とある幻想の異世界物語   作:キノ0421

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まずお久しぶりです
無事に内定が決まりました。そしてクリスマスが近づく…
お菓子の仕事なのであくむでしかあひません

話は変わりますが活動報告にてアンケートとリクエストの方を実施します

アンケートはオティヌスについて
リクエストはまぁ小ネタですね



上条さんを見失ってしまいがちか自分にご教授を …


18話

上条達は知らせを受け本部の外へ…襲撃された場所まで走る。

 

樹の根から出た先に見えたのは、半ば壊滅状態にいる"一本角"と"五爪"の仲間だった。警戒の鐘が鳴らされてから数分と経ってもいない、ほんのわずかな時間で彼等はやられたのだ。

この異常な事態に議長であるサラはいち早く反応する。

 

「誰か状況を報告できる者は居ないか!」

 

今もなお戦闘は続く中サラの叫びが響く。すると空から旋風と共にグリーが舞い降りてきた。相当戦ったのだろう、自慢の翼は荒れており、足にも深い切り傷などがあった。

そしてサラの目の前に着地し血相を変えて訴える。

 

『サラ殿…!ここはもう駄目です!一刻も早くお逃げください!』

 

「な…に⁉︎一体何があった‼︎」

 

『彼奴等の主力に化物がいます!先日の奴らとは比べ物にならんくらいに!このままでは全滅します、貴方達だけでも東へ逃げ』

 

グリーが叫ぶ最中、琴線を弾く音が鳴り響く。

 

耀やサラ等、先ほど戦闘していた者は聞き覚えがあるのか顔を上げ表情を歪めながら辺りを見回す。

 

『奴だ…!あの音色で見張りの意識を奪われ、

2度の奇襲を許してしまった。今は仮面の騎士が戦線を支えているが、それもいつまでもつか…』

 

グリーの声を翻訳し伝える耀と黒ウサギ 。

仮面の騎士という単語に反応したのか、ジャックは驚嘆の声を上げた。

 

「仮面の騎士⁉︎ま、まさかフェイス・レスが参加しているのですか⁉︎」

 

「ま、まずいぜジャックさんッ!もしアイツにもしものことがあったら、"クイーン・ハロウィン"が黙ってねぇよッ!」

 

ジャックは麻布に炎を灯すと、それは巨大な業火となりジャックに纏う。アーシャはその上に飛び乗り最前線へと目指す。

残された上条やサラ達は再びグリーに状況を尋ねる。

 

「この竪琴を引いている巨人って、仮面の人でも勝てないの?」

 

『というより攻めあぐねいている。あの音色は近くで聞くほど効力が高い』

 

グリーに同調するようにサラも説明する。

 

「それで私も全力が出せずにいた。私を抑えるくらいの恩恵となると神格級と見て間違いないだろう」

 

「それで竪琴の巨人と仮面の人は?」

 

『先程までは共に戦っていたが、竪琴の方は姿を消し、何処にいるのかわからない。仮面の騎士は音色に耐えながらも戦いに望んでいる。…あと竪琴の主は巨人族ではない』

 

巨人族ではないと言うグリーに上条達は首を傾げる。

 

『身長はお前たちと大差ない。深めのローブをかぶった人間だ。巨人族が従っているのを見ると、奴が指揮者なのかもしれん』

 

巨人でもないのに統率をしている。

上条の頭の中ではある可能性が出てくる。

 

(もしかして白夜叉が言ってたのはそいつの事か?)

 

確証が無い為に黒ウサギ達には話せないが、その可能性が本当だとしたら、話すべきなのか頭を悩ませる。しかし今言ったとしても、この場を余計に混乱させるだけと判断し口を閉ざす。

そして今は巨人の大軍をどうするか、頭を切り替える。

どうするべきか考えていると、すっかり忘れていた人物の事を思い出す。

 

「…そういやペストはどうした?俺と一緒に居たはずだけど」

 

ペストと聞き飛鳥は指を差しながら問い詰めてくる。

それに続くかのように耀も詰め寄る。

 

「そうよ!何で上条君とペストが一緒にいるのよ⁉︎」

 

「…しかもペストと仲が良さそう。それにあの服は…上条の趣味?」

 

上条が怪我した時は落ち着くように叱咤したり、あの中で1番冷静に物事を考えていたペスト。いきなり現れた元魔王、しかも自分達が戦った相手だ、戸惑いを隠せないのは当たり前である。

服装といえばメイド服…しかもわりと可愛く仕上げられており、レティシアのメイド服とはまた違う。

これまでの経緯をどう話すか、いかに短く話すか、考える上条。

 

「いや…ペストとの戦いが終わった後に。コミュニティの報酬として、うちのメイドになったんだけど」

 

「だけど?」

 

「家事が殆ど出来なくてな。流石にこのまま渡すのはマズイって事で、俺とレティシアにペストの教育をしていたんだよ」

 

「だから最近コミュニティに居ないことが多かったのね」

 

「そういうことだけど」

 

飛鳥の質問には答えた上条だが、耀は自分の質問に答えてないのに不満なのか上条に近づいて再度質問する。

 

「…あのメイド服は白夜叉?それとも上条?」

 

ガクリと崩れ落ちる上条、あの服に関しては白夜叉の暴走を止める為という大義名分があるのだが、そんな事は耀達には関係のない。

素直に言うのも良いのだが上条からしたらメイド服を一から考えた、だなんて言えるはずもなかった。

 

「今はそれどころじゃないだろ⁉︎」

 

「…いいから答えて」

 

何とか答えさせようとする耀。それを屁理屈で言い返す上条。

そんな"ノーネーム"のやりとりをみてサラは笑う。

先程まで目先の戦闘で混乱していたが、そんな自分が馬鹿らしく思えてきた。

 

「2人ともそこら辺にして、そろそろ真面目にどうするか考えた方が」

 

「そ、そうだな。それでペストは何処に」

 

上条が言い切る前に後ろの方からトンという足音が聞こえた、上条が振り向く。

 

「私がどうかしたの?」

 

ペストが何食わぬ顔で居た。視線の先には巨人と勇猛なる獣達の戦場。現状を把握したペストは上条に問いかける。

 

「それで?私に何をして欲しいのかしら」

 

それをごく当たり前の事のように言った。上条がペストを探していた理由を説明しようとするが、上条のカードからオティヌスが出てくる。

 

「コイツは黒死病を操る力があり、目の前のデカブツはケルト神話群、その中にダーナ神話というのがある。それは巨人族の闘争を記したものだが。中に黒死病を操る事で他の巨人族を支配していた一説がある。つまり相性でいえばこの上ない程にいいはずだ」

「…僕に作戦があります」

 

今まで黙っていた、いや会話に参加できていなかったジンが声を上げる。

 

「ほぅ、では聞くがどんな作戦だ?」

 

オティヌスも待ってましたと言わんばかりにニヤリと笑う。

ジンは1度コクリと頷く、ゆっくりと息を吸い、吐く。

 

「まず竪琴の術者を破らないと、例え今回退けたとしても、また同じように攻めてくるはずです。術者を逃さないためにも…耀さん貴女が鍵です」

 

「…私?」

 

耀はまさか自分が指名されるとは思ってもいなかったのか眉を顰める。

 

「今までの情報を聞いた中で、僕の予想が正しければ、耀さんの力が必要な状況に陥るはず。上条さんは耀さんの控えとして同行して下さい。右手があれば竪琴の音色の効果は無効化されるはず。貴方達でなければいけないんです」

 

真っ直ぐ、耀と上条を見つめる。

耀はもしかしたらヘッドホンの事での同情されたのではないかと勘ぐってしまったが、その眼をみて消え失せた。

 

「…わかった。作戦を教えて」

 

 

 

 

耀と上条が支持されたのは上空1000mの上空で合図を待っていた。それは巨軀と呼ばれているアンダーウッドよりも更に高い高度である。

上条と耀はグリーに乗り、ジンの合図を待つ。

その中で上条はジンの作戦に疑問を抱く。

 

「…これ俺が居なかったら春日部だけでもっと身軽に奇襲出来たんじゃないか?」

 

「確かに…そうかもしれない。けど上条の右手があれば最悪の場合は竪琴を破壊するのに必要。それに竪琴の所持者も何をしてくるかわからないから」

 

敵のギフトが竪琴だけとも限らない、ジンも上条は巨人相手の陽動には向いておらず、正体不明の竪琴に回す方が良いと考えていた。

 

「竪琴…か何者なんだろうな。そういや、グリーだったよな。怪我しているのに悪いな。キツイ作戦に参加させて」

 

上条は左手でグリーの背中を撫でる。手綱は上条が持ち、耀は上条の背中に捕まっている。

 

『気にするな。皆が戦っているのに私が頑張らない訳にもいかんからな。今は振り落とされないように気をつけるといい』

 

「任せろ」

 

ジンの作戦、それはまず飛鳥、ジン、ペストでグリフォンに乗り上空から奇襲をかける。飛鳥は"威光"を使いグリフォンの能力を上げ、ジンが指揮を取り、ペストが巨人を一掃する。そうなれば巨人達は混乱し合図を出す、耀が混乱に乗じ、竪琴の持ち主を探し出し竪琴を奪取。上条は耀が失敗した時のサブとして、耀に続き幻想殺しを効果で竪琴の音色を聴いても何もないのを利用し、隙をついて竪琴の破壊もしくは奪取、そして耀と協力し持ち主を捕縛する。

この作戦の要は耀でいくら巨人達を混乱させて突き破っても竪琴の持ち主を探し出せなかったら意味がない、上条も何もすることがなくなってしまう。これ以上ない大役に耀はある思いを吐く。

 

「…ねぇ。私もさ十六夜みたいに自慢気に笑ったり、上条みたいに戦う事って出来るかな」

 

それは箱庭に来て数ヶ月、フォレスガロや、ペルセウス、そして魔王と色んな敵との戦いで十六夜や上条は沢山活躍し 、十六夜といえばヤハハハと高らかに笑うのが印象にあった。上条は自重しているものの魔王を1人で撃破した。

しかも倒したはずのペストは上条を憎みもせずに友達のように接している。普通なら出来ないことだ。そんな2人に耀は近付きたかった。

 

「俺なんて右手以外普通の人間だぞ?そんな奴の戦い方なんて真似しても仕方ないよ。それに十六夜みたいに笑いたいのなら笑えば良いじゃねぇか」

 

上条は耀が言いたいことをイマイチ理解していないが、十六夜みたいに笑えば良いと言われ試しに腰に手を当て、小さな胸を反らす。上条も耀と同じようにし。

 

「「やはははははははははははは!!」」

 

「……うんこれはない」

 

耀は想像以上に恥ずかしかったのか途中で止める。そして1つわかった、自分がどんなにテンションが高くても絶対にこんな笑い方は出来ないと。

上条も恥ずかしいものの意外と楽しいかったが、真似するつもりなかった。

 

「だな。それに誰かを目指してなろうなんて思うなよ?それは無理な事だ、他人にはなれない。どんなに頑張っても届かないものだってあるから」

 

それは記憶をなくした上条当麻が、記憶を失う前の上条当麻を目指し、結局はなれなかった。今はもう前の上条当麻とは決別した。

今の自分が異世界にいるのだ、もしかしたら前の上条当麻も何処かで元気にしているかもしれない、などとくだらない事を考えていた。

 

「じゃあ私は…私はどうすれば良いのかな…」

 

上条にはそれを答える事ができなかった、それは自分で見つけるしかない。

 

 

 

 

 

 

沈黙しかけたその時、地上にて濃霧が発生した。2人は顔を見合わせる。

 

耀はペンダントを握りしめ眼下を注視する。

耳を澄ませ、ソナーのように超音波を発生させて音源の位置を探る。

この濃霧と音色は視覚、嗅覚も惑せる。

しかし耀がとった行動は音波の元を探る方法。

これは耀にしか出来ない事、耀は自分で気付いていないだけで、ちゃんと自分のアイデンティティを活用しているのだ。

 

「見つけた!」

 

感知した耀は"生命の目録"の力を解放し、グリーから飛び降り流星の如く流れ落ちていく。

 

「グリー!」

 

『わかっている!』

 

グリーの全力をもって急降下し耀の後ろをマークする。今まで感じた事の無い風圧に思わず手を離しかけたが、耀だって耐えたのに自分が離す訳にもいかない。その手に力が再びはいる。

 

そして耀は針の穴に糸を通すように確実に竪琴の持ち主に接近する。

逃亡している最中に視覚外から現れた事で虚をつかれたのだろう、その手に持つ、豊穣と天候の神格をもつ"黄金の竪琴"を耀は奪い取る。反撃されないうちに上空へと飛翔する。その時上条とグリーとすれ違う。

そして竪琴を奪われたローブを被った人間はさして慌てる事もなく、ただ逃げようとしていた。グリーがそれを追い抜き上条を降ろす。

 

「そう易々と逃がすかよ」

 

「……」

 

「大人しく捕まってくれると助かるが…」

 

ローブのせいで顔は見えないが、口元だけがみえた。上条が投降するように呼びかけると不気味に口が歪む。

 

「そうもいかないよなッ!」

 

上条は走り出し一気に接近…しようとするが。

 

「止まれ、人間‼︎」

 

オティヌスの声により走り出す前に上条の動きが止まる。

そして上条とローブの人間を阻むように巨人が倒れ込む。土煙があがり、砂を吸い込んでしまった上条は咳き込んでしまう。

ほどなく砂煙が消え、巨人を回り込むとそこにはもうローブを被った人間は居ない。

居ない以上ここに居る意味もないので、グリーは上条を乗せ浮上する。

 

そして竪琴をバックアップを失った巨人が制圧されるのはそう時間はかからなかった。

 

"アンダーウッドの地下都市"新宿舎

戦いが終わり、破壊された宿舎の代わりに特急で造られた宿舎に上条達は戻る。

そして上条はある人物を探す、戦いが終わった今、優先すべきは十六夜のヘッドホンをどうするかだった。

"ウィル・オ・ウィスプ"のジャック、何回か彼とは交流のある上条はある話を聞いていた。

"クイーン・ハロウィン"は世界の境界を預かる星霊の力を借りることで異世界から呼び出す事ができると。

そして最近その"クイーンハロウィン"の1人を客分として招いたとも。巨人達との戦闘中にジャックはクイーン・ハロウィンと言っていた。つまりジャックさえ見つければヘッドホンの問題も解決するのではないかと。

ジャックを見つけるのは難しくなかった、あのかぼちゃ頭を見つけるなという方が難しい。

 

「いたいた!ジャック、ちょっといいか?」

 

「ヤホ?上条さんですか。話は聞いていますヨ」

 

「それなら話は早いんだけど…今から呼ぶことって出来るか?」

 

「今すぐというか本来なら断固として拒否しますヨ。しかし"ノーネーム"とは長いお付き合いさせてもらう予定なので…お友達料金という事で手を打たせてもらいます」

 

安堵する上条、これで拒否されたら耀に会わす顔がなくなってしまっていたからだ。

 

「ただし問題点が1つあります」

 

「問題?」

 

「はい。厳密には"クイーン・ハロウィン"の力で召喚するわけではなく、星の廻りを操り因果を変える…要するに"耀さんは初めからヘッドホンを持ち込んでいた"という形の再召喚です。なのね耀さんの家にヘッドホンがないと」

 

「…それなら問題ないから大丈夫。十六夜が持っているヘッドホンと、同じメーカーのヘッドホンがある」

 

いつからそこにいたのか耀が上条とジャックの話に入り込む。

耀はヘッドホンを手に入れられる可能性か大きい事を改めて知りどんどん喜色に染まっていた。

 

「本当か⁉︎」

 

「ヤホホ♪了解しました、では準備の方をしてきます」

 

ジャックはその巨大なかぼちゃ頭を揺らしながら上条達から離れた。

 

「でも良くあったな、十六夜のヘッドホンなんて」

 

「…正確には違うけど…ビンテージ物だからあれならきっと十六夜も許してくれる…よね?」

 

「十六夜も仲間想いが強いから大丈夫だと思うけど…いいのか?お父さんの何だろ?」

 

「それは大丈夫。お父さんもお母さんも行方不明だから」

 

耀は自身の身の上を初めて述べた。

上条はそれを聞いてなんてフォローすればいいかわからなくなってしまう。

 

「…ごめん」

 

「ううん。私も上条の話を聞くだけで話していなかったから。…それに」

 

耀は自分の胸にあるペンダントを握りしめる。

 

「私達…上条以外は自分の話をしたがらなかったから。知らないのも当然だと思う」

 

上条は耀から目をそらす。

上条は確かに自分が居た世界のことを話した。しかし自分の過去、上条当麻の歴史や、オティヌスの事、話していない…いや話したくない事は沢山あった。

 

「だからヘッドホンを渡すのを機会に皆でお茶会をしようと思う。やっと出来た友達だもの。関係を維持する努力していかないと」

 

気持ちを新たに、前を向く。

"家族を、友人を、財産を、世界の全てを捨てて箱庭に来い"

そんな無責任で、横暴で、素敵な招待状に耀は応えた。

そんな耀を上条は見ていられなかった。

上条は未だに捨てきれていなかった。

土御門や青髪ピアスと馬鹿みたいに騒ぐ高校生活も、御坂美琴との攻防も、バードウェイから押し切られる非日常も。

 

インデックスとの日々も上条は捨てられていなかった。彼処に戻りたいと思ったこともある、インデックスのあの笑顔をもう一度みたい。

だけどそんなのは許されない、確かにオッレルスは言った。

 

"もう2度と彼女に会えないかもしれないよ?"

 

そう今はもう脆弱な一般人以下となったオッレルスが確かに言った。

オッレルスの過去も聞いた。信じられない…なんてことはなかった。

だから後悔なんてしていない。

後悔した所で懐かしいあの日常はもう帰ってこない、そんな考えは春日部やレティシアにも失礼だ、考えてはいけない。

 

「…そうだな」

 

だから過去をきっぱりと捨てようとしている耀が上条には眩しかった。

 

上条は儀式の邪魔をしたくないため宿舎を離れた。上条がいるだけで幻想殺しが何らかの干渉をしてしまうといけないからだ。時間がどれだけ経っただろか、太陽も真上からすぎていたからお昼は過ぎていた。儀式が成功したのかわからないが、今上条はアンダーウッドの日差しがよかさすところにいた。

日差しは心地よく、昨日も戦争があったとは思えないほど風は穏やかで心地良い。

寝転がっている上条にオティヌスは話しかける。

 

「人間…お前は戻りたいと思うのか?」

 

「前も言っただろ?これは恩返しなんだ」

 

「そうじゃない、確かにお前は言った。償いだと、今はわからないと…!先程の小娘…耀を見ていられなかっただろうが、それは」

 

「捨てきれないってか?確かにそうだよ、だけど…今の生活も楽しい。これは本当なんだ。どちらかなんて選べねぇよ」

 

「……いつかは選ばないといけないんだぞ?」

 

「…わかってる。だけど今は」

 

言葉を続けようとした時、上条は何かを察知し今寝ていたところから急いで離れようとする。

それと同時にある叫び声が聞こえてくる。

 

「かぁぁぁぁみぃぃぃぃじょぉぉぉぉぉぉぉ‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

それは彗星の如くやってきた。

すぐさま場所を離れる上条だが、音速を超えて落下するソレは先程上条がいたところにクレーターを作り、その衝撃で上条は尻餅をついてしまう。

 

「な、何だ⁉︎隕石か⁉︎十六夜か⁉︎」

 

クレーターから這い上がってきたのは不機嫌そうにしている十六夜。そして空からは明らかに怒っているレティシアがいた。

そして上条は悟った。

 

「あっ、これ死んだ」

 

 

 

 

 

 

 

これから先の事を上条はよく覚えていなかった。

十六夜の攻撃を手加減しているとはいえ躱し、空からはレティシアの槍も飛んできていた。

それが日が沈むまで続くと十六夜が飽きたのか何処かへ行ってしまった。レティシアはそれを見送り攻撃を止めるが怒っているのは変わりなかった。バテバテになっている上条に膝枕をしていると説得力が欠けるが。

 

「さて質問するぞ。当麻は何でここにいる?」

 

息を切らしながらも何も上条は何とかして答える。

 

「し…ろやしゃに呼ば…れて。そしたら収穫祭に…行って欲しい…って」

 

「それは知っている、聞いたからな。質問を変えよう、私達が決めたルールを破り、先に行くのはどうかと思うが?」

 

反論ができないのか上条は黙ってしまう。

 

「何より…何も言わず消えてしまうのは止めて欲しい。かなり心配したんだぞ?私は」

 

手紙を書いておいたが確かに"出掛ける"だけじゃ心配されるのも頷ける。

 

「大丈夫だって…何処にも消えやしないさ。大丈夫、レティシアに何があっても必ず守るから」

 

その言葉を聞きレティシアは余程嬉しかったのか笑顔になる。

上条は今は…と言おうとしたが口を閉ざす。そんなのさらにレティシアの不安を煽るだけだから。上条は彼女には笑顔でいて欲しかった。

彼女の笑顔がインデックスと重なる、いや箱庭に来てから1番近くにいた彼女と重ねていた。似てもいない彼女にインデックスと無理やり重ねようとしていた。

だからなのかは分からない。

レティシアと初めて会った時のあの顔にさせたくなかった。心配させたくなかった。

上条の方が弱い、確かにそうだ。だけど上条はレティシアと耀を守る盾いようと決意した。

それは耀も同じだ、何度も彼女の弱い部分を見てきた、一緒に生活し、過ごし、戦いわかった。彼女は心が弱すぎると。

レティシアとは別の意味で彼女を支えたくなった。

無論、上条は自分がそう考えている事に気付かなかった。

 

レティシアも上条の弱い部分を知っている、だからこそ今抱いてる、この悩みは打ち上げられずにいた。

 

無言のまま時が流れる、このまま迎えが来るまで過ごそうとしていたが

 

 

不吉な声と音色が響いたのは、その直後だった。

 

ー目醒めよ、林檎の如き黄金の囁きよー

 

レティシアの体から力が抜ける、突然レティシアが横たわり膝枕どころではない彼女の状態に上条は声をかけようとするが、琴線を弾く音色が3度響き、周囲を見渡す。

するとローブを被った人がこちらに近づいてきていた。

上条はその人物に見覚えがある、そう巨人達との戦いで竪琴を持っていた人物だった。

 

「…どうやら余計な人もいるけど、お久しぶりですね、"魔王ドラキュラ"。巨人族の神格を持つ音色は如何ですか?」

 

レティシアは飛びそうな意識の中、何とか声を出す。

 

「…レティシアには触れさせないぞ」

 

上条はレティシアを守るように立ち塞がる。

それをみたローブの人は驚くがそれだけだった。

 

「…貴方には音色が届いていないのかしら?まぁだとしてもこのまま彼女は貰うわよ」

 

「絶対にそんな事は」

 

させないと言おうとした上条に背中に何かがささる。後ろを振り向こうとするがローブの人が近付き上条を蹴り飛ばす。

その衝撃で腹の傷が開き血がさらに出てしまう。

 

「とうまぁッ!き…貴様は…何者、」

 

薄っすらとする意識の中でレティシアは叫ぶ。

 

「余計な真似を…まぁいいわ。私の事はいいでしょ?だって貴方は」

 

ーもう1度、魔王として復活するのだから。ー

 

「レティシアから…離れろ…!」

 

上条はゆっくりと立ち上がりローブの人に殴りかかろうとするが足に力が入らないのかそのまま崩れてしまう。

 

「面倒ね…殺そうかしら」

 

殺す。その言葉にレティシアは黙っていられなかった。

 

「ッ⁉︎頼む…私の事はどうでもいい、だが当麻だけは助けて…くれ」

 

「あら?"魔王ドラキュラ"でもそんなこと言うのね。ふふっ、いいわ。今この場では殺さないであげるわ」

 

そう言い残し飛翔する。

オティヌスは急いで上条に刺さったナイフを抜く。幸いなのは出血がそこまでしていない事だけでだった。

 

「マズイぞ…人間!このままでは…聞いているのか?おい…!」

 

何とか立ち上がろうとする上条は膝をつき、地面を叩き叫ぶ。

 

「何が守るだよ…!いっちょまえなことを言って、結局はあの時と同じじゃないか‼︎」

 

刹那、空が2つに裂けた。晴れ晴れとしていたはずの空は暗雲に包まれ稲光を放ち"アンダーウッド"の空を昏く染め上げていく。

そして上条は自分の腕からも出たことのあるが比較にならない大きさで、その神話の光景を見た。

 

「GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaEEEEEEEEEEEEEYAAAAAAAAAAAAaaaaa‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

常識外の雄叫びは、それだけでアンダーウッドの大樹を揺らす。

 

 

そうそれは龍だった。

そして魔王の契約書類が降り注ぐ

 

『ギフトゲーム名"SUN SYNCHRONOUS ORBIT in VAMPIRE KING"

 

・プレイヤー一覧

・獣の帯に巻かれた全ての生命体。

但し獣の帯が消失した場合、無期限でゲームを一時中断する、

・プレイヤー敗北条件

・無し(死亡も敗北と認めない)

・プレイヤー側禁止事項

・無し

・プレイヤー側ペナルティ事項

・ゲームマスターと交戦したプレイヤーは時間制限を設ける。

・時間制限は十日毎にリセットされ繰り返される。

・ペナルティは"串刺しの刑" "磔刑" "焚刑"からランダムに選出。

・解除方法はゲームクリア及び中断された際のみ適用。

・ホストマスター側勝利条件

・なし

・プレイヤー側勝利条件

1,ゲームマスター・"魔王ドラキュラ"の殺害

2,ゲームマスター・レティシア=ドレイクの殺害

3,砕かれた星空を集め、獣の帯を玉座に捧げよ

4,玉座に正された獣の帯を導に、鎖に繋がれた革命主導者の心臓を撃て

 

 

宣誓

上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。

" "印』

 

 

 




東方×上条さんの作品が少なすぎる!!

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