CCさくら×テイルズ ~カードを求めて異世界へ~ 作:あんだるしあ(活動終了)
ガラハド遺跡の奥で清水の氷を取ってから、スレイはばったり倒れた。
それはもう見事に、ばったりと。
ミクリオと新たに契約したことで反動が出たのだ、とのライラの解説を、アリーシャが通訳してくれた。
高熱のスレイは、コタローが背におぶさってレディレイクの宿まで運んだ。
アリーシャとライラは女性で、ミクリオは男だが一般人には視えないことを考慮して、コタローが空気を読んだ――もとい、名乗りを挙げた。
「よいせっと」
コタローは宿の客室のベッドにスレイを寝かせた。楽に寝られるように導師のマントと手袋を外させ、靴を脱がせた上で、布団をかけた。
「あとは暖かくして、頭を冷やす物……」
「ミクリオ様が用意してくださるそうだ。――ライラ様、お気持ちは光栄ですが、ライラ様のお力ではスレイが燃えてしまいますっ」
ガハラド遺跡での一戦を経て、アリーシャには天族が知覚できるようになった。コタローは素直に「よかったね」と告げたのだが、アリーシャは浮かない顔をした。
アリーシャがスレイを看たいと言ったので、コタローも宿に残ることにした。
アリーシャはベッドの横に椅子を持って来て座り、コタローは壁にもたれて腕組みして立っていた。
「――コタロー」
「なに? アリー」
「コタロー、も……従士に、ならない?」
ぱちくり。コタローは目を瞬き、次いでまじまじとアリーシャを見た。そのような提案をされるとは夢にも思わなかったからだ。
「いや! スレイが目覚めて、いいと言ってくれたなら、の話だが」
「おれが天族や憑魔が視えないのがそんなにイヤ?」
「イヤなわけない! ただ、その、不便じゃないか、って……」
コタローは考えた。今日の出来事で、コタローはスレイの「一人芝居」を見ているだけだった。ライラとミクリオというらしい天族と会話もしなかった。目も合わなかった。
それが標準的であり、木之本虎太郎の限界だと、彼は嫌というほど知っていた。
「アリー。おれの目的、覚えてる?」
「お母様のカードを探して持って帰ること、だよね」
「うん。だから従士契約はおれには要らない。カードは誰にでも視えるから」
ここで従士となり、アリーシャと同じ視点に立つことは大いに魅力的だ。だが、それは本来の目的を疎かにする行為でもある。
(本当のおれは、魔力のない一般人なんだ。李家の中でずっとそういうふうに育ってきたじゃないか。母上も
「ごめん。アリー一人に従士の役目押しつけちゃうことになるけど、おれはおれの初心、忘れたくないから」
「そう……こっちこそごめんね。無理に誘おうとして」
「イヤじゃなかったよ。アリーの気遣い」
アリーシャは苦笑した。いつも見たいと思っている笑顔とは違うのが、少しだけ寂しかった。
今更ですが、コタローの師匠は苺鈴でした。原作派の人には誰?な人かもしれませんね(^_^;)
あくまで従士の立場を拒むコタローです。
動機は一つ。舞い上がりたくないから、です。