CCさくら×テイルズ ~カードを求めて異世界へ~ 作:あんだるしあ(活動終了)
虎太郎には双子の兄がいる。
双子といっても二卵性双生児だから、あまり似てはいない。顔立ちも体格も――魔法の才能も。
兄は父母の、特に父の才能をよく受け継ぎ、李家の魔法はもちろん、イギリスの不世出の魔術師に師事し、西洋魔法も修めていた。
『コタ兄はお母様のお腹のなかでシュー兄に才能吸い取られちゃったんじゃない?』
妹の何気ない言葉さえ、虎太郎の胸を抉った。
虎太郎には魔力がない。
正確には、魔力はあるが、それは一般人程度。さくらカードを使ってようやく並みの魔術師に追いつけるかというほどだ。
だから、本当は嬉しかった。
母が「トモダチ」とまで呼んだカードを散逸させた反省以上に、カードを連れ帰るという「魔法使いらしいこと」をさせてもらえることが、嬉しくて堪らなかったのだ。
…
……
…………
祭壇の炎が光り、黒から緋に戻った。
スレイは聖剣を片手に、もう片方の腕に男を抱え、見上げる虎太郎たちに対して苦笑した。
過程はよく分からないが、スレイという青年が聖堂の火事を治め、憑魔とかいう化物から人一人を救ったことは理解できた。
隣で、信じられないという様子で、けれど若草色の目を輝かせるアリーシャ。
「スレイ、本当に?」
「うん。オレ、導師になったよ」
今やアリーシャの視界にはスレイしかいない。
(おれのが先にアリーシャと友達になったのに)
今にも聖堂内の民衆から拍手と歓声が上がる、そんな時だった。
「静まれ! 鎮まれい!」
衛兵を従えた、いかにも悪者顔の老人が聖堂へ入って来た。マルトランが「バルトロ大臣……」と呟いたことで、コタローはこのジジイがアリーシャを苦しめる一人だと知ることができた。
「アリーシャ殿下。暴動が起きたと報告がありましたが」
「ええ。ですが、もう収束しました。導師の出現によって」
「なんですと?」
間があった。
アリーシャは誇らしげに。バルトロは苦々しげに。
バルトロは民衆を聖堂から追い出し、自分も衛兵を連れて出て行った。途中で舌打ちしたのを、虎太郎は聞き逃さなかった。
「スレイ!?」
ふり返ったアリーシャが一目散に檀上に駆け上がった。
見れば、スレイは両手両膝を突いて、苦しげな呼吸をくり返している。
コタローもアリーシャを追って壇上に上がり、スレイの額に手を当てた。熱がある。
(
「やば……もう、ダメ」
「スレイ!? 大丈夫なのか!?」
「大丈夫くない……ちょっと、3日ほど寝込む、ね」
その台詞を最後に、スレイは倒れた。ちょうどアリーシャを膝枕にする格好で。
――もしこれでアリーシャが困っていれば、コタローは即座にスレイをアリーシャから引き剥がしただろう。だが、アリーシャの顔に驚きはあっても、困った色はなかった。それがコタローの行動を止めた。
「アリーシャ」
「っ、マルトラン
しゃがむコタローと、膝枕のせいで座り込まざるをえないアリーシャを、上からマルトランが覗き込んでいた。
「新たな導師殿は具合が悪そうだが、そのままで大丈夫なのか」
「はい、あ、いえっ、よくない、です! どこかで休ませないと」
とはいえ、膝をスレイに貸しているアリーシャは動けない。というより、アリーシャはスレイとこのままでいたいと思っているように見えた。
コタローは立ち上がって階段を降りた。
「コタロー?」
「適当な宿を押さえてくるよ。導師さんが休めるように。アリーは膝枕、もうちょっとがんばって」
「! コタロー!」
赤くなるアリーシャに心から笑いかけ、コタローは聖堂を出た。
スレイが寝込んでいた間、アリーシャは、そしてコタローは何をしていたか。
全力で脳みそ絞って考えますのでしばしお待ちください<(_ _)>