CCさくら×テイルズ ~カードを求めて異世界へ~ 作:あんだるしあ(活動終了)
「アリーシャ。ミクリオたち、視える?」
アリーシャはスレイの左右や後ろを見た。誰もいなかった。
わかっていたとはいえ悲しく、首を横に振るだけで答えた。
「――神依は」
コタローがぽつりと零した。
「ロゼさんだとできたんでしょう? 従士契約なしで。今ならアリーもできるかもしれないんじゃないですか?」
スレイが誰もいない空間を見上げた。そして、アリーシャに向き直った。
「ライラがやってみようって言ってくれた。真名は覚えてる?」
「ああ。忘れるものか」
アリーシャはスレイに手を引かれて立ち上がり、スレイらから少し離れた位置に立った。
「――『フォエス=メイマ』」
自身の姿が造り変わる。麦穂色のサイドテールが金に染まって伸び、瞳は若草色から赤へ。衣は白と緋色のドレスへ。手には燃え盛る聖剣。
「……できた」
ライラと神依化した自身の体を、アリーシャは頬を紅潮させて見回した。
「やった! やったよ、コタロー!」
「うん! すごいよ、アリー!」
コタローと手の平を重ね合わせ、繋ぎ合って飛び跳ねた。
『アリーシャさん、聞こえますか?』
「はい! ライラ様のお声、私、聞こえます!」
アリーシャはコタローと手を離し、スレイの横に歩み寄った。
「ミクリオ様。エドナ様。――視える。私、視えてる。視えてる!」
『入れ替わったことで、ロゼさんの中身がアリーシャさんの中の素質に影響を及ぼしたのでしょうね。でも天族を認識する段階を飛ばして、神依だけができるなんて。こんなこと初めて。驚きですわ』
すると神依が解除された。とたんにアリーシャの視界から、ミクリオとエドナが消えた。
「――――。天族とコンタクトできるのは、神依化してる間だけみたいだって、ライラが」
スレイがライラの言葉を通訳してくれた。
「そう、か。まだまだなんだな」
「でも、これでアリーシャも、限定的にでもみんながわかるようになったんだ。ライラ、アリーシャとの従士契約、復活させてもいいよな?」
胸に手を当てた。少しずつ拍動が落ち着いていくのを感じた。
「いや、まだダメだ」
「どうして!」
スレイがアリーシャに詰め寄った。スレイの迫力に、ついアリーシャは一歩下がった。
「神依の恩恵がなければ、天族の方々を認識すらできない。これじゃあまたスレイに契約の代償を負わせてしまうかもしれない」
「一理あるわね。今の神依も、入れ替わってる間にデゼルがアリーシャの体に憑いてたから。今後も同じことができるとは限らない」
「はい、エドナ様。――スレイ、君の気持ちはすごく嬉しい。でも私はまだ力を付けなければならない」
スレイが弱り切った顔で後ろをふり向き、間を置いて悄然とした。
「じゃあ、またお別れ、なんだな」
俯くスレイに対し、アリーシャは笑んでみせた。
「君の窮地に間に合ってよかった。本当に、よかったと思ってる。どうか良い旅を。スレイ」
「……うん。ありがとう、アリーシャ」
アリーシャはスレイと握手を交わした。
マーリンドで別れた時よりは希望があるから、寂しさは感じなかった。
梯子を登って先に地上へ戻るアリーシャとコタローを見送ってから――スレイはがっくりとしゃがみ込んだ。
「スレイっ?」
「オレ、強くなりたい。もっと早く」
膝を抱えて、ふて腐れた子供のような格好をしている自分は、本当に情けない。
「今度はオレがアリーシャを守れるように。アリーシャと一日でも早く、一緒に旅できるように」
心配する空気が消えた。ミクリオとライラが苦笑し、エドナは付き合い切れないとばかりに傘を開いて背を向けた。
「なれるさ。君なら」
「ええ。信じて進み続ければ、その道がアリーシャさんと交わる日も来るでしょう」
「進み続けられたら、の話だけど」
ここでエドナとミクリオが軽い言い合いをした。ライラはいつもの顔でにこにこしている。
スレイもまた、自然と笑みを浮かべていた。
スレイのほうも徐々にアリーシャと一緒にいたい気持ちが強まっています。しめしめ。むふふ。
アリーシャ神依化についてはご都合設定満載なのでツッコまないでいただけると有難いです<(_ _)>