CCさくら×テイルズ ~カードを求めて異世界へ~ 作:あんだるしあ(活動終了)
ツバサはトリグラフの図書館に入るなり、開架図書の棚を手前から順繰りに一冊ずつ辿り始めた。
「『クルスニク年代記』、『クルスニク年代記』……」
「エレンピオス語が読めるのか」
「ちょこっとだけ勉強しました。まだ全然ですけど」
するとガイアスが踵を返した。
「反対側から探す。『クルスニク年代記』でよかったな?」
「はいっ。あ、ありがとうございます」
ガイアスがツバサから一番遠い書架に入って見えなくなった。
(アーストさんが手伝ってくれるんだ。わたしもがんばらなきゃ!)
1列目を、目を皿にして検めて、2列目の書架に移った。
その書架を4分の1ほど検めたところで、ツバサはお目当ての本を探し当てた。
(あった! 『クルスニク年代記』)
ツバサが手を取ろうとしたところで、本に――ピンク色の羽根が生えた。
「ほえ?」
本に生えた羽根はパタパタと羽ばたき、本ごと姿を消した。
「ほえええ!?」
(何今の! 本、どこ行っちゃったの!? てかあの羽根……羽、根……)
ツバサは目を閉じ、精神を研ぎ澄ました。
(さくらカードの気配?)
「どうした」
「ひゃ!?」
飛びのいた。さくらカードの気配を追うのに集中していたせいで、ガイアスの接近に全く気付かなかった。
「す、すみませんっ。えと、本、本は見つけたんですけど、カードの気配がして、本に羽根が生えてっ」
「……落ち着いて順を追って説明しろ。言いにくいならここを出る」
「ごめんなさい……」
ツバサはガイアスに連れられて図書館を出た。
すると図ったようにミュゼが舞い下りた。
「調べ物はもう終わり?」
「一時中断だ。――ツバサ、何があった」
ツバサは目当ての本を見つけたが、本に羽根が生えて目の前から消えたこと、その時にさくらカードの気配がしたことを、つっかえつっかえ説明した。
「多分、『
図書館の芝生の上に、一冊の本。
ツバサは慌てて駆け寄って本を掴もうとしたが、寸前で本にピンク色の羽根が生えて、本はその場から消えた。ツバサはスライディングして顔面を擦った。
次に本が移動したのは、図書館出入口のアーチの上だった。
これはミュゼが飛んで本を取ろうとしたが、再び寸前で本は消えた。
別の屋根に移った本をミュゼが追った時も同様に逃げられた。
「本当にすばしっこいのね」
常と変わらないミュゼの口調に、ツバサは何故か背筋が粟立った。
次に本が現れたのは街路樹の上だった。
ツバサは急いで駆け寄り、街路樹の添え木に登って枝の上の本を取ろうとしたが、これまた逃げられた。しかもすぐ足下に。
飛び降りて手を伸ばしたが、手が本を掴むことはなかった。
次はどこに。ミュゼと揃って辺りを油断なく見回していた時だった。
ガイアスが動いた。何もないはずの道へと歩いて行き。
ばしっ
「「あっ」」
「こいつか」
ガイアスの手には大サイズのハードカバー本。
(お母様がやったみたいに、次の出現地点を読んだんだ! アーストさん、すごすぎだよ!)
「手こずらせてくれちゃって。さあどう料理してあげようかしら」
ふふふ、とミュゼが口元に手をやって優雅に、恐ろしく、笑った。
本気で「
ツバサは急いでペンダントトップを外し、星の長杖を
「汝のあるべき姿に戻れ! さくらカード!」
本に生えていた羽根が魔力へとほどけ、杖の星モチーフの先端に桜色のカードの形を成していく。
完全にさくらカードに戻った「
「……『要するは五つの標と光の架け橋』」
「アーストさん?」
ガイアスは無言で、開いたページをそのままツバサに差し出した。
「『旅路は隔世の器に阻まれ、越えること能わず。わずかに分かれた枝に希望をつなぐ』――分かれた枝って、分史世界のことでしょうか」
「隔世の器はきっと
横からミュゼが書を覗き込んだ。
「マクスウェル様がリーゼ・マクシアを閉ざされたから、まずリーゼ・マクシアと繋がった分史世界を探して“道標”を持ち帰らなきゃいけなかったってとこかしら」
「この光の架け橋って何のことでしょう? 他のは分かりやすいのに、どうしてこれだけこんなに抽象的な書き方なの……?」
「カナンの地に辿り着くまでの架け橋、か。どんなものか追って調べたほうがよさそうだ」
「はい。わたしもそう思います」
ツバサは書を閉じて胸に抱き、踵を返した。
「これ、図書館でちゃんと貸出手続きしてきます。勝手に持ち出したら犯罪になっちゃう」
ツバサたちのほうがほんの少しだけ早く「橋」の真実に辿り着きそうなフラグが立ちました。
ここで「移」の行く先を予見できるとしたらガイアスしかいないっしょう!
ところで、さくらカードって分史世界にもあったほうがいいんでしょうか? それとも正史世界のみにあったほうがいいんでしょうか? ちょっと悩み中の作者です。