CCさくら×テイルズ ~カードを求めて異世界へ~ 作:あんだるしあ(活動終了)
「見つけたぁ……」
レディレイクを出て南西にあるガラハド遺跡の奥。コタローは長く息を吐いてその祭壇の前に座り込んだ。
羅針盤の光の線は、まっすぐに、祭壇に置かれた弓――正確には、その弓を持つ少女に向かっている。
「探したよ、『
コタローが「
「傷つけたくなかったんだけどなあ」
コタローはコートの内ポケットから2枚のカードと、丸いキーホルダーを出した。
「星の力を秘めし鈴よ。真の姿を我の前に示せ。契約の下、虎太郎が命じる。
かつては「月の鈴」と呼ばれていたそれを、母の属性である「星」に造り変えた、虎太郎専用の魔法の杖だ。
「我に纏い我と共に戦え。『
使い手のあらゆる力を増強するカードと、使い手を闘士へ変えるカードが、同時にコタローを包み込んだ。
コタローにはかの女師匠直伝の拳法がある。だが、カードの攻撃力と防御力はその上を行く。
剣も攻撃魔法も持たないコタローには、自ら戦うしかカードを鎮める手段がないのだ。
「
コタローは矢の軌道を読み、全ての矢を躱した。
躱して、気づいた。床に突き刺さる矢が、尽く凍っていたのだ。
(氷の矢? 『
看破したコタローは、慌てず構え直した。「
再び氷の矢が放たれ、分裂してコタローへ襲いかかる。
コタローは、今度は矢を避けず、真正面から正拳突きで打ち砕いた。
「
もしこれが魔力の矢ならコタローは避けるしかなかったが、物質の矢ならば、「
少しずつ、じわじわと、氷の矢を拳で砕き、蹴り落としながら、「
「っ、汝の、あるべき……」
あと3歩。徐々に氷の矢が体の端々を傷つけていく。
「……姿に戻れっ」
あと2歩。「
「さくら――カードッッ!!」
あと1歩。コタローは星の鈴を「
弓を持つ少女の姿が魔力へと還元され、鈴の前にカードの形を象っていく。
やがて1枚の桜色のカードになったそれは、コタローの手にふわりと収まった。
(母上。母上のトモダチ、また一人、取り戻せたよ)
がらん。大きな音を立て、巨大な青い弓が床に落ちた。
(このまま放っとくのも寝覚め悪いし。戻しておくか)
コタローが巨大な弓を拾い上げ、祭壇に上がった時だった。
「コタロー?」
するはずのない声に、コタローは勢いよくふり返った。
アリーシャと、導師スレイが入って来たところだった。
「アリー! 何でここに」
「コタローこそ! てっきりレディレイクにいるものとばかり……どうしたんだ!? 傷だらけじゃないか!」
アリーシャは駆け寄り、胸に拳を当てて顔を歪めた。
「ちょっとカードとやり合っただけ。これがそのカード」
コタローは「
「とにかく傷の手当てをしないと」
「い、いいよ。このくらい」
「『このくらい』じゃないから言ってるんだ!」
「あのー、ちょっといいかな」
スレイが恐る恐るというふうに手を挙げた。
「ライラが、オレが神依化すれば、コタローの怪我、一気に治せるって。オレに任せてもらっていい?」
「ライラ様が?」
「そこに天族がいるんですか」
いるよ、と朗らかにスレイは応えるものの、コタローの視界にはアリーシャとスレイしかいない。いないモノに治療を任せるのは躊躇われた。
「いいですって、本当に。それに、そういう存在に一度頼ったら、後から対価が怖いですから」
「ライラは対価なんて求めないと思うけどなあ」
「すいません。おれのいたとこでは、それが常識なんです」
恩恵には、相応の対価を。貰いすぎても与えすぎてもいけない。魔術師の鉄則だ。
「それより、アリーはここに何しに?」
「あ、ああ。実は――」
アリーシャの説明に納得する。地の主。器。祀り人。この世界はこの世界で、ややこしいシステムがあるらしい。
「導師さん。おれも一緒に行っていいですか?」
「いいけど、どうして?」
「アリーがいるから。アリーの手伝いしたいんです」
スレイはアリーシャを顧みる。
「って言ってるけど。アリーシャはそれでいい?」
「……無茶してこれ以上、怪我を増やさないって約束してくれるなら」
約束はできない。アリーシャが危険な目に遭えば、おそらく自分は我が身を盾に彼女を庇う。なので。
「善処します」
日本での「いいえ」の定型句を、真剣に自分を見上げるアリーシャへの返答とした。
水の神器の弓+「矢」=氷の矢
……安直だと責めてくださって結構です。作者の頭ではこれが精一杯でした。
これのために久々にCCさくら劇場版を観ました。
さくら可愛い=可愛いは正義=さくらちゃんマジ正義
これについては譲りません。
追記。
「矢」を「弓」と間違えていました。修正しました。