ピクニック隊長と血みどろ特殊部隊   作:ウンバボ族の強襲

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久しぶりのリハビリ短編です。

もう一個の連載がやっとお気に入り1000いきそうなので、うれしくてつい。




Interval 手紙

 

 

 こんなものを書くのは人生で初めてです。

 

 

 

 

 だけど、頑張って書きます。

 さっきからターミナル端末の履歴、検索用ワードにはろくでもない言葉ばかりが並んでいます。

 なんかもう、我ながら情けなくて、既に私は泣きそうです。

 ここまで来るともうなんだか笑えません。

 

 先に言っておくと本文章は、私ことフェンリル極地化技術開発局特殊部隊『ブラッド』所属 次席 神威唯から、同部隊隊長ジュリウス・ヴィスコンティ大尉に当てて個人的に書かれたプライベート文章です。

 

 ですので、別の人間がコレを読んでいるのは超間違いです。

 すごく間違いです。すぐに読むのを止めてください。つかやめろ、今すぐにだ。

 頼むから。本当に。

 

 とは言っても多分ナナちゃんやロミオ先輩辺りは容赦ないんだよね……でもやめてね?

 本当に本当に本当だからね!?

 あとフランさんも、できたらラケル先生も読まないで欲しいです。

 局長はまさかそんなことしませんよね……? 

 そしてクソ兄貴にだけは渡らないように。もしそんな事態になろうものなら呪います。呪ってやります。

 

 だから、これを読んだ赤の他人なあなた。どうかコイツを燃やしてください。それだけが私の望みです。

 

 本当に燃やしてください。もしくはアラガミのえさにでもしてください。

 だからわざわざ紙とペンで書いているんです、絶対に消えるように。

 灰にでもなって、無くなる様に。

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 2枚目です。ここからが本文です。

 

 

 思い返せば、私なんかが神機使いになろう、なんて思ったのは今思えば本当に軽い気持ちだったんじゃないかと思います。

 私はフィンランドのフェンリル本部研究員の両親の下に生まれ、本部の内部の中で安全に生活していました。

 アラガミのことは知っていましたけど、どこか遠くのことだと思い込んでいましたし、私の育った家庭では配給品が滞ることなど殆どなく、私自身飢えたこともなければ何かに不足を感じたことはありませんでした。

 兄も、友人も、回りの皆もそうです。

 毎日毎日当たり前のように学校に行って、携帯端末を持ち歩いて、定期的にフェンリル主催のイベントなんかにも参加して、定期試験のたびに徹夜して唸っているような当たり前の学生でした。

 今思えば、本当に恵まれていたのだと思います。

 

 当時の私は、装甲壁が破壊されてる場所があるなんて想像もしていなかったのです。

 仕組みや原理は授業や両親の話で何となく理解はしていましたが、それでも「こんなに大きなものが壊れるなんてありえない」と思っていたのです。

 それがあんな簡単に破壊されるものだなんて、まるで想像もつかなかったのです。

 

 そんな私が神機使いになるまでのいきさつや心情の変化は……なんか色々あったような気もしますが、実は忘れてしまいました。

 というか、勢いだけでバカ正直に書くには時が経ちすぎていて、かといって客観的に分析するのにはまだ早すぎるような感じです。

 だから単に『検査結果で適合通知が着たから』ということにして置いてください。

 浅はかだったと思いますが、私には、その通知書が、『私を必要としてくれている』ようなものに思えたんです。

 

 

 本当にバカでした。知っています。

 もう何十回と見たあなたの呆れ顔がものすごく、ありありと目に浮かびます。

 

 

 貴方と初めて出会ったのは庭園でした。

 あの時私は適合試験でやらかしたらしいことで頭がいっぱいになっていました。

 正直あれほど怖いものだと思っていなかったのです。私は簡単なパッチ検査くらいなものだろうと勝手に想像していました。兄に失敗すれば死ぬどころかミンチになる、と事前に言われていたのも関わらず。

 あの時だけは兄が正しかったと思います。

 話がそれました、兄は関係ありません。1ミクロたりとも関係ありません。

 たぶん、その時からなんだろうな、と思います。

 

 

 私は貴方が好きです。

 

 文字がヤバいです。震えます。

 ……落ち着きました。もう大丈夫です。

 こう書くと貴方は、非常に自分の都合よく受け止めるんじゃないかってちょっと心配なのでもっと詳しく書きます。

 

 私、神威唯は、一人の女の子として、ジュリウス・ヴィスコンティという男性のことが好きです。

 

 だから決して『家族』としてとか、同じ部隊所属の隊員としてとか、(かなうならば友人として)という意味で、『好意的に思っている』という意味ではありません。

 異性として貴方が好きです。

 基本的に文化を気づいている大多数の人類はコレを恋、もしくは愛と呼びます。

 詳しく書きました。隊長は結構天然なところがあるので、ハッキリ書かなきゃ分かってもらえないかと思ったのです。

 

 言いました。すっきりしました。

 何かこんな形でしか貴方に思いを伝えることができない辺り、私は本当にヘタレなんだと思います。

 

 もう情けないです、泣けてきました。

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 好きでした、隊長。

 

 多分、一目ぼれだったんだじゃないかと思います。いつから好きだったかなんて、分かりません。

 好きでした。隊長。

 

 本当は過去形なんかで言いたくないけど、でも、もう過去になってるんだと思います。

 

 あなたがコレを読んでいる、ということは過去になっているんだと思います。

 

 そして私は多分、最後の最後まであなたに言葉として、思いを伝えることはできなかったと思います。

 

 一体、私はどうやって死んだんでしょうか?

 

 もしかして、貴方や仲間、ひょっとしたら家族に看取られてベッドの上で安らかに死ねたでしょうか?

 多分ないな、と思います。

 できたら綺麗に死ねていたらいいんだけど。

 これでも私は自分を女だと思っています。ですから少なくともあまり綺麗じゃない姿を心から好きになった人には見られたくないのです。

 多分、痛いだの苦しいだの怖いだの死にたくないだの、みじめったらしく泣き言を吐くだけ吐いて、今までありがとうとか、そうゆう感じの大事なことは何一つ言えないで逝ってると思います……自分のことなのでよく分かります……。

 

 だからこっちで言います。なので、私の死に際は忘れてください。

 ソレはちょっとパニックになって極限まで慌てふためいた結果なんだと思います。

 当たり前です、誰だって死は怖いはずです。だからパニックにもなります!

 断じて。……信じて?

 

 

 好きでした、隊長。

 

 

 本当なら、本当にすみませんでした、とか、迷惑かけて申し訳ありませんでした、とか皆に心配かけてごめん。とか、辛かったけど楽しかったとか。そうゆうことを伝えるべきなんだと思います。

 だけど、死んだ後に気持ちだけが伝わるんだとしたらって想定だと、どうしてもこうなっちゃいます。

 貴方に好きだった、という気持ちを知っておいて貰いたかった、なんて思います。

 だけど私はヘタレなので、口にはできません。

 フラれるのが怖いから、恥ずかしいから、って言い訳ならいくらでもできるんですが。

 でも、これなら言えます。

 だって私はもうこの世に居ないんですから。

 たとえフラれても、もう私は気になりませんし、悲しくないし、恥ずかしくもありません。

 ですが、もし、両思いだった場合には死ぬほど悲しいです。もう死んでるけど。

 

 だったら隊長と手を繋いでみたかったな、なんて思います。

 普通に友人が彼氏としていたような、デートもしてみたかったな、って思います。

 二人で過去に人類が作ったとかいう映画見て、感想を喋って。

 とくにやることもないのに、お互いの部屋に行ってダベったり、好きなことしたり。

 配給の列に一緒に並んだり、あんまり美味しくない配給品を一緒に食べたり。

 もっといろんなことを喋ったり、してみたかったです。

 一度でいいから、私の育った支部を一緒に見て欲しかったです。

 できるなら、両親にも会ってほしかったです。

 学生時代の友達に、恋人として自慢してみたかったりもします。

 あとは……。

 

 ……すみません、恋人というものがどうゆうものなのか、イマイチ私にも分かってません。

 

 だけど多分こんな感じでしょう。大方間違ってはいないと思います。

 大事なことは私は貴方という人間のことが好きだったし、できたらこんなこともしてみたかったな、ということを知っておいて貰いたい……貰いたかったな、というただの自己満足です。

 でも返事は分かりきっているから大丈夫です。ただ、面と向かって拒絶されたら嫌だったのです。悲しいし、生きる希望もクソもなくなるからです。

 

 なんだかもう何が言いたいのか分からなくなってきました。

 ただひとつ、最後に言っておきたいことを言っておこうと思います。

 『私のことなど忘れてどうか幸せに生きてください』……って言うのが多分正解なのかなと思います。

 だけど残念ですがご存知の通り私はそこまで出来た人間ではありません。だからこう言います。

 

 どうか、私を覚えていてください。

 

 多分あなたは一流の神機使いだし、ちゃんとした士官教育も受けている人なので、言われなくてもすぐに私のことなんか綺麗さっぱりスッカリと忘れるでしょう。

 そして私なんぞに言われなくても、何年後かには誰かと結婚し……その相手が誰かはあえて考えないことにしますが……家族を作って、退役して、子供を連れてピクニックでも行って、見る影もないオッサンになって、幸せな人生だったと笑って、隊長があれほど欲しがっていた家族に看取られながら死んでほしいです。

 1年先2年先ぐらいまではギリギリ覚えているかもしれませんが、10年ぐらいだったらもう影も形もなくなっていると思います。多分、私の顔も、声も、何か全部忘れ去られていると思います。

 だからどうか名前だけでも、少しだけでも覚えていてください。

 そして、私が貴方を好きだったということを覚えていてください。

 

 どうか隊長の人生が幸せでありますように。

 

 

 さようなら。ずっと好きでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やめてよナナちゃぁああああああああああん!!」

 

「さようなら。ずっとすきでした……なるほどね~~!」

 

「やめてよぉおおおおおおおおおおぉおおおおおお!!」

 

「どうか、私を覚えていてくださいの下りは流石にやばくない? これじゃ呪いの手紙だよ~~」

 

「やめてくださいしんでしまいます!!」

 

「死ねばーー? だってコレ『遺書』でしょーー?」

 

「本当やめてもうやめて私しんじゃうこれ以上やられたら憤死しちゃうぅううううう!!」

 

「2枚目の下りっていらなくない? というか何? 唯ちゃん適合試験で何したのーー?」

 

「……るから……!」

 

「きこえないよー??」

 

「食べるからぁ!! おでんパン食べるからぁ! 新型の人体実験やります! やるから許してお願い読まないで音読しないでぇええええええ!! 返してよ! もう返してよ!! いっそ無に帰してよ!!」

 

「人体実験なんて人聞きが悪いな~~試食って言ってよ!!」

 

 






こんなものを書いたのは人生で初めてです・・・。

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