闇の書事件から数日が経ち、聖は今日もクロノから貸し与えられた研究室で
幸い複雑な部分は損傷が小さく修復は思っていたよりも早く終わった。そして今、その空間内の設定を行っている。
聖の
雄大な草原の中心に巨大な樹がある世界で、その樹はマホウツカイが放出した
そして戦略創造技術兵器、
しかし、いろいろ試しているうちに偶発的にある能力に変化した。
一時的ではあるがマホウの力を使えなくすることができる力だ。最も
だが、一時的とはいえどマホウの力を封印できる。その間に相手を無力化すればいいだけだ。
手持ちの武器等の調整は終わったので僕は地球に戻り、残り少ない冬休みを図書館で過ごした。ニーベルングの指環について調べるためだ。
オーディンと戦うための準備はできたが、戦略がまだ練れてない。
奴のマホウはニーベルングの指環。そのうち僕が把握している能力は3つ。
空間を創造する 第一夜「Die Walkuere」
概念を創造する 第二夜「Siegfried」
力を創造する 第三夜「Goetterdaemmerung」
ニーベルングの指輪というのは実際に存在する序夜と3日間のための舞台祝典劇のことで、
序夜 『ラインの黄金』(Das Rheingold)
第1日 『ワルキューレ』(Die Walküre)
第2日 『ジークフリート』(Siegfried)
第3日 『神々の黄昏(ラグナロク)』(Götterdämmerung)
の4項目がある。
奴の力の名称がこれに沿っているのなら、あの時、最後まで視ることができなかった力。序夜 『ラインの黄金』(Das Rheingold)とは一体どのような能力なのか劇の内容を大まかに知って関連がないか調べてみたが全くわからなかった。
「やっと見つけた!聖!手伝ってくれ!」
今日も図書館で本を漁っているとユーノが凄い勢いで駆け寄ってきた。
「ユーノ。何があったか知らないがここは図書館だ。静かにしろ」
「あっごめん。って、そうじゃなくて大変なんだ!いいから来て!」
「おい、ユーノ! そんなに引っ張るな!」
ユーノに引っ張られて図書館を出て人目のないところに移動して、アースラへと転移させられた。
今度はなにが起きたんだよ……。
アースラへと転移させられ、ブリッジへと移動する間に大まかな話をユーノから聞くと
「闇の書の闇、通称ナハトヴァールを聖の神話魔術で破壊した際、完全に消滅させられなかったみたいで、その破片が意志を持ってしまったんだ。言うなれば『闇の書の残滓』と言ったところだ。現在は『闇の書の残滓』が闇の書の闇として復活するための魔力を集めるために、強力な力を持った者の複製『闇の欠片』を作り出して、魔力を集め回っている」
「複製か……。まさか、その中に僕もいるのか?」
「いや、まだいないよ。でもいずれ現れるかもしれないから、聖にはここで待機してほしいって艦長から聖を呼んでくるようにいわれたんだ」
ブリッチに来てみるとモニターになのは、フェイト、はやてが何者かと戦っているのが映っている。
「あれが闇の欠片か?」
「いや、彼女たちの話をまとめるとあの三体はマテリアルと言う存在で、闇の欠片とは別モノのようだ」
3人の戦闘を眺めていると3人とも何かに反応したように、急に戦闘を止めて同じ方向へと飛んで行った。フェイトと戦っていたレヴィと名乗るマテリアルが、
「王様達を見つけて、『砕けえぬ闇』を手に入れるんだ」
といっていた。
「クロノさん。僕も出ます。あの子が言っていた砕けえぬ闇というのが気になります。あの3体が向かっているであろうポイントに転送してください」
転送してもらうと聖は禍々しい魔力のオーラを感じ取った。
その時、マテリアルのうちのはやてに似ているのが近くを通ったのでついていくと、そこには先ほど感じたオーラを放つ、赤黒い球体があった。
そこに残りの2体も合流し、球体は心臓の鼓動のように脈動し始めた。
「おお、蘇るか!我の記憶が確かなら、その姿は『大いなる翼』!名前からして戦船いくさぶねかあるいは体外強化装備か……!」
「私は、『大いなる翼』との事なので、大きな鳥で」
「それじゃボクはおっきなロボット!背中に羽が付いている奴!」
「おお!それはなかなかカッコイイではないか!」
「そうでしょ!」
テンションが上がる2体を眺めつつ、「こいつらアホだろ」と思っていたら、ユニゾンしたはやてがやってきた。
「聖君!ってなんやあの紅い塊は!」
「わからない。だが、あれはヤバい。できることなら止めたかったが……」
「さあ蘇れ、そしてわが手に収まれ!忌まわしき無限連環機構、システムU―D、砕けえぬ闇よ!」
闇王ディアーチェの言葉と共に球体に罅ひびが入った。
「もう、手遅れだ」
球体が砕け散り、中から現れたのは幼い金髪の少女だった。
「ユニット起動、無限連環機構、動作開始。システム『Unbreakable Darkアンブレイカブル・ダーク』正常作動」
「お……、おおお?」
「あーとりあえず砕けえぬ闇だから……ヤミちゃんか?」
「視界内に夜天の書を確認。防衛プログラムの破損、保有者認証困難」
少女は虚ろなめではやてを見た後、マテリアルの方を向き、
「マテリアルーD――駆体……起動確認」
「うむ、お主と同じく駆体起動中だ」
「ディアーチェ……ディアーチェですか?」
「そうとも、我が名は闇王ディアーチェぞ。いやはや、やっと巡り会えたわ。我等三基、うぬをずっと捜しておったのよ」
「シュテルや、レヴィも……?」
「ここに」
「僕もいるよー!」
「会えて嬉しい――本当は、そう言いたいです。だけど、駄目なんです。私を起動させちゃ。みんなが私を制御しようとしました。だけどできませんでした。だから必死で沈めました。私に繋がるシステムを破断して、別のシステムで上書きして。闇の書に関わる全ての情報から、私のデータを抹消して」
「夜天の主も管制融合騎も知り得ない、闇の書が抱える本当の闇。それが私なんです」
砕けえぬ闇から感じられる魔力が急に大きくなり、聖の本能が警告を鳴らしている。
「―魔術兵装―」
「なっ!!」
砕けえぬ闇の背中から紅い魔力が噴出し、刃となり聖たちに襲い掛かった。
「っ!はやて!」
「あああっ!」
「うあああっ!」
「ぐあああっ!」
三基のマテリアル達はそれをくらってしまい消滅していった。
砕けえぬ闇は悲し気な表情をして、
「ごめんなさい。さよなら、みんな」
そう言って、消え去った。
「まって!ヤミちゃん!!」
「まて!はやて!」
はやてを追いかけようとした瞬間、
「みつけた。マホウツカイ」
上から黒いローブを着てフードで顔を隠している何者かが接近してきて、聖に向かって手に持っている長槍を振るってきた。
その攻撃を槍で受け流すがその時、奇妙な感じがした。
(これは……)
数回、槍を打ち合いその違和感に気づいた。
(この槍、僕の魔力を奪っている!?)
そう気づいた瞬間、聖は相手から距離をとったが、
「
その声と共に相手の周囲に魔力でできた大量の黒い蛇が現れた。
「喰らえ」
その命令で蛇たちは一斉に聖に向かっていった。
「十六夜流槍術―螺旋円舞ッ!!」
聖は槍を高速で円舞を舞うように振り回して蛇たちを打ち落としていき、最後の一匹を切り裂いた。
「……貴様、僕のレプリカか」
「俺のオリジナルか。お前を殺して究極魔法に至るための糧にしてやる」
フードの下には聖と、うり二つの顔があった。
レプリカの手には見覚えのある黒い槍が握られている。
「その槍。戦略創造技術兵装―パンドラだな」
パンドラ
ヴォルスパーの研究で生み出されたマイナスのエネルギーの塊を武器に込めたもの。
全てのエネルギーを無限に食らいつくす闇を内包して魔力を追い求める性質がある。
聖は両親が死んだとき、この槍を使って魔力を集めて究極魔法に至ろうとした。
ならば目の前にいる僕はあの時絶望して魔力をただ追い求めるだけの存在になった僕の馴れの果てか。
「そうだ。こいつがあれば二人を生き返らせることができる!お前の魔力、俺によこせ!オリジナルッ!!」
レプリカが叫ぶと同時に眩い閃光で視界が埋め尽くされ、目を開くと、荒廃しきった世界が広がっていた。
「死を免れなぬ人間の世界(ミズカルズ)。お前の魔力を消滅するまで喰らってやるよ」
ユーリの強さは異常ということで
もうこいつマホウツカイでいいんじゃね?と思い。マホウツカイにしました。
ステータスは以下の通り。
ユーリ・エーベルヴァイン
砕けえぬ闇 Unbreakable Dark(アンブレイカブル・ダーク)
ステータス
破壊力 S
スピード D
射程距離 B
持続力 魔力総量次第
魔力総量 精神力次第
成長性 B
マホウ 無限連環機構(エクザミア)
周囲の魔術粒子を自動で吸収し自身の魔力として還元することで半永久的に魔力を扱うことができる。あくまで魔力のリサイクルであって瞬間的に扱うことのできる魔力量には限りがあり、自身のマホウに膨大な魔力を注ぐ究極魔法を扱えるわけではない。
このマホウには決まった形がなくユーリは自在に巨腕や槍に変化させ戦闘する。
補助兵装 沈む事なき黒い太陽(スヴァルトアルムヘイム)
ユーリの魔力で編まれた特殊な服で、多少の魔術攻撃なら無効化できる防御性。羽のように軽い機能性を併せ持つ。
影落とす月(ヴェル・セルク)
意図的に脳のリミッターを外すことで限界以上の力を出すことができるが、体への負担がかなりかかる。ユーリは体の組織を強化することでこれを軽減している。半永久的な魔力を持つユーリだからできる技能であって、普通のマホウツカイが行えば1分も持たずに魔力を消耗し、消滅する。
紫天の盟約(ダーインスレイブ)
相手に触れることでその魔力を奪い、武器の形に変化させる技能。
神話魔術
全てを射抜く破滅の魔槍(エンシェントマトリクス)
紫天の盟約で奪った魔力で巨大な槍を創り、それに魔術を込めて投擲する。