CCさくら×テイルズ ~カードを求めて異世界へ~ 作:あんだるしあ(活動終了)
翌日。熱が下がったスレイは、ガラハド遺跡での勢いもそのままに、地の主の祀り人を探してアリーシャと共に街に出た。
アリーシャが紹介した司祭は、さすがアリーシャの目に留まるだけあって真面目な人物だった。
だが、それ以上に、コタローは驚いた。
導師であるスレイが、地べたに正座し、司祭に対して祀り人になってほしいと頭を下げたのだ。さらには、アリーシャも笑って、スレイの隣に正座した始末だ。
コタローだけがウドの大木のように立ち尽くしてなりゆきを見守っていた。
「二人とも……何ていうか、色んな意味ですごすぎ」
「褒めてるの? それ」
「半分は」
「あはは」
スレイは足を崩して快活な笑い声を上げた。
「とにかくこれで、器と祀る人は準備が整ったんだ。あとは誰に地の主になってもらうかだけど。ライラ、この近くで心当たりある? ――――。うーん。じゃあ、天族がいそうな場所って近くにある? ――――」
スレイが視えない存在と会話する間に、コタローはアリーシャの手を取って、アリーシャを立たせた。
「導師さん、1個いいですか」
「なに、コタロー。もしかして心当たりある!?」
「心当たりってほど確かなものじゃないんですが」
コタローはその時の様子を思い出しながら、慎重に言葉を選んで語り始める。
「レディレイクを出て南のフォルクエン丘陵ってとこが、異常に長雨なんですよ。一度『探し物』があるかと思って寄ったんですけど。雨、橋の近くだけしか降ってなかったんです。おれは天族のことはよくわかりませんけど、ひょっとしたら天族絡みかもしれません。長雨を降らせる憑魔のせいで天族が出て来られない、とか」
「そうなのか……よぉしっ。じゃあ行ってみよう、そのフォルクエン丘陵ってとこ。何もしないよりずっとマシ!」
スレイはにかっと笑った。アリーシャはそんなスレイを優しく見つめている。
「レディレイクをまた出ることになるけど……アリー、平気?」
「留守にすることがか? 大丈夫だよ。マーリンドの森へ行っても、捜索隊も出されなかったんだ。ここでどうしようと、私の行動に文句をつける暇人はおるまい」
明るいが自虐的な台詞。コタローはアリーシャのそんな一面を悲しく思い、そう思わせる全存在が憎らしかった。
「どうした、コタロー? 行くよ?」
「っ、ああ、ごめん。今行く」
すでに歩き出していたスレイとアリーシャを、コタローは慌てて追いかけた。
胸に湧きかけた黒いものに蓋をして。
フォルクエン丘陵に入って、コタローらは例の長雨に打たれながら進むこととなった。グリフレット橋に着く頃には3人ともが濡れ鼠だった。ライラとミクリオはどうか知らないが。
「橋が落ちてる……」
「こんなことになってしまっていたのか……」
崩れて両端しか残っていないグリフレット橋を見て、アリーシャは苦しげに眉根を寄せた。
だが、アリーシャはすぐに表情を引き締め、近くの兵士に声をかけた。
「何があった」
この声だ。こういう時のアリーシャの声を聞くと、確かに彼女は姫君なのだと思わされる。
程よい威圧感と緊張を与える。こういうのを、凛としている、と表現するのだろう。
「グリフレット橋崩壊の調査であります。長雨による氾濫が原因かと」
スレイが川際まで歩いて行き、轟々と流れる川を見下ろした。コタローはスレイの隣まで歩いて行き、同じく川を見下ろした。
「何か感じたりします? おれ、そっち方面はからっきしで」
「――原因は長雨じゃない」
確信を持ってスレイは答えたので、軽く驚いた。
「ミクリオも、水位に比べて流れが異常だって。オレも嫌な気配を感じる」
「そうか。おれ、雨ばっか気にして、川は全然見てませんでした」
スレイはアリーシャと話す兵士をふり返り、旅人の避難を訴えた。しかし兵士は聞き分けがなく、スレイが導師かもしれないと知った旅人はざわめき出す始末。
(困った時の導師頼みってことかな。わからないでもないけど)
スレイと兵士の問答の隙を見て、コタローは川をふり返り、太極の円盤を取り出した。
「――玉帝有勅 神硯四方 金木水火土 雷風 雷電神勅 軽磨霹靂 電光転 急々如律令――」
か細い声に応え、羅針盤が展開する。
コタローは羅針盤を川に向けたが、さくらカードを示す光の線は出てこなかった。
(カードがいないとなると、あとは自然災害か憑魔か)
考えていたところで、獣の鳴き声のような音が聴こえた。
ウーノさんを見つけたのって完全なる偶然な気がしてならんのです。
いえ、確かに都の人たちの噂は聞きましたが、あれだけで行こうという気が最初は起きなかったんです。
なのでコタローに言ってもらいました。
コタローと話す時のアリーシャはちょい女の子寄りの口調を心がけています。