CCさくら×テイルズ ~カードを求めて異世界へ~ 作:あんだるしあ(活動終了)
ホーニャンが自室から出て来なくなって、今日で3日目になる。
ケルベロスはアンジュの立つクエストカウンタの隅に座って、ホーニャンの部屋に行ったカイウスとイリアを待っていた。
ケルベロス自身がホーニャンを訪ねない、そもそも部屋の中でホーニャンのそばに付いていないのはのはなぜか?
今のホーニャンに他者がよけいな口出しをしては、ホーニャンがそれに縋って己の意思を投げ出してしまうからだ。厳しいが、ホーニャン自身が決めねばならない。
「まさか、ホーニャンがディセンダーだったなんて……」
――ディセンダーの役割を担うか否か、を。
「困っとるんはホーニャン本人もや。魔法使いやゆうても、あの子はまだ幼い。心も体も」
「そうよね……一番戸惑っているのは、あの子のほうよね」
船倉からカイウスとイリアが上がってきた。
「どないやった?」
イリアのほうが溜息をついて、ランチボックスを開けた。中には、ロックスとリリスが丹精込めて作ったおにぎりとサンドイッチを詰めてあったのだが、それらは綺麗に無くなっていた。中にはメモが一枚。
“ごちそうさまでした”
部屋から出ようとしないホーニャンに食事を差し入れるようになってから、必ずランチボックスに入っているメモだ。
「――オレたちと同じでメシもこうして普通に食うし、あんなふうに悩んだりするし、とりたてて違う所なんてないのになあ」
「いーや、あるわよ」
イリアの否定には力と熱がこもっていた。
「だってあの子、生物変化を起こしたジョアンたちを元に戻したでしょ。あれがディセンダーの力なのよっ。もしかしたら、これからどんな災厄が訪れるのか知ってたりとか、ラザリスの正体も知ってたりして!」
「“暁の従者”の人たちも、ホーニャンは……」
「せやけど記憶は? この世界の伝承やと、ディセンダーは世界樹から生まれたてホヤホヤやさかい記憶がないんやろ?」
「あ、そう、よね。ラザリスの誤解って線も考えられなくはないのよね……うーん。何だかこんがらがってきたなあ」
「――あたしはむしろ、さくらカードがソウルアルケミーを起こせるほどの触媒だってことのが重要だと思うわよ」
エントランスにふらっと顔を出したのは、リタだ。
「あら、リタ。エミル君は? 一緒じゃなかったの?」
「エミルならリヒターを部屋に案内しに行ったわよ。それより、セルシウスから聞いたことを伝えにきたわ。創世の時、
――アドリビトムもホーニャンの様子だけを気に懸けているわけにはいかなかった。
彼らはラザリスの情報を掴むべく、“精霊”を捜索した。
この3日間で、キールがしいなの資料から精霊の所在地を特定し、カイウスとエミルがアブソール霊山へ赴き、氷の精霊セルシウスとその契約者のリヒターをどうにか艦へ連れてきた。
「ありがとう。聞かせてちょうだい。――ケルベロスは? 一緒に聞く?」
「聞くわ。ホーニャンがこの世界で“ディセンダー”せなあかんのか、本物のディセンダーは他におって、ホーニャンはたまたま状況に噛み合うカードを持っとっただけか。どちらなんかによって、わいもどないするか決めなあかんからな」
ホーニャンは自室のベッドの上で布団を頭からかぶり、灯りも点けずに丸まっていた。
ディセンダー。
その呼称が、何度沈めても頭に浮かんでくる。何度心から締め出しても胸に迫ってくる。
李
(ディセンダーなんて、ラザリスの勘違いよ。そうに決まってる。生物変化現象もソウルアルケミーもたまたま、さくらカードの相性がよかっただけよ)
そう何度も否定して――
あの日のアンジュとジェイドの、信じられないものを見るような視線。もう何度目かのフラッシュバック。
仮定する。もしカノンノやみんなにあんなふうに見られたら――
怖くて、がんじがらめで、部屋の外へ一歩だって踏み出せなかった。
(もう、我慢、できない)
ホーニャンはレッグホルダーから
――午前0時。ホーニャン・リーがバンエルティア号から姿を消した。