隣人部員たちの運命はいかに!
隣人部員全員が揃いベータテスターである、理科ことΣ(シグマ)が、俺達にこのゲームのレクチャーをする。
なんでもこの『ソードアート・オンライン』と言うゲームでは銃、弓などの遠距離攻撃武器や魔法といったものは存在せず、剣だけらしい。
回復や転移はアイテムでできる。キャラの職業……ジョブも存在せず、剣のスキルや運動や戦闘的なものや能力、料理や釣りといったプライベート的なものも全てレベルで管理しているらしい。
「なるほど、魔法も遠距離攻撃も無しってのはRPGとしては珍しいな」
「そうなんです。ですがそこがいいんですよ」
そして、他にもいくつか理科に習って俺らは雑魚モンスターの狩り場でソードスキルの練習をする。
「おりゃあ!」
ズバッ! パキィッン!
俺もソードスキルが何回もやってやっと上手く使えるようになってきた。
ちなみにセナは初めてで一発でソードスキルを習得した。流石と言うかチートと言うか……
「それにしても疲れたな……生身の体は動いてないのに……」
「そうですね~、もうリアルじゃ夕方の5時ですし。みなさん、一度ログアウトします?」
「そうね。あんまりダイブしたままだったら、ステラやパパも心配するし」
「ワタシもお腹減ったぞ」
「……そうだな。一度ログアウトしてまた集合するか? これからは家にいても集まれるわけだし」
「そうだな。シグマ、ログアウトはどうやるんだ?」
「はい。このメインメニューの一番下にログアウトボタンが――」
シグマはウィンドウを開いてみるがそこで何やら固まった。
「――ない?」
「え? なんだって?」
「ログアウトボタンがないんです! ベータテストではここにあったのに!?」
「正式サービスで、変わったんじゃないの?」
「そう思って、べつのところも探しましたが無いんです! どこにもログアウトボタンが!」
俺もメインメニューを開いてみるが、どこにもログアウトボタンがない。どうなってんだ?
「ちょっと!? こんなときにバグ!? 信じらんない!」
「ゲームマスターコールしてみても繋がらない……どうなっているのでしょう……」
「おい、他にログアウトする方法はないのか?」
ナイトがいい、シグマが考えるが答えは……
「ありません。この場で『ログアウト!』とか叫んだらログアウトできる。的な方法もマニュアルにはありませんでしたし……しいて言えば、リアルから理科たちの体を直接ナーヴギアを頭からひっこぬいてもらうしか……」
「あっ! そっか! もうすぐステラが部屋に来てくれるから、どうにかなるわ!」
「ちょっと待ってくれ! うちには俺と小鳩しかいないから誰もその方法は無理だぞ!」
するとセナは言う。
「し、仕方ないわね。あたしが――」
セナがそこまで言うと、突然『リーンゴーン、リーンゴーン』という、鐘の音が響く。そして俺らは光に積むまれた。
「んな!?」
「な、なに!?」
「て、テレポートです! でも、アイテムも使わずにどうして……」
シグマが戸惑っている。場所はゲームのスタート地点だった《はじまりの街》だ。その場には一万人はいる。
そして次に大空に巨大な人物が姿を現した。
『プレイヤー諸君、私の世界へようこそ』
な、なんだこりゃ?
『私の名前は茅場晶彦。今やこの世界をコントロールできる唯一の人間だ』
するとシグマは顔色を変えて俺らに説明する。
「茅場晶彦……このゲームの開発ディレクターにしてナーヴギアの基礎設計者です」
なるほど、だからこの世界は茅場晶彦の世界ってことか?
そして茅場晶彦は語る。
『諸君らは、既にメインメニューからログアウトボタンが消滅していることに気づいていると思う。しかし、ゲームの不具合ではない。繰り返す。これは不具合ではななく、《ソードアート・オンライン》本来の使用である』
「ど、どういうことよ!?」とセナ。
『諸君は今後、この城の頂を極めるまで、ゲームから自発的にログアウトすることはできない。また、外部の人間の手による、ナーヴギアの停止あるいは解除も有りてない。もしそれが試みられた場合――ナーヴギアの信号素子が発する高出力マイクロウェーブが、諸君の脳を破壊し、生命活動を停止させる』
この言葉に俺らはポカンとなる。
「あ、あはは。なに言っちゃってんの? あいつ」
「そ、そうだ。ゲーム機が脳を破壊する? そんな馬鹿な」
セナとナイトが言う。しかし、シグマは言った。
「いえ、たった今わかりましたが電子レンジと同じ原理です。充分な出力さえあれば理科たちの脳はナーヴギアによって摩擦熱で蒸し焼きにすることが可能です……しかし――いえ、バッテリーが内蔵されているので完璧に可能です!」
「ちょ、ちょっと待てよ! 瞬間停電でもあったらどうすんだ!?」
『より正確には二時間のネットワーク回路切断が見られた場合、ナーヴギアは諸君らの脳を破壊する。この条件は既に外部世界では、マスコミを通して告知されている』
聞くところによると現時点で茅場晶彦の警告を破ってナーヴギアを引っこ抜いて亡くなったプレイヤーもいるらしい。つまりは本当のことなのだろう……
『諸君には安心してゲーム攻略に励んでほしい』
この状況でゲームしろ!? 無理だろ!
『諸君にとって《ソードアート・オンライン》は、すでにただのゲームではない。もうひとつの現実的と言うべき存在だ。今後、ゲームに、おいて、あらゆる蘇生手段は機能しない。ヒットポイントがゼロになった瞬間』
そのあとの言葉を聞いてプレイヤーは皆が絶句した。
『諸君らの脳は、ナーヴギアによって破壊される』
つまりはこの世界での死は現実での死に繋がると言われたのだった。
みんな『だせー!』と絶望をあらわにした声を出している。俺たちもだ。
『諸君らがこのゲームから解放される条件は、たった一つ。アインクラッド最上部、第百層までたどり着き、最終ボスを倒すことだ。その瞬間、全プレイヤーを安全にログアウトすることを保証しよう』
「第百層!? シグマ、ベータテストでは何層まで行けた?」
シグマは答える。絶望的な答えを……
「わずか六層です」
たったの六層だと!
そして茅場晶彦は最後にと俺らプレイヤーにプレゼントを用意したと言って確認させた。アイテム名は《手鏡》? 出して覗くと次々とプレイヤーが光に包まれて行く。俺らも!? そして俺らの前には――
「アレ? よ、夜空、小鷹それに他のみんなも。あんたら顔」
そうセナに言われて確認すると俺らのリアルの素顔になっていた。
「な、なに!?」
「ナーヴギアは頭を被うようになってますから、顔の形を認識できますけど体型は……」
「キャリブレーションじゃない? ほら、こないだナーヴギア装着したとき体をあちこちさわったでしょ?」
そして茅場晶彦は『健闘を祈る』何て言って消えた。
すると理科が俺らをつれて建物の影にいく。
「みなさん、この街を出ます!」
「「「は?」」」
「理科はベータテスターです。この《はじまりの街》周辺の狩り場は狩り尽くされます。今のうちに次の街へいきましょう!」
「ちょ、ちょっと待ってくれ! あの茅場って人の言ったことが本当だと限らな――」
「そんな考えだと死にますよ!」
俺らは理科の言葉に言い負かされた。
しかし、この中でこの世界について一番知っているのは理科だ。恐らく俺らは仮想世界で死ねば現実でも死ぬ。
「わかった。ついていく。ナイトたちは?」
「いくわ」
「ああ」
「お供します」
「ククク……あんちゃんといく!」
「ああ、ぜったいに帰るぞ!」
そうみんなで決めて俺らははじまりの街を出たのだった。
長くなりました。
本当にキャラが多いと大変です。
難しい。
次回はキリト、アスナ登場と第一層ボス戦の予定です。