CCさくら×テイルズ ~カードを求めて異世界へ~ 作:あんだるしあ(活動終了)
結局、入れ替わったアリーシャとロゼが元に戻るまで、という条件で、コタローらは暗殺ギルド「風の骨」への滞在を許された。
それを言ったのがアリーシャの体のロゼだったので、かなり違和感に悩まされたが。
そして、ロゼの体のアリーシャは、まさにスレイの座るベッドの隣に座っている。
「すまない。迷惑をかけてしまって」
暗殺ギルドのコスチューム。赤毛。空色の瞳。声。何もかもがアリーシャ本来と違う。
「いいよ。アリーは『
「そ、それは困る」
「そうだよ、困る!」
「……導師さんが困る理由の心当たりがないんですが」
「と、とにかく! 1日経ったら戻るんだよな?」
「はい。『
「抱き合うって何それオレ聞いてない」
「導師さん、落ち着いて。女の子同士です」
くすくす。明るい少女の笑い声がして、コタローもスレイもそちらを向く。ロゼが、否、アリーシャが笑った声だった。
「あ、すまない、つい」
「……まあ、いっか。ところでさ、アリーシャもコタローも、どうしてあの時、戦場にいたんだ? 捕まったって聞いてたのに」
コタローはアリーシャと顔を見合わせた。
「長くなりますよ。端折れるとこ、ほぼないですから」
「いい。聞かせてくれ」
コタローは「その時」の様子を回想しながら語り始めた。
「
だが、レディレイクの地に足を踏み入れることは叶わなかった。
都へ続く大橋の上に、ずらりと兵士が並んで、進入を拒んだのだ。
「これは何の真似だ」
一番前にいた兵士が、紙を出してそれを読み上げた。
「アリーシャ殿下。導師を利用した国政への悪評の流布と、ローランス帝国の進軍を手引きした疑いにより、御身を拘束いたします」
愕然として言葉もないアリーシャは、怒って、怒って――ふうっと突き抜けた。
(スレイを使用した? ローランスを手引きした? バルトロも、よくもまあそこまででっち上げたものだ。そんなに私が憎いか。そんなに私が目障りか)
「いいだろう。拘束でも逮捕でもすればいい。どうせ何も出てきやしないんだから」
いつもの自分とは思えない、刺々しい声が出た。きっと目つきも過去最高に悪い。
(ああ。こんな騎士らしくない態度じゃ、きっとマルトラン
兵士が両脇を固めて、槍をアリーシャの前で交差させた。罪人を連行するやり方だ。
アリーシャが兵士に連れて行かれようとした、まさにその時だった。
「待ってください! 連れて行くならおれも連れて行ってください!」
兵士に制止されてもがきながらも、コタローははっきりそう言ったのだ。
「おれは彼女の私的な友人です。何度も密会しました。容疑としては充分でしょう? おれは、彼女から、絶対、離れない!!」
兵士の一人が、業を煮やしてか、鎧を着けた手でコタローの頭を殴った。コタローは抵抗を失い、橋の上に倒れ伏した。
「コタローっっ!!」
アリーシャの中で突き抜けた怒りが復活し、何かが切れた。
持っていた槍を振り回し、兵士を追い払う。懐から「
「吹き荒べ! 『
カードから白い雪女が現れ、アリーシャを中心に吹雪が巻いた。兵士らが吹き飛ばされ、中には橋の手摺にぶつかった者もいた。
アリーシャはそれらを避けて走り、コタローを助け起こした。
「彼に……私の友に何かしてみろ!」
アリーシャは兵士が落とした剣を首筋に当てた。
「この場で死んでやる」
苛烈に兵士らを見据えれば、兵士らはどれもがたじろいでいた。
彼らが受けた命令は「処刑」ではなく「連行」だ。連行対象であるアリーシャが同国の兵に殺されたように見せかければ、少なからずバルトロの立場も悪くなるだろう。
「さあ、どうなんだ!!」
「わ、わかりました! その小ぞ……いえ、少年も、アリーシャ殿下ともども連行させていただきます!」
「そこでおれとアリーは牢屋行き。二人一緒で身体検査もされなかったのが功を奏しましたね。おかげで
コタローが目を覚ましたのは薄暗い牢の中だった。
「う……」
「大丈夫?」
不安げにコタローを見下ろすアリーシャを、これ以上不安がらせたくなかった。
「ってぇ~。これ絶対たんこぶ出来たって」
コタローは頭を押さえながら起き上がった。両手を開き握り、立ち上がって足を曲げ伸ばし。
「うん。他は異常なし」
「よかった」
「うん。――アリー、兵隊に何か言われた? それともあのジジイでも来た?」
「何で、そんなこと」
「顔見ればわかるよ。で、どうなの?」
アリーシャは憂い深く、顔を背けた。
「スレイを、ローランスとの戦争に出すと言っていた。ハイランドを勝たせなければ私を拘束し続けるという名目で」
「人質――?」
「有体に言えば。――せっかく離れたのに、また私はスレイに迷惑をかけるのか」
ぽつ、ぽつ。
笑顔なのに、アリーシャの目からはとめどなく雫が落ちた。
「泣いてる場合じゃないな」
アリーシャは手の甲でぐしぐしと両目の滴を拭った。
「スレイを助けないと」
「『
そこでコタローは顔を上げた。
「――さくらカードの気配だ」
驚くアリーシャの前で、コタローは羅針盤を展開した。
羅針盤の光の線は、牢の中の壁を指している。
コタローは並べたさくらカードの内、「
「ふ――はっ!」
「
石の壁にひびが入り、一部の石が崩れて落ちた。
壁の中に、カードは埋まっていた。「
「こんなところにあったなんて――」
コタローはそっと「
(たまたまおれたちが入れられた牢の中で、さくらカードでも使わなきゃ取れない壁の中にあった。これは偶然? いや、ここまで揃ったら、必然なのかもしれない。このカードで導師さんを助けろっていう、必然。ならその必然を誰に託すか)
コタローはアリーシャをふり返り、「
「私に?」
「おれには『
アリーシャは戸惑い気味に「
ぱん! コタローは自分の手の平に拳を打ち込んだ。
「それじゃあこの檻から出るとするか」
xxxHolicの名台詞ですね。「この世に偶然はない、あるのは必然だけ」。結構好きな台詞です。
姫君なのに牢に入れられても心配するのは導師様のこと。
従士反動の話が出るまでは王道を突っ走ってたはずなのに、原作はどうしてああなったorz