絢の軌跡Ⅱ   作:ゆーゆ

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12月31日 全てを、終わらせる為に

 

レーグニッツ帝都知事は信頼できる人間を集め、異変に対する対策本部を設置した。

都民の避難誘導と避難場所の確保、一時休戦に向けた貴族連合側との交渉。

必要最低限の対応だけでも山積みだろうが、一刻も早い進展が求められていた。

 

クレア大尉が率いる鉄道憲兵隊は、その実動員として各所で動き始めていた。

身動きが取れないでいる正規軍も、独自に連合側へ働きかけているそうだ。

 

一方のカレイジャスでは、トワ会長とサラ教官による実動班の再編成が行われた。

煌魔城攻略の鍵は言うまでもなく、リィンと私の相棒役、ヴァリマールとユイ。

2つの力を中心に据えた作戦が急ピッチで組まれる中、紅き翼は帝都近郊を巡航していた。

 

そして―――

 

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ARCUSの時計を確認すると、現時刻は午後の15時58分。既に夕刻だ。

しかし頭上の空に広がる色は、夕暮れのそれとは違う緋色で染まっていた。

 

カレイジャス前方の甲板にはリィンとヴァリマール、私とユイが控えていた。

私はユイの背に立って夕空を見上げながら、ヴァリマールに向けて言った。

 

「もう夕方なんだね。空がこんなだから、感覚が狂っちゃうよ」

『そうだな。アヤ、そろそろ腹が空き始める頃じゃないか?』

「少し食べてきたから大丈夫。長丁場になりそうだしね」

『ハハ、なら安心だ』

 

実動班は地上へ降り立つ為に、装備を整えながら船倉で待機中。

私とリィンはそれぞれの相棒と共に、直接地上へ飛び降りる手筈となっていた。

 

今現在カレイジャスは、帝都からやや東に外れた地点を西に向かっている。

そろそろ帝都上空へ出る頃だろう。ドライケルス広場に辿り着いた瞬間が、作戦開始の時だ。

 

『それにしても・・・・・・はぁ。どうしてエリゼが、カレイジャスに乗る必要があるんだ』

「ああもう、またそれ?」

 

またそれである。先程から会話の大部分がエリゼちゃんに関することだった。

自らの意思で乗艦したエリゼちゃんに気を取られ、心中穏やかでいられないらしい。

ついさっき皆に言い包められたばかりだというのに、往生際が悪過ぎる。

 

「過保護すぎると、逆に嫌われちゃうよ?」

『ば、馬鹿なことを言わないでくれ』

「いや、本気で言ってるんだけど。それにこれ、前にも言ったよね」

『・・・・・・そうだったか?』

「うわぁ・・・・・・」

 

妹に限らず、鈍感な部分は変わらずにそのままのようだ。まるで成長していない。

折角ラウラとも進展があったというのに、彼女が背負うであろう苦労が容易に想像できてしまう。

 

ともあれ、良い意味で肩の力が抜けたような気がする。リィンだって同じだろう。

エリゼちゃんがカレイジャスに乗ってくれたおかげだ。ありがとう、エリゼちゃん。

 

『船倉及び甲板へ。そろそろ帝都上空に出るよっ』

 

トワ会長の声に、前方の雲の切れ目を見やる。

カレイジャスが雲の海を置き去りにした途端、視界が一気に開けた。

 

「あっ・・・・・・改めて見ると、とんでもないね」

『ああ。1,000アージュに、届くかもしれないな』

 

帝都上空を貫く、左右対称の禍々しい魔城。

城の足元には、巨大な木の根を思わせる何かが歪に絡み付いていた。

元々在った筈のバルフレイム宮は、煌魔城の中に飲み込まれてしまったのだろうか。

 

あんな物を使って、結社は一体何を企んでいるのだろう。

碧の大樹の件といい、もう何が起きたって不思議ではない。

 

『あれはっ・・・・・・アヤ、見えるか?』

「え、何?」

 

リィンの声にハッとして、前方へ目を凝らす。

煌魔城の向こう側、遥か西方にきらりと、何かが光るのを視界が捉えた。

 

すると突然、カレイジャスが身を翻し、強引に針路を変えた。

最大船速に達していた分、重力に反発するフィールドを超えた力が、全身を圧してくる。

 

「うわわっ」

『距離25方位181、同高度から敵母艦の接近を確認。みんな、少し針路を変更するよ』

 

少しの変更どころではなく、カレイジャスは大きく迂回を始めた。

先程の光は貴族連合側の旗艦、パンタグリュエルが発したものだったようだ。

 

帝都がこんな有り様だというのに、まだ邪魔立てをするつもりか。

苛立ちが込み上げてくる一方で、パンタグリュエルは見る見るうちに距離を詰めてくる。

最大船速はカレイジャスが上でも、強引に迂回している分だけこちらが不利なのだろう。

 

『総員、衝撃とGに備えて!』

 

やがて針路が反転し、パンタグリュエルの姿が後方へ消えたところで、引き金が絞られた。

上空へ撃ち出された計14発の高射砲が、カレイジャスへと降り注いでくる。

 

「嘘!?」

 

カレイジャスが一気に加速すると同時に舵が切られ、風を割く鋭い音だけが耳に入ってくる。

生きた心地のしない数秒間。幸いにも、14発全てが空振りに終わった。

砲撃音で痛めた耳を押さえながら、私は後方のパンタグリュエルを睨んだ。

 

「て、帝都の上空で撃つなんて、あいつら何考えてるの!?」

 

今の砲撃は明らかにカレイジャスを捕捉していた。本気で撃墜するつもりなのだろうか。

全長75アージュの艦体が地上へ墜ちたら何が起きるのか、考えなくても分かるだろう。

落下地点周辺は大惨事になる。私達は勿論、都民の犠牲者の数は想像も付かない。

馬鹿げている。この期に及んで、どうしてそんな真似ができる。

 

『船倉及び甲板へ!予定を変えて、着陸を待たずに作戦を開始しよう!』

 

トワ会長から段取り変更の指示が下り、手短に要点が並べられていく。

こうなっては悠長にドライケルス広場へ着陸している余裕は無い。

実動班はエマとセリーヌの転移術を使い、できる限りの人員を地上へ移動させる。

術の発動後は迅速に離脱し、パンタグリュエルを帝都から引き離す。

 

「で、でも転移術だと、全員は無理なんじゃない?」

『仕方ないさ。今は贅沢を言っていられない』

 

転移術は一度に移動できる人数に限りがあると、以前エマが語っていた。

実動班全員の移動は到底叶わない。人手はいくらあっても足りないというのに。

 

『トワ会長。《Ⅶ組》のみんなに、甲板へ来るよう伝えて下さい』

『甲板に?』

『少人数だけなら、ヴァリマールとユイで移動できます。時間がありません、急いで下さい!』

 

そうか。難しく考え過ぎた。それならある程度の人数は確保できる。

あの魔城へ攻め入る以上、やはり人員が少なすぎては話にならない。

 

カレイジャスはパンタグリュエルを引き離した後、高度を下げながら減速を始めた。

地上が近付くに連れて都内の様子を見下ろせるようになり、《Ⅶ組》の皆も甲板へ到着した。

 

「おっ待たせー!ねえねえ、ボクはどっちに乗ればいいの?」

「「アガートラム!」」

 

9人分の突っ込みに不服そうなミリアムを尻目に、手早く割り振りを決める。

マキアスとユーシスはヴァリマールの両手、それ以外がユイの背中に。

 

そう考えていたのだが、思っていた以上にユイの背の上は不安定だった。

私はいつもリンクを繋げるから、落下の危険性なんて考えたことがなかった。

 

「参ったな。全員は無理じゃないか?」

「せめてあと1人分のスペースが欲しいわね」

 

なら話は早い。ヴァリマールのコクピットはそれなりに広いと聞いている。

誰か1人がリィンと相席すれば何の問題も無い。

 

『分かった。それで、誰を乗せればいいんだ?』

「「ラウラ!」」

 

照れながらも嬉しげなラウラの背中を押して、地上へ降り立つ準備を終える。

地上の様子を見下ろすと、緩み掛けた空気が一気に張り詰め、緊張感が増した。

 

「あれが、魔煌兵!?」

 

帝都の街中を徘徊する、巨大な古のゴーレム達。

報告にあった通り、ドライケルス広場が出現場所となっているのだろう。

広場を中心に散開しつつあるようで、近付くに連れて、視界に映る数が段々と増えていく。

ヴァリマールの手に乗っていたマキアスとユーシスは、地上を見下ろして声を震わせた。

 

「不味いぞっ・・・・・・想定していた以上だ、数が多過ぎる」

「最早一刻の猶予も許されんな。総員で煌魔城への突入を試みるしかあるまい」

『ああ。こうなったら、魔煌兵の遊撃は諦めた方がいいかもしれない』

 

元々の班編成では煌魔城への突入班と、都内の魔煌兵を叩く遊撃班とに分かれていた。

だが人員の数が限られてしまった以上、ユーシスの案は一理ある。

全員で異変の大元を攻略する。それが最速で最短の道のりだ。

直に鉄道憲兵隊の応援も駆け付ける筈だし、私達は煌魔城へ専念すべきと言いたいのだろう。

 

『トワ会長、船倉と繋いで下さい』

『分かった。すぐ繋ぐよ』

 

リィンは船倉で控えるサラ教官へ、地上の様子を含め要点を説明した。

突入班へ統一すべきという案にサラ教官らも同意を示し、決行直前の改案がなされる。

 

『リィン、アヤ、降下してすぐに先制しなさい。それを合図に総出で突破するわよ』

『分かりました。アヤ、初撃を頼めるか?』

「モチのロン!」

『あと30秒で広場に到達するよ!到着後はすぐに浮上するから、急いで地上に降りて!』

 

やがてカレイジャスはホバリング飛行へ移行しながら、ドライケルス広場へと接近していく。

見えた。獅子心皇帝の彫刻像を中心に、ざっと見積もって十数体以上の魔煌兵。

あの集団を蹴散らして突破するとなれば、やはり総出で当たる他ない。

 

『よし。行くぞ、ヴァリマール!』

「ユイ、できる限り衝撃を抑えて着地して!」

 

ヴァリマールとユイが勢いを付けて飛び上がり、地上へと降り立つ。

振り返ると、船倉にいたエマ達も無事に転移術で移動した直後だった。

2学年生を中心にした士官学院生が9名。サラ教官にトマス教官、マカロフ教官。

協力を買って出てくれたセレスタンさんとサリファさん。《Ⅶ組》を含めて、計25名。

士官学院が誇る実力者が揃ってはいるが、頭数は当初の半数以下だった。

 

『カレイジャス、緊急浮上!』

 

再び高度を上げたカレイジャスは、通常飛行へ移行してから東の空へと駆け始める

パンタグリュエルが轟音を鳴らしながら頭上を過ぎ去ると、音は急速に遠のいていった。

さあ、ここからだ。力を温存している余裕は無い。道は私達が切り拓く。

 

『出番なのっ!』

 

ユイが頭上を撃ち出したアルテアカノンの光弾が、魔煌兵の群れへと降り注ぐ。

続いてヴァリマールが前方の魔煌兵を次々と斬れ伏し、群れのうち3体が光へと昇華した。

 

「今よ、戦闘開始!」

「「おうっ!」」

 

ヴァリマールとユイを矛先とした槍が、ドライケルス広場を突き進む。

脅威ではあるが、機甲兵のような機動力は無い。魔煌兵の動き自体は鈍重だ。

個々を確実に複数人で相手取りながら前進できれば、煌魔城には届く。

 

『みんな、後に続いてくれ!』

 

中央のルートを確保し、ヴァリマールが先導して煌魔城に繋がる橋を目指し始める。

後続に私とユイ、《Ⅶ組》。先輩と年長組は背後へ注意を払いながら歩を進めていく。

煌魔城の根本、橋の先には、入り口であろう石造りの巨大な城門が鎮座していた。

ご丁寧に出迎えてくれそうもないし、もう手段を選んでもいられない。

 

「リィン、あれどうする?」

『叩き斬るまでさ。この太刀ならっ・・・・・・な、何だ?』

 

突如として空気が揺らぎ、後方から怪しげな光が放たれる。

振り返ると、紫色の光球が《Ⅶ組》の後方、先輩らとの間に複数浮かんでいた。

光球はドライケルス広場を中心にして、次々と浮かび上がっていく。

 

「第二波っ・・・・・・来る、みんな構えて!!」

 

目が眩むような輝きを発するやいなや、光球は突如として巨大化し、変貌する。

無の空間から生まれた古の巨大なゴーレム達が、唸り声を上げた。

私達を嘲笑うかのように、魔煌兵の群れがドライケルス広場に犇めいていた。

 

しかも、完全に分断されていた。

橋を進んでいた《Ⅶ組》以外の13人が、魔煌兵の群れに囲まれてしまっていた。

多勢に無勢どころではない。あのままでは一気に押し切られる。

 

「僕達に構うな!《Ⅶ組》だけでも、城内へ向かいたまえ!」

 

踵を返して戻ろうとした途端、広場の中心に立つパトリックが声を張った。

 

『ぱ、パトリック?』

「大元を叩かない限り同じことの繰り返しだろう。ぐずぐずしていないで、早く行くんだ!下手をすれば帝都が魔人だらけになるぞ!?」

 

そうは言うが、たったの十数人であの数をどうこうできるものなのか。

そんな私達の不安とは裏腹に、パトリックらは彫刻像を中心に円状の陣形を取り始める。

直後に始まった猛烈な反撃は、魔煌兵の群れを一気に押し返していく。

 

「何をしている!?シュバルツァー、僕は前に進めと言ってるんだ!!」

『・・・っ・・・・・・ああ、了解だ!』

 

皆で前進の意志を確かめ合うやいなや、今度は私達の足元に、巨大な影が落ちて来る。

後方の次は、上空からの奇襲だった。次から次へと、予想だにしない展開が相次いでいく。

 

『待ちわびていたぞ、聖しき獣様よ。おぬしの相手は私だ』

「ぐ、グリアノス!?」

 

頭上を見上げると同時に、ユイが翼を羽ばたかせ、宙へ舞い上がる。

飛び立ったユイは私とのリンクを切って、声を荒げた。

 

『アヤ、こいつは私に任せるの!アヤはみんなと一緒に先へ進むの!』

 

声が、出ない。相反する2つが私の中でせめぎ合い、息苦しさを覚える。

だが迷っている時間は無い。後ろを振り向く余裕があるなら、前を向け。

 

「ユイ!さっさと蹴散らして、私のところに帰って来ること!分かった!?」

『合点承知なのっ!!』

 

ユイとグリアノスは螺旋を描きながら、煌魔城に沿って空を駆け昇っていく。

これでいい。ユイと皆の意志を無駄にしない為にも、私達は前に進むしかない。

目指すは煌魔城。眼前に聳え立つ城へ踏み入るには、あの城門を抉じ開ける必要がある。

 

『下がっていてくれ、俺とヴァリマールが道を切り拓く!』

 

数多の試練の果てに鍛え上げられた、唯一無二の輝きを纏う太刀。

ヴァリマールは脇構えの体勢から地面を駆り、踏み込みの勢いをそのままに太刀を振るった。

城門が音を立てて崩れ落ちると、城内から緋色の空気が漏れ始めた。

 

「や、やったわ!」

「いや、まだだ!」

 

ガイウスが叫ぶと同時に、城門に代わって蒼色の不気味な紋様が浮かび上がる。

円状に展開したそれは、ローエングリン城で何度も目の当たりにした結界と酷似していた。

 

「霊的な障壁、だと?」

「す、凄まじい密度の霊子結界です。物理的な力では、歯が立ちません」

「うぅ、ガーちゃんでも無理そう?」

 

ヴァリマールが太刀を八相に構え、上段斬りを障壁に叩き込む。

太刀は乾いた音と共に弾かれ、障壁から放たれた反動が、私達の足を後退させた。

 

ヴァリマールで駄目なら、こちらにはもう打つ手が無い。

歯軋りをしてヴァリマールの背中を見詰めていると、鋭い殺気が背中へと突き刺さる。

―――不味い。背後から、来る。

 

「アヤ、合わせなさい!」

「せぃあぁっ!!」

 

振り向きざまに鞘を払い、真・月光翼を発動させ、前触れ無く沸いて出た魔煌兵の1体を斬る。

斬撃は反対側へ踏み込んだサラ教官のそれと重なり、胸部に十字の爪痕が刻まれた。

不意を突かれた魔煌兵は背中から倒れ込み、光を撒き散らして消滅した。

 

「流石ね。今のあなたになら、安心して背中を預けられるわ」

「褒め過ぎです。それに、これってっ・・・・・・だ、第三波!?」

 

息を付く暇も無く、第三波。前方に2つの光球が浮かんだ。

更にその後方では、広場の外周に沿って複数の光が生じていく。

もしかしなくとも、引き金となったのは私達自身なのだろう。

 

「こ、この期に及んで、まだ増えるっていうの!?」

 

サラ教官の悲痛な叫びが、魔煌兵の咆哮で掻き消される。

魔煌兵の勢いは衰える様子も無く、辺り一帯に黒の巨像が蠢いていた。

円陣を組むパトリックらも何とか持ち堪えてはいるようだが、あれでは時間の問題だ。

 

パンタグリュエルの迎撃に始まり、好転の兆しがまるで見られない。

城門は霊子結界に取って代わり、魔煌兵は増加する一方。

後退の二文字は無いが、前進もできない。考え得る限り最悪の展開。

地上へ降り立ってからも連鎖する暗転の数々。空の女神様は、一向に微笑んではくれない。

 

「くっ・・・・・・諦めては駄目よ、何か手はある筈だわ!」

「分かってます!でも、どうすればっ・・・・・・!」

 

僅かな追い風さえ吹いてくれれば、それがキッカケとなる。

この状況を打開する一筋の光明。何か、何か1つだけでいい。

 

―――ガキン。

 

すると突然、2体のうち1体の魔煌兵の頭部へ、何かが飛来した。

見覚えのあるそれは、私の長巻と同様の輝きを放ちながら、魔煌兵の頭を貫いていた。

 

「えっ・・・・・・お、大鎌?」

「「奥義、太極無双撃っ!!」」

 

ドクンと胸の鼓動が高鳴り、息が止まった。

おびただしい連撃の的となった魔煌兵の膝が折れ、力無く項垂れる。

奇襲により葬られた魔煌兵が消え去ると―――3人の背中が、視界に飛び込んできた。

 

「あ、あなた達は、まさか」

「レン!?エステル、ヨシュア!?」

 

追い風は唐突に吹き荒れ、私達を突き動かす。

エステルらは前方を向いたまま、横顔で語り掛けてくる。

 

「ふう。少し出遅れちゃったけど、何とか間に合ったわね」

「偉大な先輩方にもご挨拶といきたいところだけど、そうも言っていられないみたいだ。手短に話すよ」

 

とある女性に導かれて帝国入りしたのが、昨日の深夜帯。

異変を目の当たりにしたエステルらは、中心地である帝都へと駆け付けてくれていた。

女性とやらを含め聞きたいことは山ほどあるが、頭が追い付かず、言葉にできなかった。

 

「行き掛けの駄賃ってやつよ。アヤとガイウス君にはでっかい借りもあるしね」

「結社が関わっている以上、僕らにとっても他人事じゃ済まされない。加勢させて貰うよ」

「それにほら、援軍はあたし達だけじゃないの。負けていられないわ!」

「え?」

 

エステルの視線は向かって左側、ドライケルス広場の東。

東の方角から攻め入ってくる大軍勢。十字槍を握る戦士達が、進軍していた。

 

「皆の者ぉ!ルナリア様の意志を継ぎ、戦うべき時は今だ!古の友が為に、槍を振るえぇっ!!」

「「うおおぉっ!!」」

 

来たるべき刻に備えよ。

巨いなる災いが、再び降り注ぐ刻。

緋き風を切り拓く―――蒼穹の矛先であれ。

 

かつて獅子心皇帝と共に槍を振るったノルドの民、唯一の女性ルナリア。

彼女の血と意志を継いで森と共に生きる、ルナリアの里の戦士達だった。

 

「ガライさん、レイアまでっ・・・・・・!」

 

顔が熱を帯びて、視界が歪んでいく。

全身が滾るように熱くなり、胸を突き上げてくる感情で、闇雲に涙が溢れ出てくる。

 

『はあああぁっ!!!』

 

背後から感じた力の波動に振り返ると、ヴァリマールの光の剣技が、紋様を両断していた。

再び城内から立ち込めてくる緋色の霧。煌魔城への道は、拓けた。

 

窮地は好機に取って代わり、暗雲は一挙に霧散した。

進むべき道がある。背中を押してくれる、沢山の仲間がいる。

 

「アヤ、行って」

 

コツンと、レンが握る大鎌の先端が、長巻の刀身へ触れた。

パテルマテルを成していた特殊合金から鍛え上げられた、大切な彼の形見同士だった。

 

「お願い、その剣を無駄にしないで」

「レン・・・・・・分かった。約束するよ」

『アヤ、サラ教官、急いでくれ!』

 

私は皆の姿を目に焼き付けてから、振り返りたい衝動の全てを前に向けて、走り出した。

 

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煌魔城の内部に踏み込んだ途端、不可思議な感覚が私達を襲った。

まるで夢見の真っ只中にいるかのような、現実感の欠落。

 

10月24日を引き合いに出したのは、エマだった。

士官学院旧校舎地下、宙に浮かぶ魔宮で見舞われた、感覚の誤作動。

行ったり来たりを繰り返す時間軸。寒気に汗を流し、熱が身体を凍えさせる。

平静さを保っていられたのは、あの時の経験があってこその賜物だろう。

 

「エマ君、障壁の方はどうなんだ?」

 

マキアスの問いに、エマが先程まで霊子結界が張られていた入口を見やりながら答える。

 

「霊子の残粒が、微弱な結界を形成しているようです。開いたり閉じたりを繰り返しているような感じで・・・・・・不安定ではありますが、完全には消滅していません」

「ふむ。いずれにせよ援軍は望めぬと考えた方がよいだろう」

 

煌魔城への突入に成功したのは、サラ教官を含めた《Ⅶ組》12人。

続々と援軍が駆け付けてくれたはいいが、あれ以上はもう望めない。

ヴァリマールは結界を斬る為に相当な無理をしたようで、復帰に時間を要するようだ。

ユイも未だグリアノスと戦闘中。現状で動けるのは、私達しかいない。

 

「・・・・・・この城、何階建てなんだろ」

 

場内は中央が吹き抜けの構造となっており、その先を窺うことはできない。

頭上に広がる闇を見上げると、何かが落下してきそうな恐怖感を覚えた。

 

「こらこら。無駄口を叩いていないで、覚悟を決めるわよ」

 

サラ教官がパンパンと両の掌を鳴らし、私達に語り掛けてくる。

 

「どうやら色々な因縁があるみたいだけど、この際それはどうでもいいわ。あたし達は沢山の人間の意志を受けて、今この場に立っている。それを刻み、支えにしなさい。リィン?」

「はい」

 

名を呼ばれたリィンが、私達の中心に立つ。

こんな時は、いつだって彼が音頭を取る。《Ⅶ組》恒例、お馴染みの光景だ。

 

「みんな。旧校舎地下で俺が言ったことを、覚えてるか?」

 

答えるまでもない。

元々は、全てがバラバラだった。3月31日は、その一欠片に過ぎない。

何か1つでも綻びが生じていたら、この12人はこの場にいない。出会ってすらいない。

幾層にも幾層にも重ねられた因縁と日常は、今この瞬間を以って繋がりを見せている。

 

始まりは定かではないが、私にとってのそれはきっと、7年前の3月31日。

悲哀に満ちた一夜が今に繋がっただなんて、何とも複雑な想いだ。

ともあれ幸いにも、やるべきことは1つに集約してくれる。

 

「トールズ士官学院特科クラス《Ⅶ組》。この異変を食い止める為に、それぞれの明日を掴む為に・・・・・・今はただひたすらに、前へ進もう!」

 

リィンの声に私達のそれが重なり合い、城内へ響き渡る。

すると頭上から―――断末魔のような、重々しい獣の声が木霊した。

思わず皆が身構える一方で、私は声が鳴った方角を、一点に見詰めていた。

 

「・・・・・・みんな。先を急ごう」

 

全身に浮かんでいた汗が、一気に熱を奪い去る。

滾っていた血が冷えていくかのような感覚に陥っていく。

 

そう。私の始まりは、7年前。

私にも、断ち切るべき因縁がある。

 

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上階へ繋がる階段を上った私達は、順調に歩を進めた。

余りにも順調過ぎた。行く手を遮る脅威らしい脅威は、何処にも見受けられなかった。

 

『変ね。高位の霊子体の気配は感じるのに・・・・・・どうなっているのかしら』

 

その代わりに、数多の爪痕が残されていた。

破壊された扉。瓦礫と化した壁。亀裂が走った床面。

嵐が森林を薙ぎ倒したかのように、荒れ果てた煌魔城の2階層。

 

やがて中腹とおぼしき開けた空間へ辿り着くと、異様な光景が目に飛び込んでくる。

見るからに獰猛そうな、緋色の蜥蜴型魔獣。魔獣は息も絶え絶えといった様子だった。

床は肌と同じ色で染まっていた。先程の断末魔は、あの魔獣のものだったのだろう。

 

「よお。待ってたぜ」

 

突如として魔獣の巨体が爆ぜ、七耀石の欠片へと変わる。

直後に向けられた殺気が肌を焼き、皆が一様にして応戦の構えを取る。

 

「・・・・・・やっぱり現れたわね」

 

魔獣の断末魔を耳にした時から、不思議と予感めいたものがあった。

これも因縁の為せる勘というやつだろうか。ありがた迷惑な第六感だ。

ヴァルターは首を鳴らしながら、私の名を呼んだ。

 

「有象無象に用はねえよ、黙ってな。アヤ、お前1人で十分だ」

「私は・・・・・・」

 

名も知らないお父さんは、この男に殺された。

この男がいなかったら、私は死んでいた。

アヤはあの日に生まれ、絶望と孤独の日々を背負わされた。

それが今の幸せに繋がっているという現実。

 

私の感情は別として、ヴァルターが私に固執するそれの正体は、何なのだろう。

闘争への欲求か。自らが引き出した力への関心か。それとも、女として見ているのだろうか。

 

分からない。分からないが、1つだけ確かなことがある。

アヤとして、結社の存在を知る遊撃士の1人として。

乗り越えるべき壁と、断ち切らなければならない因縁がある。

 

「アヤ、無茶だ。馬鹿な真似はよせ」

 

一歩前に出ようとしたところで、ガイウスの手が私の右肩を掴む。

続いてサラ教官が、割って入るようにして私の前方に立った。

 

「あなたには悪いけど、見過ごす訳にはいかない。絶対に認めないわ」

「サラ教官・・・・・・」

「どうしてもと言うなら、あたしが一緒に―――」

「いいえ。それは『私』の役目よ」

 

後方から、女性の声が聞こえた。

私は振り返って、呟くように言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お姉、ちゃん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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懐かしさと温かみに満ちた声が、聞こえた。

振り返るよりも前に、私の瞼の裏には、とある女性の顔が浮かんでいた。

 

思い当たる記憶はある。7年前の、あの時だ。

猟兵に胸を撃たれた私に、ヴァルターが軟気功を施した、あの瞬間。

気流と共に流れ込んできた記憶の破片。温かな感情と、その行く先。

 

今でも鮮明に覚えている。風になびかせる黒髪と、優しげな細目。

とても綺麗な人だった。私も大人になったら、あんな風になれるのかなって、憧れた。

そして心臓の鼓動が止まる刹那に、一度だけヴァルターは名を呼んだ。

 

―――キリカ。

 

私の後方には、記憶の中にいた彼女よりも、ずっと大人びた女性が立っていた。

不思議なことに、私はお姉ちゃんと、口にしていた。

どうしてかは分からないけど、そう呼ばずにはいられなかった。

 

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誰一人として、身動きが取れなかった。

ヴァルターは煙草を咥え、押し黙ったまま。

アヤは自らが口にした言葉に、戸惑いながら。

そしてキリカを知らない者達は、吸い込まれるように、キリカを見詰めていた。

見たこともなく名も知らない女性に、全員が惹き付けられていた。

 

「ぼ、僕の聞き間違いかな」

「いや・・・・・・俺にも、そう聞こえた」

 

一歩ずつ歩み寄ってくるキリカが身に纏う、只事ではない空気。

その真意に辿り着かずとも、キリカの名を知る人間は2人、輪の中に立っていた。

 

「うっわー。え、ええ?なな、何がどうなってるのさ?」

「あなたは・・・・・・」

 

ミリアムは帝国正規軍情報局の、諜報員として。

そしてサラは元遊撃士、大陸全土に名を轟かせる武人の1人として。

特徴的な容姿と立ち振る舞いから、キリカの名を容易に連想することができていた。

 

キリカは真っ直ぐにアヤの元へと歩み寄り、足を止める。

身長はアヤが5リジュ程度上背な分、キリカが見上げる形で、両者の視線が重なった。

我に返ったアヤは慌てふためきながら、声にならない声を強引に捻り出す。

 

「あっ。そ、その・・・・・・わわ、私、どうして」

「フフ。間近で見ると、本当にそっくりね。口元がランさんによく似ているわ」

「ら、ラン?お母さんを、知ってるんですか?」

「勿論よ。私よりも10歳年上だったから、私にとっては姉のような存在だった」

 

ランが泰斗流の門下生となったのは、キリカに物心が付き始めた頃。

ランとの別れはその5年後。父からすべてを明かされたのが、更に12年後。

アヤの出生に纏わる真実を知る人間は、今となってはキリカ唯一人だけ。

 

キリカはアヤの左頬に右手をやり、指でそっと眼帯に触れる。

思わず身体がびくりと反応したが、アヤはすぐに、安堵を覚えた。

 

「ごめんなさい。私のせいで、こんなことに」

「そ、そんな。どうして、謝るんですか」

「私が犯した過ちが、大切な『妹』の光を奪ってしまった。悔やんでも、悔やみ切れないわ」

 

確かめるように、キリカの手がアヤの頬を撫で、体温が伝わっていく。

その仕草の全てがアヤにとっては愛おしく、寵愛の波が一挙に押し寄せる。

理屈を抜きにして、アヤは察した。無条件で信じることができる、絆があった。

 

「本当、に・・・・・・お姉ちゃん、なの?」

「あなたにそう呼んで貰える資格があるのか、私には分からないけれど・・・・・・ありがとう、アヤ。こんな日が来ることを、ずっと夢に見ていた」

 

陽だまりのような愛情を以って、キリカはアヤを抱いた。

アヤは目元に大粒の涙を浮かべ、キリカの胸元を濡らし始める。

止めどなく溢れ出る涙と感情を抑えようともせず、嗚咽交じりに泣いた。

 

「お姉、ちゃんっ・・・・・・!」

 

7年前の悲劇と別れ。そこから端を発した、孤独と絶望の日々。

過去の反動で、アヤは人一倍家族の愛情を渇望していた。

かつてアヤがエリゼに語った『血の繋がり』を、心の何処かで欲していた。

だからこそアヤは、一目でキリカとの絆を見い出すことができていた。

 

「事情は分からぬが・・・・・・あのようなアヤを見るのは、初めてだ」

「フフ、そうね。どちらかと言うと、今の方がはまり役かも」

 

2人を取り囲む者達も、確かな血の繋がりを感じていた。

容姿に共通点が見られることは、理由の1つに過ぎない。

子供のように泣きじゃくるアヤを抱くキリカの姿は、紛れもない姉として映っていた。

 

「初めまして、紫電のバレスタイン。お噂はかねがね伺っているわ」

「こちらこそ、泰斗の飛燕紅児さん。その、何て言ったらいいものか」

 

キリカはアヤを抱きながらサラへ声を掛け、続いて《Ⅶ組》の生徒らを見渡す。

 

「ごめんなさい。この場は私とアヤに任せて貰えないかしら」

 

キリカの申し出に対し、サラを含めた全員が戸惑いを覚える。

辛うじて理解できるのは、アヤとキリカを結ぶ血の繋がり。

キリカの立ち振る舞いから滲み出てくる、サラと同等かそれ以上の力量。

 

そして先程から、紫煙を吐いては煙草に火を点けるを繰り返す、痩せ狼。

三者の距離感から垣間見える、只ならない事情。

予想だにしない事実を抜きにしても、どう応えればいいものか、判断が付かなかった。

そんな中で口火を切ったのは、誰よりもアヤの身を案じていた、ガイウスだった。

 

「分かりました。アヤを、頼みます」

「・・・・・・ありがとう」

 

キリカはガイウスの答えに微笑みで返すと、ガイウスは一度頭を下げてから、歩を進めた。

 

「ここは2人に任せて、先へ進もう。時間も惜しいからな」

 

それを皮切りに、《Ⅶ組》がヴァルターを避けるようにして、奥部を目指し始める。

最後にサラが後に続き、中腹に残されたのはヴァルター、キリカとアヤ。

狼と姉妹は口を閉ざしたまま、視線を合わせようともしなかった。

 

____________________________________

 

《Ⅶ組》が奥部へ向かい、沈黙が始まってから数分後。

アヤは泣き腫らした目元を拭い、再度キリカの胸に頭を預けて、言った。

 

「お姉ちゃんは、私をどれぐらい知ってるの?」

「何でも知ってるわよ。姉妹だもの」

「あはは。でも私は、お姉ちゃんのことをよく知らない」

 

アヤの声色が変わり、僅かな戸惑いが表情に浮かんでいく。

 

「お母さんの過去も、お父さんの名前も知らない。何も知らない」

「今度ゆっくり聞かせてあげるわ。でも・・・・・・その前に、やるべきことが残ってる」

「うん。私だって同じだよ。前に進まないと、外のみんなに怒られるから」

 

やがて両者の身体が離れ、2人が纏う雰囲気が変貌する。

視線の先、5アージュ程前方では、ヴァルターが煙草の火種を足で踏み消していた。

間を置かず吸い続けていたことで、足元には無数の吸い殻が転がっていた。

 

「『何処へなりと消えればいいし、墜ちるのなら墜ちればいい』。覚えているかしら」

 

それはもう1年以上も前。紅蓮の塔の最上階で、キリカが吐き捨てた台詞だった。

当のヴァルターは答えない。代わりに胸元からシガーケースを取り出し、蓋を開ける。

中身は残り2本。ヴァルターは小さく舌打ちをした後、残り僅かな煙草を咥えた。

 

「今にして思えば、私は現実から目を逸らして、逃げているだけだった。自分の足で歩いてもいなかった。居心地の良さを求めて、流れ着いた果てに・・・・・・私は」

 

アヤの左眼部へと伸びたキリカの手を、アヤの両手が優しく包み込む。

お姉ちゃんのせいじゃない。そう言いたげなアヤの笑みが、キリカの胸を締め付けていく。

 

「だから、私はもう迷わない」

 

元遊撃士として。泰斗を継ぐ武人として。かつての恋仲として。

迷いを捨て過去と向き合い、唯一の肉親を己の手で守り抜く為にも。

活人の拳を鮮血に染め、結社という闇を落とし所とした男から、逃げる訳にはいかない。

 

「ヴァルター。あなたの牙は、今日この場で折らせて貰うわ」

 

キリカがジャケットの袖を捲り上げると、腰まで届く黒髪がざわめき出す。

真・龍神功。丹田より練り上げられた気流が光となり、全身に満ちていく。

両手には黒と紫の二色を基調とした、一対の偃月輪がそれぞれ握られていた。

 

「・・・・・・はああぁっ!!」

 

キリカに倣い、今度はアヤが真・月光翼を発動させる。

気流の扱いに秀でたアヤの気功術は、今日という日に完成形を成しつつあった。

アヤは特殊合金製の長巻を構え、微動だにしないヴァルターを見詰めながら言った。

 

「お姉ちゃん。1つだけ言わせて」

「何かしら」

「見る目が無いにも程があると思う」

「昔は違ったのよ。毛程の未練も無いけどね」

 

キリカとアヤが、それぞれ異なる苦笑を浮かべる。

 

「・・・・・・クク」

 

するとヴァルターが、笑った。

キリカが姿を現してから漸く発した声は、笑い声だった。

 

「ククッ・・・・・・アーハッハッハッハ!!がああああああああぁぁぁ―――――ッッ!!!」

 

軽快な笑い声は狼の咆哮へと変貌し、床面が揺れる。

狂気と闘気が入り混じった力の波動が、アヤとキリカの気流を乱していく。

 

既に4日間、睡眠らしい睡眠さえ取っていなかった。

人としての尊厳と誇り、安寧と怠惰の全てを捨て去った狼の牙が、姉妹へ向けられる。

 

「来るわよ、構えなさい!」

「了解っ!」

 

少女と武人。25年前の邂逅が生み出した、数奇な因縁。

その先に光を見い出す為に、姉妹は心を重ねた。

 

 

 

 

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「お姉ちゃん、その前に鼻血を拭いて」

「あら」

 

 

 

 


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