放課後、部活をしたけどいつものテニスコートに彼女の姿はなかった。
休んでるから当たり前何だがついつい目が向いてしまう。2度程、
3年の先輩に怒鳴られた!最悪だぁ~。
部活終了後に幼馴染でマネージャーの知美が声を掛けてきた。
「聡志君、今日は元気なかったね。大丈夫?」
「あぁ、昨日出た☆☆ゲーム夜遅くまでやったからな」
俺は嘘を言って誤魔化そうとした。
「あら、そのゲームなら弟のマルが来週出るって楽しみにしてたのに
違ってたのかな?」
「あうっ、違った、○○って言うゲームだよ」
「ふ~ん、そうなんだぁ…」
いつも嘘がバレるから知美はキライだ。
こいつの前では絶対に嘘がすぐにバレてしまう。
こんなに優美子が居ないのが切ないと思わなかった。
俺は優美子がそばにいるだけで幸せな気分になる、いないと気が散って全く身に入らない。
知美が風邪を引いて休んでも気にならないし休んだのも気が付かないだろう。
「聡志君、優美子ちゃんが好きなんでしょ?」
「…… 。」
優しい言葉だった。また、何も言えなかった。知美の言葉にフリーズ状態になってた。
「でも、優美子ちゃんは裕也君の事が好きなんだと思うよ」
「……… ………分かっているよ」
前々から何となく感じていた予感を知美によって言い当てられた気がする。
谷底へ落とされた気分だった。
「笑いたければ、笑えよ…」
辺りはすっかりと日が暮れだし夕陽が眩しく輝いていた。
俺は我慢してたもんが溢れてくるのを頬に感じた。
知美は俺のそばにきて子供をあやすように言う。
「ううん、何で笑うの?」
俺は照れ臭いのもあって知美に憎まれ口を言い返した。
「どーせ、俺なんか優美子とじゃあ合わないしフラれるだけだぜ!
お前だってそれ見てせせら笑うんだろう?」
「ううん、違うよ。笑わないし聡志君の気持ち分かるもん!」
「はぁ~?何でだよぉ?」
俺には知美の言ってる意味がさっぱり分からなかった。
しかし、知美の口から俺を仰天させる信じられない言葉が出てきた。
僅かな時間が流れそれは、とても静かな刻だった。
「だって、私、あなたの事をずっと見てきたし、あなたの事が好きだもの」
「えっ、うっ……。」
余りの驚きに暫く声が出なかった…。
生まれて初めて女の子から告白を受けたからだ。しかし、同時に
失恋を経験している。
最終下校時間のアナウンスが流れ、どちらの方ともなく
「帰ろう…。」と切り出した。
うちへ帰ってから晩飯もろくずっぽ取らずに自分の部屋に籠城を決め込んだ。
今日の放課後は俺にとってスゲ一日になった。今でも優美子の事が大好きだ!
死んでもいい位に大好きだ!いくら知美が優しくしてくれたって仮に意地悪になった嫌味を言う
優美子の方が500倍はいい!知美には悪いが俺の中で随分嫌われたもんである。
一晩泣き崩れて何時の間にか朝になっていたのは少しビックリしたが泣いたおかげか
スッキリした。
…………………
朝露の中、チャリを軽快に飛ばし学校へと向かったのである。
しかし、優美子はまた休んでいた。
放課後、帰り支度をしていつもの様に裕也の奴と雑談をしていて裕也がこぼし出した。
「そういえばさあ、あの子が休む前に奴が俺にメールしてきてさぁ~、
困ったんだよね~」
「そうなん?」
「最初、数学が分かんないとか、英語を教えて欲しいとか言って
俺ん家に押し掛けてくるんだ」
「ヘェ~っ、そうなん…。」
「本当めんどくせぇ~奴でさぁ~、教えてたら妙にベタベタしてくるしよぉ~、
顔なんか近付てくんだぜぇ。香水臭いし」
「………… 。」
俺は頭から湯気が出そうなのに気がづいた。顔は真っ赤だ。
「日曜日に出掛け様だの、映画に行こうだのしつこいったらありゃあしない!」
「…………。」
「そういえば、ディズニー行ったじゃん!あの時、ゴスロリ着てた外人さんの事を
俺が可愛いって言ったの覚えてるかぁ?」
「あぁ、覚えてる…」
「そしたら、この前どうしても見たい映画があるから付き合えって言うから言ったの、
で、来た優美子の着てる物見てドン引きだぜぇ!ナント!真っ白なゴスロリだもん!」
「褒めてやんなかったの?」
「お前、頭大丈夫? あんなん、連れて歩ける訳ないじゃん!」
「それで、お前どうしたの?」
「速攻で走って逃げたよ、もう懲り懲りだ。少し離れた物陰で見たけど
ボォーゼンとしてたみたい。あいつが、おかしな服着て来るから悪いんだよ」
「お前それで、平気なのかよ?友達だろ?彼女可哀想だと思わないのかよ!」
「知るかよ、へん、そういゃあ、あいつ、お前の事言ってたぜ。
夜しつこくメールしてるしチビはキライなんだってよ!自分だってチビ助のくせして
嫌な奴だぜ全く。あんな、嫌な奴好きにならなくてお前よかったじゃん!」
そう言った裕也の口許を見逃さなかった。僅かに口許かいつもの様に微笑んでいたのだった。
お前とは釣り合わねぇよと言っいる口許の様子だった。
気が付いていた時には俺は裕也の顔を思いっ切り殴っていた。涙が止まらなかった…。
最初の2~3発は当たったが後は裕也の奴にフルボッコにされた。
怒っていた裕也は俺が泣いているのに気が付いたらしく、頭を掻きながら
白けたのかこう言った。
「何だよ、勝手に怒って勝手に泣いて何が気に入らないんだよ!
俺はお前が優美子の事好きだから合わせてやったのに、お前がヘタレで
いつも何にも言わない。優美子にもお前の事いい奴だって色々言ったのに
聞いちゃあいない。一体どうしろってえんだぁ!」
気が付いた時にはあのクールな裕也の頬から涙が溢れていた。
俺は鼻から鼻血が流れているみたいで口の中かが生臭い。
しかし、心の傷の方がズキズキと痛んでる。裕也に対する誤解と
謝罪が先だった。鼻血なんかどうでもいい、今は奴に謝らなければ。
立ち上がった俺は血をポタポタと流しながらヨタロタと裕也の所へ…。
裕也も、もう泣いてない。黙って俺の顔を見ている…。
「そんなに見るなよ…悪かった」
「あぁ、もう馬鹿にしないよ…」
お互いにフラプラになりながらハンカチで顔を拭いたりした。
途中で気が付いたらしく、心配そうに知美が俺のそばに来て
綺麗な濡れタオルで甲斐甲斐しく世話を焼いてくれるであった。