CCさくら×テイルズ ~カードを求めて異世界へ~ 作:あんだるしあ(活動終了)
ドラゴンパピーの浄化に成功したことで、コタローには再び誰もいない視界がもたらされた。
誰もいない空間に話しかけるスレイ。するとアリーシャが進み出て、騎士の礼を取った。
「ロハン様。ハイランド王国王女、アリーシャ・ディフダと申します。あなたを憑魔にしてしまった責は、人心を荒廃させた私たち、ハイランド王室にあります」
アリーシャは何も悪くないのに、ただ王室の一員だからという理由で、自分さえ非難の対象に加える。
見ていて息苦しかったが、何も言えなかった。
「ですが、必ず立て直してみせます。罰が必要なら、私が受けます。ですから、どうか今一度だけ加護をお与えください」
少しの間を置いて、アリーシャが肯いた。
「スレイの従士にしてもらいましたから」
その一言で、スレイを取り巻く何かが揺らいだ。それが何かまでは、コタローにも分からなかったが。
また間を置いた。
「ありがとうございます!」
アリーシャが立ち上がった。礼を言ったということは、加護は了承してもらえたのだろう。
「やったね、アリー」
「うん。みんなのおかげだ」
「アリーのおかげも忘れちゃだめだよ」
そこでアリーシャが大樹を向いて険しい顔をした。
「どうかした?」
「まだ憑魔がいるらしい。そのせいで領域を張っても、憑魔の侵入を止められないと」
ふとスレイが立ち眩みを起こしたようにふらりとした。
「スレイ!」
「平気平気。ちょっと立ち眩んじゃった。――――。エドナとライラが宿で休めって」
「下手な考え休むに似たり、ですね。宿がやってるかわかりませんけど、行ってみましょうか」
「私もそうしたほうがいいと思う。ハウンドドッグからドラゴンパピーまで、ずっと戦い通しだったんだから」
翌日。追加の薬を届けにきた「セキレイの羽」によって、コタローらは傭兵団に街を守ってもらうという妙案を思いつくことができた。
さっそくコタローらは傭兵団がいるという場所へ向かったのだが。
スレイが出て「木立の傭兵団」の団長ルーカスにマーリンドの警護を頼むが、ルーカスの答えはすっぱりとNOだった。
「俺たちを利用して、美味しいところを独り占めしようって腹なんじゃ?」
「そんなことはしない!」
スレイより先にアリーシャが反論した。
「口で言われてもなあ」
「対価で示せってことですか」
「そっちのガキのほうがわかってるねえ。5000ガルドだ。そしたら警護してやってもいい」
「――導師さん、持ってますか?」
スレイは一度ルーカスに背を向け、財布の中身を数えてからふり返った。そして、財布を丸ごとルーカスに差し出した。
「へえ……思ってた導師と違うな。ちょっとは信用できそうだ」
「金を出せば信用するのか」
「じゃあよ。何で動いたらご満足なんだ?」
コタローはアリーシャと顔を見合わせ。
「使命感や義侠心だ」
「あと、愛とか正義とか」
割と真剣に考えて答えたのだが、ルーカスには笑われた。
「俺の部下が疫病で死んだとしてだ。そんなもんが残された身内を世話してくれるんか? 一生?」
「そ、それは」
「だが、金があれば報いてやることができる。俺は部下たちとそう契約してる。だから奴らは命懸けで戦えるんだ」
コタローはアリーシャともども歯噛みして俯いた。
今回はスレイが報酬を持ってくれたからいいが、目の前で苦しんでいる人々がいてそれでも金銭を求める感覚が、コタローには理解できなかった。
コタ君もまだまだ若い子ですからね。愛と正義を信じたいお年頃なんですよ。
これがコタローやスレイなら、きっと対価がなくても、体が先に動いちゃうんでしょうけどね。