CCさくら×テイルズ ~カードを求めて異世界へ~ 作:あんだるしあ(活動終了)
とある日。レイアが住むアパートの部屋を、ツバサが訪ねた。
「いらっしゃい、ツバサ! 上がって」
「おじゃまします」
ツバサはいつも被っている赤いベレー帽を外して鞄に入れた。
レイアが席を勧めると、礼を言って椅子に座った。
亜麻色の髪がさらりと流れる。歳に似合わずツバサはあどけない。
「同じ女の子が部屋に遊びに来るなんて初めて」
「レイアちゃんはリーゼ・マクシアから出て来たのよね。こっちに来てからの友達は?」
「実はエレンピオスの女友達って一人しかいないんだ~。でもツバサはお姉さんで、ユノは妹って感じだなあ。女友達っていうのとは違うかも」
「ユノ?」
「編集長の娘さん。あのジャケット、ユノのプレゼントなの。すっごい元気な子」
「レイアちゃんが元気って言うなら、きっとすごく元気なんだろうね」
「うんっ。あの子が初めてだった。わたしの精霊術、怖がらないでいてくれたの――おっと。忘れるとこだった」
レイアは鞄から大きめのハードカバー本を出した。
「はい。イル・ファンで借りた『六家文書考察』。これでよかったよね?」
「ばっちり! わざわざごめんね、レイアちゃん」
「帰省のついでだから気にしないで。他にも困ったことあったら何でも言ってよ!」
「ありがとう」
ツバサは『六家文書考察』を鞄に入れて、レイアに向き直った。
「レイアちゃんこそ何か困ってるんじゃない? お仕事とか」
「……分かっちゃう?」
「分かるよ。レイアちゃんのことだもん」
ツバサは笑った。歳は1つしか変わらないはずなのに、こういう時のツバサはぐっとお姉さんらしく見える。だから、甘えたくなる。
「前に編集長にお遣い頼まれた時ね。相手の人、エレンピオス人だったんだけど、『病気になったらお祈りとかまじないで治すんだろ?』って言われて。リーゼ・マクシアにもお医者さんはいるし、そんなもので病気やケガを治すことなんてないのに。エレンピオスからはそう見られてるんだって知って……ちょっとびっくりしたというか」
「そう……辛かったね」
「いや、辛いってほどじゃ! なんかもやもやしてるだけで」
ツバサは腕組みをして考え込むしぐさを見せた。レイアは、そう真剣にならなくていい、と伝えようとしたが、その前にツバサは顔を上げた。
「逆に考えてみたらどうかな。レイアちゃんは、エレンピオスの人たちに自分をどう見てほしい?」
「どう、って。わたしたちもエレンピオスとそう変わらない生活してるし、技術は確かに遅れてるけど、そこまで原始的じゃないって分かってもらえたら、それで」
「それを伝える方法を、レイアちゃんは持ってるじゃない」
「――あ」
新聞記事。
そうだ、レイア・ロランドは新聞記者なのだ。主張は記事で叫べばいい。
「――心配かけてごめんね。もう大丈夫! 聞いてくれてありがと、ツバサ。がんばってみるよ」
「がんばりすぎて疲れちゃったら、いつでも言ってね。お話聞くくらいなら、わたしでもできるから」
「うん!」
ツバサは鞄を持って席を立った。
「そろそろお暇するね。本、ありがとう、レイアちゃん。またね」
「あ、わたしも出るよ! さっきの話聞いて、じっとしてらんなくなっちゃった」
「せっかくのお休みなのに」
「いいのいいの」
レイアはハンガーからいつものジャケットとキャスケットを取って着て、ツバサと揃って部屋を出た。
「レイアとの絡みを!」と感想板にあったので、やってみました。
歳を気にしないレイアなので、ツバサのほうをお姉さんらしく書くのはちょっと難しかったですね。