CCさくら×テイルズ ~カードを求めて異世界へ~ 作:あんだるしあ(活動終了)
ついにシューイらは帝都ザヴェートに着いた。
道中、ソフィはずっとシューイの横を歩いていた。おかげでシューイの鼓動は自分でもうるさいほどだった。
蒸気機関が鉄の家々に絡みついた重鉄の都市。
ザヴェートから受ける印象は、初めて来た時と変わらなかった。
「ずいぶん霧が濃いわね」
「フェンデルは蒸気機関技術が発達した国です。噴き出した煙が霧となり街を覆っているんでしょう」
「蒸気が発生するのは水分を熱した時だから、帝都には相当の水熱が集まってるんだろうな」
「
シェリアは悲しげに顔を伏せた。
「いつまでもこんな所で話していると兵士に目をつけられるかもしれない。宿を押さえて拠点を作って、行動を開始しよう」
「はい!」
師弟時代の癖か、アスベルが真っ先に溌剌と返事をした。
宿で男女に別れて部屋を取り、シューイらは例のフェンデル兵の扮装をして街へくり出した。
手分けして聞き込み調査をする方針となったので、アスベルとシェリア、ヒューバートとパスカルとマリク、ソフィとシューイで組んで路地でおのおの別れて聞き込みに向かった。
後ろを目線だけでふり返る。
ぶかぶかの軍装をしたソフィが、カルガモの子よろしくシューイに付いて来ている。
(嬉しいけどさ。嬉しいけどさ! だぼだぼのソフィかわいいし! でも今までずっとアスベルべったりだったのに、急にこうなると。やっぱり連絡船でのあれが原因だよな)
「なあに?」
「何でもない。何となくだ」
「そっか」
一軒の民家の前を通り過ぎようとした時――シューイは
「どうしたの?」
ソフィに教えるべきか悩む。エフィネアには無い概念の存在を感じ取ってしまった、など。
言えば、せっかく縮まったソフィとの仲が再び離れるかもしれない。
だが、放置して行っても、後で気になってしまうだろうし――
「このお家?」
ソフィはためらいなくその民家のドアを押し開けた。シューイが止める暇もなかった。
家の中はがらんとしていて、奥にベッドが一つあるだけ。
そのベッドには小さな女の子が布団にくるまって横たわっている。
「ママ……?」
「ママじゃないよ」
「だれ?」
ソフィは家の奥のベッドまで行って、女の子の顔を覗き込んだ。
「わたしはソフィ」
しかたがないのでシューイもベッドのそばまで行った。
「ごめんな、勝手に入って。すぐ出て行くから」
「ううん、いいの。いてちょうだい。ママの帰りもおそいし。だれかとお話したい」
「それじゃ、いるね」
「うんっ。あ、わたし、ララだよ。おにいちゃんは?」
――シューイは視る・聴くに関しては、母方の伯父譲りか、特異な才を持っている。ララが何者なのかは、家に入った時点で理解していた。
「シューイ・リー。シューイでいい」
それでも黙った。お姉さんらしく行動するソフィの真心に水を差したくなかった。
ソフィはララがぬいぐるみを気に入ったと知るや、辻売りの子が売るぬいぐるみから、今までの旅で発掘採取したものまで、次々にララのベッドに運び込んだ。その数たるや、ベッドの主であるララの寝るスペースが占領されまいかと不安になったほどだ。
(聞き取り調査が長引いててよかった。あいつらには悪いけど、ララを訪ねる機会が増えたからな)
そしてまたソフィと共に見舞いに訪れたその日。
シューイはソフィに「ララと二人きりで話したい」と告げて、家に残った。
「ララ。ソフィおねえちゃん、好きか?」
「うん、だいすきっ」
「じゃあ、ソフィおねえちゃんがまた新しいぬいぐるみを持ってくる前に、自分でもぬいぐるみを作ってみないか?」
「ララが、自分で?」
「ああ。くまさんのぬいぐるみなんてどうかな。おれの故郷ではとても大事な人が出来た時、その人にあげるために作るんだ。あなたが特別です、って気持ちを伝えるために。おれのお父さんとお母さんも、くまさんを贈り合った」
「ソフィおねえちゃんにも? シューイおにいちゃんにも? あげてもいいの?」
「ああ」
「じゃあ作る!」
「よし。そうと決まれば始めよう。裁縫道具、借りてもいいかい? 材料は持って来たから」
「いいよ。お道具箱、そこのタンスだよ」
シューイはララが指した箪笥を開けた。ビンゴだ。裁縫道具の箱が見つかった。シューイはそれを箪笥の抽斗から出して、ララのベッドサイドに戻った。