練習が終わって部室に戻ったらマネージャーで俺の幼馴染の知美が洗濯物を
畳んでいた。俺はこの知美がウザくていつも話すとイラッとくる。
何でかと言うといつもの質問ばかりしてくるからだ。
畳終わった中から知美はオイラのシャツを出してくれた。
「聡志君、あなたのシャツよ」
「サンキュ」
ソソクサと帰り仕度をしてる所へいつもの質問。
「昨日、優美子ちゃんを助けたんだって?凄いね」
「あぁ、チャリで転んだ所を偶然通り通りかかったんだ。怪我してたし
可哀想だったしな」
「ふ~ん、そうなんだぁ…。でも聡志君の家とほんの少し方角が違うよね」
背中が冷やってする!いつもこの女は俺の確信をついてくる。だからキライだ。
実は、なるべく優美子と偶然鉢合わせになる様にワザと少しだけ遠回りしてたのを
こいつは言い当てたのだ!
「学校の近くだったし仕方ないだろ!着替えるから出てけったら!」
知美をぞんざいに追い出し、さっき貰った洗いたてのシャツを地べたに叩きつけて
汚した。頼んでもないのにいつも洗ってキチンと畳んである。
元々、体の余り強くない知美は野球部のマネージャーとして仕事をこなしているだけ
と思うのだが他の部員の物より俺の物だけ何故か破れたトコを縫ってくれたり綺麗に
してあるよう見えた。
そんな事を頼んだわけでもないから、何故かいつも無償に腹が立ちその度に
地面に擦り付けて汚したり知美が見つけるより速くしまうのが日課となっていた。
いつもは裕也の奴と一緒に帰るんだが、今日は速攻でチャリを飛ばした。
何となく落ち込んだ、知美の奴があんな事を言うからだとイマイマしく
思っていた!確かに少しだけ遠回りをしたよ、でも優美子が
転んで怪我をしたのは断じて俺のせいではない!全くの偶然なのだ。
ブツブツと怒りながら夕食を済ませお笑い番組を見ていた時、
携帯が鳴った!訝しく誰からだろうと見て見たが覚えの無い携番ある。
恐る恐る出てみるといつも聞き覚えのある可愛らしい声であった!
懐かしくも心臓が飛び出すかと思った程ビックリした。
優美子からである。
「もしもし、私、分かる?」
「優美子じゃん、どっ、どうしたの?」
「うん、今日さぁ、俺君早目に帰ったでしょ?どうしてかなと思って?」
「へっ、別に何でもないよ。家で少しだけ用事があったんだぁ」
「そうなんだぁ~、よかったぁ~体調悪いのかなって心配しちゃったんだ」
もう、俺、デレてもいいよね・・・完全にイカれてた…
でも、何で俺の携番知ってんだぁ?
「何で携番知ってんの?」
「知美ちゃんに聞いたからだよ」
「そっかぁ~」
マネージャーの知美が知っているのは当たり前だし、幼馴染で家もよく知っている。
知美に少しだけ感謝しながら優美子にあの事を聞かなかったかすぐに不安になった。
「知美から他に何か聞いた?」
「何も聞いてないよ、勝手にきいてマズかったかな?ゴメンなさい」
「そんなんじゃあないんだ、違うよ。ビックリして聞いただけ、心配して
くれてありがとう!優美子も怪我は大丈夫?」
「そんなん、平気だよ!よかったぁ~元気で!」
「じゃあ、明日また学校でね!おやすみなさい」
「あぁ、おやすみ。」
俺って凄くね?………ちよっとあんた、聞いた?今の会話どお?
完璧じゃん俺って。世の中の幸せと十年分のお年玉が一度に
キターって感じ!もお、彼女さぁ俺の事ゾッコンって感じじゃねぇ?
そんな事を考えながら、あの可愛らしい声を思いだしながらいつの間にか眠りに
ついていた。
次の日から俺と裕也に、優美子が新メンバーに加わって本当に楽しい時間を過ごした。
裕也は相変わらず大島優子の演技や性格を絶賛し、お笑いタレントの真似をして
俺達を笑わせる。優美子もいつもなら上品に笑ってるんだがケラケラと肩を
揺すりながら苦しそうである、耳まで紅くなっていた。
「裕也君、ダメぇ~そんなに笑わせないでよぉ~もぉ」プン
「あははっ、今の優美子の顔ときたらマジ、ヒデェ顔してらぁ~!」
「いゃん、今そんなに酷かったぁ?」
急に顔をグィとオイラの前に近付いて真剣に聞いて来る。いやいや、こいつ絶対ぇ~
俺を殺そうとしてるに違えない!
裕也の奴は俺達の事をニパッと相変わらずの爽やかな笑顔で微笑んでやがる。
普通、イケメンがお笑いやっても受けないと思んだけど奴だけは違うんだよな。
俺が女なら間違えなくイチコロだったと思う。しかし、優美子は今迄そんな
超モテ男の裕也に目もくれず普通に接してこれたんだろうか?不思議なんだよな。
まあ、優美子が新メンバーでそばにいるからいつしか考えるのを止めてしまった。
休日は三人でディズニーや渋谷に出掛けて行った。ディズニーの時はあの子が
ミッキーにKissされてるベストショットを俺が撮ってエラく喜んでくれた。
渋谷では可愛いお店で安くてもセンスのいい裕也が選んだ、シルバークロスが
あったから何気にそれを買って優美子の首に掛けてあげたら悲鳴をあげるくらい
喜んでくれた。
それから何度も三人のデートが続き和気あいあいの状態が続いてると思っていたが
おかしな事に気が付いた。
いつもの様に夜、優美子にメールしたんだがいつ迄たっても返信がない。
あれ、お風呂かなと思いしばらく待つ事にした。最近は割と由美子に対する免疫が
さすがの俺にも少しづつ出来てきて即死状態は間逃れる様にはなっていたが
その日はメールが気になったけど明日の朝、聞けばいいやとそんなに気にもとめず
スヤスヤと眠りに落ちていった。
翌朝、優美子はお休みになっていた。風邪を引いたとの事である。
水臭いなと思った、あんなに毎日メールしたのに一言も言わないなんて。
「そんなに体調悪いのかな?」
「さあな、聞いてみれば?」
「心配じゃないのかよ?」
「俺達が心配したところで優美子が良くなる訳でもないし、すぐでてくるよ。」
正直、ブチ切れそうなのをやっと抑える事が出来たからよかった。
裕也の奴、なんて薄情なんだ。
前々から思った事があるけど、時たま奴は氷の様にクールになる。
そう、寒すぎる位に。