とある幻想の異世界物語   作:キノ0421

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お待たせしました!


お気に入り400人突破ー!
いぇい!
嬉しい!

今後も増えるよう頑張ります
小ネタは明日の夜疲れてなかったら投稿します!

今回はオリジナル要素、オリジナル展開が強目となっております
小ネタのアイディアとかくれてもいいんだよ…(小声


13話

ゲームが再開されるほんの少し前、黒ウサギはある人物を探すため大祭運営本陣を見回っていた

そこに1人で外を眺めている十六夜が居たので黒ウサギは話しかける

 

「十六夜さん、上条さんを見ませんでした?」

 

黒ウサギが探していたのは上条当麻だった。ゲームが始まる前に打ち合わせなどしたかった彼女だが、肝心の上条が居なくこうして探し回っていた

 

「上条?いや見ていないな…。どうかしたのか?」

 

「それが昨日の夜から誰も見ていないらしんですよ。」

 

「昨日…確か散歩するとかいって出て行ってたな。」

 

十六夜が見たのは、夜に外に出ようとしていた上条とオティヌスだった。決戦前夜に何処に行くのか気になった十六夜は話しかけたが、上条は散歩してくるといい出掛けたのだ。十六夜はその時はあまり気にしていなかったが考えてみるとおかしな点ばかりだった

しかし十六夜は上条達の事を考えるのをやめた

 

「散歩で帰ってこないなんて…。もしや魔王に…」

 

黒ウサギの脳裏に浮かぶ可能性をバッサリと十六夜は切り捨てる

 

「それはない。ルールにも互いに相互不可侵にしてるから何かあればルール違反になる。」

 

「では一体…。」

 

「今は考えるのはやめよう。もうすぐゲームが始まる。そうなるとゲームクリアを目指すのが先決だ。」

 

十六夜が上条達の事に対して重要性がなかったからだ。別段あの2人が居なくても作戦は成り立つ、人手が少なくなるのは痛いが緊急事態というわけでもない

十六夜が懸念するのはゲームからの逃亡だけ。あの2人に限ってそれはないと考えるが、十六夜は可能性として頭に入れていた

 

「…そうですね。では十六夜さんも手筈通りにお願いします。」

 

「ハッ、わかってるよ。そっちこそ俺が来るまでにくたばるんじゃねぇぞ。」

 

「Yes!お任せください。」

 

黒ウサギ胸に手を当てる。その瞳には覚悟で満ち溢れていた

 

そしてゲームが再開される。再開の合図は激しい地鳴りと共に訪れた

 

黒ウサギはサンドラと共に魔王であるペストを探すため街中を飛び回っていた

黒ウサギの耳は特殊でプレイヤー側になると直径1km以内の情報が全て集まってくようになっていた

なので1km内に何も無かったら移動し即座に情報を集め敵の位置を探っていた

 

「黒ウサギ。どう何か情報は見つかった?」

 

「駄目です…。ここ一帯にはペストは居ません。」

 

「そうですか。…一体何処に隠れているのんですかね。」

 

首を傾げながらも常に周囲を警戒する黒ウサギ、その素敵耳にある情報が上書きされる

 

「ッ‼︎」

 

黒ウサギは情報がきた方角に振り返る。そこには1km離れているというのにはっきりと目視できる巨大な陶器いた

 

「敵…!あれはシュトロム⁉︎」

 

そう敵はシュトロム。サンドラが倒したと言っていたが、陶器だけあって一体だけでは無かったようだ

シュトロム自体そこまでの力はない。黒ウサギもそこはわかっていた、しかし目の前にいるシュトロムは、明らかに違った

そう陶器の巨兵は軍勢をなしていた

その数は数十体、陣形を組み強烈な渦巻きと瓦礫を黒ウサギとサンドラめがけて放つ

 

「何ですか、この数は⁉︎」

 

「BRUUUUUUUM!!」

 

サンドラが回避しつつ接近しシュトロムを溶かす。しかし一体倒したところで別のシュトロムが反撃とばかりに瓦礫と烈風を放つ

それを回避するため一度下がる

 

「これではキリがないッ‼︎」

 

「時間が無いというのに…‼︎」

 

このゲームに設けられた時間は24時間。雑魚の軍勢を相手に割く時間は2人にはなかった

 

「黒ウサギ!とりあえずはコイツラを一掃しよ!」

 

「わかりました…‼︎」

 

1秒でも早く魔王を倒すために黒ウサギとサンドラはシュトロムと対峙していく

 

上条はある場所に向かって走り出していた

ふと上条の頭に休戦1日目にオティヌスと話したことを思い出す

 

審判会議の様子を見るためレティシアと別れ、上条とオティヌスは部屋に戻っていた

 

「奴は黒死病によって死んだ霊の群衆が1つになったものだと私は考えている。」

 

「つまりはペストは黒死病じゃなくて…」

 

「そう。8000万の死霊群の代表って所だろうな。」

 

オティヌスが目をつけたのは黒死病の最盛期と、ハーメルンの元の話の年代だった

ハーメルンの碑文が書かれたのが1284年

しかし黒死病が流行りだし、太陽が氷河期に入ったのが14世紀以降、つまりは1350年以降だった。2つの年代がどこからみても合致しない

さらに目をつけたのがペストの目的の1つである白夜叉の身柄引き渡しだった

単なる黒死病の悪魔なら白夜叉の身柄を欲しがる必要などなかったからだ、そこでオティヌスある可能性にいきついた

ペストは8000万の人を殺した黒死病の悪魔ではなく、8000万人もの死者の軍勢ではないかと

 

「だ、だったら白夜叉の身柄を求めたのは…‼︎」

 

「太陽に復讐する為だろうな。黒死病もそうだが、14世紀以降に氷河期に入った太陽のせいで飢餓や黒死病が流行り8000万もの人が犠牲になった。夜叉はそんな太陽の主権を持っている。」

 

ペストの目的が太陽の運行者である白夜叉なら、やることは復讐しかないとふんだのだ

復讐と聞き上条の脳裏にはある人達が浮かび上がった

 

エリスの復讐をする為に学園都市に攻め込んだシェリー=クロムウェル

 

科学によって殺された弟の為に学園都市に復讐しにきた前方のヴェント

 

グレムリンを裏切ったオティヌスに復讐しようとしたマリアン=スリンゲナイヤー

 

他にも沢山の復讐者と上条は対峙してきた。しかし復讐しようとした者は皆悲しい顔ばかりしていた

ペストもその1人だった

だったら止めなくてはいけないと上条は衝動に駆られる

 

「だからって…。だからって復讐は駄目だ!絶対に‼︎」

 

「このままいくと奴は必ず倒される。無論、お前の手を借りずともな。だが人間はどうする?人間は奴をどうしたい?」

 

オティヌスは上条が介入しなくとも、このゲームは勝てると確信していた。十六夜とジンがいればすぐにでも謎は解かれる。そうなればペストは倒されるしかない

しかし十六夜はペストの事情など知っていようが関係なしに倒してしまう。そうなればペストは復讐者として消えてしまう

そんなの上条にとって許されるはずもなかった

 

「俺は…ペストを助けたい。」

 

「理由を聞こうか。」

 

オティヌスはわかっていたかのように笑い、上条に聞き返す。上条はその質問に少しふてくされる

 

「わかってるくせに。」

 

「…いいから答えろ。」

 

「…理由なんてどうでもいいくせに。俺はただアイツを…ペストを助けたいと思ったからだ。そこに深い理由なんかない。」

 

オティヌスはその答えを聞くと両手を広げやれやれとため息をつく

 

「本当に人間のソレは呆れを通り越して尊敬するよ。」

 

「そ、そうか?」

 

「そうだ。…ふむ。となると奴と一対一の状況にする必要があるな。あの兎達から見つからずに入れる場所がこの街にあるか…。」

 

もし街中で戦闘が起きてしまうと黒ウサギや十六夜の邪魔が入ってしまう。そうなるとペストは倒されてしまう。つまりペストを助けるためには黒ウサギ達の介入が難しい場所でなければいけなかった

一対一にしようにも、この街にそのような場所があるとは考えにくかった

場所のことについて考えていた上条はある事を思い出す

 

「…なぁ、思ったんだけどさ。白夜叉みたいに舞台を変える可能性ってのは無いのか?」

 

魔王ともなれば白夜叉みたいに舞台など変えること位出来そうだと上条は考えた。

 

「舞台を変えるか…出来るなら最初からするんじゃないか?」

 

それはオティヌスも考えた。しかし何故にゲーム開始時からそうしなかったのか疑問に浮かぶ。最初から舞台を変えたほうが黒ウサギ達も動揺も含め有利になるのにも関わらず

 

「いや、そうとも限らないだろ。例えば舞台を変えて、そこから正体がバレるからとか、そういった理由があるんじゃないのか?」

 

「…なるほど。確かにそれなら筋が通る。となると、もし舞台が変わるとなれば14世紀以降の街になるな。」

 

「確かハーメルンの笛吹きでは子供達が死んだっていう洞窟があるんだよな。」

 

「確かにあるが、それがどうした?」

 

「…その洞窟さ多分だけど舞台に現れる。そこにペストを呼び出す。」

 

ペストが黒死病によって死んだ者の集合体なら、その所縁ある場所も残すと考えた。ハーメルの笛吹きでは子供達は洞窟に連れ去られた説もあった。なら可能性として低くはないと上条は考えた

 

「しかしどうやって呼び出すのだ?素直に来てくれるとは思えないが…。」

 

場所が決まったとなると後はどうやって一対一にするかだった

数分間悩んだ末に上条が出したのはとてもアナログな方法だった

 

「…手紙でも書くか。」

 

「は?」

 

突拍子な事に目を丸くするオティヌスだが、上条は妙案を思い浮かんだとばかりに得意顔をする

 

「手紙を書いて、出来る限り敵の陣地の方に置く。」

 

「果たし状ということか。い、いいんじゃないか?」

 

呼び出す方法は決まったが上条には手紙を書いたことなど殆ど無かった

 

「問題はどう書くか…。」

 

「私も手伝うから安心しろ。」

 

「おう!助かるよ。」

 

こうして休戦中の4日間を手紙に費やし、再開前夜に手紙を置いていった

 

そのまま上条は場所を変え夜が更けるのを待ち、ゲームが再開されると同時に舞台が変わり予想が当たったことで洞窟に向かって走り出したのであった

一度上条は手紙を置いた場所に確認しに行ったが何処にも無かったので、読んだと確信していた

 

「あそこに手紙が無かったって事は奴等は読んだと考えるべきだな。本当に来ると思うか?」

 

「来る。ペストは必ず来る。」

 

「そうか。…洞窟はどこにあるのかわかっているのか?」

 

「さっき見えたんだけど東の方の街並みが途中で途絶えていたから

多分そこだと思う。」

 

手紙を探している最中に高い建物に登り周りを見渡していた上条は、東の方角にいくと建物も、草も生えていない14世紀の街並みにはとてもあっていない洞窟が遠くに見えていた

 

「ならいい。」

 

そして走ること数分間

上条とオティヌスの目の前には山みたいに盛り上がり一つだけ穴が空く洞窟があった

そこを進んでいくが洞窟の道なりには丁寧に炎で照らされていた

奥に進むと広い空洞がありそこに小さな少女がいた

 

「待たせたみたいだな。」

 

「まさか本当に来るなんてね。それにしてもよくこの舞台がわかったわね。誰が解いたの?」

 

少女は斑模様のワンピースをきたペストだった。ペストは上条達を見ると少し驚いたかのように目を開き、次にクスリと笑い始めた

 

「細かい謎解きはあの不良と小僧がやってくれたのだが。この事を予測していたのはコイツだよ。」

 

「意外。てっきりジン=ラッセルか、貴女かと思っていたのに。」

 

「人間は見掛けによらず頭は切れるからな。」

 

「ふふっ。それで私を呼び出してどうするつもりかしら?こんな狭い洞窟で幼い少女と…何をするつもりかしら?」

 

ペストはからかうように笑うが、上条は笑いはしなかった。その瞳はしっかりとペストを捉えていた

 

「止めろよ…。」

 

「もしかしてギフトゲームの事を言ってるの?なら諦めなさい。私は」

 

「復讐なんてやめろよ。」

 

「ッ…‼︎何だ、そこまでわかってるのね。」

 

復讐という単語に反応したペストはふざけた態度をやめる

 

「たとえ復讐しても何も変わらない。」

 

「貴方にそんな事を言われる筋合いはない。」

 

「そんなに太陽が憎いのか?」

 

上条の瞳には悲しさと怒りが混じっていた

ペストは上条の質問に対し、何もないはずの洞窟の上を見上げる

 

「憎いわ。だって当たり前でしょ。私を含め8000万の命を奪った原因は太陽なのよ?」

 

視線を上条に移す。するとペストの表情は段々と険しくなる

 

「貴方には聞こえないでしょうけど。私には8000万の人々の怨念の声が聞こえるの。毎日…毎日よ。憎き太陽に復讐せよってね。もううんざりよ。まっ、貴方にはわからないでしょうけど。」

 

ペストは険しい表情をしていたが、一瞬だけ哀愁を帯びた顔を見せたが 、上条に向き合うとその表情は消えていた

 

「だから私は終わらせる。黒死病を世界に蔓延させ、飢餓や貧困を呼んだ諸悪の根源…私達を見殺しにした怠惰な太陽に復讐して終わらせるの。」

 

上条は声を震わせながら問いかける

 

「何だよそれ…そんなのは可笑しいだろ!」

 

「…お喋りもここまでね。」

 

そういい、ペストの袖の中から黒い不気味な風を上条に向ける、最初にあった時の風とは質が違いすぎると上条は感じた

あれは触れてはいけないと本能で察っする

しかし本能が警戒している名にも関わらず上条はそれを無視し前に進む

 

「本当にお前は復讐なんてしたいのかよ‼︎答えろペスト‼︎お前は一体どうしたいんだ⁉︎」

 

上条は死霊の群衆ペストにではなく、1人の少女ペストに問いかける

しかしペストにはその声は届いてなどいなかった

 

「先に忠告するわ。この風は触れただけでその命に死を運ぶ風よ。死にたくなかったら頑張って避けることね。」

 

純粋な死の呪い

触れることすら許されないその風を上条は右手で薙ぎ払う

ペストは必殺に近い、死の恩恵をあたえるギフトすら避けもせずに退けられ動揺が走る

 

 

「お前は本当にそれでいいのか⁉︎それしか道はないのかよ!他にも道はあるはずだ!考える事を放棄するな‼︎」

 

上条はペストとの距離を詰めるためゆっくりと歩く。ペストは近付けないために死の風を上条に向けるが右手で全て霧散させられてしまう

 

「うるさいッ!さっきから聞いていれば酷い言い様ね。貴方には関係ないでしょ!」

 

上条の声が届く、ペストは上条を黙らせるために叫び返す

 

「あぁ、関係ないな。だけど俺とお前が出会った時点で他人じゃないし、俺は知ってしまったからな。」

 

「そんなのは屁理屈よ。魔王である私に通じるとでも思ってるの?」

 

「思ってる。」

 

上条の真っ直ぐな言葉にペストはとうとう動揺を隠しきれずにたじろいでいた。唇をかしめながらも声を震わせながらペストは上条に質問する

 

「じゃあ何。貴方が私を助けてくれるとでも言うの?」

 

「当たり前だ。」

 

ペストはその言葉に目を見開く

 

「く、口先だけなら何とでも言えるわ。」

 

後ろに下がりながらも四方八方に風を放つ

 

「いいや、助けてやる。お前が嫌だとって言ったとしても、俺はお前を助ける。」

 

それら全てを上条は右手で受けきる

そらみたペストはとうとうは風を放つのをやめる

 

「な、何よそれ。そんなのただのワガママじゃない!」

 

「そうだ。これは俺のワガママだ!俺がお前を助けたいから助ける。嫌だと言ったとしても関係ない、黙って助けられろ‼︎」

 

上条の声が頭に響くと同時にペストの頭には死霊の声が聞こえてくる

『復讐しろ

太陽の味方をする全ての者を殺せ

そうすることでしかお前は救われない』

耳を塞いでも死霊の声は聞こえてくる

もううんざりだった、魔王として召喚された時から聞こえる声に、聞こえなくなるのは眠る時だけ。こんな事ヴェーザーやラッテンに言ってもどうにかなるものではないと知っていた。だから無責任に助けるなどと言う上条に腹が立った

 

「貴方に救われるほど、私は弱くない‼︎覚悟が違うのよ、私はどんなことをしても太陽に復讐しないといけないの!」

 

死の呪いが効かないのなら、とペストは上条の懐に入り込み、蹴りを入れる

まさか直接くるとは思っていなかった上条は反応が遅れてしまい、もろにペストの蹴り受けてしまう

壁に叩きつけられることで肺に入っていた酸素が全て吐き出された

だが、それだけでは上条は倒れない。立ち上がりペストに言葉をかける

 

「だっ…たらなんでお前は俺を生かしたんだ。今の攻撃だって、その気になれば俺なんてすぐに死んでいていた。手駒が欲しいとか、理由つけてるだけで」

 

立ち上がる上条に今度は拳を腹に決める。身体がくの字に曲がり、胃から何かが出てきそうになるが無理矢理に押し戻す

 

「いい加減にして。私は白夜叉に復讐した後の事を考えていただけよ。殺そうと思えば殺す。」

 

それでと倒れない上条はペストの腕を掴む

 

「そうかよ。だったら何で自分から死のうとしてるとしているんだよ。」

 

「私が死のうと…?そんなこと」

 

「してるじゃないか。どうせ俺が呼ばなかったら黒ウサギ達と真っ向から戦うつもりだったんだろ?逃げもせず、隠れようともせずに。」

 

上条の言葉により、ペストの中でなにかが壊れそうになる

ペストは掴まれた腕を何とか振り払い距離を取る

 

「ッ…だとしたら何?私はあの兎とサンドラとかいうフロアマスターを相手にしても負ける気がしないだけ。」

 

「本当にそう思っているのか?お前は」

 

ぐらりと上条が膝をつく、呼吸が荒くなり黒い斑点が全身に浮かんでくる。それをみたペストは安堵した

 

「黒死病…」

 

「えぇ、そうよ。最初の攻撃に仕込んで置いたの。死の呪いは消せても、病原体までは消せないようね。」

 

距離を取っていたペストだが、上条に近寄り見下す

 

「貴方もいい加減に諦めたら。今ならまだ助かるかもしれないわよ?」

 

「誰が諦めるかよ。途中で諦めるなら最初から此処には居ない。」

 

なんとか立ち上がろうとする上条だが、力が入らないのか足が震える

 

「そう…。なら望み通り殺してあげる。」

 

「お前にはまだ誰かを心配するだけの優しさがあるじゃねぇか!そんな優しい奴が復讐なんてしちゃいけない!本当はお前だって復讐なんてしたくないんだろ⁉︎」

 

上条は立ち上がりペストに問いかける

ペストの中で壊れかけてものに亀裂釜はいる

自分の何かが壊れそうになるのを気付かないふりをして抑える

 

「黙りなさい。」

 

ペストは上条の声を聞こうとしない。いや聞きたくなかった

もはや立つ事が精一杯の上条を蹴とばす。壁にめり込み、悲痛な声が洞窟に響く

 

「殺す。貴方は殺すわ。じっくりと虐めてから殺す。」

壁にめり込む上条をいたぶるためペストはゆっくりと歩く。手を伸ばし上条を掴もうとするペストと上条の間に雷撃が割ってはいる

 

「やっと見つけましたよ!」

 

それは黒ウサギの手に握られた疑似神格・金剛杵によって止められる

ペストは視線を上条から黒ウサギの方へ向ける

そこには黒ウサギ、サンドラ、途中で合流したのかレティシアと十六夜が戦闘態勢をとり構えていた

4対1の状況にも関わらずペストは悠然と構える

 

「随分と遅かったのね。」

 

レティシアはペストの横で壁をめり込み、全身がボロボロの上条を見つけ駆け寄ろうとする

 

「ッ⁉︎当麻⁉︎大丈夫か⁉︎今助けに」

 

「来るな‼︎」

 

しかし上条はそれを止める。壁から抜け出し黒ウサギとペストの間に割って入る

頭や腕からは大量に血を流し、服からも血が滲んでいた

そんな状態の上条に来るなと言われ混乱するレティシア

 

「え…。」

 

上条は振り返りレティシアに向かって笑顔を見せる。しかしその姿はとても痛々しかった

再び上条はペストと向き合う

 

「俺なら大丈夫だ。それにコイツは俺1人でやっつけるから手を出さないでくれ。」

 

「そ、そうはいきません!魔王を見つけたのなら即座にでも倒さないと…‼︎」

 

上条の言葉にサンドラが反論する

 

「いいから‼︎手を出さないでくれ。」

 

上条がだらりと下がる左腕の代わりに右腕で通せんぼをするかのように立ちふさがる

 

「さっきから聞いてれば。随分と愉快な事言ってんじゃねぇか。」

 

十六夜は上条が初めて聞いてもわかるくらいイラついているのがわかった。しかし上条はそんなことより十六夜の腕が気になった

 

「十六夜…。お前その腕」

 

十六夜の右腕はボロボロで肉が内側から弾け、拳も砕かれて

十六夜は左腕をパタパタと振るう

 

「ハハッ、これでも今のお前よりかは元気だぜ。それと手柄の独り占めは頂けないな。」

 

「悪りぃな。手柄が欲しいならジンにでもやるよ。」

 

「それは当たり前として、1人で楽しんでんなよ。俺も混ぜろ。」

 

左腕をグリグリと回しまだ戦えるとアピールする

 

「それは出来ない。」

 

「駄目です!上条さんだってボロボロじゃないですか⁉︎それにその黒い斑点…黒死病にだってかかってるじゃないですか‼︎」

 

しかし上条は拒絶する

仲間との共闘を。十六夜達が信頼できないからではない、彼等の力は強力すぎると考えてた

 

「俺なら大丈夫。だからここは俺に譲ってくれ。」

 

黒ウサギ達は黙るしかなかった

上条はフラフラになりながらもペストだけを見据える

しかし"ノーネーム"ならまだしも"サラマンドラ"ましてや"階級支配者"のサンドラは黙らずに前に進む

 

「そんな状態で言われても説得力なんてありません。魔王は私達が倒します。」

 

好機と思ったのか黒ウサギもサンドラに続くように歩き出す

 

「上条さん、訳は後で詳しく聞かせて貰いますからね。」

 

徐々に上条に近寄る2人

しかし地面から黒い刃が飛び出し、洞窟の穴が塞がる

上条との間に壁を黒い壁ができる

サンドラは咄嗟に後ろに下がる、黒ウサギも一緒に下がり後ろに振り向く

 

「レティシア様⁉︎」

 

そう黒い刃を出したのは他でもないレティシアだった

レティシアの影は刃まで伸びており、それが無尽蔵に刃となっていた

黒ウサギの叫びを無視し上条近寄り話しかける

 

「そんなにボロボロになりながらも、これは当麻がやりたいことなのか?」

 

「あぁ。」

 

「そうか。なら思う存分やるといいさ。」

 

レティシアは上条を笑顔で送り出す

 

「レティシアありがとう。」

 

上条もそれに応えるように笑いペストの方へ歩く

レティシアは振り返る、上条当麻という主人の為に

本当なら止めたい、今すぐにでも変わってやりたい。しかしメイドが主人の命令に反するのは間違っている、なら従うしかない

勿論、理由はそれだけではない

 

「当たり前だ、なんたって私は当麻のメイドだからな。」

 

「俺達のだろ。」

 

面白くなさそうに指摘をする十六夜、レティシアはそれに軽く笑い槍を手に構える

 

「そうだったな。それは失礼した…がここを通りたいのなら私が全力で相手になるが?」

 

「はぁ…別に相手するにはいいんだけどよ、冷めた。上条がどうするか見てやるよ。」

 

「黒ウサギはどうする?」

 

「レティシア様に刃を向けることなど私に出来るわけがありません…。」

 

十六夜は近くにあった石に座る

黒ウサギが仲間と戦うはずもなくただ俯く

 

「すまないな。」

 

「……。」

 

サンドラは納得がいかずにいた、目の前に敵が、魔王がいるのに見てるだけしかできない

それだと何のために"階級支配者"になったのかわからずにいた

 

上条とペストは再び対峙する

ペストの顔には焦りはなく、待ち構えていた

 

「いいの?別に皆で来てもいいのよ。」

 

「わざわざ待っててくれたのか。ありがとう。あとお前とは俺1人で戦いたい。」

 

「…後悔しても遅いわよ。」

 

上条は踏み込みペストに殴りかかろうするが、いとも容易く回避される

そしてカウンターに回し蹴りをするが、何とか左腕を使い防御する。そこからは上条は防戦一方で攻め込む余地すらなかった

 

上条の様子に見かねたのかサンドラが十六夜に訴えかける

 

「やっぱりあの人だけじゃ駄目です!私達も」

 

「黙って見てろ。これは上条の戦いだ。」

 

それを十六夜は制す、視線は上条達をずっと捉えたまま

 

「しかし、これではあの人が死んでしまいますよ⁉︎」

 

「頼む、今回は見届けてくれ。」

 

叫ぶサンドラにレティシアが頭を下げながらお願いをする

 

「何でですか…、何で皆さんは仲間が傷ついているのを黙って見過ごせるんですか‼︎」

 

サンドラは混乱していた

相手は魔王、それなのに1人で戦う上条にも

それを黙って見過ごす"ノーネーム"の人達にも

 

「別に黙って見てる訳じゃない。ただ俺は上条の戦いを見たいだけだ。本当にやばそうになったら無理にでも行くさ。」

 

「そんなのおかしいです‼︎あの人は今すぐ治療しないといけない位の怪我をしてるんですよ⁉︎それなのに何で止めないんですか‼︎」

 

サンドラの叫びは止まらない、むしろどんどんと激しくなっていく

そんなサンドラの肩に手がおかれる

 

「それは違うぞ。私は信頼してるから止めないんだ。当麻は俺に任せろといった、なら任せてみるのが筋じゃないか?」

 

「私にはわかりません…。あの人がそんなに信頼できる人なら私だって任さます。だけど、現にあの人は一方的にやられてるじゃないですか!」

 

手の平から血がにじみ出るほどまでら握る

今もなお上条は防戦一方で反撃どころか、徐々に傷が増えていくばかりだった

しかし十六夜の顔にはいつもの軽薄な笑みがこぼれていた

 

「それはどうかな。」

 

 

 

 

防戦一方だった上条はペストの攻撃を回避するしかなかった

その中でペストの蹴りを右手で掴む

 

「確かにお前がやってることは間違ってないかもしれない。」

 

ペストは上条の言葉に目を鋭くしながら驚く

 

「…貴方の口からそんな言葉が出てくるとは思わなかったわ。」

 

「だけど、その不幸は押し付けちゃいけない。ペスト、お前は自分の不幸を受け入れられず、他人まで巻き込もうとしているだけだ!そんな事はしちゃいけない‼︎」

 

ペストは上条の腕を払い睨む

 

「それの何処が悪いのよ。考えてみなさい。普通の女の子が友達と元気に遊んでいただけなのに、突然身体中に黒い斑点ができて苦しくて、でも周りは助けてくれない。友達も親すらも私から遠ざかったわ。そんな理不尽ある?いいえ、無いわよ。太陽が私達を見捨てなかったら生きてたかもしれない。こんな事しないで、普通の暮らしをしていたかもしれない。私はね、そんな理不尽な理由で死んでいった人達の願いを背負ってるの。その願いを叶えるために私は復讐しないといけないの。」

 

ペストは拳を握る、己の願いを叶えるために

 

「そんなの間違っている!確かにお前は不幸だよ。話を聞くだけで同情しちまうくらい。だけど本当にそれしかないのか?復讐以外にも方法があったかもしれないだろ⁉︎周りの声に惑わされるなよ。声が聞こえるなら耳を塞げ!誰も頼れないなら俺を頼れ!そんな不幸、俺が全部消してやる‼︎」

 

上条も拳を握る、不幸な少女を助けるために

 

「それが本当だとしてら嬉しいわよ。でももう遅いの。貴方の後ろの人達の様子を見る限り、ヴェーザーとラッテンは消えたいみたいね。だとしたら魔王として立ち上げた、あの人達の為にも、私の為にも、私が簡単にやられるわけにいかない‼︎‼︎」

 

覚悟を決める

ペストは上条を倒し、魔王としての意地を見せるため

上条はペストを救うために、不幸から逃げ回る少女のために拳を握る

上条とペストは右拳を掲げる

 

「いいぜ、そんな方法でしか自分を救えないのなら

 

まずは

そのふざけた幻想をぶち壊す!」

 

拳が届いたのは上条だった

上条の右拳はペストの顔面を貫く、それと共に何か砕ける音がした、しかしそんな事今の上条には関係なかった

 

「俺の勝ちだ。」

 

倒れ伏すペストは目を閉じ右手で顔を隠していた

今まで聞こえていた騒音はもう無くなっていた

 

「えぇ、そして私の負けね。あぁ。これで本当に帰る場所もなくなっちゃたな。」

 

涙を流すペストだがその表情は柔らかいものだった

倒れるペストに上条は右手を差し伸べる

 

「なら俺達のコミュニティ来ればいい。"ノーネーム"の皆ならきっとお前だって受け入れるはすだ。」

 

ペストは上条の手を取ろうとするが引いてしまう

 

「…私みたいな魔王が入ってもいいのかしら?」

 

「もうゲームは終わったんだろ?ならお前は魔王でもなんでもない。ただの女の子だろ。」

 

「何よそれ。やっぱりおかしいわ、貴方。」

 

体力が尽きたのか倒れたまま目を瞑るペスト

 

「おかしい…か。そんなの…知ってい…る……よ。」

 

上条も緊張の糸が切れたのかそのまま倒れる

レティシアはそれを見ると同時に黒ウサギに指示を出す

 

「当麻‼︎急いで医務室へ行くぞ‼︎」

 

「は、はい!私は先に行って治療の準備をします!」

 

「頼んだ‼︎」

 

黒ウサギは急いで振り返り跳躍する

レティシアも翼を広げ上条に駆け寄る

 

「レティ…シア…?」

 

「あぁ、そうだよ。だけど今は喋るな。」

 

そして上条を抱きかかえる

全身からの出血が酷かった、打撲ともしかしたら骨折してるかもしれない箇所が数箇所もあった

それでも上条は自分ではなくペストの心配をした

 

「ペストを…アイツはもう魔王じゃ…。」

 

「わかってる。わかってるからもう喋るな!」

 

右手が触れないようにレティシアは上条を連れ去る

上条の姿が見えなくなるとサンドラは静かにペストの元に近寄り炎を出すが、それを十六夜肩に手を置きとめる

 

「サンドラ、やめとけ。」

 

「しかし、魔王はまだ!」

 

「さっき上条が言ってたろ。アイツはもう魔王じゃない。」

 

サンドラは振り返り十六夜に怒鳴る

 

「元魔王な事に変わりはありません。もしかしたらまた襲ってくるかもしれません!」

 

「それはもっともだが、ペストを攻撃するってんなら、うちに対する宣戦布告ってことでいいのか?ペストはもう"ノーネーム"が隷属させることに決まっている。なら仲間を守るのは普通だよな?」

 

十六夜は今のサンドラを見下しながら薄ら笑いをする

 

「まだ決まってもいないのに、よく言えますね。」

 

「決めたのは上条だけどな。文句ならアイツに言え。」

 

依然としてサンドラの表情は暗く、険しいものだった

 

「…納得がいきません。」

 

「納得してくれ。とりあえずは今後の処遇は話し合うとして今殺すのは間違っている。」

 

サンドラは押し黙り、ペストから離れそのまま出口の方へと歩き出す

 

「…魔王は任せます。私は先に本陣に戻ります。」

 

サンドラの足音が消え、居なくなったのを確認すると十六夜はペストに声をかける

 

「もういいぞ。」

 

パチリと目を開けるペスト

 

「あら、気付いていたのね。」

 

「バレバレだ。でだ、本当のところ何で降参なんかしたんだ?」

 

「別に、私じゃ彼に勝てないと思ったからよ。」

 

「…そうかよ。そういう事にしとく。」

 

 

 

 

 

 

そしてゲームはクリアされた

 

上条が目を覚ましたのはその翌日だった

全身が包帯で巻かれていたが、上条は大袈裟だと思い外そうとしたらレティシアから怒られたので大人しく着けていた

 

上条とレティシアは白夜叉に呼び出された

呼び出され内容だがそれは

 

「ペストの教育係をおんしら2人にお願いしたい。」

 

上条とレティシアの目が丸くなる

どうやら1ヶ月の間、元魔王のペストを白夜叉の下で調教してから"ノーネーム"に引き渡すことになったらしいのだが、白夜叉も暇ではない

その白夜叉の代わりにレティシアと上条が調教もとい教育係として呼び出されたのだった

レティシアはメイドについて

上条はペストがもし反乱したら押さえつける役目

レティシアはまだしも、上条は自分の役割について疑問しかなかったが渋々承諾した

 

そして1ヶ月の時が経つ

 




もし文におかしな点がありましたらご指摘の方お願いします

自分でも確認はしているのですが見落としている可能性もあるので…見つけ次第訂正するつもりです

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