CCさくら×テイルズ ~カードを求めて異世界へ~ 作:あんだるしあ(活動終了)
今日、ライマ国という中小王国の王女とその同行者2名が、アドリビトムを訪ねてきた。
「エステル姫さんの時思い出すなあ」
「ねー」
話を聞く場に同席していい、とアンジュが言ったので、ホーニャンはケルベロスともども、その訪問者――ナタリア、ジェイド、ティアの事情を聞く場に向かった。
「っと、この部屋だ。――失礼しまーす」
ドアを開ければ、アンジュと、ホールでちらりと見ただけの3人の男女。女性二人の年齢は兄姉たちと変わらないと思われるのに、兄姉たちよりずっと大人びていた。
「――で暴動が起こりましてね。“暁の従者”という宗教団体の扇動によるものです」
「暁の従者!」
「あのディセンダーもどき奪ってった連中かいな」
――少し前にティトレイ、メルディと行ったクエストで、ホーニャンたちは赤い煙を発見した。いや、その時の「それ」は煙ではなく、人体模型をのっぺりしたようなヒト型を取っていた。
ホーニャンたちは赤いヒトガタを連れ帰ろうとしたのだが、赤いヒトガタをディセンダーだと思い込んだ“暁の従者”に邪魔された。
入ってすぐ大声を上げたホーニャンに、アンジュや客人たちの目が向いた。
「彼女は?」
「はい。紹介しますね。――いらっしゃい」
ホーニャンが部屋に入ると、アンジュはホーニャンの両肩に後ろから両手を置いた。
「この子はホーニャン。こちらはこの子のパートナーのケルベロス。我がアドリビトムの中でも特に率先して、大きな仕事をいくつも請け負って、完遂してくれる働き者のメンバーです」
「ホーニャン・リーです。よろしく、お願いします」
「ケルベロスや。よろしゅうな」
そこでふとホーニャンは気づいた。
長髪で右目を隠した女性が、妙に潤んだ左目でケルベロスを見つめている。頬も朱が射している。
「あの、お熱でもあるんですか?」
「っ、な、なんでもないわ」
彼女はしきりに髪をいじりながらそっぽを向いた。
「話を続けても?」
「ええ。お願いします」
「――“暁の従者”の信者たちは皆、人を超えた異様な力を持っていました。民は信者に煽られてしまい、城を攻め落とそうと……」
「そういえば、ディセンダーが降臨したと言っていましたね」
ホーニャンは根拠もなく直感した。「人を超えた異様な力」を与えたのはあの赤い存在に違いない。そして、国の象徴たる王族への畏敬を忘れたことについては、ヒトの心の奥底に、赤い存在が関係ない純然たる敵意があったからだろうとも。
「暴動の時、彼らはそのディセンダーと呼ばれるモノを連れていたの?」
「そこまでは確認していません」
「そうですか……でも、小さな宗教団体が、大きな力を手に入れ、一つの国を没落寸前に追い込むなんて。考えられない事態よ」
「アルマナック遺跡に拠点があるという情報までは掴んだのですが、いかんせん、我々には反撃に転じるだけの武力も士気もない。だからこうしてあなた方に匿ってもらおうと訪ねたのです」
「アルマナック遺跡……」
くるん。アンジュがホーニャンたちをふり返った。
「どうする? 赤い煙関係の依頼で、あなたは一度倒れてる。それでもまだ赤い煙――いえ、あの“願いを叶える存在”を追いたい?」
ホーニャンは薄羽の髪留めに一度手をやり、静かに肯いた。
「ホーニャン」
「大丈夫、ケロちゃん。今度は
「――しゃあない子やなあ。ほんま。父親と母親、どっちに似たんやか」
なでなで。ケルベロスはホーニャンの肩に立って、小さな手でホーニャンを撫でた。
ティアだったらケロちゃんに反応してもおかしくない……よね?