-Dは聖の腹部に突き刺した腕を引き抜き、その魔力でバスターソードを作った。
両手で持ちながら力任せに振るってくるが、その剣筋は素人そのものだが、早く、重たい。
聖はその攻撃を捌くが少しずつ体を切り裂かれていく。
「もう、諦めてくれ!君の残り少ない魔力で何ができる!」
「黙れ!たとえ魔力が少なくても、勝率が限りなく低くても諦める理由にはならない!他人の現実を突きつけられただけで納得できるか!自分の道は自分で決める!それが僕の、本当の強さだ!」
「ッ!」
瞬間魔力換装(フリューゲルブリッツ)を両腕に施して槍を連続で振るう。
神速の突きはもはや点ではなく面の攻撃となるほどに鋭く速い。U-Dの防御は堅いが少しずつダメージは与えられている。
「力を貸せ!神々が集う原初の世界(ユグドラシエル)っ!!」
聖はU-Dから距離をとって叫ぶ。世界の中心にある大木が緑の輝きを放ち、聖の足元に魔方陣が浮かぶ。
「なっ!?魔力が回復していくだと!!」
魔力の回復。それこそが聖の持つ機械仕掛けの戦闘空間(ロボティクスノーツ)の特殊効果だ。
この世界の中心にある大樹はマホウツカイが放出した魔術粒子(エーテル)を貯め込み、魔力を生成し所有者に少しずつ分け与えることができる。
聖は大樹にアクセスしその魔力を得た。それでも神話魔術、一回分程度の魔力を回復した程度だ。
「だが、魔力が少し回復した程度で―ッ!」
その時、二人は上空に魔術の動きを感じた。上空には今までは見えなかったが、強く輝く星のようなものがあった。
「なんだ、あれは……」
あの輝きこそが聖が待っていた光。
「間に合ったか。見せてやる、システムU-D!これが人間の強さだ!これが未来を切り拓く力だ!」
聖が右手を掲げるとそこに逆十字と幾何学的な文字が刻まれた円状の魔方陣が浮かんだ。
地表から離れた上空。無限大に広がる宇宙にある予言の巫女(ヴォルスパー)が創りだした兵器。
全てを焼き尽くす究極の衛星砲。対マホウツカイ用に創られた予言の巫女(ヴォルスパー)の究極兵器、その名も七星衛星砲(アステリズム)。
「聖なる星に裁かれよ!絶対なる正義の一星剣(アインスアステリズム)―ッ!!」
聖が魔方陣の展開されている右手を振り下ろすと、その砲身に積まれた魔術粒子(エーテル)の弾丸が解放された。
これが聖の切り札。予言の巫女(ヴォルスパー)とコンタクトを取ってプロトタイプの一基の使用許可を一度だけ許してもらった。
魔術(ルーン)の充填に時間がかかると言われていたがなんとか間に合った。
宇宙から放たれた神話輝術がU-Dに降り注いだ。
七星衛星砲(アステリズム)はその一振りだけでも並みのマホウツカイを消し去るほどの威力がある。しかし、相手は無限の魔力、強固な補助兵装―沈む事なき黒い太陽(スヴァルトアルムヘイム)を持つマホウツカイ。
膨大な魔術を練り上げて魔術障壁を展開し、衛星砲を防いでいる。
「ぐっ…、ああ、ああぁぁぁっ!!」
U-Dが必死に魔力を練り上げ障壁を維持する。そのための魔力も膨大なはずだ。ただの魔術障壁で七星衛星砲(アステリズム)を防ぐとなると膨大な魔力がいる。それも魔力の回復が追い付かないほどの魔力が。
いくらU-Dといえどこの神話輝術を受けきるころに魔力も体力も少ないだろう。
宇宙からの砲撃が止みかけると同時に聖は雷となり駆け抜けた。
「貫けぇーッ!!神討つ極光の雷槍(ミドガルズ・ブレイクニル)―ッ!!」
聖の融合封印(リンクシール)を付与した神話輝術がゼロ距離で決まり、その力を発揮した。
「うぁぁぁぁぁ!!」
「……今だ。……やれ!ディアーチェーッ!!」
U-Dの紅い翼が消えたのを見てマホウを封印されたのを確認して聖が叫ぶ。
「もう泣くな!貴様の絶望など――」
ディアーチェがU―Dを制御するための魔法を展開する。
「わが闇で打ち砕いてくれるわー!」
そして、絶望を終わらせる砲撃が放たれた。
砲撃の余波の光に包まれ、一人落下するU―D。
「機能破損…エグザミアにダメージ……。私は…壊れたのでしょうか……。何も見えない…何も聞こえない……。とても、静かで……」
そのまま落下し続けるU―Dを闇王ディアーチェが受け止める。
「無事か!貴様、しっかりせぬか!」
「王……?」
「我が戦術が上手く嵌はまったようだ。砲撃によって貴様の永遠結晶エグザミアの誤作動を止め、その隙に我が貴様のシステムを上書きする。どこぞの子鴉が、かつて闇の書の融合騎リインフォースにやったのと同じ作戦だ。癪には障るがな」
「本当に、エグザミアが止まっている……」
「我が闇の力と、シュテルの発案、レヴィの出力があってはじめて為なし遂とげられた……まあ、必然の結果よ。これで、貴様はもう無闇むやみな破壊を繰り返す事もない。しばらくは不安定な状態もあろうが、我がしっかり縛り付けておいてくれる」
「何故……そんな事を?」
「貴様の事を、シュテルが思い出したのだ」
疑問を浮かべるU―Dに闇王ディアーチェは静かに語りかける。
「我等は元々一つだった。永遠結晶エグザミアと、それを支える無限連環エターナルリングの構築体マテリアル。すなわち、四基が揃そろって初めて一つの存在。闇から暁へと変わりゆく、紫色の天を織りなす者―紫天の盟主とその守護者。我が王、シュテルとレヴィの二人が臣下。そしてお前は、我等の主であり、我等の盟主」
「王……」
「お前はちびだが、我等が盟主ぞ。王などと呼ぶな。単に名で呼べ」
その言葉に、U―Dは嬉しそうな顔をした。
「……ディアーチェ」
「そうだ。――それからな、シュテルがお前の名も思い出した。システムU―Dなどと言う無粋ぶすいな名ではないぞ。ユーリ・エーベルヴァイン。それが人として生まれた時のお前の名だ」
「ユーリ…エーベルヴァイン……」
「これよりお前をユーリと呼ぶ。他の連中にもそう呼ばせる。良いな?」
「……うん」
「さて、戻るぞ。外からはここの状況がわからん。阿呆あほうと塵芥ちりあくたどもが、っ!!」
次の瞬間。
膨大な魔力を持った何者かが現れた。
「2年ぶりだな。聖よ」
現れたのはオーディンと呼ばれた最強のマホウツカイ。芳野創世だった。
七星衛生砲まで出したのはやりすぎかな……。
次回からvsオーディン編。
これが終わったら終了かな