CCさくら×テイルズ ~カードを求めて異世界へ~ 作:あんだるしあ(活動終了)
「それにしても、派手に壊してくれちゃって。修理費、予算で落ちるかな」
バランが壊れた資料室のドアの残骸を一つ持ち上げた。
「ご、ごめんなさい。弁償します。すぐには無理ですけど、がんばってお金稼いできます」
「俺としては、弁償代わりにさっきの現象の詳細な説明が聞きたいかな。あれ、精霊術でも
「分かるんですか!?」
「こういう研究続けてれば何となくはね」
ジュードはマキとファイルを数冊ずつ持って廊下に出た。
「バランさん。ツバサ、困ってますよ。これで資料も揃いましたし、新しい実験できますね。――ツバサのおかげだよ。ありがとう」
礼を言うと、ツバサは顔を真っ赤にして、星の長杖を握ったまま「はぅ~」と縮こまった。
小動物、とジュードだけでなくバランもマキもローエンも思ったことを、ジュードは知らない。
「ああ、そうだ。そのことで言うの忘れてた」
バランはぽん、と手を叩いた。
「その実験で使う精霊の化石。仕入れができなかったんだよね」
ツバサはジュードに付いてマクスバードのシャウルーザ越溝橋――初めてつばさが降り立ったエレンピオスの地に来た。
「ほええ。前より橋っぽくなってる! あ、お店始まってる!」
「日々建設が続いてるからね。でも、この熱気はちょっとすごいや。えーと、精霊の化石の取引は……」
――バランの難しい話はさて置き、その「精霊の化石」が必要で、ここに買付に来なければいけなくなったと聞いた時、ツバサの好奇心がうずいた。
ガイアスとローエンと初めて会った日は物寂しい無人のアーケードだったこの場所が、どう変わったかを見たくなった。
その結果がこれだ。
賑わうストリート。相手国の売る品に興味を持ち、褒める客。
「――ジュード君」
「なに?」
「何かヤなことあった? 難しい顔してる」
「そんなことないよ。どうして?」
「分かるよ。ジュード君のことだもん」
ジュードは軽く目を瞠り、照れ笑いで頬を指で掻いた。
「ツバサって大人っぽい」
「まだわたし、17歳だよ。全然コドモだよ」
「え!? ツバサ、年上なの? ごめん、勝手に同い年かと思ってた」
「ジュード君は何歳なの?」
「16」
「ほええ!? 18、9かと思ってた」
そんなおしゃべりを続けていれば、少年少女が注意散漫になるのも仕方がないことで。
結局ツバサらは精霊の化石の取引をしている商人を見つけられないまま、橋を渡り切ってしまい、引き返すはめになった。
行った時と引き返した時で、大きく異なる点があった。
ストリートに大勢の人だかりが出来ていたのだ。
「どうしたんですか?」
「アルクノアが出たってよ」
「あるくのあ?」
「簡単に言うとテロ組織みたいなもの。ツバサはここにいて。様子見てくるから」
「テロの現場に男の子が一人で飛び込むもんじゃありませんっ。わたしも行くからね」
こういう分かりやすい年下扱いが、ジュードには新鮮だった。
ツバサと二人、人だかりを抜けて空白地帯に出て、ジュードはあんぐりと口を開けた。
「何してんの、アルヴィン! ユルゲンスさんまで」
「お、ジュード。何ていいところに。なあ、俺ってそんなにガキに見える?」
「何言ってるの! アルクノアがいるって、まさか」
「ちげーよ。つーか俺にも収拾がつかなくてよ」
ふとアルヴィンの視線がツバサに向かった。視線を受けたツバサはきょとんとした。
「「知り合い?」」
彼らは互いを指差し合い、同時にジュードに尋ねた。……脱力した。物凄く。
「もうテロに怯えるのはこりごりだ! エレンピオス人はそいつらを連れてまとめて出てけ!」
まさに自己紹介が始めようとした瞬間、群衆からそんな声が上がった。
どよ、どよ、どよ。
「な、なんかまずい感じだよ」
小さな口さがない言葉が次第に大きくなり、互いの国へのシュプレヒコールへと変わっていった。
ジュードは警備隊を呼びに行こうと駆け出したのだが、人だかりの最前列の一人がジュードを突き飛ばしたせいで、その場に尻餅を突いた。
「ジュード君! ――何するんですか!」
ツバサがジュードの横にしゃがみ、ジュードを突き飛ばした人間を強く見据えた。
「お前らは何だ、どっちの味方なんだ! そんな格好してるが、さてはお前ら、リーゼ・マクシア人か!」
「こんな時に、あっちもどっちもないでしょう! ここはリーゼ・マクシアとエレンピオスが仲良くするための場所じゃないんですか!?」
パァァン!!
シャウルーザ越溝橋のガラス屋根が割れ、破片が降り注いだ。
ジュードはとっさに白衣を開き、ツバサがガラスの破片を浴びないよう被せた。
橋全体が振動し、露店そのものや荷がびりびりと震える。
「リーゼ・マクシアは和平なんて望んでなかったんだ! エレンピオスを守れーッ!」
お分かりの方もいらっしゃるかもしれませんが、今回はTOX2スピンアウト漫画「双極のクロスロード」ネタです。
歳が分かってからすっかりお姉さん気分のツバサでした。