今週はもう無理だと思うけどね~
「ここは……」
僕が目を覚ますとそこは部屋の一室。ここが自分の部屋だと認識したが、ふと疑問に思った。
「なんで僕はここにいるんだ?」
そう、聖のいる部屋は海鳴に引っ越してきた部屋ではない。売り払ったはずの月詠島の僕の家族が暮らしていた家の一室だった。
「なんで、こんなところに……」
「聖ー起きてるー?」
「えっ?」
この声。まさか!?
僕は急いで部屋を出た。そこには朝食の準備をしている母さんの姿があった。庭では父さんが運動をしている。
「おはよう聖。ほら父さんが待っているから早く行ってあげなさい。終わるころには朝食もできているから」
僕は両親の姿に驚き、戸惑いながら言われるままに着替えて庭に出た。
「おっ来たか。聖」
「父さんおはよう」
「あぁおはよう。それじゃさっそくはじめようか」
僕と父さんは日課の鍛錬を行った。準備運動、走り込み、そして槍術。
一通り訓練が終わった後、父さんに手合せを頼んだ。今の僕が何処まで近づけたか確かめたかった。
「それにしても珍しいな。聖から手合せを頼むなんて。まぁ最近見てやれなかったからな」
「そうだね。今の僕の実力を見てもらいたいんだ。それに父さんの技術も盗めるしね」
「そうか」
二人して向かい合い木でできた槍を構える。父さんは槍を構えず自然体でいる。しかし一切の隙もない。さすが戦場を駆け抜けただけある。だが!
(隙がないなら無理やりつくるまでだ!)
聖は大きく踏み込み一気に距離を近づける。
「十六夜流槍術―狼牙ッ!」
聖は最も使い慣れている技を放った。自身の最速の突撃技。それを祐司は
「いい踏込だね、でも!」
それを難なく払いカウンターを仕掛けてきた。それをよけて次の攻撃につなげる。
そして二人は何度も槍をぶつけ合った。聖の攻撃はすべて防がれている。祐司はほとんどを防御に専念して観察している。そして
「いつの間にかに随分上達したね。でも、十六夜流槍術―漣ッ!」
聖はその攻撃を槍で払いのたが、直ぐに祐司が槍を引き戻したのをみてこれは連撃だと思った。すぐにバックステップをおこない追撃を避けようとした。だが
「無駄だよ!」
祐司は一撃目を出した後、さらに踏み込んで2撃目を当ててきた。そして開いた距離を詰めてさらにもう一撃放ってきた。
「ぐっ!」
後ろに跳んで威力を落とすことができたが、2度の攻撃をくらって聖は膝をついた。
「はぁはぁっ。さすが父さんだね。やっぱり強いや」
「当然だよ。でも聖、随分槍を使いこなせるようになってきたね。で、もうやめるかい?」
「いや、まだだ!」
そう言い立ち上がると聖は目の前で槍を旋回し始めた。
「っ!それは!?」
祐司は一瞬驚いた表情をした後、笑っていた。
「なるほど、奥義を使えるようになったのか聖」
祐司は嬉しそうに笑った後、体の力を抜き、構えを解き脱力状態になった。
「いくよ、父さん! 奥義―銀狼風神閃ッ!!」
聖は高く飛び上がり回転させた槍を勢いよく叩きつけようとした。だが、
「瞬絶」
祐司が消えた。そして次の瞬間、祐司は攻撃を受けて倒れた。
「いっ、父さん最後の方加減間違えたでしょ」
「いや、悪いな。聖の成長が嬉しくてつい熱くなってしまった」
「でも、最後のあれはなんだったの?消えたように見えたけど」
「あれは十六夜流の歩法、瞬絶だよ」
「瞬絶? ていうか歩法なんてあったの?」
「まぁこれは長年の修練で身につけるものだから教えなかったんだよ。瞬絶は移動や攻撃の際の動きの無駄を極限までなくすことで消えたように見えたり、読みずらい攻撃を仕掛けることができるんだ」
「極地みたいなもんか。なら教わってできるものではないか」
鍛錬を終えた僕たちは家に帰り、僕達は朝食を食べた。父さんたちとまた一緒にご飯を食べる時間が来るなんて。久しぶりに食べた母さんの御飯は美味しかった。
久しぶりの家族の団らん。こんなのがいつまでも続いたらいいのにと思ってしまった。でも、
「父さん、母さん。僕はそろそろいくよ」
「なんだ。どこかに出かけるのか?」
「いや、夢から覚めるんだよ」
ここは夢の中だ。それも僕が望んだ世界。いつまでもいたい、両親ともっと一緒にいたいと思うが、夢はいつか覚めるもの。それに
「待っている人たちがいるんだ。いつまでも寝ていられない」
「聖……。夢でもいいじゃない。ここなら家族でいつまでも一緒にいられるのよ」
「母さん、でも……」
「いってこい聖」
「祐司さん!?」
「雅、聖は立派に成長している。大丈夫だ。これからも私たちがいなくてもやって行けるさ」
「父さん……。僕は大丈夫だよ、母さん。友達もたくさんできた。それにカメリアもいるからね」
そういうといつしか手の中に逆十字のアクセサリーがあった。
「大丈夫ですよ、マイスター。私がしっかり聖を教育しますから」
「カメリア……。そうだね、聖。いってきなさい」
僕はこの夢から覚めるべく、家を出ようとしたが、
「聖、せっかく夢でもあえたんだ。最後に渡すものがある。ついてこい」
そういい父さんは何か長いものを背負っていった。父さんについていくとそこは大きな桜の木ある草原。
「ここは?」
「私と雅の思い出の地だよ。ここを聖にも知ってほしかったからね」
そう言い父さんは背負っている荷物をおろしその中身を取り出した。
「
「聖、いまから十六夜流の最終奥義を教える。直ぐに使えるようになるとは思はないが、視て、感じろ。いずれ使う時が来るかもしれない」
父さんが槍を構え、
「十六夜流槍術最終奥義―ッ!!!」
「これが、最終奥義……」
父さんの放った一撃は凄まじい威力をもっていた最終奥義というに相応しい技だった。
「そうだ。聖の才能ならいずれ扱えるだろう。それとこれを渡しておく」
そう言い父さんは
「えっ?いいの?これをもらって」
「いいさ、カメリアに
「どうして?」
「オーディンはおそらくまだ生きている」
「なっ!? あいつは父さんと母さんが倒したはずじゃ!」
「いや、あいつは今仮死状態にあると思う。現に聖。君の魔力量が増えていない」
そうだった。僕は重要なことを忘れていた。あの世界で倒された者はその勝者、一番近くにいた召喚せし者へと還元される。僕の魔力量が変化していないのはオーディンがまだ生きている証拠だ。
「
「そんな……」
「いいか聖。どんな絶望を前にしても希望は必ずある。我武者羅に突き進め!その先に失敗を描くな!敗北を思うな!ただ愚直に成功へ向けて駆けていけ!!」
「父さん……。わかったよ。いってくる!」
聖は
「さて、闇の書には感謝しないとな。いい夢を見せてもらった。お礼に―」
この世界を終わらせるべく槍に魔術を込めていき、
「君とその主、きっちり救わせてもらうよ! 神討つ極光の雷槍―ッ!!」
その世界は蒼い光で覆われ夢の世界は崩れ去っていった。
最後の神討つ極光の雷槍(ミドガルズブレイクニル)ルビが入らなかった……。