とある幻想の異世界物語   作:キノ0421

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どうもお久しぶりです

最近就活や課題に追われ書くスペースが遅く…元から遅いか笑
最近感想が増えてめちゃくちゃ嬉しいです!

それと問題児第2部…
この物語が続くとしたらどうなることやら


14話

 

"黒死斑の魔王"との戦いから1ヶ月。

上条達は今後の活動方針を話し合うため、本拠の大広間に集まっていた。

大広間の中心に置かれた長机には上座からジン=ラッセル、逆廻十六夜、久遠飛鳥、上条当麻、春日部耀(オティヌス)、黒ウサギ、メイドのレティシア、そして年長組の筆頭に選ばれた狐娘のリリが座っている。

"ノーネーム"では会議の際、コミュニティの席次順に上座から並ぶのが礼式である。

十六夜が次席にいるのは、水源の確保、同士の奪還など、様々な戦果を挙げているためだ。

上条が何故4番目にいるかというと、魔王を単独撃破をしたはいいが、あれは自分のわがままだからという理由でその戦果を拒否したためであり、飛鳥はディーンを使い農場の人手不足を解消したのが戦果として大きかった為である。

そしてリーダーでもあり旗頭であるジンだが、ガチガチに緊張した面持ちで上座に座っていた。

十六夜はそんなジンを見てヤハハと笑ってからかう。

 

「どうした?俺よりいい位置に座ってるのに随分と気分が悪そうじゃねぇか」

 

「だ、だって、旗本の席ですよ?緊張して当たり前じゃないですかっ」

 

自分のローブを掴み反論するジン。しかしそれだけではない。

十六夜みたいな戦果をあげてない自分に引け目を感じていた。

 

「あのなぁ、御チビ。俺達の戦果は全て"ジン=ラッセル"の名前に集約されて名刺代わりとして広がる。そのお前が上座に座らないでどうするんだよ」

 

「Yes!事実この1ヶ月で届いたギフトゲームの招待状は、全てジン坊ちゃんの名前でとどいております!」

 

黒ウサギが机に広げて見せたのは、それぞれ違うコミュニティから送られてきた招待状だった。

 

「苦節3年…とうとう我らのコミュニティにも、招待状が届くようになりました。それもジン坊ちゃんの名前で!だから堂々と胸張って上座にお座りくださいな!」

 

黒ウサギはいつも以上にはしゃぐ。

対照的にジンは、さっきより思いつめたように俯く。

 

「だけど、それは」

 

ジンが呟く前に、飛鳥の急かすような声が遮る。

 

「それで?今日集まった理由は、その招待状についた話し合うためなのかしら?」

 

「は、はい。それも勿論あります。ですがその前に、お伝えしたい事があり集まってもらいました。…リリ、報告をお願い」

 

「う、うん。頑張る」

 

リリは割烹着のすそをととのえて立ち上がり、背筋を伸ばして現状報告を始めた。

 

「1ヶ月前に十六夜様達が戦った"黒死斑の魔王"が、推定5桁の魔王に認定されたからです。"階級支配者"に依頼されて戦ったこともあり、規定報酬の桁が跳ね上がったと白夜叉様からご報告がありました。これでしばらくは皆お腹一杯食べられます!」

 

2尾を振りながらはにかんで喜ぶリリ。

隣に座っていたレティシアは眉をひそめ、そっとたしなめる。

 

「リリ。はしたないことは言うのはやめなさい」

 

「あ、す、すみませんっ」

 

リリは狐耳を真っ赤にして俯いた。

自慢の2尾もパタパタと大慌てである。

 

「推定5桁ということは、本拠を持たないコミュニティだったの?」

 

「は、はい。本来ならたった3人のコミュニティが5桁に認定されることはそうないみたいですけど、"黒死斑の魔王"が神霊だったことやゲーム難度も考慮したということらしいです」

 

本拠を持たない。

その言葉に上条はある事を思い出す。

 

それは白夜叉の部屋で教育をしている最中の事。

いつも通り白夜叉に着せ替え人形にされ、その後レティシアから家事や炊事などを教え込まれていた。それらの休憩中の事だった

 

「ペスト…いくらなんでも酷過ぎやしないか。これなら上条さんでも余裕でこなせるぞ?」

 

「うるさいわね…。私には帰る家がなかったから料理や洗濯なんてやったことなかったのよ。私は魔王になるために召喚されたのだから、そういうのには縁が無かったのよ」

 

「じゃあ魔王の時は誰が家事とかやってたんだ?」

 

上条からしてみれば、あのメンバーは誰も家事をするタイプとは到底見えずにいた。

しかしペストの口から出た言葉は上条の予想を裏切った。

 

「家事とかは全部ヴェーザーよ。まぁ家が無かったから家事と言っても、まともにやってなかったけど」

 

予想もしてない人物が家事をしていた為、思わずずっこける上条。

 

「とりあえずは卵焼きを焦がさない所から始めないとな。あと洗濯も課題はたくさんあるからな」

 

「わ、わかってるわよ!見てなさい、今に卵焼きくらい完璧に作って見せるから!」

 

「へいへい。期待しないで待っとくよ」

 

そう言い笑う上条、ペストそれを見て不満があったが何も言わなかった

 

 

上条にとってこの1ヶ月はとても平和な物だった。

そんな平和な毎日に違和感こそあれど、それを拒むことはない。

ペストの教育が主で、特に大きなゲームに参加することもなかったため怪我もしなかった。

初めて過ごした平穏の日々の思い出に浸っていると、話を聞いていないのがレティシアにバレたのか影で突かれる。

 

「つまり主人達には、農園の特区に相応しい苗や牧畜を手に入れて欲しいのだ」

 

「牧畜って、山羊や牛のような?」

 

「そうだ。都合がいいことに、南側の"龍角を持つ鷲獅子<ドラコ・グライフ>"連盟から収穫祭の招待状が届いている。連盟主催ということもあり、収穫物の持ち寄りやギフトゲームも多く開かれるだろう。中には種牛や希少種の苗を賭けるものも出てくるはず。コミュニティの組織力を高めるに、これ以上ない機会だ」

 

話を聞いていなかった上条だがとりあえず苗などを手に入れればいいと解釈する。

黒ウサギは"龍角を持つ鷲獅子"の印璽が押された招待状を開いて内容を簡単に説明する。

 

「今回の招待状は前夜祭から参加を求められたものです。しかも旅費と宿泊費は"主催者"が請け負うという"ノーネーム"の身分では考えられない破格のVIP待遇!場所も"アンダーウッド"といって境界壁に負けないほどの迫力がある大樹と美しい河川の舞台!皆さんが喜ぶとこは間違いございません!」

 

黒ウサギが胸を張って紹介する。彼女がここまで強く勧めてくるのは非常に珍しい。

問題児達は顔を見合わせる

 

「黒ウサギがそこまで言うのは珍しいな。これは期待するしかないな。何たって"箱庭の貴族"なんだし。…十六夜もそう思わないか?」

 

「そうだな"箱庭の貴族"の太鼓判だぜ?それは壮大な舞台なんだろうな…お嬢様はどう思う?」

 

「そんなの当たり前じゃない。だってあの"箱庭の貴族"がこれほど推している場所よ。目も眩むぐらい神秘的な場所に違いないわ。…そうよね、春日部さん?」

 

「うん。これでガッカリな場所なら…黒ウサギはこれから、"箱庭の貴族(笑)"だね」

 

「"箱庭の貴族(笑)"!⁉︎な、なんですかそのお馬鹿っぽいボンボン貴族のネーミングは⁉︎我々"月の兎"は由緒正しい貞潔で献身的な貴族でございますっ!」

 

「献身的な貴族っていうのが胡散臭いけどな」

 

十六夜はヤハハと笑い黒ウサギをからかうと、黒ウサギは拗ねたのか頬を膨らませてそっぽを向いた。

上条達のやりとりに苦笑いを浮かべたジンはコホンとわざとらしく咳払いして一同の注目を集める。

 

「しかし1つだけ問題があります」

 

「問題?」

 

「はい。この収穫祭ですが、20日ほど開催される予定で、前夜祭を入れれば25日。約1ヶ月にもなります。この規模のゲームはそう無いですし最後まで参加したいのですが、長期間コミュニティに主力が居ないのはよくありません。そこでレティシアさんと共に1人か2人ほど」

 

「「「嫌だ」」」

 

即答だった。上条を除く問題児達3人はあまり前のことを言ったかのように平然とした顔でジンを見返す。

ジンは上条に救いを求めるような表情で見つめる。

 

「俺が残るにしても、白夜叉に用事があるから5日間ずっと残れる訳じゃないからなぁ」

 

ジンは少し俯き、そしてテーブルに乗り出す。

 

「でしたらせめて日数を絞らせてくれませんか?」

 

「というと?」

 

「前夜祭を2人、オープニングセレモニーからの1週間を4人。残りの日数を3人のプランでどうでしょうか?」

 

しばし顔を見合わせた後、耀が質問を返す。

 

「そのプランだと、1人だけ全部参加できることになるよね。それはどうやって決めるの?」

 

「俺はオープニングセレモニーが終わってからでいい、でそうなると2人になるんじゃないか?」

 

上条だって祭を楽しみたいし、できるだけ長く居たい。だけどそれで喧嘩になるのならと辞退しようとするが十六夜がそれを止める。

 

「別にそれでもいいが、どうせなら上条、春日部、お嬢様、俺でゲームをして決めるってのはどうだ?」

 

「ゲーム?」

 

「あら、面白そうじゃない。どんなゲームをするの?」

 

「そうだな…"前夜祭までに、最も多くの戦果を挙げた者が勝者"ってのはどうだ?期間までの実績を比べて、収穫祭で戦果を挙げられる人材を優先する。…これなら不平不満はないだろ?」

 

十六夜の提案に上条、飛鳥、ようが見合わせる。

3人は頷きあって承諾する。

 

「わかったわ。それでいきましょう」

 

「うん。…絶対に負けない」

 

「…本当は俺だって祭なら出来る限り最後まで居たいからな。手加減はしないぞ」

 

不敵な笑みを見せる飛鳥、珍しくやる気の耀、ヤハハと軽薄な笑みを浮かべる十六夜。それと対峙する上条。

こうして問題児4人は、"龍角を持つ鷲獅子"主催の収穫祭参加を掛けてゲームを開始したのだった。

 

会議が終わり、各々部屋に帰ろうとするが上条と耀は黒ウサギに呼び止められる。

 

「上条さん、春日部さん、少しよろしいでしょうか?」

 

「…何?」

 

「実はですね、2人宛に招待状が送られてきたんですよ!」

 

「俺と春日部にか?差出人はだれなんだよ」

 

「なんと"ウィル・オ・ウィスプ"からなんですよ!」

 

上条と耀宛に招待状が来たのがそんなに嬉しかったのか、まるで自分の事みたいに喜ぶ黒ウサギ。

 

「"ウィル・オ・ウィスプ"…あのジャックが居るコミュニティだったよな?何でまた俺たちに招待状を送ってきたんだ」

 

「何でも春日部さんに火龍誕生祭のお返しをしたいそうです」

 

「…私に?」

 

耀は名前を呼ばれたのが意外なのか首を傾げる。

 

「Yes。アーシャ=イグニファストさんが春日部さんに物凄く対抗心を抱いていると聞きました」

 

「あぁ、あの娘か。よかったなライバルが出来て」

 

春日部は複雑そうにし、話を進めようとする。

 

「いつやるの?」

 

「明後日にでも白夜叉様が案内してくれるそうです」

 

「…そう。ありがとう黒ウサギ」

 

明後日にやるのならそれまで他に戦果を集めなくてはと足早に大広間を後にする。

残った上条も続くように出る。

ギルドを出ようとすると後ろから話し掛けられる。

 

「上条。」

 

話し掛けてきたのは十六夜だった。屋敷の上で上条が来るのを待ち構えていた。

 

「何だ十六夜か。どうした」

 

「最近、白夜叉の所に行ってるが、何しているんだ?」

 

「あー…内緒ってことで、それじゃ、十六夜も頑張れよ!」

 

ペストの事は十六夜達には言わないようにと、白夜叉に言われていた上条は逃げるように走り去った。

呆気に取られた十六夜は見送るしか出来なかった。

 

場所は"サウザンドアイズ"支店に変わる。

上条が店に近づこうとすると、いつも通りに竹箒で掃除をしている割烹着を着た店員と目が合う。

 

「今日もですか」

 

「今日もだよ」

 

「レティシアさんなら既に来ています。中に入ってください」

 

ここに十六夜や他の人達が居たらそのまま入店させて貰えなかっただろう。上条は毎日でないにしろ結構な頻度で来ているため、その度に通せんぼだのしていては面倒な為、割烹着の店員はレティシアと上条は基本は何も言わずに見送ることにしている。

上条もそれがわかっているため、そそくさと店内に入る。そして白夜叉の部屋へと向かう。

 

「来おったか」

 

テーブルを中心とし、白夜叉とペスト、レティシアがお茶を飲みながらくつろいでいた。

 

「遅かったな。何かしていたのか?」

 

「黒ウサギに呼び止められてな。明日"ウィル・オ・ウィスプ"とギフトゲームすることになったんだよ」

 

「"ウィル・オ・ウィスプ"とギフトゲームを?」

 

「その事なら私が代わりに説明しよう」

 

レティシアの質問を上条の代わりに白夜叉が答える。片手で広げていた扇子を甲高い音を鳴らし閉じる。

 

「"ウィル・オ・ウィスプ"のアーシャ=イグニファストが、春日部耀に再戦を申し込むので私に案内役にと頼まれての。」

 

しかし招待状には上条の名前もあった、なぜ再戦するのに必要のない自分もと、疑問が浮かんだ上条は白夜叉に質問する

 

「それじゃ俺は何のために呼ばれたんだ?春日部だけなら俺は必要ないだろ」

 

「ジャックがおんしの事が気になるらしくての、一緒に来るといいとの事だ」

 

「俺に…?そういう事ならいいけどよ」

 

「うむ。では今日も始めるとするかの」

 

そういい皆の視線がペストに集まる、煎餅を食っていたペストは軽く項垂れる。

 

「もう始まるのね…」

 

「今日は何をするんだ?」

 

「本来ならメイドとしての教育を終えて卒業してもいいのだがの…」

 

口を閉ざしペストを横目で見る白夜叉の表情はなんともいえずにいた。

それを見たペストは睨み返す

 

「な、何よ」

 

「掃除や洗濯は全く問題ない。しかし料理がな」

 

白夜叉の言葉が不服なのかペストは拗ねたように白夜叉から顔を背ける。

 

「私にだって得手不得手くらいはあるわよ。それに料理は食えればいいのよ」

 

「お前なぁ…だからと言って苦手なままでいいのかよ?」

 

ペストは上条の言葉に対し立ち上がり、部屋から出ようと扉まで向かう。

 

「…別にこのままにするつもりはないわ。それといつまでも私が苦手なままだと思わない事ね。…そうね、何か作ってあげるわよ」

 

そういい部屋を出たペストは、先程まで自信が無かったような表情だったが、しかし今は何かを決意し覚悟を決めた表情をしていた。

 

「急にやる気を出してどうしたんだ…」

 

「私が知るわけなかろう。しかしあやつがやる気を出すのも珍しいもんだの」

 

「あの自信…もしかして1人で練習していたのかもな」

 

「練習ならしていたがのぉ…」

 

3人ともペストの行動に驚きつつも、期待して料理ができるのを待った。

レティシアは上条の事を観察しているとある事に気づく。

 

「主殿。そういえばオティヌスはどうした?先程の会議にも出ていなかったようだが」

 

「あぁ。オティヌスなら居るけど、ずっと寝てるよ。興味がない、ってそれからずっとカードになったまま」

 

「随分と便利に使っているようだの…」

 

白夜叉はオティヌスの使い方に少し呆れ、苦笑いをしていた。

その後、ペストの料理が出来るまでくだらない雑談をした。

数十分も飽きもせず話していると扉からノックをする音が聞こえ、そのまま扉は開かれた。

 

「出来たわよ」

 

ペストが作ったのは箱庭の世界でも人気のある料理の一つ。

オムライスだった。簡単そうに見えて実は奥深い料理である、まずチキンライスだが普通の人ならご飯と一緒にケチャップを炒めるが、それをしてしまうと上手くご飯とケチャップが混ざらず赤と白がマーブル状になってしまう。

もちろんオムライスの要でもある卵もふわトロにするにはそれなりの技術が必要となってくる。

定番の料理ではあるがその実、難易度の高めとなっている。

 

「見た目は…綺麗にできているな」

 

「もっと悲惨なことになると思っていたが…意外とやるではないか」

 

「いくら見た目は綺麗に出来ていても、味が良くなければ意味がないぞ」

 

「貴方達…流石に酷いわよ」

 

三者三様に感想を述べる、ペストがぽつりと呟くが無視する3人。まず上条がスプーンでオムライスをすくい、そのまま口に運ぶ。

 

「……」

 

咀嚼を終えて飲み込む。

ペストはただそれを黙って見守る

 

「…普通だ」

 

「へ…?」

 

上条の感想を聞き、聞き直すペスト。

 

「ど、どういう事よ」

 

「いや、不味くはないんだよ。だけどとびきり美味いって訳でもない。何処にでもあるオムライスって感じがするんだよな」

 

上条の言葉を聞いて白夜叉とレティシアもオムライスを食べる。

 

「…確かに普通のオムライスだな」

 

「文句のつけようのない普通のオムライスだ」

 

「貴方達ね…これでも私なりに全力を尽くしたつもりなのだけれど」

 

壁に手をつき溜息をつくペスト。このオムライスは今のペストに出来る最大限の料理だった、それを普通と評されて落ち込まないはずがない。

 

「でも最初と比べれば大躍進じゃないか⁉︎あの時のダークマターを精製したとは思えないから!」

 

「あの時は黒焦げだったのに、よくここまで綺麗に焼けたと思うぞ」

 

「うむ。隠れて練習してた甲斐があったの」

 

上条達はペストをフォローする、もちろんその言葉に偽りはない。

それで気を良くしたのかペスト振り返り無い胸を張る。

 

「と、当然よ!あれで不味いなんて言われたら流石に傷つくどころじゃないわ」

 

「白夜叉、ここまで出来たんならもう卒業でいいんじゃないか?」

 

「私もそれに同意見だな。ここまで出来るのなら問題はない、たとえ料理ができなくとも掃除などでも仕事はできるからな。出来ないことは後で覚えればいい」

 

白夜叉は上条とレティシアの意見に頭を悩ませる。

 

「おんしたちがそれでいいのならよいのだが…。となると今から連れて行くかの?」

 

白夜叉の質問に上条はすぐに答えようとしたがある事を思い出しす。

 

「あー、今はやめた方がいい」

 

「それは何故じゃ?」

 

「白夜叉も知っているだろうけど、"アンダーウッドの収穫祭"の前夜祭に誰か行くかで競い合ってるからな。今行ったとしても皆がいるとは限らないんだよ。」

 

「ふむ…。どうせなら皆に紹介させてやりたいのぉ。皆が揃うのは何時じゃ?」

 

「収穫祭の前夜祭が終わってからの1週間かなぁ」

 

「ならその時にペストを紹介するといい。それまでは此方で預かるし、引き続き教育もする」

 

「そうしてくれると助かるよ。それでいいかペスト?」

 

「別に。問題はないわ」

 

「うむ。では卒業祝いとしてペストには色々な衣装を着せるとしようかの」

 

その言葉を聞いた瞬間、ペストは脱兎のごとく部屋を出ようとする。しかしレティシアはそれを読んでいたのか扉の前に立ちはだかる。

 

「そこを退きなさい。私はもう着せ替え人形になるのは御免なのよ」

 

「悪いが、それは出来ない」

 

ペストはレティシアをすり抜けて扉を開けようとする。しかしレティシアはそれすらも読んでいたのか動きを先回りして組み伏せる。

 

「無駄なあがきよ。上条、そやつを抑えといてくれ、右手でな」

 

上条の幻想殺しがあればペストはギフトを使えない、ギフトが使えなくなればここから出ることはもう不可能だろう。

そしてペストに近寄ろうとする、しかし上条は幼い少女を抑えつけるのに何かいけない気分になる。

 

「なんか背徳感があるんですが。それは」

 

「そんなもの今は必要ない。捨ててしまえ、やれ」

 

「ハイ」

 

白夜叉の圧力に屈服してしまう上条。

 

「い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎‼︎」

 

その悲鳴を、いまだに店前の掃除をしている割烹着を着た店員は、もう何度目になるのかと数えるのをやめため息をついた。

 

 

 

 

 

 

ペストのオムライスを食った翌日。

耀と上条は招待状に書かれている通りに白夜叉の所へ向かう、"ウィル・オ・ウィスプ"とのギフトゲームをするために。

 

「春日部、用意はいいか?」

 

「…うん。問題はない」

 

「昨日、白夜叉から聞いた話だと春日部だけがギフトゲームをするみたいだな」

 

招待状にはゲームの詳細は書いておらず、日程と場所についてだけ書いてあっただけだった。

 

「そうなの?」

 

「あぁ。だから、今回は春日部1人でゲームをする事になる。勿論相手も1人」

 

「…そう」

 

1人だけの戦いと聞き、耀は少し残念そうにする。上条はそれには気付くが理由まではわからなかった。

その後、オティヌスを含め3人はは"サウザンドアイズ"に着くまでたわいもない談笑をした。

"サウザンドアイズ"支店に着くと店前にいる店員がいつも通りに上条達を部屋に案内する。

 

「ちゃんと来たようだな」

 

「…アーシャは?」

 

「あやつなら既に来ておるよ」

 

「私の事を呼んだかい?」

 

後ろから声が聞こえた。

振り向くとそこにはゴスロリ衣装を着たアーシャ=イグニファストが立っていた。後ろには扉から入れるのか怪しい位の大きさのかぼちゃ頭のジャックも居た。

 

「ヤホホ お久しぶりですね」

 

「役者は揃ったようだの。早速で悪いが今回の舞台を用意させてもらうぞ」

 

そういい手を叩くすると、一面が火龍誕生祭で見た樹の根で視界が包みこまれる。

 

「これは…あの時のか?」

 

「うむ。アーシャがどうしてももう一度このゲームをしたいといっての」

 

舞台が現れアーシャは笑い、耀を指さす。

 

「この前は負けたけど、今日は絶対に負けないんだから覚悟しなさいよ‼︎」

 

耀は同じゲームで、同じ相手。しかし今回は上条が居ない。それは相手も同じでアーシャもジャックが居ないなかで競わなければならない。だがそれでも耀は負けるつもりなど無かった。

 

「…何度やっても同じ」

 

一方的にライバル視されている耀だが、耀も自分で自覚はないもののアーシャとの勝負に闘争心を燃やしていた。

そして白夜叉によりギフトゲームの詳細が話している。ジャックは本来の目的でもある上条に近寄る。

 

「ヤホホ アーシャもやる気満々ですね。…上条さん、少しよろしいでしょうか?」

 

「そういえばジャックは俺と話をしたかったんだよな」

 

「単刀直入に聞きます。貴方のギフトは一体何ですか?」

 

ジャックが聞きたかったこと、それは誕生祭の大会で自分を打ち負かした…いや攻め切れなかったギフトの正体だった。

 

「私の炎がこうも一方的に通用しない…いえ、消されるギフトなんて聞いたことありません」

 

ジャックの炎は地獄な炎を召喚する事が出来るが、手加減したとはいえ無効化出来るギフトをジャックは知らなかった。

上条が説明するか、しないかで悩んでいるといつの間にか現れていたオティヌスが代わりに話す。

 

「簡単に敵に教える程、私は馬鹿じゃないぞ」

 

「勿論、タダで教えてもらうなんて思っていません。"ウィル・オ・ウィスプ"の商品をそれなりのお値引き致します。さらに同盟とまではいきませんが、私に出来ることがあるなら協力します。それでどうですか?」

 

上条はジャックが提示した値引きという文字に惹かれつつも、冷静に対処した。

 

「勝手に商品の値段とか変えていいのかよ」

 

「勝手ではありません。ちゃんとコミュニティのリーダーから許可を取っています」

 

「そこまでしてお前はコイツの情報を聞きたい理由を知りたいという事か」

 

オティヌスが睨みつける。

ジャックはオティヌスからくる威圧感に冷や汗をかいてしまう。その身体のどこからここまでの威圧感を出せるのか驚く。

 

「ヤホホ…これは驚きました。まさかこれ程とは。…理由といいましたね、私の炎は地獄の炎と同一のものです。これは簡単に消せるものではない。それこそ地獄に特化したギフトでない限り、しかし貴方は私が出した普通の炎さえ消して見せた。これはおかしい、地獄の炎と、ただの炎はまるきりの別物。2つとも消せるなど下層ではまずありえません」

 

「別に教えるのはいいけど…そんな大したものじゃないぞ?」

 

上条は横目でオティヌスを見る、オティヌスはため息をつき呆れていた。それをみた上条は苦笑いしつつジャックに自分のギフトを教える

 

「俺の右手は全ての異能…ここではギフトを打ち消す事が出来る能力ってだけだよ。それが例え神様の奇跡でさえも」

 

「全てのギフトを…打ち消す。確かにそれが本当ならばとてつもないギフトですね。一定の何かに特化し無効化するギフトなら知っていますが、全てにを無効化できるギフトとなど聞いたことがありません」

 

「といってもそこまで便利って訳でもないんだよな」

 

「それは一体どうい「クッソォォォォォォォォ‼︎もう一度、もう一度だけ勝負だ!」

 

ジャックがさらに詳しく聞こうとするが突如、周囲を埋め尽くしていた樹の根が消えていく。

そして白夜叉の部屋に戻り、耀の隣にいるアーシャが頭を掻き毟りながら叫んでいた。

 

「終わったのか?」

 

「うむ。見ての通りおんしらの勝ちじゃよ」

 

結果を知り、一安心する上条。未だにアーシャから再戦をするようにねだられている耀は助けを求める視線を上条に送る。

 

「あー…ジャック早速頼めるか?」

 

「ヤホホ わかりました。春日部耀さん、ゲームの報酬は後日"ノーネーム"の方に送らせてもらいます。アーシャ帰りますよ」

 

「じゃ、ジャックさん⁉︎で、でも私はまだ」

 

「アーシャ」

 

ジャックのその一言はアーシャを黙らせるには十分なものだった。

 

「わかったよ…。いいか!これで勝ったと思うなよ!次こそは私が勝つんだからぁぁ‼︎」

 

「白夜叉様、今日は仲介役ありがとうございました」

 

アーシャはジャックに引きずられながら去る、部屋は嵐が過ぎたかのように静まり返る。

 

「俺たちも帰るとするか」

 

「…うん」

 

「白夜叉、今日はありがとうな」

 

「気にするでない。私も楽しませてもらったしの」

 

 

上条はその日のギフトゲームはこれで切り上げたが、耀はさらに戦果を挙げるため街に巡るといい屋敷には帰らなかった

屋敷に帰るが十六夜と飛鳥もギフトゲームをしに戻ってきてないとのことだった

 

 




えー
別にギフトゲームを考えたくないわけではなくて

アーシャならこうするかなーと…

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