とある幻想の異世界物語   作:キノ0421

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遅れて申し訳ない…


言い訳
メタルギア
艦これ
プロ野球
ニコ生

…あ艦これ。暫くは集中して書けると思います!
そしてまたランキング入りしてた⁉︎嬉しすぎて大型回したくなるわ


第17話

 

上条とペストは飛鳥に案内され"アンダーウッド"の地下都市にある、"ノーネーム"の宿舎へと向かった。

そこは巨人の襲撃をうけたせいかぐちゃぐちゃに破壊されていた。

上条は残骸の中で座り込んでいる少女を見つけ走り出す。

 

「春日部…?」

 

声をかけられた耀は背筋が跳ねる。

上条に続くように飛鳥も声をかける。

 

「…春日部さんどうしたの?」

 

耀は震えながら立ち上がる、胸に何かを抱きしめながら。

 

「かみ…じょ…う…あす…か…⁉︎」

 

耀は顔を真っ白にし、後ずさりする。

 

今にも逃げ出しそうな耀に大樹の根が降り注ぐ。

耀は頭上に顔を向けるが、本来なら軽く避けることが出来ただろう。しかし今はいろんな出来事がありすぎた、今の彼女にはそれを避ける事は出来なかった。

避けれないと察し目を瞑る。

その時、耀は誰かに突き飛ばされると同時に鈍い音がした。

耀は恐る恐る目を開ける、飛鳥とペストは呆然としていて何か叫んでいたが耀には届いていなかった。

次に視線を樹の根が落ちた方に向ける。

 

そこでは上条当麻が下敷きになっていた。

 

「え…?か…み…じょう?」

 

か細い声を出すのが今の耀にとって精一杯だった。

 

「上条!」

 

ペストが急いで駆け寄り樹の根をどかしていく、幸いにも落ちてきた数はそう多くもなくすぐに片付くと思っていた。

 

「…まずいわね」

 

根が落ちて打撲だけならまだ良かった、しかし不幸にも上条の腹部には根っこが貫通していた。さらに至る所で出血もしていた。

 

「…そこの赤いの、ここから本部までの場所ってわかるかしら?」

 

「え?…え、えぇ。それより!それを抜かなくていいの⁉︎」

 

耀の様子がおかしいし、上条は怪我をしてしまい、いろんな事が起きてしまい飛鳥はいまいち状況を飲み込めていなかった。

 

「頭の出血が酷いのに、今抜いたら出血多量で死ぬに決まっているじゃない。最低でも止血ができる医療器具がある所じゃないと駄目ね。…運営本部なら医療設備くらいあるでしょ」

 

「わ、わかったわ。春日部さん大丈夫?」

 

「わた…私…のせいでまた…まただ…」

 

呆然と上条を見ることしか出来ず。飛鳥が話しかけても反応がなかった。飛鳥はそんな耀にイラつき無理にでも聞かせようとする。

 

「春日部さん無茶を言うようだけど落ち着きなさい。今は上条君を助けないといけないの、彼が目を覚ました時に貴方がそんなの顔をしていたら、助けた上条君が惨めじゃない。」

 

飛鳥の言葉は耀に届いた。

しかし、それでは弱かった。耀は飛鳥が思っている以上に自分を追い詰めていた。十六夜のヘッドホンを壊し、巨人もまともに迎撃できず、挙げ句の果てにまた上条を怪我させた。全てにおいて活躍できず迷惑しかかけてないと思い込んでいた。

 

「………私は…私は…!」

 

耀は十六夜のヘッドホンエンブレムを強く握りしめる、悲痛な彼女の声。このままでは彼女は確実に潰れてしまう、飛鳥はこれ以上、どう彼女をケアしていいのかわからなかった。ペストは友達など居るはずもなく、ただ見る事しか出来なかった。

飛鳥は声をかけられない自分の無力を呪った、友達1人すら救えない。何が財閥の娘だ、何が"威光"だ、こんな肩書きやギフトは友達を救うのに役に立ちもしない。

 

「私は一体どうれば…」

 

飛鳥の顔は普段の彼女を知る人からすればありえないような表情をしていた。

 

少女の声が聞こえた。

上条の意識がうっすらと覚醒するが痛みがひどく立ち上がることも声を出すこともしんどかった。しかし瞼を薄く開けるとそこには今にも消えそうなくらい弱々しい少女が居た。

その姿だけで上条にとって助ける理由は充分だった。

お腹から力が抜けていくのがわかる、出血が酷いのだろう、それがどうした。

だからって目の前の少女を助けない理由にはならない。

それと上条自身が自分で少女を助けたいと思った。

だったら後は簡単だ、立ち上がり少女を助ける。今の上条はそれしか考えられなかった。

 

「…俺は平気だ…から」

 

少年の声がした、それはペスト達が囲んでいる少年の声。大樹の根や瓦礫に押し潰され、今もなお根が突き刺さっているにも関わらず少年は立ち上がる。

これにはペストも驚いた。普通の人間、いや普通じゃない人間だとしてもこれは重症で立ち上がる事すら難しいであろうことを少年ーーーー上条当麻は立ち上がり何時ものように耀に微笑みかける。

 

「だい…ょう…か?」

 

上条はまともに喋れず、立ち上がる足は震え、今にも倒れそうにしていた。

刺さっている根からは血が滴り落ちる。それは少しずつ落ちる速度は速くなり上条の命を削っていく。上条は呂律を回すため一度深く息を吐く。

呆然とする耀の頭を手を置く上条。

 

「大丈夫…わかってるから。それは春日部のせいじゃない」

 

そういい微笑む。飛鳥の声では届かなかった声が届く。

 

「上条…私はまた…また‼︎」

 

「春日部は強いよな」

 

耀の顔が強張る。

私が強い?友達を助けられず、仲間の想いを裏切り、共に戦いたいと思った人にまた助けられた自分が?

 

「私は…強くない!私は弱いから周りに迷惑を掛けることしか出来てない…私がもっと強かったら…もっとみんなの力になれるのに…!」

 

飛鳥とペストは静観していた、いや入ることができなかった。ペストからしてみれば早く医務室に連れて行きたかったが、今それを止めるほどペストは野暮でない。

 

「春日部は強いな…俺は目の前の誰かを助けることしかできないから。だけど春日部は周りの人みんなの為に頑張っているからな」

 

上条はこの箱庭ではジンの為にガルドと戦い、レティシアの為にペルセウスと戦い、ペストを助ける為にペストと戦ったにすぎない。

周りの人達は勝手に救われただけ、今の上条は箱庭の人達みんなに手を差し伸べられるほど強くないと自覚していたからだ。

 

「そんな事ない…そんな事ないよ…。私とは違ってみんなの役に立ってる、いつも活躍してる。なんでなの…恩恵の差?違う、上条には右手しかない。それだけであそこまでの事は出来ない…」

 

「春日部の強さってのは…ギフトの事を言うのか?なら違う…強さってのは…そんなので…測っちゃ…いけ……な…い」

 

ペストは静観を決めていたが流石に上条の出血が酷いのと段々と呼吸が荒くなっており、汗の勢いが尋常ではない事に焦りを感じていた。

 

「上条、流石にもう貴方が限界よ。説教もいいけど、今は貴方の方が危ないわ」

 

上条を止めようとするため肩を掴むが、それを無視し上条は耀に向かって言葉を続ける。

 

「そうじゃ…ないだろ?春日部のつよ…さは腕っ節のとかじゃ…なく…て………その…」

 

上条はそれ以上言わなかった。いやいえなかった、何とか立っていた身体は力が抜け糸を切った操り人形みたいに倒れようとするのを急いでペストが支える。

 

「あぁもう!言わんこっちゃない!こんな事になってるのにオティヌスはどこに居るのよ⁉︎」

 

いつも上条のすぐそばにいる妖精サイズの少女。

その上条がこんな事になってるのに騒ぎもしないのを見ると離れているとペストは想定したが。

 

「騒がしいぞ、何をそんなに慌てている」

 

上条の肩…ではなくペストの肩に乗り、周りとはうって変わり落ち着いているオティヌスの姿がそこに居た。

 

「騒がしいって…この怪我を見て落ち着いている方がおかしいわよ?」

 

「人間ならこの程度では死なない。それに班女…まお前が助けてくれるのだろ?」

 

ペストはオティヌスの言葉を聞き少し顔を赤くしながら叫ぶ。

 

「ッ…えぇ、そうよ!だからそこの赤いの!さっさとこの娘を立たせて案内してちょうだい!」

 

「わかったけど、私の名前は久遠飛鳥よ。春日部さん…今は上条君の為にも立ちなさい。言いたい事があるのなら彼の意識が戻ってからゆっくりと話しなさい、いいわね?」

 

「…うん。ごめん」

 

そういい耀は立ち上がり飛鳥を抱え飛翔する。後を追うようにペストも上条の右手に気をつけながら浮遊する。

 

 

 

 

 

 

 

 

上条が次に目を覚めしたのは夜も更け、あの騒動が嘘かのように思えるほどの静かな時が流れていた。上条は上半身を起こそうとするも腹部に激しい痛みが走る。

思わず腹に手を当てる、血は出ていなかった…いや傷のあった場所は丁寧に包帯が巻かれていた。

頭も触ると同じように包帯が巻いてあった。

何でこうなったのか、上条を記憶を辿る。よく覚えていないが、春日部と話していたのは所々覚えいた…が途中からの記憶が全くない、そこで自分が気絶したのだろうと推測した。

再びベット寝転がる、すると横から小さいながらも寝息が聞こえた。上条はその方向を向くと、オティヌスが枕のすぐそばで寝ていた。

 

「…心配させちまったな」

 

先程は心配などしていないと嘯いていたオティヌスだが、内心では上条の事を気にしていたみたいだった、あの時は飛鳥や耀にバレたら自身のプライドが傷つくので平然としていたが。

 

「…そうだ、春日部は」

 

「あの小娘なら平気だ」

 

平気なのかと独り言を言う前にオティヌスが未だ目を瞑ったまま遮る。

 

「あくまで身体はだが。心の方は知らんな」

 

「…そっか。所でここどこだ?」

 

「ここは収穫祭の運営本部だ。お前の傷が酷かったから、急遽ここに運び治療した」

 

「…あれからどれだけ経った?」

 

「まだほんの数時間だよ」

 

オティヌスは上条の回復力の高さに呆れたのか、深くため息をつく。

 

「そっか」

 

そして上条は立ち上がる、腹は痛むが立てないほどではなかった。

 

「行くのか?」

 

「あぁ。いまの春日部は放って置けないからな」

 

「そうか、案内するぞ」

 

「ありがとう」

 

オティヌスは一度上条の掌に乗り、肩へと誘導される。

上条が運ばれたのは緊急の救護施設として設けられた区画だった、廊下に出て、耳をすますと獣の呻き声がうすらと聞こえた。

 

「といっても隣の部屋だがな」

 

衝撃の事実にこける上条。

 

「そういうのは早くに言ってくれよ…」

 

部屋の前に立ち、扉を叩く。

数度叩くと、とある少女の声が聞こえた。

 

「黒ウサギかしら?いいわよ入って」

 

上条は扉を開ける、入って来たのが黒ウサギではなく寝ていなければおかしい人を見て驚く。

 

「え?か、上条君⁉︎起きて平気なの⁉︎」

 

「平気じゃなかったら寝てるよ…」

 

飛鳥はベットの脇にある椅子に座っていた。その彼女からベットで寝ている少女に視線を変える。

 

「春日部は?」

 

「今は寝てるわ。疲れていたんでしょうね…そういえざ上条君はこれの事について知ってる?」

 

そういい見せてきたのは炎が描かれたエンブレム。"ノーネーム"の人たちにとっては見慣れている、十六夜のヘッドホンについていた物だった。

 

「…あー、何となくな。でも一つ言えるのは春日部は何もやってないぞ?」

 

「春日部さんがそんなことをする人間だとしたら私はとっくに縁を切ってるわ。そうじゃなくて、これを春日部さんに押し付けた犯人について心当たりはあるかしら?」

 

「……………それは…」

 

上条の長い沈黙をみて飛鳥は感じ取ったのか軽く頷いて微笑む。

 

「……後は上条君に任せたわ…どうやら今の所は私じゃ力不足みたいだし。あぁ、だけど春日部さんを泣かしたら許さないからね?」

 

飛鳥は立ち上がり上条の肩を叩く、上条が横目で見た彼女の顔は…悲しくも悔しい顔をしていた。

 

「わかったよ。俺に出来るかどうかはわからないけど出来る限りやってみるよ」

 

「そうじゃないわよ…まぁ、これ以上言うのは野暮よね…。私は貴方達を応援してるのよ?」

 

「…?何の話をしているんだ?」

 

「そこは自分で考えなさい…」

 

上条の言葉を聞いた飛鳥は頭が痛いのか手で押さえながら部屋を出て行った。

飛鳥の言葉の意味は上条にはわからない。

上条は椅子に座り春日部を見る。

今はベットに横たわり、上条からは後頭部しか見えていなかった。

 

「春日部…聞いてたか?あれが飛鳥の答えだよ」

 

「……………」

 

耀は未だ動こうとはせず黙っている。

寝ているのか起きているのかはわからない。しかし上条は言葉を続ける。

 

「十六夜も言っていたよ。春日部が自分の為に汚い手使うような奴だったら、前夜祭にだって行かさなかったって」

 

しかし耀は動かない、本当に寝ているのかもしれない、寝ていないかもしれない。だけどそんなことは上条にはどうでもよく、さらに続ける。

 

「俺だってそうだ。春日部耀が誰かの大切なもんを盗む奴じゃないって知ってる。それはこの数ヶ月もない短い間だけれど一緒に住んでわかった。……なぁ春日部だって気付いているんだろ?本当はさ誰が盗ったのか」

 

数秒待ち、なんも返答がでず立ち上がり部屋から出ようとする。扉に手をかけ開けようとしたその時。

 

「わかっ…てる。このヘッドホンを盗った犯人も、何で盗ったかも。…その原因が……私にあるのも。全部わかっている」

 

耀はベットから起き上がっていた。しかし上条ではなく手にしたエンブレムを見ながら呟いていく。

 

「でもそんな事は関係ない。結局は私の為にやろうとした事だから。だから経緯はどうあれ私のせいには変わらない…今の私がしなきゃいけないのは、このヘッドホンを直すことだけど…」

 

このエンブレムを見るからにヘッドホンは粉々になっているだろう、修復は不可。どうするか考える耀に上条がある提案をする。

 

「これは誰のせいでもないよ。ただ春日部の運が悪かっただけだよ。それとヘッドホンの事なんだけど何とかしてくれそうな奴に心当たりがある。…一応春日部も知っているやつだよ」

 

耀は誰の事だかわからず、頭に?マークを浮かべているかのように首を傾げる。

誰?も考える耀だが扉の向こうから聞こえてくる声に反応し顔を向ける。

 

「えっとっと、"ノーネーム"の春日部耀さんと。此処でいいですか?三毛猫の旦那さん?」

 

『ありがとな、鉤尻尾の姉ちゃん。此処まででええよ』

 

「いえいえ、あんなのを聞いて見て見ぬ振りしては"六本傷"の名折れですからクッション役になりますよ」

 

『流石にそこまでやらすのは…うーん』

 

上条からは女性の声とニャーニャーと猫の声しか聞こえないが耀にははっきり聞こえ、その顔にどうするか悩んでいるように見えた。

 

「春日部にとって三毛猫がどんな存在なのかはわからないけど向き合う時はちゃんと向き合わないとな」

 

「…うん。わかった」

 

「三毛猫の旦那さん!うじうじしてても仕方ないですって!」

 

勢いよく扉を開かられる、現れたのはいつもの噴水広場にカフェテラスを持つ鉤尻尾の店員と三毛猫だった。

 

「どうもですよー常連さん!向こうの方で打ちひしがれていたら、三毛猫の旦那さんを連れてまいりましたー!」

 

『うおおおおい!そんな暴露必要ないやろ!』

 

「えー?でも本当に、この世のドン底みたいな顔で参ってたじゃないですか」

 

『そ、それは姉ちゃん、色々と事情が……』

 

やはり上条には猫の鳴き声にしか聞こえない、あの三毛猫がなんて言っているのかはわからない。しかしこの世のドン底みたいな顔と聞く限り、あの三毛猫もあれを見たのだろうと推測する。

 

「三毛猫…」

 

店員の腕の中で跳ね上がる。店員から猫を受け取る、三毛猫は受け取る際に耀の近くにいた上条に気がつく。

 

『にゃ⁉︎何であんさんが此処におるんや⁉︎』

 

三毛猫が上条に対し鳴くが当の本人には届くはずもない。しかし耀には届く、気になってはいた。

上条が此処にいる理由、何でペストと一緒にいるのか。しかし今はそれよりも今まで一度も耀を困らせたことなど無かった三毛猫に対し悲しそうな顔で問う。

 

「どうして…?」

 

耀は理由が知りたかった、自分の一番の理解者である三毛猫が何故にこんな事をしたのか、その理由を。

 

『お嬢が行きたがってたのに…あんなに頑張っていたのに。それが余りにも不憫やったから…仕返しに…』

 

そんな事で…と責めたい気持ちがあるが、そもそも三毛猫をそんな気持ちにさせたのは、やはり自分が原因だ。

犯人はわかった、しかしそれで終わりにしちゃいけない。ならやる事は一つと耀は意気込む。

 

「上条…あの話お願いできる?」

 

「もちろんだ。っとその前に三毛猫と話をさせてくれないか?」

 

「いいけど…三毛猫の言葉わかるの?」

 

「わからない。まぁ俺が一方的に話すだけだから」

 

そういい耀から三毛猫を受け取り、耀達に聞こえない距離まで行く。

 

「これは俺の憶測でしかないけど、春日部にとってお前は一番の"理解者"なんだろ?」

 

『そうだにゃぁ、お嬢は昔から知り合いが出来てもすぐに気色悪がられていて…友達と呼べるのもわいくらいで…』

 

「ならさ…何で耀の事を信じてられなかったんだよ」

 

突然の上条の言葉には三毛猫も黙っていられなかった。

 

『信じ…⁉︎あんさん!わいを馬鹿にしてるのか⁉︎わいはいつもお嬢の為に…!』

 

ニャーニャーと騒ぐ三毛猫、その反応を見るからに反論してきてるのだろう。

 

「なら何で…十六夜のヘッドホンを盗んだんだよ…。これも確信はないけど春日部のバックに入れただろ?それで春日部が動揺しないはずないだろ」

 

『…それは…』

 

「それにだ。お前は知らないだろうけど、壊れたヘッドホンを見つけた時の春日部は…一歩間違えれば精神が崩壊しても可笑しくはなかったぞ?」

 

『そんにゃ…わいのせいで…』

 

「いいか何も"理解者"だからって何とかしようって思わなくていいんだ。今回は間違ったかもしれない。でもそんなんで崩れるほどの関係じゃないだろ?」

 

『当り前にゃ!』

 

三毛猫はニャ!とだけ鳴く。それがどんな意味なのかはわからないけど三毛猫の雰囲気は先程と明らかにかわっているのはわかった。

意思を確認した上条は長話するわけにもいかず耀のところへ戻る。

 

「…終わった?」

 

「あぁ、といっても俺の独り言みたいなもんだけどな」

 

話が終わり三毛猫を耀に返す、春日部の腕の中で三毛猫は最後に鳴いた。

 

『わいもこの先そこまで長くない。その時はあんさんにお嬢の事を任せるにゃ。』

 

言葉がわかる店員と耀は三毛猫の発言に驚く。店員は何か微笑ましい視線を上条に送る。

 

「やったじゃないですかー!三毛猫の旦那さん公認ですよ!」

 

「え、今こいつなんて言ったの?」

 

「ふふふ、それは自分で気付かないとおもし…じゃなくていけません!」

 

「え…?…どういう事なの?」

 

上条が気付かないのもそうだが、三毛猫の言葉の真意がわからないのは耀も同じだった。

 

『はぁ、しかしとうとうお嬢にもその時が来るとは…。悲しいような、嬉しいような…』

 

「まぁまぁ、三毛猫の旦那さん。ここは素直に喜びましょうよ!」

 

「…何の話をしているのかわからない」

 

「俺に至っては三毛猫が何言ってるのかすらわからないがな…」

 

再び三毛猫と店員のわちゃわちゃも騒ぎ始める。上条はそんな2匹?を無視し耀を連れ出す。

 

「まぁ、あいつらはほっとくとして…立てるか?」

 

「うん。…上条の方こそ大丈夫なの?」

 

「問題ない。さてと…春日部、ここの代表者がいる場所ってわかるか?多分そこに居るはずだから」

 

「…いる。案内する」

 

店員と三毛猫を放ったらかしにし扉を開け部屋から出る。すると待ってたのか飛鳥が壁にもたれかかっていた。

 

「終わったかしら?」

 

「…うん、ごめんなさい…」

 

耀から謝られた飛鳥は目を丸くし、驚くがすぐに優しく微笑み耀の頭を撫でる。

撫でられた耀は顔を赤くし照れる。

 

「えっ…飛鳥?」

 

「春日部さん、この場合謝るのは私の方なのよ。貴女がそんなに悩んでいたなんて気付かなかったもの。私の方こそごめんなさい」

 

「…飛鳥は悪くない」

 

飛鳥は手を離す。

「良い悪いじゃないの。私は友達なのに春日部さんの初めての友達なのに気付けなかった。でも上条君は気付いた。正直に言って悔しいわ。だから次こそは私が一番に気付いてみせるわ」

 

「…ありがとう」

 

その言葉が聞きたかったのか飛鳥はにっこりと笑う。

 

「それでいいのよ。あと!今度は上条君だけじゃなくて私や黒ウサギにも頼るのよ?」

 

「…うん」

「…何だろう、感動するべきなんなけど、初めて女子達の普通の絆が見れた気がする」

 

御坂と白井といい、アイテム、必要悪の教会とまともな女の友情をしているのを見ていなかった上条にとって新鮮に映っただろう。

 

アンダーウッド収穫祭本陣営

上条は耀と飛鳥に案内された、扉を開けると、巨人と激戦を広げていた竜種の女性に、黒ウサギ、ジン。

そして今回の目的でもあるカボチャ頭のジャックが居た。

 

「上条さん⁉︎怪我は大丈夫なんですか?それに何でここにいるんですか⁉︎」

 

「黒ウサギ殿、この人が例の?」

 

「ちゃっと⁉︎話を…えっ、そ、そうですけど…」

 

「なるほどな」

 

褐色肌の女性は黒ウサギから何らかの話を聞いたのか上条に興味を示していた。

褐色の女性の横で、そのデカイかぼちゃ頭を揺らしながらジャックは愉快に笑っていた。

 

「ヤホホホ♪相変わらずで何よりです」

 

「相変わらずって…俺がお前に会いに行く時だってそこまで怪我してないだろ?」

 

「6割くらいの確率でしてたはずですが?」

 

上条はこれまで数度に渡ってジャックと会いギフトゲームやら、普通にお茶したりと交流していた。理由としてはジャックが上条の右手を調査、あとは個人的な依頼が主だった。上条はそれを条件付きで了承した。因みにジャックのリーダーにも会ったことがあるがその話はまた別。

 

「そ、それよりジャック。前に話をしていたアレ。今からでも出来るか?」

 

「おや、アレですか。少し時間を頂きますがよろしいですか?」

 

「あぁ、頼む。黒ウサギ。ちょっとジャックを借りて行くから。黒ウサギも詳しい話ならペストにでも聞いてくれ」

 

先程からハリセンを振り回しながら騒ぐ黒ウサギを無視しジャックを連れて行こうとた、その時、緊急を知らせる鐘の音がアンダーウッドに響き渡る。

扉から入ってきたら樹霊の少女が焦りと、恐怖を抱いた表情で叫ぶ。

 

「た、大変です!巨人族がかつてない大軍を率いて………アンダーウッドを強襲し始めました!」

 

直後、地下都市を震わせる地鳴りが辺り一帯に響く。

 


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