夢のようだった   作:ふたなり2

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優しい言葉 (最終話)

「何か、心当たりがあるのかな?」

 

 

「はい!確実とは言い切れませんが…。すぐ、行ってみます!」

 

 

硬い意思のある俺の表情を孝一さんは読み取ったらしく、こう切り出した。

 

 

「止めたって君は行くだろうから僕も同行しよう。何かあったら君だけじゃあ、

対処しようがないしな。車を出そう」

 

 

「ありがとうございます!」

 

 

「兄さん、私からもお願いするわ!」

 

 

「あぁ、すぐに用意をする!」

 

 

知美の家を早々に出て孝一さん、知美と俺はあそこに向かったのだった。

 

 

孝一さんは病院に連絡をしたり手際良く車を用意をしてくれた。

あの場所に優美子は必ずいる!根拠もまるである訳じゃあないけど

自信があるのだ!

 

 

孝一さんはそんな俺のいい加減な根拠もない話を真面目に

聞いてくれて行動してくれる…感謝に言葉もでない。

 

 

10分程でその場所には付いた、そこは学校である。

 

 

到着と同時に俺は車を飛び出した!後から知美が追い掛けて来るが

今はあまりかまってる暇は無い、急がないとだ!

 

 

そことは俺達の教室、間違えない!俺と優美子と裕也の奴で放課後楽しく会話した

あの教室の裕也の机…裕也の話に夢中になってあんなに楽しそうにしている

優美子を他では見た事がない。

 

 

走りながら全力で教室に飛び込んだ…。

 

 

やはり彼女はそこにいた。

 

 

教室、後ろの隅っこの方で体育座りの要領で脚を両腕で抱込んで

小さくなり小刻みに震えて泣いていた。片方の手にはカッターナイフの刃が

光って握られている。

 

 

何処で着替えたのかあの白いゴスロリの服を着ていた。

 

 

俺はすぐそのカッターを優美子から奪い取った。俺は優美子の前で

立ちすくむしかなかった。

 

 

すがる様な顔付きで優美子は俺の顔を見上げ、落ち窪んだ大きな瞳に涙を

一杯溜め込んでこう言った。

 

 

 

「ひっ、ゆう君は行っちゃったの、私を置いて…、怖かったの…私、

怖かったの…。」

 

 

「あぁ、分かったよ…。でも、もう大丈夫だから。優美子を迎えに来たよ。」

 

 

自分でも分からないが、それはいつも知美が俺にしてくれる様な優しい言葉の

掛け方だと思う。

 

 

追い付いた知美が優美子の肩を目一杯、抱きしめ一緒になって泣いている…。

 

 

2人は声を上げて泣きだした。それは知美も抑えていた感情がでたのかもしれない。

知美も「寂しかったんだよ」っと、優美子に何度も自分に対して言い聞かせる様に

言っている。

 

 

後から掛けて来た孝一さんは状況を把握し大事の無い事を

すぐに病院に知らせてくれているらしい。2人が少し落ち着くのを待って

優美子を知美と一緒に抱き抱え車を病院に走らせた。

 

 

車の中でも知美が優美子の手をしっかり握っていた。

 

 

優美子も幾分落着きを取り戻したのか、知美の肩を枕に静かな寝息をたてている。

その寝顔はやつれてはいるが何処か安心している様な感じがする。

 

 

間もなく、病院のスタッフと共に優美子のお父さんが大変心配しているらしく

待ちあぐねているらしい。時たま、まだ身体が震えるらしく微かに動く

優美子の温もりを横に感じつづ病院に到着した。

 

 

優美子の親は片親だけでIT企業を経営するお父さんと2人暮らしとの

事だった。お母さんは優美子が幼少の頃亡くなり、以来優美子を1人で

育てたらしいが最近は家事全般を優美子がやり、お父さんの世話をしていたようだ。

 

 

だから、あんなにシッカリして他の子と比べ大人びて見えたかもしれない。

 

 

俺は優美子の事は何も知らなかったのだ…。

 

 

入院をした時の優美子パパの心配のしようは、それはハタから見ていても

気の毒になる位、心配をしていたとの事だった。

無事帰って来た娘の姿を見た途端の優美子パパの目には

大粒の光るものがあった…。

 

 

病院に着いた途端、優美子パパは娘を抱き抱え寝台に乗せ慌ただしく院内に

入って行った。俺は遠巻きにその様子をボンヤリと見守るしかなかったが何か、

フルマラソンを走り終えた様な疲労感を覚えたのだった。

 

 

孝一さんからは肩を叩かれ「やったな!」っと、温かいねぎらいの声をかけて頂き、

ワガママを言った事に対してのお礼の言葉を述べていた。

 

 

騒動かどうやら落ち着いた頃、知美パパの院長先生からお礼の言葉を頂いた。

優美子も落着きも取り戻して、しっかりとしたケアをしていけばそれ程

心配することはないだろうとの事だ。

 

 

俺のそばに寄り添っていた知美が俺の腕の袖口を小さく摘まんで付いていたが

気付いたら、いつしか俺はその手をシッカリと握っていたのだった。

 

 

 

 

END

 




中学生のドキマギした恋心がうまく表現できたか分かりませんが
頑張ってみました。


最後まで読んで頂き有難うございました。




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